都市のアイデンティティを形成する手段は数多く存在し、より複雑化している状況である。
こうした都市における複数のコミュニケーション手段を横断的に結ぶのが文字である。
書体デザインには市民や観光客が理解できる明快かつ一貫性のある都市アイデンティティを醸成する。
これを都市フォント構想と名付けた。これは地域性という歴史を刻んだ顔としてのまとまりを与えようという試みである。
具体的な取り組みとしては、名古屋城の金鯱をモチーフとした「金シャチフォント」や横浜の景観からヒントを得た「濱明朝体」が登場し、
これらの文字が使用されたグッズも販売されている。
都市フォントに共通する最大の課題は開発コストであるが、開発資金募る方法として、クラウドファンディングに新たな可能性を感じている。
また、フォントの運用方法も課題であるが、これは、公共機関が長期的かつ全面的に使用するのが望ましいが、ブランディング意識を持ち続けることができるかが鍵となる。
都市のアイデンティティを伝える手段は数多くあると思うが、フォントが都市デザインを支える要素になっているということを初めて知った。
それぞれの地域の顔となっているような文化財や景観、文化からヒントを得て、都市フォントを作成することで、都市の情報インフラに統一感をもたらすだけでなく、
都市コミュニケーションの道具としても活用することで、さらに魅力ある都市構築ができるのではないかと感じた。
ヒッコリースリートラベラーズの商品は、地域名を強調したデザインではないが、かわいい・ゆるい・ここにしかない
という特徴を軸に地域のらしさが伝わるデザインなので、商品を使用するたびに、その土地での思い出を何度も楽しめるのが良いと感じた。
多くのグラフィックデザイナーが活躍しているが、そのメンバーのなかで都市デザインに関わっているデザイナーがいるわけではなく、
観光やまちづくりに関係する比較的予算が付きやすいデザイン業務がメインの仕事となっている。
そうなってしまう原因として、都市デザインといった地道なまちづくりのために予算が動くことが少ない現実がある。
富山市のLRT事業計画に合わせて、グラフィックデザインを一方的ではなく受け手のことを考え届けるというデリバリーをスタートさせた。
富山ライトレールのトータルデザインコンセプトは「TOYAMAクリエイティブライン」を基本とし、
快適性・地域性、先進性、情報発信の3つのキーワードを設定して対象物のデザインを行っている。
ラッピング車両によるデリバリー作戦は、市民サポーターと企業の参画によってトータルデザインの認知に成功した。
さらに富山市は新デザイン戦略として、「AMAZING TOYAMA」をスタートさせ、バス事業のデザインデリバリーの可能性を模索している。
都市のグラフィックデザインに市民参加の仕組みをつくることで、自分たちのまちに誇りを持つきっかけが生まれることが分かった。
車両デザインの最終決定を市民アンケートに委ねることや自分がつくったハートが車両に飾られること、
富山市民の顔写真が溢れたスマイルポートラム車両デザインがあることは、自分自身がLRTに関わっているという気持ちにさせ、
これが発展して、地元に貢献している感覚になるので、単なる交通機関という枠を超えて、自分と誰か、市民とまちをつなぐ大事な要素になっていると感じた。
思い出の詰まった車両は長く市民に愛され、シビックプライドが育まれると思う。
沖縄でもLRTの導入が計画されているが、一方的に交通手段を提供するのではなく、ライトレールのデリバリー作戦のような運営の方が県民としては親しみやすいと感じた。
水の都と呼ばれていた大阪は、いつしか河川に人が近づかなくなり、まちの魅力も失われてきた。
水を活かした新たな魅力を創出し、大阪都市部の再生につなげていこうと、河川空間を利用した「水都大阪フェス」を開催した。
このイベントの特徴は、アートや子どもとのワークショップなど市民がやってみたいことを実現するところにある。
「大きなまちづくり」と「小さなまちづくり」が相互補完的に展開し、シビックプライドの向上や新たな観光拠点の創出などを視野に入れている。
「クラフトフェアまつもと」は人気なイベントであるが、松本市民に認知を得るまでには時間が必要だった。
その後、多様な工芸を紹介する機会が求められたことや中心地再興の課題に直面していた行政が結び付き、「工芸のまち松本」づくりという
ポジティブな方向性の施策として派生したイベント「工芸の五月」は、地元の人を主役に企画を考え実践するプラットフォームである。
宣伝や新聞での記事の掲載によって、市民の間で「工芸の五月」が浸透していった。
運営手法などをトータルデザインし、人とのコミュニケーションを図ることにより、松本をより魅力的な場とするための取り組みが続いている。
松本の魅力ある暮らしの可能性を広げ、松本への誇りや愛情を感じられる都市創造につながればと考えている。
「水都大阪フェス」や「工芸のまち松本」といったイベントに参加することは、シビックプライドを育む初めの一歩になることが分かった。
人をまちに巻き込むというまちとのコミュニケーションツールは、頼まれていないのにやる・まちにメッセージを込めてみるに比べて行動に起こしやすい。
また、都市の課題解決に関わってと真正面から言われるよりも、イベントという入り口からまちに関わっていく方が、行政と市民の間で課題解決がスムーズに進むと考えた。
沖縄は各地域の個性が強いイメージがあるので、「らしさ」を強化したイベントの開催は大きな力を持つと感じた。
私の住んでいる町は、琉球かすりやウルトラマンシリーズの重要な役割を果たした人の出身地として有名なので、ものづくりをテーマにしたイベントなどがあれば良いと思った。