Project SOAR: A Training Program to Increase School Counselors' Knowledge and Confidence Regarding Suicide Prevention and Intervention
Keith A. King, Judie Smith
Journal of School Health. 2000; (10) ;402-407
.選定理由
近年、日本のみならず先進諸国において自殺死亡率は上昇傾向にある。私自身、昨年の地域看護学実習の際に、地域でも自殺が増えてきていると耳にした。また、自殺を「防げなかった」、「全然わからなかった」などという周囲の人の声を聞くこともしばしばである。そのような中、実際に自殺を予防するためのプロジェクトが展開されていることに興味を持ったため。
.先行研究レビュー
・Hoyert DLらによると、青年期における死因の第三位は自殺である。
・King CAによると、自殺による致死率は青年期において最も高い。
。.要 約
<目 的>
テキサス州ダラスでは、全てのスクールカウンセラーが "Project SOAR (Suicide, Options, Awareness, and Relief )" に基づいた、生徒の自殺予防のためのトレーニングを受けている。今回の研究では、そのダラスのスクールカウンセラーにおける、自殺の危険因子に関する知識と、自殺的生徒に遭遇した場合に適切な手順で介入する能力について評価し、以下の4点を明らかとすることを目的としている。
1)ダラスのスクールカウンセラーは、自身が、地域の自殺への政策や取り組みについての知識があると考えているか?
2)ダラスのスクールカウンセラーは、生徒の自殺に関する危険因子を知っているか?
3)ダラスのスクールカウンセラーは、生徒が自殺のハイリスク状態にあるときにとるべき適切な手段を知っているか?
4)ダラスのスクールカウンセラーは、自殺の予防に関して高い効力を持っているか?
<対象と方法>
毎春、ダラスで開催されるスクールカウンセラーのミーティングにおいて、1999年の春に2ページ44項目からなる調査票を参加者全員に配布し、全般的な「知識」と「生徒の自殺に関して期待される効力」を調査したものである。三つの「知識」に関するsubscaleと、一つの「期待される効力」に関するsubscaleから構成されている。
第一の知識に関するsubscaleは、カウンセラーの、「生徒の自殺予防と介入に関する知識」について評価する。4項目あり、7段階評価(1= strongly disagree ~ 7= strongly agree )を用いている。合計得点は4~28点で、得点が高い程「生徒の自殺予防と介入に関する知識」が高いことをあらわす。
第二の知識に関するsubscaleは、カウンセラーの、「生徒の自殺企図への危険因子に関する実際の知識」について評価するものである。14項目あり、当てはまると思うもの全てをチェックする"check all that apply" 方法をとっている。専門的報告とSOARによって挙げられた、8つの可能性のある自殺企図への危険因子が含まれ、残り6つは対照"foil" である。正しい回答に1点づつ加算し、得点は0~14点である。
第三の知識に関するsubscaleは、カウンセラーの、「自殺への介入手順に関する実際の知識」を評価するものである。"If a student assessed at high risk for a suicide attempt, I would..." に続くと考えられる10の介入手順がリストアップされ、当てはまると思うもの全てをチェックする"check all that apply" 方法をとっている。5つの正しいと考えられる介入手順は専門的報告とSOARによって挙げられたものであり、残り5つは対照"foil" である。正しい回答に1点づつ加算し、得点は0~10点である。
「生徒の自殺に関して期待される効力」に関するsubscaleは、カウンセラーの、「固有の、有効な自殺予防と介入課題を実行する能力」を評価するものである。5項目あり、7段階評価(1= strongly disagree ~ 7= strongly agree )を用いている。合計得点は5~35点。これらの期待される効力は、Banduraのself-efficacy model を基にしている。これらの項目は回答者の、生徒の危険信号の認知、リスク状態にある生徒への効果的サポートの提供、生徒のリスクへの有効な評価、自殺的生徒への有効なカウンセリングの実施、危機介入カウンセリングモデルの有効な利用への考えを含むものである。
尚、この調査において、convenience sample (n=15) を用いて信頼性を検討している。
<結 果>
247名のスクールカウンセラーが1999年春のセミナーに参加し、うち186名 (75%) の回答を得た。スクールカウンセラーとして経験が10年以下で、過去にSOARのトレーニングを受けたことのあるのものが最も多かった。半数が最初のSOARのトレーニングを過去4年以内に受け、約半数(48%)がそれを過去3年以内に受けている。大多数(88%)のカウンセラーが、自殺的生徒のリスクを評価した経験があると回答しており、2/3近く(62%)が任期中に1人〜5人の自殺的生徒を評価したと報告している。半数のカウンセラーが、現在も自殺的生徒に関わっているという。
カイ二乗検定の結果、カウンセラーとしての経験年数と最初のトレーニングを受けてからの年数、経験年数とリスクを評価した経験、経験年数と援助を求めた経験、最初のトレーニングを受けてからの年数と過去3年以内のSOARトレーニング、最初のトレーニングを受けてからの年数とリスクを評価した経験、最初のトレーニングを受けてからの年数と評価した生徒の人数、リスクを評価した経験と援助を求めた経験に相関が認められた。
「自殺に関する知識」について
範囲4~28点、分布4~28点(平均22.4±4.71)。MANCOVAs検定の結果、カウンセラーの自殺に関する知識は、彼らの持ついかなるbackground においても、有意な差はみられなかった。
「生徒の自殺企図への危険因子に関する実際の知識」について
範囲0~14点、分布7~15点(平均11.8±1.46)。ANCOVAs検定の結果、カウンセラーの危険因子に関する知識は、彼らの持ついかなるbackground においても、有意な差はみられなかった。
「自殺への介入手順に関する実際の知識」について
範囲0~10点、分布5~10点(平均8.4±1.12)。ANCOVAs検定の結果、「自殺への介入手順に関する実際の知識」は、カウンセラーとしての経験年数、過去3年以内のSOARトレーニング、そして自殺的生徒を評価した経験において有意な差がみられた。
カウンセラーとしての経験が5年以下と回答したもの(平均8.8±1.23)は、経験が6年以上と回答したもの(平均8.3±1.15)よりも、自殺への介入手順に関する知識が高かった。ヌ(F(1, 148) = 3.92, p = .050)
過去3年以内にSOARトレーニングを受けたカウンセラー(平均8.2±1.13)は、過去3年以内にSOARトレーニングを受けていないカウンセラー(平均8.7±1.13)よりも、自殺への介入手順に関する知識が高かった。ヌ(F(1, 146) = 4.90, p = .029)
自殺的生徒を評価した経験のあるカウンセラー(平均8.5±1.08)は、全くその経験がないカウンセラー(平均7.8±1.13)よりも、自殺への介入手順に関する知識が高かった。ヌ(F(1, 148) = 5.40, p = .021)
「生徒の自殺に関して期待される効力」について
範囲5~35点、分布6~35点(平均27.0±6.13)。ANCOVAs検定の結果、カウンセラーの考える能力として、有効な評価、サポートの提供、カウンセリング、そして自殺的生徒に危機介入モデルを用いることについて、過去3年以内にSOARトレーニングを受けたか否かにおいて有意な差がみられた。また、過去3年以内にSOARトレーニングを受けたカウンセラーは、そうでないカウンセラーよりも、自殺的生徒への有効なサポートの提供、生徒の自殺への危険の評価、自殺的生徒のカウンセリング、危機介入カウンセリングモデルを用いることについて、より自身の能力に自信をもっていた。
"Variables Associated with High Knowledge and Efficacy Expectation Scores" について
Pearson r correlation によると、危険因子に関する知識と介入手順に正の相関がみられたヌ(r =.221, p =.007)。同様に、知識と期待される効力に正の相関がみられたヌ(r =.846, p =.000)。
<考 察>
今回の調査で、カウンセラーの76%が自殺的生徒を地域精神保健の専門家へ委託する方法を知っていることが明らかとなった。加えて、カウンセラーの68%が学校の教職員は自殺的生徒を彼らへ照会するものと強く信じていた。教師はより多くの生徒に接する機会を持っており、自殺の危険がある生徒を発見した場合にスクールカウンセラーへ照会すべきである。このことは学校において、自殺に対する介入を促進し、生徒を適切なケアへと導く。教師は、全体的に、生徒のメンタルヘルス上の問題ついての良いインフォーマントであり、リスク状態にある生徒をスクールカウンセラーへと照会することができる。カウンセラーと教師は積極的に協力し合い、共同で青年の自殺を予防していくべきである。
最近の全国的な調査によると、潜在的な自殺の危険がある生徒を理解できると強く信じているカウンセラーはわずか38% に過ぎないが、今回の調査では56% に達していた。この差は、SOARプログラムによって、リスク状態にある生徒を発見するカウンセラーの期待される効力が高められた結果といえる。
「.長所・短所
・尺度には、自殺の専門的報告やSOARによって作られたものを使用しているため、調査項目は適切であるといえる。
・目的が明確に示されている。
・信頼性、妥当性についても触れている。
・バイアスを考慮している。
・過去三年以内にSOARトレーニングを受けたか否かで比較しているが、全くこのトレーニングに関わったことのない対照ではない。
」.学校保健への寄与
スクールカウンセラーに期待される役割や、教職員との連携、トレーニングによる成果を明らかにしていることからも、学校保健活動に生かすべきものは多いと考えられる。
、.私 見
最近、日本でもスクールカウンセラーの設置が話題となったことがあるのは記憶に新しい。生活相談員などと名称はさまざまであるが、学校側がこういったシステムに未だ不慣れな部分もあり、また、気軽に相談できるかというとそうでもなく、スクールカウンセラーがさまざまな場面で活躍しているとはいえない状況にあるように思う。ダラスのように地域ぐるみのプロジェクトを展開し、それを評価するような取り組みはなかなか急にできるものではない。実際に研修などを行い、その成果が認められ、学校保健の現場に生かされていることは素晴らしいことであるように思う。またこの論文には目的、方法などなどが事細かに、そして明確に示されており勉強になった。