中学生の登校を巡る意識の変化と欠席や欠席願望を抑制する要因の分析
本間 友巳
(教育心理学研究48,2000;32-41)
報告者:渡久山 由希(学校保健学教室)
<選定理由>
近年、我が国の児童生徒の中に不登校者の増加や登校はしているものの学校に対して否定的な感情を持つ者、すなわち学校嫌いの存在が指摘されている。私は、学部時代の卒業研究で中学生の学校嫌いに関連する要因についてというテーマを取り上げ、沖縄県内の中学生を対象に調査を行い、学校嫌いには抑うつ症状や生活ストレッサー、ソーシャルサポート、社会的スキルが関連していることが考えられた。卒業論文のテーマに近かったことと、この論文が欠席願望を抑制する要因まで分析を行っていたため選定した。
<先行研究レビュー>
-
小中学生の不登校(登校拒否)児童生徒数(年間30日以上)は、1991年度小学生12,645人(0.14%)、中学生54,172人(1.04%)であったが、1997年度には小学生20,765人(0.26%)、中学生84,701人(1.89%)となり増加の一途をたどっている(総務庁,1999)。
-
学校へ行くことは当然であり、特に明確な理由のないまま学校を休むのは、その子供自身もしくは彼らを取り巻く家族に何らか問題があると、見なされる傾向があった。そのため、不登校問題を考えるとき、研究の対象は不登校や欠席の多い子供達に向けられることが多く、彼らの類型化・治療・予後や家族の分析を中心に研究が行われてきた。
-
不登校の急激な増加に伴い、休まず学校に通っている一般の子供達の学校を回避する傾向に対する研究も生まれ、古市(1991)は学校に行っている小中学生の学校ぎらい感情を測定し、その結果、小学生より中学生、女子より男子の方が学校ぎらい感情が強いこと、さらに学校ぎらいの規定要因として、友人関係上の不適応が大きな影響を与えていることを明らかにした。
-
不登校を促進する要因でもある学校ストレスを明らかにし、ストレッサーへの評価や対処に関する実証的な研究も近年多くみられるようになり、これらの研究は登校という視点から見たとき、学校の回避に影響を及ぼす否定的な要因の分析やそれらへの対応を企図したものとみなすことができる。
-
登校は当然であって、登校への意欲を弱める要因への分析や対応が研究の中心になっている。
-
不登校の著しい増加は、学校へ向かう力に比べて学校から離脱する力が相対的に大きくなっていると見ることから説明できる。
-
著者は、子供達の学校から離れていく力に加え、ほとんど研究のなされていない学校に向かう力を射程に入れた上で、子供達の登校を巡る研究を過去に行い、小中学生を対象に、欠席を促進する理由(欠席促進理由)と実際に学校へ行っている理由(登校理由)を測定し、小中学生とも「学校魅力」が欠席願望を抑制していること、さらに小学生では「自己基準」も抑制的な影響を及ぼしていることを明らかにしてきた。また不登校者への評価意識を測定し、その結果、小学生に比べて中学生で不登校者への「羨望」や「無関心」が強いことが見いだされた。
<要約>
-
目的:登校を巡る意識の変化や欠席願望の抑制要因を検討することによって、学校不適応や不登校の予防や援助に貢献することである。
-
方法
@調査対象:複数の公立中学校1〜3年生の847名(1992年度:男子224名、女子204名。1998年度:男子219名、女子204名。両学年度とも各学年4学級で実施した。)
A調査内容:無記名の質問紙法による学級単位の一斉調査(実施は学級担任に依頼)
1992年9月に中学生を対象とした自由記述による調査3項目(「あなたはどんなとき学校を休もうと思いますか」、「あなたが学校を休まず行っている理由は何ですか」、はっきりした理由が分からないまま学校を休んでいる生徒がいたら、あなたはどう思いますか))を実施し収集された資料の中から、岡安らの「学校ストレッサー尺度」を参考にし、欠席を促進する理由(20項目)、実際に学校に行っている理由(19項目)、不登校生徒に対して抱いている評価意識(14項目)を測定する項目を作成した。また「登校回避願望」を欠席願望(休みたいか)、早退願望(早退したいか)、遅刻願望(遅刻したいか)の3項目で測定し4件法で回答を求めた。1998年調査では以上の項目に加えて「学校での対人適応(8項目)」、「学習の理解(1項目)」、「登校への価値観(6項目)」を4件法、「1998年度の4月から12月までの欠席日数(1項目)」を5件法で作成し回答を求めた。
-
結果
@欠席促進理由、登校理由、不登校生徒への評価意識に関する尺度
欠席促進理由に関して、1992年度(以下92年度)と1998年度(以下98年度)のそれぞれのデータで、質問項目の総得点が上位または下位25%に属する被験者を抽出し、各項目にt検定でGP分析を行ったところ、すべての項目で有意差が認められたので因子分析を行った(主因子法、バリマックス回転)。その結果、固有値1以上の基準で、項目に若干の違いはあるが同一の解釈が可能な4因子が抽出され、92年度のデータと98年度のデータを合わせてGP分析を行い、全ての項目に有意差(p<.001)が認められたので、因子分析を実施しさらに因子負荷量の低い3項目を除外した17項目で再度因子分析を行った(TABLE
1)。因子負荷量の大きい項目で見ると、第1因子「身体・気分」因子(“つかれている”“ねむたい”など)、第2因子「学校不満」(“きらいな授業がある”“テストがある”“きらいな先生と会う”など)、第3因子「学校不安」(“いじめる子がいる”“友だちとケンカした”など)、第4因子「学校外誘因」(“出かけたいところがある”“おもしろいテレビやラジオの番組がある”など)と命名し、第1因子は身体や気分という自己そのもの、第2,第3因子は学校生活、第4因子は学校外の生活に関するものと見ることができる。第2に、欠席促進理由と同様の条件で登校理由の因子分析を行った結果、3項目を除外した16項目で4因子が抽出された(TABLE
2)。第1因子は「自己基準」(自分なりの内面化した基準を理由とし“勉強しなければならない”“みんなと差がつくから”“将来のため”など)、第2因子は「親圧力」(“親が行けと言うから”“親におこられるから”)、第3因子は「習慣」(学校へ行くことが習慣化されている“あたりまえになっているから”“行くことが当然”など)、第4因子「学校魅力」(“学校が楽しいから”“友だちと会えるから”など)と命名し、第1因子は善悪や損得のような自己の価値観、第2因子は家族関係の影響、第3因子は定型化された自己の身体や行動、第4因子は快不快を中心とする学校生活に関するものと考えることができ、第1因子と第4因子は、積極的に学校に繋ぎ止める因子であるのに対し、第2因子と第3因子は比較的消極的な因子とみなすことができる。第3に、不登校生徒への評価意識について因子分析を行った結果4因子が抽出された(TABLE
3)。第1因子「配慮・共感」(“はやくきてほしい”“助けてあげたい”など)、第2因子「批判」(不登校への批判的な姿勢“よくない”“はやくくるべき”“腹が立つ”など)、第3因子「無関心」(“本人の自由”“好きにさせればよい”“関係ない”)、第4因子「羨望」(“うらやましい”“自分も休みたい”)と命名した。第1因子と第2因子は、肯定的評価−否定的評価と方向は反対であるが、不登校生徒への積極的な姿勢を示している。また、第3因子と第4因子も同様に相反する方向性を持ちながら不登校生徒への消極的な姿勢を表しているとみなすことができる。なお、欠席促進理由、登校理由、不登校生徒への評価意識のそれぞれでα係数は.69〜.83、.68〜.85、.63〜.86で一応の内的一貫性が認められた。
A登校回避願望、欠席促進理由、登校理由、不登校生徒への評価意識の比較
最初にそれぞれの項目得点や因子得点で、年度と性を要因とした2要因分散分析を実施した。その結果、交互作用はなく主効果のみが認められた(TABLE
4)。年度に関して、登校回避願望では3項目とも有意な主効果があった(「欠席願望」(F(1,825)=11.43,p<.001)、「早退願望」(F(1,841)=14.60,p<.001)、「遅刻願望」(F(1,841)=14.60,p<.001)。いずれも92年度に比べ98年度が高かった。また、欠席願望が「ない」と答えた生徒は92年度の21.8%から98年度の15.1%へ減少し、逆に欠席願望が「強い」と感じている生徒は、92年度の9.3%から98年度の12.7%へと増加していた。これらの結果から、この6年間で登校回避願望が高くなったことが明らかとなった。
次に、欠席促進理由と登校理由の分散分析から、「身体・気分」(F(1,812)=12.66,p<.001)、「学校不安」(F(1,812)=8.12,p<.01)、「親圧力」(F(1,810)=13.17,p<.001)に有意な主効果があり、いずれも98年度の方が高いことが示された。
不登校生徒への評価意識では、「批判」(F(1,827)=5.13,p<.05)、「無関心」(F(1,827)=18.94,p<.001)で有意な主効果があった。98年度の方が「批判」がやや小さく、逆に「無関心」はかなり高くなっている。「批判」を「配慮・共感」と同様、不登校生徒への積極的な関心の表れとみなすとき、6年間で不登校への関心が低下したと考えられる。
欠席願望を2群(願望N群(欠席願望のない群、N=153)、願望H群(願望の強い群、N=91))に分け、不登校生徒への評価意識4因子のt検定を実施したところ、全てに有意差が認められた(「配慮・共感」(t(236)=2.56,p<.05),「批判」(t(236)=3.88,p<.001),「無関心」(t(236)=2.52,p<.05),「羨望」(t(236)=13.74,p<.001)。「配慮・共感」「批判」で願望N群が高く、逆に「無関心」「羨望」で願望H群が高かった。このことは、欠席願望のない生徒の方が不登校に対する積極的姿勢が強いことを示している。
性差に関する特徴的な傾向として、欠席促進理由の「学校不安」(F(1,812)=142.88,p<.001)、登校理由の「学校魅力」(F(1,810)=18.89,p<.001)、不登校生徒への評価意識の「配慮・共感」(F(1,827)=73.33,p<.001)で大きな有意差が認められた点があげられ、いずれも女子が高く、このことは女子が男子に比べ、学校内の対人関係に強い関心を持ちその影響を受けやすい傾向を示していると考えられる。B欠席願望の抑制に影響を及ぼす要因
欠席促進理由と登校理由を説明変数、欠席願望を基準変数とする重回帰分析を行った(TABLE
5)。標準偏回帰係数の相対的な大きさから、全体では「学校魅力」が欠席願望の抑制に強い影響を与えていることが分かった。この傾向は92年度、98年度、男女ともに共通している。中学生にとって、学校生活に何らかの魅力を感じて登校することが欠席願望の最大の抑制要因であり、「学校魅力」を高めていく方策こそが不登校の予防に大きな意義を持つことが明らかとなった。また「自己基準」も僅かだが全体として抑制的な影響を及ぼしている。しかし92年度や女子にこの傾向は認められない。現在の中学生、とりわけ男子において、自分なりの基準で登校するという意識が欠席願望への抑制力となっていることを示しており、一面で自分で判断したり決定したりする傾向が進んでいると言えるかもしれない。なお、「習慣」は女子で僅かに抑制的な影響を与えているが、全体では有意な抑制力となっておらず、身体や行動の定型化は、欠席願望の抑制にそれほど効果を持ってなかったと言えよう。
C欠席の抑制に影響を与える要因
欠席そのものの抑制要因を明らかにするために、98年度調査で、新たに「4月から12月までのおおよその欠席日数」を5件法でたずねた(TABLE
6)。80%以上の生徒が欠席日数を「4日以内」と答え分布に大きな偏りが見られるので、「欠席L群(4日以内の欠席、N=338)」と「欠席H群(10日以上の欠席、N=23)」の2群に分けた。欠席願望、欠席促進理由、登校理由の項目や因子で「欠席L群」と「欠席H群」の2群の差をt検定によって比較した。その結果、有意差は欠席願望(t(353)=2.05,p<.05)と登校理由の因子である「親圧力」(t(352)=2.34,p<.05)のみに認められ、ともに「欠席H群」の方が高かった。「親圧力」が欠席願望に促進的な影響を及ぼしている点を考えると、「親圧力」が欠席を抑制している可能性はないであろう、結果的にこの分析で学校から生徒を積極的に繋ぎ止める欠席抑制要因を見いだすことはできなかった。
学校での対人適応に関して、質問項目の総得点が上位または下位25%に属する被験者を抽出し、各項目にt検定でGP分析を行ったところ、全ての項目で有意差(p<.001)が認められたので因子分析(主因子法、バリマックス回転)を実施した。固有値1以上の基準で2因子を抽出でき(TABLE
7)、第1因子「対友人適応」、第2因子「対教師適応」と命名した。同じ基準で、登校価値に関しても因子分析を行ったところ2因子を見いだし(TABLE
8) 、第1因子「道具的価値」、第2因子「規範的価値」と名付けた。対人適応、登校価値ともあらかじめ想定した因子と一致しており妥当なものと考えられる。そこで、対人関係2因子、学習理解1項目、登校価値2因子に対して、欠席2群(欠席L群と欠席H群)によるt検定を行った。また比較のため欠席願望の2群(願望N群(N=62),願望H群(N=52),98年度データのみ使用)でも同様にt検定を行った(TABLE
9)。この結果欠席で有意差が認められたのは「対友人関係」(t(112)=2.99, p<.01)、「学習理解」(t(112)=3.14,
p<.01)「規範的価値」(t(112)=3.10, p<.01)で有意差が認められた。これらの結果から欠席と欠席願望を抑制する要因は同じでなく、欠席願望の抑制要因が複数あることに比べ、欠席そのものを抑制する可能性のある要因は、個人の内面的な「規範的価値」に限定されていることが明らかになった。
TOPへ戻る
本研究の主要な点をまとめると、@92年度と98年度の比較の中で、中学生の学校から離脱していく傾向(斥力)が高まっていることが明らかになった。しかし学校に積極的に繋ぎ止める傾向(積極的な引力)の変化は明確にならなかった。A不登校生徒への評価意識については、批判的な態度を示す生徒が98年度やや減少したものの、無関心な生徒はかなりの増加を示している。このことは、不登校生徒の増加により不登校が日常化した影響によるのかもしれない。また、欠席願望のない生徒は、欠席願望の強い生徒に比べ、不登校生徒に対して積極的な関心を持つことも明らかになった。不登校生徒への援助体制を作るためにも、欠席願望を抑制することは意味があると考えられる。B92年度、98年度ともに欠席願望を抑制する要因として、登校理由の中の「学校魅力」が大きな影響を与えていた。何らかの形で生徒が学校生活に魅力を感じて登校することが、欠席願望ひいては不登校の予防に最も有効であると言えよう。また、98年度の生徒で「自己基準」も抑制要因になっていた。大胆に推論すれば、この変化は自己決定や個性を重視する学校教育の在り方が影響しているかもしれない。C欠席そのものの抑制要因は登校に対する「規範的価値」に限られることが見いだされた。その一方で、欠席願望を抑制する要因は「対友人適応」「学習理解」「規範的価値」と複数の要因が見いだされ、欠席抑制要因とは一致しないことが明らかになった。欠席願望の抑制と欠席そのものの抑制を分けて考えるべきであることがこの研究から示唆された。D性差に関しては「学校不安」や「学校魅力」の女子の高さから、男子に比べ学校での様々な関係が登校に強い影響を与えやすい女子の傾向が明らかになった。このことは不登校生徒への評価意識でも、批判も含め不登校生徒に積極的な関心を抱く女子の傾向と結びついているといえる。
以上の点を整理して以下の2点を考察する。
第一には、欠席と欠席願望の抑制要因の関係である。欠席願望を抑制するために少なくとも友人関係の改善や学習理解の促進が有効であることが本研究から示唆された。このことは、生徒の適応や意欲を高める学校側の様々な取り組みが欠席願望の抑制に役立つことを示している、欠席願望の抑制という視点で従来の学校での諸活動を見直すことが可能である点をまず指摘しておきたい。しかし欠席自体の抑制に関しては本研究で見いだされた要因は登校への「規範的価値」のみであり、欠席願望の抑制とは異なり、欠席を抑制する方策はかなり難しい問題を孕んでいると考えられ、その一つは規範という個人の内面の価値を高めることの困難さである。中学生という自立や大人への反抗が明確になる時期に、周囲の大人が彼らの内面の問題である規範性を高めていく難しさである、また、若者の社会的規範が全般的に低下している状況の中で、登校への規範性を高めていくことの困難さも同時に存在する。このことから、登校への規範的価値を高めるための指導や援助は、発達的特徴や社会的な条件などを十分に検討した上で行っていく必要があると言えよう。規範性を高めるための指導や援助を中学生は大人からの押しつけと受け止め逆に反発を招き却って規範性が低下しかねないからである。また、規範性に関するもう一つの問題は、欠席願望が強くてしかも登校への「規範的価値」が高いような生徒の場合、より高い規範性を求めれば、葛藤を強化し神経症的な症状さえも引き出す危険性がある。しかし、同時に「無気力型」「遊び非行型」のような登校への規範性が弱体化していると推測できる不登校生徒がかなりの数を占めている現状を考えるとき、規範的価値の問題を等閑視するべきではないとも思われる。個々の生徒の持つ規範的価値の程度や内容を分析する中で、あくまでも個人に応じた柔軟な態度や指導や援助を行っていくことが必要なのであろう、従って一律に規範性を高めようとすることは逆に多くの問題を投げかけることになるのである。
第2に近年研究が盛んに行われている学校ストレスに関する研究との関連から本研究の意義や課題を考えてみたい。岡安らは「教師との関係」「友人関係」「部活動」「学業」「規則」「委員活動」の6要因を中学生の学校ストレッサーとして抽出し、特に「友人関係」が抑うつ・不安感情と「学業」が無気力的認知・思考と高い関連性を持つことを明らかにした。これらの要因は見方を変えれば本研究の「学校魅力」の具体的な内容になりうるものである。Lazarusらが認知的評価やコーピングがストレス反応を決定する重要な仮定であると指摘しているように、これらの要因が生徒各自の認知的評価やコーピングによって肯定的な方向に進んでいくとき、「学校魅力」となって欠席に抑制的な影響を与えていくことになる。逆に否定的な方向に向かうと「学校不安」や「学校不満」のような欠席願望の促進要因となることが考えられる。学校生活に存在するストレッサーになる多くの出来事の中で、少なくとも友人や学習に対して喜びや楽しさが感じられれば、学校との絆は強まり欠席願望は抑制される可能性を指摘しているのである。様々な出来事が起こる学校で日々生活を送ることは、多くの生徒達にとって多様な否定的なストレスを被ることを意味している、しかし彼らは否定的なストレスのみならず、学校での出来事に喜びや楽しさ、すなわち学校享受感を同時に経験しているはずである。ストレスそのものの軽減や除去がたとえうまく行われなくとも、もし学校享受感をある程度体験できるならば、欠席願望は抑制されると考えられるのである。従って、生徒が学校生活のどこに喜びや楽しさを感じているかについて、教師や親がそれらを見いだし促進する方策を考えることの重要性であろう。不登校の増加・多様化が進行する中で、原因が特定されるケースは限られており、不登校の原因や原因を構成するストレッサーの発見以上に学校との肯定的な接点を見いだす姿勢は実践的であり、欠席や欠席願望を抑制し不登校の予防や改善につながる可能性を持つであろう。学校との積極的なつながりを強め欠席願望を抑制する諸要因の形成過程を明らかにすることが目指すべき課題なのである。
<研究の長所・短所>
-
今後の研究課題が明らかにされている。
-
欠席願望抑制要因は欠席そのものの抑制要因とはならないことが見出されたことが興味深かった。
-
分析の仕方で因子名を付け直しているのがわかりにくかった。
<学校保健への寄与・私見>
この研究では、今後の不登校児童生徒への対応、援助をどのように行ったらよいかという方向性を示している。最後の考察は魅力のある学校を作ることに重点を置かれているが、それだけでなく子どもを取り巻く社会背景の多様さを考えると、学校現場だけでなく、家庭、地域までを視点に含めた研究が今後望まれるのではないかと思う。
TOPへ戻る
前に戻る