The Influence of a Family Program on Adolescent Tobacco and alcohol Use
Karl E.Bauman,PhD,Vangie A.Foshee,PhD,Susan T.Ennett,PhD,
Michael Pemberton,PhD,Katherine A.Hicks,BSPH,Tonya S.King,PhD,
And Gary G.Koch,PhD
American Journal of Public Health.2001;70;604-610
発表者:喜瀬実名子(学校保健学教室)
発表日:平成13年6月21日
【選定理由】
私は大学院でライフスキル教育の介入研究をしたいと考えている。そのため、ライフスキル教育をはじめとした種々の健康教育プログラムの内容や介入研究の効果を評価するための分析方法に興味を持っているため、本文献を選定した。
【先行研究レビュー】
・ 1997年の調査において、9年生から12年生で過去30日間に喫煙した者は43%、12〜17歳で過去30日間に飲酒した者は20%に達した(Healthy People 2010)。
【要約】
〈目的〉
思春期の子どもの喫煙、飲酒を防止するために作成された家族向けのプログラム(Family matters)の有効性を評価するため。
〈対象〉
アメリカに在住する12〜14歳の子どもを持つ家族2395人である。
対象者は介入群とコントロール群に無作為に割り当てられた。
〈方法〉
・研究の流れ
介入前の調査(1996,6〜1997,2)
↓1ヶ月後
介入群へのプログラム開始(1996,6)
↓
介入群へのプログラム終了(1997,7)
↓終了から3ヶ月後
1回目の追跡調査(1997,11〜1998,4)
↓終了から12ヶ月後
2回目の追跡調査(1998,8〜1999,1)
・調査方法
電話によるインタビュー
・調査内容
○background
人種(白人、黒人、ヒスパニック)・性別・年齢・親の数(片親、両親)・母親の学歴(大学卒、大学、高校、それ以下)
○思春期の子どもの喫煙
「今までにどのくらいタバコを吸いましたか?」
全くない・1本以下・1〜5本・6〜20本・20本以上
「今までにかみタバコをかんだことがありますか?」
はい・いいえ
○思春期の子どもの飲酒
「今までにどのくらいお酒を飲みましたか?」
全くない・1〜2口・3口以上1本以下・1〜5本・6〜20本・20本以上
* 飲酒は教会で飲んだものは含めないが、家族と飲んだものは含める。
・介入方法
介入群の家族にパンフレットを郵送した。パンフレットは全部で4つからなり、1つめのパンフレットを郵送してから次のパンフレットを郵送している。それぞれのパンフレットを郵送した1〜2週間後、参加への激励とプログラム内容の確認のためHealth educatorが電話をかけた。
・プログラムの内容
パンフレット1:Why Families Matter
パンフレット2:Helping Families Matter to Teens
パンフレット3:Alcohol and Tobacco Rules Are Family Matters
パンフレット4:Non-Family Influences That Matter
〈結果〉
(対象者の概要)
・ 対象者(介入前の調査の回答者)の地理的分布は、1990年アメリカ人口調査における12〜14歳の子どもを持つ家族の地理的分布とほぼ同じであった。
・ 対象者(介入前の調査の回答者)のbackgroundを1990年アメリカ人口調査におけるbackgroundと比較したところ、年齢、性別はほぼ同じであったが人種、親の数、母親の学歴では違いがみられた。
・ 対象者(介入前の調査の回答者、思春期の子ども)の喫煙状況を、思春期の薬物乱用に関する国の研究(Add Health、MTF)と比較したところ、Add Health、MTFのほうが喫煙者が多かった。
・ 対象者(介入前の調査の回答者、思春期の子ども)の飲酒状況を、MTFと比較したところ、対象者の方が飲酒している者が多かった。Add Healthは質問が本研究の質問と矛盾していたため、比較できなかった。
・ background、喫煙、飲酒状況と介入群、コントロール群との間の関連をみたところ、人種において、白人がコントロール群(76.1%)よりも介入群(70.6%)の方が有意に少なかった(X2=5.08、p<.05)。
・ 追跡調査まで参加した者と途中で参加を辞退した者のbackground、喫煙、飲酒状況を比較したところ、ほぼ同じであった。
・ background、参加状況と介入群、コントロール群との間の関連をみたところ、白人の参加者(介入群83.1%、コントロール群94.4%)はその他の人種の参加者(介入群76.6%コントロール群81.0%)よりも介入群とコントロール群の差が有意に大きかった(X2=7.66、p=.006)。
(Family mattersの効果)
・ 介入前の調査で喫煙、飲酒していない者を対象に追跡調査で喫煙、飲酒しはじめた者の割合を介入群とコントロール群で比較した(図1)。Cigarettesは介入群はコントロール群に比べて有意に低かった(Odds ratio=1.30、p=.037)。Chewing Tobacco、Alcoholは有意差がみられなかった。
・ Cigarettesに関して、白人とそれ以外の人種に分けて介入群とコントロール群を比較した(図2)。白人では介入群はコントロール群に比べて有意に低かった。白人以外の人種では介入群の方がコントロール群より高い傾向があったが、有意差はみられなかった。
・ 喫煙、飲酒の頻度に関して有意なプログラムの影響はみられなかった。
〈考察〉
(調査方法について)
・ 電話によるインタビューは、対象者の調査への参加を減らしているかもしれない。参加者の減少は代表性の不十分さを招くことになる。
・ 電話によるインタビューは、思春期の子どもの喫煙、飲酒を明らかにすることを妨げているかもしれない。そのため、思春期の子どもに正確な情報を得ることの重要性について話した。また、両親に答えを聞かれないよう配慮し、答えにくい質問はyes、noで答えられるようにした。
(Family mattersの効果について)
・ Alcoholで介入群とコントロール群に有意な差がみられなかったのは、介入前の調査で非飲酒者が少なかったため、有意差をみるには、サンプルの大きさが不十分だったことが考えられる(図1)。
・ Chewing Tobaccoで介入群とコントロール群に有意な差がみられなかったのは、Chewing Tobaccoをはじめる者があまりに少なかったため、比較が困難であったことが考えられる(図1)。
・ 図1の分析で、プログラムの影響がCigarettesにしかみられなかったのは、前述の理由のほかに、人々が飲酒よりも喫煙に対してより否定的な印象を持っていることも影響していたかもしれない。
・ 図2の分析で、プログラムの影響が白人にしかみられなかったのは、介入前の調査で、白人の非喫煙者に比べてその他の人種の非喫煙者が少なかったことが考えられる。また、この違いは、プログラムが白人向きであった可能性もあるため、プログラムの検討が必要であるかもしれない。これは、今後の課題としたい。
【研究の長所・短所】
〈長所〉
・ 対象者のバイヤスについて、地理的分布、background、喫煙、飲酒状況を他の資料と比較している。
〈短所〉
・ background、喫煙、飲酒状況などの結果が全く示されていないため、対象者の特徴がつかみづらい。
・ 男女比較をしていない。
・ プログラムの効果をみる分析では、非喫煙者、非飲酒者を対象にしているが、喫煙者、飲酒者にはどのような変化がみられたのか示されていない。
・ 費用、労力がかかる。
【学校保健への寄与】
日本で実際に家族を対象に、喫煙、飲酒防止教育を行うことは困難であると思う。だが、喫煙、飲酒防止教育の対象者に家族も含めるという考え方は参考にできると思う。例えば、学校で健康教育を行った際に、両親向けのパンフレットも作成、配布すると、家族で喫煙、飲酒について考える機会を作ることにつながるのではないだろうか。
【私見】
未成年を対象とした喫煙、飲酒防止教育は、主に学校において、広く行われているが、家族を対象に喫煙、飲酒防止教育を行うという方法については考えたことがなかった。だが、未成年の喫煙、飲酒行動の著しい改善を望むには、家族さらには地域社会を視野に入れた教育が必要とされるのではないかと思った。