The Impact of Condom Distribution in Seattle Schools
on Sexual Behavior and Condom Use
Douglas Kirby, Nancy L. Brener

American Journal of Public Health 89;182-187;1999


発表者:才田 進(衛生動物学)
発表日:平成11年7月1日

選定理由:

 生まれて、大学院生になる今まで、性教育というものは、保健の授業でほんの少し学んだことを記憶している程度である。しかも、その記憶というのも講義形式で話を聞いた記憶ばかりである。そこで本研究の実践的な性教育は学生の性行動にどのように影響を及ぼすのか興味があり、本文献を選定した。

  先行研究レビュー:

 本研究に類似の研究は、3研究(Guttmacher-Sally et al.(1997)、Schuster-MA et al.(1998)、Furstenberg-FF et al.(1997))行われておた。3研究すべてで、性行動は有意に増加しない、3研究の内2研究でコンドームの使用は有意に増加すると発表された。しかし、これらの研究は、ベースラインの欠如、比較のグループの欠如、不十分なサンプルサイズ、親に対する同意方法の甘さから十分な分析ができていなかった。また、3研究の内2研究は学校でのコンドーム利用ではなく、幅広く、包括的なHIV予防や健康増進プログラムの影響を測定したものであった。

  要約:

<目的>

 10のシアトルの高校で販売機や学校のクリニックのバスケット、または両方を通してコンドームを手に入れられるようにした。この研究は、学生が手に入れたコンドームの数と、それに続いて起こる性行動やコンドーム使用の変化を測定した。
<対象>
 調査対象である10のシアトルの高校の学生(サンプルサイズは1993年と1995年にそれぞれ7179人と7893人)と、比較対象であるナショナルYRBSS(Youth Risk Behavior Surveillance System)のデータ(サンプルサイズは1993年と1995年にそれぞれ16296人と10904人)
<方法>  1993年の春、ヘルスセンターを持つ5つの高校においてヘルスセンターのバスケットでコンドームを手に入れらることができるようにした。また、1994年の2月と3月に、ヘルスセンターを持たない5つの高校において、販売機を通してコンドームを手に入れられることができるようにした。その後、追加して、ヘルスセンターを持たない高校の内1995年の5月にクリニックがオープンした2つの高校においてヘルスセンターのバスケットでコンドームが手に入れられるようにした。またコンドームをてにいれられることが出来るようにする前、基本的に高校3年生の保健の授業で性教育を行った。

これらの学校で、調査員は手に入れたコンドームの数を数え、記録した。また、前テストとして1993年の春に、後テストとして1995年の春にアンケートを行い、ナショナルYRBSSのサンプルと比較した。その際、YRBSSのデータはシアトルでの調査に対応できるようにいくつかの調整が加えられた。
 

<結果> 1)手に入れたコンドームの数 シアトルの学生は、1993,1994年度は、学生一人当たり4.4個、1994年,1995年度は、学生一人当たり4.7個のコンドームを手に入れた。その中でもバスケットから手に入れた数が販売機から手に入れた数の50倍以上であった。 2)学生のコンドーム入手と使用の割合 全ての学生の29%が少なくとも1個のコンドームを手に入れたが、そのうち13%のみが使用していた。これらの割合は、性経験をした学生でより高かった。 3)性行動の変化 シアトルの学校でコンドームを手に入れられるようにすることは、性交の開始を急がせなかった(セックスをしたことのある学生の割合は46%から42%へとわずかに減少した)。また、性行動の他の尺度を増加させないということもわかった。 4)コンドーム使用での変化と避妊の形 学生にコンドームを手に入れさせることでコンドームの使用は増加しない事がわかった。また、この前のセックスでコンドームを使った学生についてYRBSSのサンプルが53%から56%に増加したのに対してシアトルのサンプルでは57%から51%に減少した(有意に減少した2つの学校の内1つは最も多くコンドームを手に入れた学校であった。)。また、他の避妊方法として出生コントロールピルの使用は、シアトルのサンプルでは増加しなかった(クリニックを持つシアトルの学校では増加)のに対して、国のサンプルでは16%から13%に減少した。 TOPに戻る
 

<考察>

  学校保健への寄与:

 コンドーム利用プログラムを行う際の有用性や問題点などが示唆されており、今後、少しでも有効的な性教育の1つとしてこのような計画をを行う際の目安となるのではないかと考える。
 

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