2.まちにメッセージをこめてみる
空き地を「僕たちの場所」にする
昔は週末に買い物に訪れる人々で賑わっていた佐賀市の商業集積地は、郊外の大型店にその役割を奪われ、街中は空き店舗だらけのシャッター通りとなっていた。今後の人口減少に伴う商業ニーズの低下を考えると、昔同様の商業集積を再び期待することは難しいと考え、買い物動機以外でゆっくり過ごせる環境を整えることで、街中の滞留時間を延ばし、結果的に飲食や買い物という消費活動につなていくプロジェクトを行うこととなった。このプロジェクトでは、他にも市民自身が交流の場を作りあげていくことで、それが街の愛着へとつながることが期待されている。
ライトレールのデリバリー作戦
通常のデザイン業務から一歩踏み込み、地域にグラフィックデザインをデリバリーすることで市民にシビックプライドという自分たちの街に誇りを持ってもらうきっかけを届けられるのではと思っている。そうしたデリバリーのスタートは、富山市のLRT事業計画にあわせてのものだった。富山のライトレール開業から続いているイベントや季節のラッピング車両の装飾には、子供から大人まで多くの市民が参加している。富山に暮らす人々にデザインを楽しんで、伝えて、自慢してもらってようやくこれらの取り組みを評価してもらえると私は思う。
感想
わいわいコンテナプロジェクトでは、街の賑わいを取り戻すために市民が気軽に人と交流したり、ゆっくりできる場所を作ることで少しずつ商業を再生していくという戦略は、住みやすい街づくりにもつながり、地域経済にも好循環を生み出す素晴らしい考えだなと思いました。また、このプロジェクトでは、芝生張りやイベントなど市民が自ら交流の場を作っていくことで、街を自分たちの場所として意識し、大切にしていこうと思うようになるきっかけになりそうだなと思いました。富山県のライトレール事業では、富山の美しい自然を引き立たせるとても素晴らしい取り組みだと思いました。バスなど他のデザインも見直すことで街に一体感が出て、富山の人々だけでなく、観光客にも富山の美しい景観を楽しんでもらえることにつながり、観光客が増えるきっかけにもなりそうだなと思いました。
3.人をまちに巻き込む
フェスティバルが広げる水辺の使いこなし
かつて水の都と呼ばれていた大阪は、陸運への移行や河川の汚染などにより川とまちが分断され、まちの魅力が失われつつあった。このような状況から大阪をよみがえらせるために、2001年、都市再生プロジェクトとして水都大阪再生が決定された。水の回廊の船着き場や遊歩道が計画、整備され、水都大阪再生のシンボルとしたイベントも開催されている。全体の戦略を考えて連携する組織づくりと、市民自らがもてなす側の役割も果たし、楽しみながらまちを使いこなす仕組みが作られてきている。
イベントを重ね合わせて整えるまちのイメージ
クラフトフェアまつもとは1985年、松本に暮らしていたクラフトマンたちが集まり始めたもので、企画から運営まで松本周辺の様々な人がボランティアで実施している手作りのイベントである。そして、このイベントを含めた多様な企画の集合体が工芸の五月である。工芸の五月の構想中は名前もほとんど知られていない存在だったが、新たなプロジェクトや企画、様々な主体が連携する取り組み自体が新鮮だったためか、地元の新聞などで頻繁に記事が掲載され、工芸の五月は市民の間に徐々に浸透していった。さまざまな人を巻き込み実践しながら人と人のリアルなコミュニケーションを図ることにより、工芸の五月で目指すイメージを共有し、松本をより魅力的な場とするための取り組みが続いている。
感想
今回水都大阪の記事を読んで、去年大阪旅行に行ったとき、川周辺の雰囲気がとても良くて写真をたくさん撮ったことを思い出しました。あの雰囲気はもともとあったものではなく、水都大阪プロジェクトでたくさんの人が関わり作りあげていったんだなんだなと感じました。また、この環境は大きなまちづくりの他に、地元の人々の意識や取り組みなどの小さなまちづくりの機能により維持されているんだなと思いました。もともとの地形や自然を生かした景観づくりと、人々が気軽に散歩やピクニックを楽しめるような場所づくりは、良い雰囲気のまちをつくるのに大切だなと思いました。
松本市の工芸の五月の記事を読んで、まちの目指すイメージを、広告などにより浸透させていくことによって、地元の人にもまちづくりに自然と関心を持たせるという方法があるということがわかりました。また、「工芸」という地域の強みを外の人々に発信させることができる場を作ることは、昔ながらの文化の魅力を引き立たせる効果がありそうだなと思いました。