中学生の食生活と栄養摂取に関する男女の比較
岡崎愉加、高橋香代、松枝睦美
剣持順子、平田和子
学校保健研究 Jpn J Sch Health 2000: 42: 363−374
発表者:渡嘉敷 めぐみ(地域看護学教室)
選定理由:
中学生の頃を振り返ってみると、食事について気をつかったり、栄養のバランスを考えて食事内容を決めた覚えがない。また、塾にも通っていたため、週に3日は遅い夕食を食べていたように思う。小学生の頃は親の考えた食事を食べるだけだが、中学生ともなると自分で考えて決める機会も増えてくる。その機会に正しい知識を持って、自分の身体に良いものを選べるためにはどの点に着目すべきか興味を持ったのでこのテーマを選定した。
先行研究レビュー:
・男子は体型を適正に評価するのが多いが、女子は過大評価するものが多く、それは年齢と共に増加する(1993.竹内)。
・中学生の食生活上の問題としては、欠食・孤食・ダイエット・肥満などが指摘されている(1997.佐藤、1994.深谷)
・中学生の買い食いの内容は、清涼飲料水・ジュース類が70%以上みられ、次いでポテトチップス類が多い(1994.河野)
要約:
【目的】
中学生の食生活、特にダイエットや欠食などが栄養摂取量に与える影響を男女別に明らかにし、食生活指導の在り方を検討する。
【対象】
岡山市郊外の公立中学3年生、男子96名、女子94名の合計190名を対象とした。対象の特性は男子(n=96)の慎重の平均値が164.5±7.2cm、体重の平均値が53.4±9.5_、BMIの平均値は19.7±2.6であった。また女子(n=94)の身長の平均値は155.6±5.4cm、体重の平均値は49.5±8.5_、BMIは20.4±3.3であった。
【方法】
平成11年6月に栄養摂取量の調査と、食生活に関するアンケート調査を実施した。栄養摂取量の調査は、面談法にて、週間食品摂取頻度・摂取量法を用いて、エネルギー・たんぱく質・脂質・糖質・カルシウムなどの栄養素別摂取量と穀類・肉魚介類・卵・大豆大豆製品・緑黄色野菜などの食品群別摂取量を算出した。プログラムソフトは岡山県南部健康づくりセンターの「あなたの食生活」を使用した。
また食生活に関してはダイエット経験や欠食、食生活で注意していることについてアンケート調査を実施した。
データ解析には医学統計ソフトstatviewを用い、3群間における平均値の比較はANOVAで行い、その後多重比較した(Scheffe法)。2群間における頻度の比較はカイ二乗検定を行った。また、BMIの判定には、田原の判定基準を用い分類した。栄養所要量は第六次改定日本人の栄養所要量食事摂取基準を参考にした。
【結果】
1. 栄養摂取量について
栄養素別摂取量は、男女共にエネルギー摂取量は所要量前後であったが、脂肪エネルギー比率は、男子29%、女子30%と高値であった。栄養素では、男女共に鉄・食物繊維が不足し、食塩は多めであった。また、男子はカルシウムが不足していた。
食品群別摂取量は、砂糖菓子嗜好飲料を男女共に過剰に摂取していた。その他の食品では男女共に、肉魚介類と牛乳乳製品以外の全てが不足していた。
2. ダイエット経験とBMI・栄養摂取量について
ダイエット経験別の男女の身体特性は男子でダイエットをしている者はBMIが過重体重群であった。女子ではBMI正常群がダイエットをしていた。
栄養素別摂取量では、全ての栄養において男女共にダイエット中の者がダイエット未経験者に比べて摂取量が少なかった。特に女子ではエネルギー・糖質が有意に少なかった。また、ダイエット中のたんぱく質摂取量や鉄摂取量、カルシウム摂取量いずれも不足していた。
食品群別摂取量は有意差はなかった。
3. 欠食とBMI・栄養摂取量について
男女とも欠食回数の多い者ほどBMIは高く、女子では有意差があり、毎日欠食している者は、BMIが24.6と過体重群であった。
栄養素別摂取量では、エネルギー摂取量は男女共に有意差はなかったが、女子では欠食していない者の方が少なかった。栄養素では女子は差がなかったが男子で毎日欠食している者はビタミンA・食物繊維が欠食していない者に比べて有意に少なく不足していた。その他、男子欠食者ではカルシウム・鉄・ビタミンCが不足していた。
食品群別摂取量では、砂糖菓子嗜好飲料が男女とも毎日欠食している者の方が有意に多く過剰に摂取していた。
4. 食生活と栄養摂取量
有意差のあった6項目について示した。
栄養のバランスについて
・気をつけていると答えた者といないと答えた者は男女間に有意差はなかった。
・栄養素別摂取量は女子では気をつけていない者の方がエネルギー摂取量が有意に少なかった。また栄養素では気をつけていない者は糖質・食塩以外の全てが有意に少なく、特にカルシウム・鉄・食物繊維と不足していた。
・食品群別摂取量は、女子では気をつけていない者のほうが肉魚介類・緑黄色野菜・その他の野菜きのこ・果物が有意に少なく、肉魚介類は不足していた。
偏食について
・気をつけていると答えた者と気をつけていないと答えた者は男女間に有意差はなかった。
・栄養素別摂取量では、男子は気をつけている者の方が気をつけていない者に比べて摂取量が多く、ビタミンCでは有意差があった。女子では有意差がなかった。
・食品群別摂取量では、男子は気をつけていない者の果物摂取量が有意に少なく不足しいた。
三食食べることについて
・女子のほうが気をつけている者が有意に多かった。
・栄養素別摂取量では、男女ともほとんど差がなかった。
・食品群別摂取量では男子は気をつけている者のほうが気をつけていない者に比べて、牛乳乳製品が有意に多かった。女子は気をつけている者のほうが穀類が有意に多かった。
偏食について
・女子のほうが気をつけている者が有意に多かった。
・栄養素別摂取量と食品群別摂取量では男女ともにほとんど差がなかった。
菓子類をひかえるについて
・女子のほうが気をつけている者が有意に多かった。
・栄養素別摂取量では、男子は有意差はなかったが女子では気をつけている者のBMI(21.4)が気をつけていない者(19.8)に比べて有意に高く、気をつけている者は食物繊維を有意に多く摂取していた。
・食品群別摂取量では、男子はほとんど差がなかったが、女子では気をつけている者のほうが、大豆大豆製品、緑黄色野菜を有意に多く摂取していた。
「よくかむ」について
・女子の方が気をつけている者が有意に多かった。
・栄養素別摂取量では男女共に有意差はなかった。
・食品群別摂取量では男子は気をつけている者のほうが気をつけていない者に比べて、果物が有意に多かった。女子は差がなかった。
【考察】
1. 本調査は欠食やダイエットなど食生活状況が栄養摂取量新に与える影響を男女別に具体的な数字で明らかにし、男女別の特徴を活かした栄養指導の在り方について検討した。また、本調査の対象は190名であり、他の調査と比べ栄養摂取の平均値についてはほぼ同様の結果が得られたことから、本調査対象は特異な集団ではないと考えられる。
2. 栄養摂取量の結果から、男子はカルシウムが不足し、女子は鉄が不足していた。不足には様々な要因があるが、その事をふまえて男子には特にカルシウム、女子には鉄の十分な摂取についての指導が必要であると考えられる。また、砂糖菓子嗜好飲料の摂取の弊害についての指導が必要である。
3. 今回の調査結果でも、ダイエット中の者は、成長期に必要なタンパク質・鉄・カルシウムが不足しており、とりわけ女子では鉄が不足していた。これは母性育成の面からも問題といえる。思春期女性のダイエットは重要な問題であり、ダイエットは成長期に必要なタンパク質・鉄・カルシウムの不足をもたらすことの指導が必要と考えられた。
4. 今回の調査では男女共に、三食をきちんと食べることに気を付けている者の方が気を付けていない者より、砂糖菓子嗜好飲料の摂取が少なかった。これらのことから、欠食者は食事を取らないかわりに、手軽に食べられる菓子類やジュースなどで空腹を満たしていると考えられる。欠食者の砂糖菓子嗜好飲料の摂取が、塩分・脂肪・糖分の過剰摂取につながる一方で、栄養不足を引き起こしているといえ、三食をきちんと取り、砂糖菓子嗜好飲料の摂取を減らすことが健康な身体作りに不可欠であると言える。
5. 正しい食生活についての意識は女子の方が高いと考えられる。有意差が認められなかった「栄養のバランスを良くする」でも、女子で気を付けている者は、食物繊維以外は全て所要量を満たしており、栄養に関する正しい知識を活用できていると考えられた。一方男子はバランスに気をつけているいないに差がなく、栄養のバランスについて十分な理解ができていないと考えられた。栄養に関する知識は小学生よりも中学生の方が低く、女子よりも男子の方が低いという報告もあることから、中学生の男子への指導が特に必要といえる。
本研究の長所と短所:
<長所> 欠食やダイエットなど食生活状況が、栄養摂取量に与える影響を男女別に具体的な数字で明らかにしたこと。
<短所> 欠食者やダイエット者の行動の動機や、生活背景を調査していない。更に別の角度からの影響を検討するとよいのでは?
学校保健への寄与:
この研究から女子は鉄摂取量が、男子ではカルシウム摂取量が不足していることや、男子の栄養に関する知識の低さなど具体的な問題点を知ることができた。また、欠食者やダイエットなど食生活状況が栄養摂取量に与える影響を別の視点からも検討しこれらのことを健康教育に活かせると良いと思う。
私見:
栄養に関する内容を、学校の授業で行っていることを実際に受けているときには実感がなく、身近に感じることができなかった。授業の中でもっと生徒の生活に近い指導ができるといいのではないか。高校の家庭科の調理実習の一つに自分たちで献立を作り、実際に調理した後、栄養のバランスについて話し合うという授業があった。このような指導の方が生徒も実感できて学びが深くなるのではないかと思う。学年それぞれに理解のレベルもあり、また生徒それぞれのレベルも違う。全員に同じような理解や興味、行動力を提供できると健康教育も実を結ぶのだろと感じる。