質問紙によるS市立中学校生徒の精神的健康とライフスタイルの7年後の変化

佐藤 昭三、竹内 一夫 他

学校保健研究 39: 1997; 393-401


報告者:陳 文杰(精神衛生学教室)
 
 

選定理由:

   近年、残虐事件や刑事事件等の若年化が危惧されていて、日本の若者も欧米化しつつあるといわれている。しかし、なぜ日本の若者がアメリカンナイズされつつあるのかは具体的な報告はなされていないが、生活環境の変化がこういった状況をもたらしているのではないかという見方が大方である。そこで、今回は環境の変化が児童生徒に及ぼす影響という面から論文を選定したが、上記の事件・事故の原因解明とは違った内容となったが、児童生徒の精神的健康も大切な一面であることと、児童生徒が環境にどのように順応し、変化していくのかが伺えると考え、この論文を選んだ。
 
 
 

先行レビュー:

要約:

[緒言]

 

[対象と方法]

対象:1988年次と1995年次のS市立中学校の2学年男女生徒である。

方法

  1. 本研究は「思春期の精神的健康とライフスタイル評価法」の無記名・自記式・多肢選択質問紙調査表を用いた。

  2. 調査は、対象に対して、1988と1995年2月中旬の同じ時期に、担任教師が教室で生徒に、調査は楽しい学校生活ができるようにするためのものである、無記名で誰にもわからないから、人に相談しないで、自分の思っているままを素直に記入するように説明し、納得を得てから、調査票を配布し、質問の簡単な説明をした後、自発的な協力を要請して記入させた。

  3. 対象の各質問項目の年次別肯定応答割合(%)を算出し、その差をx2検定を用いて検討した。

  4. 本評価票の5つの尺度(「心身の不調感」・「部活動過剰」・「友達重視」・「勉強の悩み」・「学校嫌い」)平均得点値を対象年次群に求めて、年時間の統計的有意差を男女別にWe;chの法を用いて検討した。

  5. 年次間の差異の特徴を知るために、年次2群を外的基準とする5つの尺度得点値の判別分析を男女別に行った。なお、5つの平均尺度得点値を、本研究の基準集団での分布におけるパーセンタイル値で、レーダーチャート上に、調査対象の2つの年次集団のプロフィールを男女別に表示して検討した。
 

[研究結果]

  1. 対象は、1988年次124人(男63人、女61人)、1995年次134人(男80人、女54人)、有効回答率は100%。


  2. 質問項目の年次別肯定応答割合の有意差は表1に示した。
  1. 5尺度平均得点値の年次差について、1995年次で有意に低かった尺度は、男子群の「友達重視」、高かった尺度は女子群の「部活動過剰」であった。


  2. 年次2群を外的基準とする5尺度得点値0.5以上の尺度は「部活動過剰」であった。また7年をおいた2度の断面調査の本評価法のプロフィールの変化は、5つの平均尺度得点値を本研究の基準集団での分布におけるパーセンタイル値にして、レーダーチャート上に、2つの年次の男子群は図1、女子群は図2に示した。男女とも部活動過剰であり、男子群で友達重視を低くし、女子群で勉強の悩みと学校嫌いが低くなる傾向を示した。
 

[考察]

 

[結語]
   群馬県S市立中学校生徒を対象に7年を挟んだ同一調査票の2度の断面調査は、1989から1993年の文部省教育指針の改訂にともなう学校の教育方針や環境の変化が、生徒にどのような影響をもたらしたかについて、本研究の票か法のアンケート調査から導かれた、精神的健康とライフスタイルに関する尺度得点値を用い比較検討した結果、

  1. 学校教育方針が高校入試の推薦枠の拡大や調査書重視の影響で、部活動推進が強化され、男女共5つの尺度の中の「部活動過剰」が有意に大きくなったが、ストレス源となるほどではないことが伺われた。

  2. 2年次の2群を外的基準とする本尺度得点による両者の正判別率は、男子64.34%、女子60.87%であった。

  3. 本調査票の7年を挟んだ2度の断面調査により、学校生活の変化にともなう中学生との精神的健康とライフスタイルの一部を数量的に表現できることが示された。



学校保健への寄与:

私見:

   今回の研究で、環境の変化と児童生徒の行動等の変化がよくわかったが、タイトルを一見するだけだと、同じ生徒の7年後の変化との比較のように感じられ、内容を見ると違っていたことに驚く。しかし、7年前の生徒7年後の生徒では、もともと生活してきた環境等がすでに違っているので、調査結果に違いが出るのは予想できたのではないかと思った。とりあえずそういった考えを一掃してくれたのが、本研究での比較の方法である。7年をおいた結果を比較する前に調査自体の妥当性を求めたり、基準集団との比較というやり方で、一層結果の信頼性を上げていることが本研究のいい部分と考えられる。が、やはり個人的には、7年を挟んだ違う学年の生徒よりも、ちょうど教育方針が転換された前後に入学し、両方の教育方針を体験している生徒の変化を見たかった。
 
 

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