Relationship Between Self-Esteem and Smoking
Behavior Among Japanese Early Adolescents :
Initial Results from a Three-Year Study
Tetsuro Kawabata,Donna Cross,Nobuki Nishioka,Satoshi Shimai
(Journal of School Health 69;280-284;1999)
報告者:新垣 康子(成人老人学教室)
<選定理由>
わが国の成人の喫煙率は,日本たばこ産業株式会社の「全国たばこ喫煙者率調査」によれば、男性の場合,1966年の84%をピークに漸減の傾向を示し、1996年には57.5%まで低下している。女性の場合,同じく1966年の18%をピークにその後15%を示し,1996年には14.2%となっている。欧米各国の喫煙者率が男女ともに20〜30%であることと比較すれば、わが国の男性の喫煙者率は極めて高い。女性の喫煙者率は他と比べれば低いといえるが、近年20代30代の若い女性の喫煙者率は増加傾向にあり、憂慮すべきであると言われている。又青少年の喫煙の実態は,深刻化してきており、特に「小学生で既に喫煙の習慣があるものがいる」や「中学生で喫煙者が急増する」などの報告がみられ、低年齢化が言われている。たばこの害についての知識を教えたり、道徳的に訴えるだけでは行動の抑制は効果が見られないことが明らかにされているとも言われている。
「生活習慣病」との関連で喫煙防止教育をよく耳にするが、なかなか効果があがらない喫煙習慣に対し、どのような取り組みが必要と言われているのか考える機会をもちたいと思い選定した。
<先行研究レビュー>
-
日本の国の研究の一つによれば、ここ1ヶ月に少なくともたばこを1本以上吸った者の1ヶ月間の割合は、中学2年生(14歳)で29%、高校3年生(18歳)で37%と増加している。一方、女子において、その増加は2%〜15%であった。
-
アメリカ・ヨーロッパ、日本における最近の研究により、社会的・個人的要因が組み合わさって、青年期の喫煙に関連していることが示唆されている。
-
Botvinは、友人の喫煙を含めた社会的要因は、早期の喫煙開始プロセスで重要であり、喫煙の基準と意識決定、自己効力、セルフエスティームを含む個人の心の中にもいる要因であるような個人的要因は、青年期において喫煙習慣を維持するために重要であると提案している。
-
セルフエスティームは、一般に個人の特性と能力について個人の認知を反映する用語の評価であると定義される。
-
学校関係の多くの行動の中で、侵略(いじめ?)、反社会的行動、うつ、基準以下の成績をとる。社会的脱落を含めて低いセルフエスティームを反映する。
-
セルフエスティームが青年期における喫煙行動の要因であるかもしれないことを明らかにした。
-
予防プログラムは喫煙習慣の保持に関連したものよりは、むしろ、喫煙開始を引き起こす要因を中心に行うべきである。
<要約>
-
Subject 対象
兵庫県の伊丹市の二つの小学校(N=637)と二つの中学校(N=1290)、新潟県新潟市の一つの小学校(N=163)の4年生〜中学3年生(N=2090) 表1
*すべての4年生〜中学1年生は3年間の集団研究に含まれていた。
-
Instrumentation 手段
-
1996年11月〜12月においてアンケートを実施した。
-
その調査は完了するのに20〜30分必要とした。
-
データーは22項目からなり、自己記入式質問紙法である。
-
各学年はアンケート及び返書の封筒を受け取り、それを完成させ返すように要求され、学級担任によって送られた。
-
Measures 測定
-
セルフ-エスティームはHarterの「認知されたコンピテンス測定尺度」、Popeのセルフ-エスティームスケール、そしてRosenbergのセルフ-エスティームスケールを用いて測定された。
-
オリジナルのHarter「認知されたコンピテンス測定尺度」
a)学習のコンピテンス:学校のコンピテンスに強調された
c)運動のコンピテンス:スポーツやアウトドアゲームの焦点
*各項目は、1〜4のスコアからなる。1のスコアは、低く認知しているコンピテンス、4のスコアは高く認知しているコンピテンス。それぞれのサブスケールは7つの項目で、その集計でなる。28最大のサブスケールスコアは最も高いセルフエスティームスコアを示す。7の最小サブスコアはそれぞれの分野で最も低いセルフエスティームスコアを示す。
*桜井は、日本の学校の子どもたちのために、Harterのスケールの信頼性をテストした。集中的妥当性と構成概念の妥当性を決定した。
オリジナルPopeのセルフ-エスティームスケールからは2つのサブスケールを用いた。
b)身体のセルフエスティーム:外観,体格,及び運動技術のような特性の受容を測定
*30の最大のサブスケールスコアは最も高いレベルのセルフスコアを示す。
*10の最小のサブスケールスコアは最も低いレベルのセルフスコアを示す。
*日本において、このスケールの妥当性と信頼性はテストされていない。
-
修正されたRosenbergのセルフ-エスティームスケールは包括的なセルフエスティームを測定した。この手段は,10項目の3ポイントスケールである。
*30スコアは最大レベルのセルフエスティームスコアを示す。
*10スコアは最小レベルのセルフエスティームスコアを示す。
*日本の学校の子どもたちのために、このスケールの信頼性と妥当性は決定されたが、一方信頼性と妥当性のスコアは明確にされてなかった。
-
このアンケート用紙には、ストレス対処技術の尺度となる項目を含んでいる。
*喫煙,飲酒,食事,運動のような健康関連行動・喫煙の意思・友人のたばこの勧めに断る自己効力・他の重要なことからの喫煙行動。
<結果>
Self-Esteem セルフ-エスティーム
-
Harterの認知されたコンピテンス測定尺度
-
学習:男女とも学年があがるにつれて値が減少する傾向がある。中学1年生は,男女間に有意差がみられた。
-
社会性:男女間に有意差はなかった。
-
運動:5年生を除いて,男子は女子より有意な高いスコアを示した。(4年生P=.001;5年生P=.003;中1.2.3年生P<.001)
-
Popeのセルフ-エスティームスケール
-
身体:5年生を除いて,有意な差がみられた。(4年生P=.003;6年生P=.006;中1.2.3年生P<.001)
-
家族:中2年生において,有意な差がみられた。
-
Rosenbergセルフ-エスティームスケール
-
有意な差は,4年生と中1年生においてみられた。(4年生P=.034;中1年生P=.001)
Smokig Behavior 喫煙行動
-
性と学年によるたばこを吸ったことのある学年 図1
-
一般的に男子において喫煙者の割合は増加している。(4年生20%、中3年生43%)
-
小学生の女子においては、じょじょに減っていたが中学生の女子においては増加している。(4年生12%、6年生4%)(中1年生18%、中3年生25%)
-
カイ二乗検定において、すべての学年と少女の間には有意な差があった。(4年生P=.022,5年生P=.011,6・中1・2・3年生P<.001)
Self-Esteem and Smoking Behavior
-
4つのサブグループ(小学校男子、小学校女子、中学校男子、中学校女子)で未経験者と喫煙者のセルフエスティームの有意差を測定した。図2
-
小学校男子を除いた3つのサブグループの喫煙者は,非経験者より「学習」の領域で低いセルフエスティームを示した。類似した傾向は「家族」の領域でもみられた。
-
Rosenbergセルフ-エスティームスケールで中学校女子の喫煙者と未経験者の間に有意差がみられた。
-
小学校女子を除いて「運動」コンピテンスにおいて,喫煙者は高いセルフエスティームを持っていた。類似した傾向は中学校男子間の「社会」の領域でもみられた。
-
「身体」の領域では喫煙者と未経験者に有意差はなかった。
<論考>
-
この研究の重要な発見の1つはセルフエスティームが,思春期男女の喫煙開始の関連要因であるかもしれないことである。
-
小学校男子を除いて、3つのサブグループにおいて喫煙者は「学習」「家族」において低いセルフエスティームを持っていた。類似した傾向は、Rosenbergのセルフエスティームを用いた包括的なセルフエスティームのレベルにも見つけた。このスケールは統計上,中学生女子のみに有意差がみられた。不幸にも,研究者は、性におけるセルフエスティームと喫煙行動間の関連は分析しなかった。
-
この研究は、セルフエスティームの非常に高いものと低いレベルの喫煙の普及を比較した。
-
上田は,Rosenbergセルフエスティームスコアの手段を比較した。低いセルフエスティームは、男性の喫煙行動に関連していた。
-
さらなる研究はセルフエスティームと喫煙行動の関連に性差が存在することの決定を必要とされる。
-
この研究は、学年による「学習」「家族」の関連そして包括てきなセルフエスティームレベルを明らかにした。それらの減少は喫煙行動の増加に関連しているかもしれない。
-
この研究は少年より少女のセルフエスティームが低いことを見つけた。
-
若い女性のライフスタイルにおいて、アルコール消費量と身体的不安などが増えている。
-
若い女性の喫煙開始を予防するためには、彼女らのセルフエスティームの向上を助けるための介入プログラムを発見することである。
-
日本において多くの注意は、学生のアカデミックな能力に払われる。その結果、『学習』のセルフエスティームの低い感覚もつ学生は喫煙のような危険負担行動を示すことで、独自性を断言することを望んでいるかもしれない。
-
日本において、将来、喫煙防止プログラムは、セルフエスティーム増進トレーニングを含むさらに包括的な健康教育、又は健康促進プログラムに統合されるべきである。
<研究の長所・短所>
-
3つのセルフエスティームスケールを用いているが、中にはその妥当性が日本においてテストされていないものがあり信頼性が気になる。
-
前回の研究において、家族に対するコンピテンス尺度と身体イメージに対するセルフエスティームの測定の必要性を課題としてあげている。それを含んだ研究になっている。
-
課題が述べられている。
<私見>
-
喫煙の危険性を訴えることは効果が期待されず、禁煙防止プログラムのあり方の視点を変える機会をえた。
-
改めて、社会的要因の影響の大きさをかんじた。
-
子供の長所を多面的に評価し、自己評価を高める工夫が求められているとのことだが喫煙防止教育だけではなく、これは非常に大きな意義があると思う。
-
若い女性のセルフエスティームが低いことを示唆しており、それを高める強化プログラムが必要だと述べていた。プログラム内容が早期に出来あがることに期待したい。
<学校保健への寄与>
-
わが国の喫煙防止教育の効果は、とくに長期的な喫煙防止行動に関する効果は認められていないといわれている。喫煙防止プログラムの開発に取り組むうえで、セルフエスティームを高めるプログラムは、期待されるものであると思う。