Rural School Nurses’ Attitudes about AIDS
and Homosexuality
Ruth E. Yoder,Deborah Bray Preston,Esther M.Forti
Journal of School Health vol67; No8;1997;341-346
報告者:岡 美恵子(小児保健学)
選定理由
社会の変化に対応して健康に関する現代的課題が指摘されている。そのひとつがエイズであり、これは全世界的な問題となっている。学校教育においても、早急に取り組むべき重要な課題として認識されている。
学校での教育を進めていくうえでは、教育内容、カリキュラムをはじめとして、指導者・援助者である教職員のエイズに対する姿勢、知識、健康観や人間観などさまざまな要素が問題となる。そこで、アメリカのスクールナースのエイズおよびホモセクシャルに対する姿勢に学ぶべく、この論文を選定した。
先行研究レビュー
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Naumanは、地方のスクールナースが、学校や地域社会においてエイズに関する予防教育プログラムを推進するという重要な立場にあると述べている。そしてそれはスクールナースが伝染性疾患に精通していて、教職員や学校の設置者から教育プログラムの提供などにおけるリーダーと認識されているからであるとしている。
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Gallop、Henry、Lawrenceらは、ナースのエイズに対する積極的姿勢は、看護教育の程度、HIVおよびエイズに関する豊富な知識、家族や友人のHIVおよびエイズに対する積極的な姿勢などと関連性があることを示している。
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D’AaugelliIは、地方のナースを対象とした研究で、HIVおよびエイズに関する基本的知識はあるが、感染方法についての知識が不足していて、ホモセクシャリティに消極的姿勢をとっていることを報告している。
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Kochは、地方のナースに関する研究で、エイズに積極的姿勢を示すナースは、年配者、未婚、学士もしくは修士の学位を持つ傾向があるとしている。
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GrossとPassanteは205名のスクールナースを調査し、HIVおよびエイズに関する知識、姿勢、実践を高めるための教育プログラムの効果を測定し、姿勢と知識はプログラムが進むにつれて向上したと評価している。
要約
[目的]
地方のスクールナースを対象に調査を行い、エイズに対する積極的姿勢に関与する因子を明らかにする。特に、ホモセクシャルおよびエイズに関する知識、人口統計的変数、実践的変数、文化的変数と、地方のスクールナースのホモセクシャルおよびエイズに対する姿勢との関連性について明らかにする。
[対象と方法]
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アメリカ国内からニューヨーク州とペンシルベニア州を選定し、正看護婦としてリストに掲載されているニューヨーク州のナース1、012名と、ペンシルベニア州のナース1,011名の総数2,023名に対して最初の質問紙を郵送した。その3週間後に、はがきによって協力を再度呼びかけた。そのうえで1か月後に次の質問紙を郵送した。
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1,073名(53%)のナースから回答が得られ、このなかでスクールナースとして勤務している69名(6,4
%)を対象とした。
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質問紙の内容は、エイズおよびやホモセクシャルに関する知識、人工統計的変数として年齢、看護教育の程度、既婚か未婚か、収入総額、実践的変数としてエイズの人々のケアに対する本人および地域施設の準備性、エイズの人々のケア経験、文化的変数として宗教的信仰、地域社会のリベラル度などであった。
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また、エイズおよびホモセクシャルに対するスクールナースの姿勢を測定するためにNAASを使用した。NASSは3つの下位尺度を持ち、41項目から構成されていて、ナースのホモセクシャルに対する姿勢、看護ケアへの関心度、エイズに対する社会的・専門的関心度を測定するものである。
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分析にあたっては、既婚か未婚か、エイズの人々のケア経験は数が少ないため除外した。分析は重回帰分析を行った。
[結果]
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対象者の属性については平均年齢45.8歳、 年齢は25歳から68歳にわたっていた。
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86.8%は結婚していて、59%は収入が4万ドル以上であると回答していた。
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60%が学士もしくは修士の学位を持ち、67%は宗教的信仰がきわめて重要であるとしていた。
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9%がエイズの人々のケア経験があるとしていた。83.6%はエイズの人々のケアを積極的に行うとしていたが、その準備ができていると回答したのは17.4%、ケアのための地域施設の準備ができていると回答したのは23.1%であった。
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23.9%は地域社会がリベラルではないと感じていて、46.2%はほどほどにリベラルであると感じていた。
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ホモセクシャルに対する姿勢に強く関連する因子は、ホモセクシャルに関する知識と宗教的信仰であった。
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つまり、ホモセクシャルに対して最も積極的姿勢を示すスクールナースは、ホモセクシャルに関する知識が豊富であり、エイズに対する姿勢もより積極的であった。また、宗教的信仰がきわめて重要であるとする者が少なく、収入が多い傾向が見られた。
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看護ケアへの関心度に強く関連する因子は、年齢、エイズの人々のケアを喜んで行いたいと考えているかどうか、収入総額、ケアのための地域施設の準備性であった。
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看護ケアに積極性を示すナースは、ホモセクシャルに対する姿勢が最も積極的であり、エイズに関する社会的・専門的関心も最も高かった。このような傾向のナースは年配者に多く、高収入であり、エイズの人々のケアを喜んで行いたいと考えていた。また、ケアの準備性やケアのための地域施設の準備性について十分であると認識していた。
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エイズに関する社会的・専門的関心度に強く関連する因子は、ホモセクシャルに関する知識とケアの準備性であった。
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エイズに関する社会的・専門的関心がより高いナースは、ホモセクシャルに対して最も豊かな知識を持ち、受けた教育のレベルが高く、高収入であった。また、エイズの人々のケアを喜んで行いたいと考えていて、その準備制も高かった。
[考察]
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エイズやエイズの人々に対して積極的姿勢を示し、知識の豊富なナースはこの問題への介入の必要性を十分に認識しているといえる。
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スクールナースのエイズに対する姿勢や知識に関連を示す、年齢や収入といった因子を変化させることはできないので、スクールナースに対する教育ストラテジーを慎重に計画していくことで、態度や知識に変化をもたらすようにする。この際、エイズに関する社会的・専門的関心は最も重要である。
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性に関する問題に悩み、HIV感染およびエイズの家族を持つかもしれないあらゆる年齢の児童・生徒に対して、スクールナースはサポートを提供する。それは教師として、重要人物として、支持者としての活動である。また、保護者、教職員、学校の設置者に対しても、その関心に応じて教育や予防の提供を行う。
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スクールナースは教育、予防、直接のケア、支持といった役割を持ち、その査定は知識と姿勢の両面からなされる。
[結論]
本研究の限界として3点があげられる。
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まず、地方のナースに関する研究であり、特別にスクールナースを取り扱っていない点である。
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次に、対象地域が地理的に偏っていることと標本数の少なさから、本研究で得られた知見を地方のナースおよびスクールナースに一般的なものとして直ちに当てはめられない点である。
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最後に、スクールナース以外の他のリスク群、例えば注射器を使用する薬物乱用者、ヘテロセクシャルの人々、思春期の人々、血友病患者、HIV感染の母親を持つ子どもなどを対象に、HIVおよびエイズに関する知識や姿勢について測定していない点である。
学校保健への寄与
本研究で得られた知見によって、HIVおよびエイズに関わるスクールナースについての理解が深まり、ヘルスケアの提供者として教育上のニードが高いことが認識されればと考える。更なる研究によって、地方のスクールナース、地方のエイズ問題、この問題が学校や地域社会に与える衝撃が検討されるよう期待したい。
本研究の長所、短所、問題点に関する私見
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学校および地域社会において、エイズに関するさまざまな問題解決のために望ましいスクールナースの姿勢が示されたことは、今後の問題解決の一助につながると考える。
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スクールナースについての認識を論文の読者に深めさせる意味からも、スクールナースの勤務形態、学校勤務年数、学校以外の分野での臨床経験年数なども明らかにできるとよかった。
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先行研究からもスクールナースに関する調査はかなり困難なように感じるが、標本数が少ないことが問題である。
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