Effectiveness of the Baby Think it OverTeen Pregnancy Prevention Program

Somers CL , Fahlman MM

発表者:石野こずえ(老人保健学教室)

対象論文選定理由:

 現在日本に於いても若年妊娠、中絶数の増加は問題になっている。学校・家庭では青少年へ親になることの責任や避妊の大切さをいかに教えていくか考えていく必要がある。しかし、その方法はとても難しくなかなか減少率、避妊法の普及率に影響が見られていないのが現状である。これから自分達が青少年にそれらの大切さをアドバイスしていく際にどのような方法があり、それがどのような影響を持っていたか知っておくことが大切と思いこの“BTIOプログラム”に興味をもったので選んだ。

 

 

先行研究レビュー:

 近年、未成年者の性交渉予防は、学校カリキュラムのテーマの一つとなっている。アメリカ人の10代の1/2は、性交渉の経験がある。そのうちの約1/10は、13歳までに初体験を経験している。さらに、1999年の調査によるとこれらの高校生42%は、性交中にコンドームを使用していないと答えている。さらに、10代の妊娠を比較するとアメリカの10代は妊娠、中絶、出産の確率は世界で最も高い。また先進国で比較すると10代の妊娠の約半数は、アメリカ人によるものである。

そこで、10代の性教育はアメリカにとって急務であった。以前より様々な教育プログラムが考えられ施行されてきたが、その効果を見なかった。1995年にはCDCの“Reducing the Risk:Building Skills To Prevent Pregnancy,STDs,and HIV”“Becoming a Responsible Teen”が推奨された。そのうちの一つとして、あるWisconsinの会社から“BTIO”が発売された。

BTIO”とは、予測不能な幼児の行動をとり、こちらの都合をかえりみずに泣き出す赤ちゃんの人形で、育児の責任や負担に関する現実的な経験をプログラムされている。生徒は、泣きやむまで赤ちゃんと向かい合わねばならない。現在このBTIOは、50の州と海外で使用されており、100万人以上の高校生に使用されている。また標準的な高校のカリキュラムに取り込まれている。

このプログラムの目的は、新しい両親というのは個人的な努力や犠牲を強いられるという印象を、10代の男女に焼き付けることにある。BTIOはいくつかの研究において、親になることに対する10代の態度の変化について評価されてきた。しかし、それらはBTIOの是非ついて評価できるのに十分でなかった。例えば、ある研究では被験者は親になる責任について現実的な考えを持つに至ったと報告しているが、一方である研究では、被験者は10代で親になることは困難でなく、親になることの難しさについても楽観視していたと報告している。

要約:

(目的):

 1.BTIOが、性交や避妊に対する意識と同様に、10代で親になることへの意識を変化しうるかどうかの評価とその評価方法の確立。

 2.BTIOの効果と有用性を10代の男女が意識的に理解しているかどうかを問うこと。

(方法):

 対象は、151人のExperimental Group(以下EGと略す)と62人のContorol Group(以下CGと略す)に分けた。それらは、中西部にある大都市郊外にある高校の高校生で主に、白人、中流階級で、平均年齢は16.2歳であった。

EG:赤ちゃんの人形を使ったグループは一つの高校から(n110人)、近隣にある二つの比較可能な高校から(n25人、n16人)抽出された。彼らはあるクラス(子供の発達及び健康)に登録している生徒のみであった。EGは、11人の男子、133人の女子、性別を記載しなかった7人である。平均年齢は15.98歳、学生は高校1年生・2年生・3年生の中から均等に選ばれる。

CG:比較可能なコントロール群(n62人)は、EGと同じく生徒数の多い高校から抽出された。これらの生徒は、BTIOプログラムに曝露されておらずバイアスがかからないとされている。CGは、23人の男子、36人の女子、性別を記載しなかった3人である。平均年齢16.76歳、学生は高校2年生・3年生から平等に選ばれたが、3人の学生の学年がはっきりしない。

これまでの質問用紙では、この特別なプログラムを評価できないとのことで新しくこの研究のために質問表が作成された。この研究で使用されたサーベイは、初期データ収集の際に使われたものを改正しなおしたものである。それらは、態度について(20項目の合計は、1項目“賛成から反対”“反対から賛成”まで5段階評定法で示した)、性行動について(SKATAという10項目を用いて、“全く経験ないから日常的にする”を5段階評定法で示した)、さらに追加項目(7つ)、そして会話によるもの(ライカートタイプと自由話法を使用した)である。

実験方法は、赤ちゃんの世話を一人の責任に於いて、23日親として世話するというものである。学校側は、授業の時間を利用して実験することを許可しなかったので、学校側が所有する45体の人形を使用して実験し、その後彼らには1012週間のうちで体験談を提出してもらった。実験は、199910月から20003月に実施された。被験者及び被験者の親の承諾は得てある。また、大学倫理委員会から承認を得ている。

 

(結果):

 多変量共分散分析(MANCOVA)を利用した。表2.で平均と標準偏差を、表34で変数の個々の相関を示している。加えて、一元配置の分散分析(ANOVA)では、男女間のバランスが関係してくるかどうかをみるためのものであり、プレテストでもポストテストでも性差を示さなかった。結果として、

1.仮説は成り立たなかった。統計上有意な違いが、両群に於いて認められなかった。

2.今回使用した評価法では有意差は認めれられなかったので、新しい評価方法の確立にもっと取り組む必要がある。

3.プレテストの影響を除いたポストテストの反応をみたところ、両グループ間において有意差はなかった。

 

 

(結論):

 今回の研究に於いては、BTIOプログラムの有効性を示唆する結果は得られなかった。実体験をデザインし分析しているこの研究は、今後のBTIOプログラムの有効性について補足を与えている。今後の研究は今回の研究の欠点を補うよう組み立てられ、プログラムの立案者らは、客観的な手段方法を考えつづけるだろう。また自由話法や、質的研究、ケース研究もプログラムの有効性を決定する根拠となるだろう。

 

 

本研究の長所・短所・問題点と私見:

1.対象者に郊外に住む白人で中流階級のアメリカ人の高校生と限定していることで、他の人種間で同じことが言えるか分からない。

2.EGCGの学生構成率が、CGには高校1年生を含まないなど若干異なるため結果に影響を及ぼしているのではなかろうか?

3.結局BTIOプログラムの有効性を示す結果が得られなかったことから、研究を続けていく上で意味を示せなかったのでは?