栄養学雑誌,54,251〜258(1996)
選定理由:
経験的に、店頭に並ぶ野菜は改良が進み、食べやすくなっていると感じる。しかし、子供にとって嗜好度の低いものが多く、その原因の一つとして親の影響が考えられるのではないかと興味をもっていたところ、この文献にであったので選定してみた。
先行研究レビュー:
1.厚生省保健医療局健康増進栄養課編:国民栄養の現状(平成8年国民栄養調査成績),
43-44(1998)
2.渡辺由美:栄養学雑誌,47,31-40(1989)
3.岸田典子,上村芳枝:栄養学雑誌,51,23〜30(1993)
4.伊藤至乃,天野幸子,他:栄養学雑誌,51,39〜52(1993)
要約:
<目的>
子供にとって嗜好度の低い、ビタミンやミネラルなどの重要な供給源である野菜。その野菜の摂取に焦点を当て、これに影響している諸要因について検討する。
<方法>
1.調査対象と調査時期
親用……食意識、野菜の摂取と子供の野菜摂取への対応について。2.調査方法
- 対象:和歌山市内で地理的特徴の異なる、公立小学校7校の1〜6年生、1753人(男子885人、女子868人)
- 時期:1988年10月下旬〜11月上旬。
- 質問紙調査法で、各学級担任が配布・回収し、児童は学級で記入。親については、家庭に持ち帰って記入させ、学校で回収。
- 調査内容
児童用…食品の摂取頻度、食意識及び野菜摂取に関する実態を問うもの。
また、表及び図中の各項目間の関連の有無は、χ2検定により判定。集計は、分類集計システム(外国文献者)。分析は、統計解析シリーズ(社会情報サービス社)。項目間の関連度の目安として、クラメールの 連関係数(V)を次式にて算出。(当日参照)
<結果>
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- 回収率
児童は100%、親は95.5%(回収数1682人)。回収した親の中心的な年齢層は、31〜40歳で83.1%を占め、女性が98%。
- 緑黄色野菜を毎日摂取すると答えた児童は、男女それぞれ33.1%及び37.2%であり、女子の方が男子より高かった。また、農業・漁業地 域で低く、商業地域で高かった。
- 緑黄色野菜の摂取頻度の高い児童は低い児童に比べ、規則正しい生活習慣を持ち、各種食品の摂取頻度と食意識の高い者が多かっ た。
緑黄色野菜の摂取頻度の低い児童ほど野菜嫌いが多い。その原因は主に゛味″であるが、嫌いな野菜でも調理法を工夫すれば食べれるようになると答えた。
- 子供の偏食に、「食べやすく調理を工夫する」と答えた親は43.3%、「特に注意をしない」と答えた親は9.3%であった。調理を工夫する親 は他の親に比べ、緑黄色野菜摂取の必要性の認識が高く、緑黄色野菜の摂取頻度も高かった。
<考察>
本研究の長所・短所・問題点及び私見 :
この研究により、子供の野菜摂取に影響を及ぼす要因として、居住地域・子供の食習慣や知識・意識、親の対応や食意識が考えられた。他の研究において、種々の味覚体験・食の教育指導・子供にとって楽しい食事環境の設定が偏食防止になると報告されている。学校給食の場にこれらの研究結果を生かし、学校や社会教育の中で認識・実践させることが重要である。