1.7 微分
変数 の関数
とするとき、点
での接線の傾きを
と書き、
の関数とみた
を
の導関数という。導関数
を求めることを、
を
で微分するという。 極限値
が存在するとき、これを における
の微分係数という。 幾何学的には、
上の点
における接線の傾きを表す。
で
が存在するとき、関数
は
で微分可能という。
自動車で旅行するとき、出発してからの時間を として、その間の移動距離を
とすると、
と
との間には、
という関係がある。 自動車の平均の速さは(移動距離)
/(移動時間)である。 例えば、那覇と名護の間の距離が約70Kmであり、那覇から出発して名護に車で1時間で到達した。 このときの車の平均の速さ
は
と表される。 下図のように、時刻 と
の間の微少時間
(短い時間間隔)での平均の速さ
は
と表され、微分の式と同じであることが分かる。
ここで、時刻の間隔 を短く(
の極限値を計算)すれば、平均の速さは時刻
での瞬間の速さ
は
となる。よって、下記のように速さ は
移動距離 を時間
で微分することによって求められる。 なお、一次の導関数(微分)は
の表し方がある。
<例題> を微分せよ。
1.8 二次の導関数
関数 x = f(t) の導関数 x′ = f′(t) をさらに微分して得られる導関数を 2 次導関数といい、記号で
の表し方がある。
1.8.1 関数の和・差・積・商の導関数
<(4)の証明>
、
とおけば
のとき、
であるから
<(3)の証明>
(4)と同様に、、
とおけば
1.8.2 合成関数の導関数
および
が微分可能なとき、合成関数
の導関数は
で表される。
<証明>
xの増分Δxに対するu及びyの増分はそれぞれ
と表される。Δu式の右辺を左辺へ移行すると
となり、この式をΔy式へ代入すると
となる。この式の両辺をΔxで割り、次にfをΔuで割って、更にΔu掛けると下記の式
のように変形される。 u は xの連続関数であるから、のとき
である。従って
となる。右辺を約分するとduが消去されるので、両辺が等価であることが分かる。
<例題> (1) y = 2(3x - 1)3 と (2) を微分せよ。
(1) 3x - 1 = uとおけば、y = 2u3であるので
(2) x2 - 1 = uとおけば、であるので
1.8.3 xのn乗の微分
(xn)′ = nxn-1になることを示せ。
<証明>
y = xに対し、
となり、n = 1のとき成り立つ。n = k、つまりy = xkのとき、
が成り立つと仮定する。y = xk+1 = xkxであるので、
となる。故に、n = k + 1のときにも成り立つ。従って、すべての自然数nについて成り立つ。
<例題> x2 + y2 = 1のとき、dy∕dxを求めよ。
下記のように、両辺をxについて微分して、dy∕dx =のように変形を行う。
<例題> x = 2t - 3、y = 5 - 3t2の関係が成り立つとき、dy∕dxを求めよ。
1.8.4 三角関数の導関数
その他、この頃は見かけなくなったが、cosec θ (csc θ)(コセカント)、sec θ (セカント)、cot θ (コタンジェント)などの三角関数もある。
<(1)の証明>
<証明>
0 < θ < π∕2として、半径1の円周上の2点A(x軸との交点)、Pをとり、中心角AOPの大きさがθであるようにする。O点は円の中心点である。
A点における接線(y軸と平行)とOPの延長との交点をT点とすれば、面積の大きさは三角形 △OAP < 扇形 OAP < 三角形 △OAT、 △OAP となる。また、扇形
OAP
、 △OAT
から
となり、sinθ で割って逆数をとると
となる。θ → 0 のとき cosθ → 1 であるので
となり、1になることが証明された。
<(2)の証明>
<(3)の証明>
<例題> x、yの関数がθを媒介として
で与えられているとき、dy∕dx をθの式で表せ。aは定数である。
1.8.5 対数関数・指数関数の微分
対数関数 log ax の導関数を求める。まず、x = 1 における微分係数を求めるには
であるから、h → 0 のときの (1 + h)1∕h の極限値が分かればよい。いま、この極限値がどうなるかを調べるために、hに順次に
を代入して (1 + h)1∕h の値を計算すると、以下のようになる。
h | (1 + h)1∕h | h | (1 + h)1∕h |
0.1 | 2.59374 | -0.1 | 2.86797 |
0.01 | 2.70481 | -0.01 | 2.73199 |
0.001 | 2.71692 | -0.001 | 2.71964 |
0.0001 | 2.71814 | -0.0001 | 2.71841 |
0.00001 | 2.71827 | -0.00001 | 2.71829 |
..... | ..... | ..... | ..... |
この値は一定値に近づき、この極限値を e と書く。e は無理数であり、
であることが知られている。従って、
となる。この結果を用いて、y = log ax(x > 0) の導関数を求めると
ここで、h → 0のときh∕x → 0であるから
特に、e を対数の底として対数関数 y = log ex を考えると
e を底とする対数を自然対数という。y = log ax ならば
となる。
<例題> (1) y = log |x|と (2)y = log |sinx|を微分せよ。
<例題> y = xx を微分せよ。
y = xx の両辺の対数をとると log y = xlog x となり、この式の両辺をxで微分すると
1.8.6 指数関数の導関数
y = ax ならば、y′ = ax log a、特に、y = exならば、y′ = exであることを確認する。
いま、y = ax(a > 0) の両辺の対数をとれば
両辺をxで微分すると
特に、a = e ならば
となる。
第 1 章 運動
1.1 速度と加速度
平均の速さは下記のように移動距離(
)をその距離を移動するにかかった時間(
)で割って(「距離 / 時間」)
で求められる。 したがって、「移動距離」は「速さ」×「時間」で求まることになる。
ただし、速さには2種類あり、そのうちの1つが平均の速さ(上式)で、もう一つが時間を十分小さくとった瞬間の速さ
である。 また、速度 は「瞬間の速さ」と「向き」を指定したものであり、数値で表す場合は+10[m/s]、-20[m/s]と表す。 ただし、+は省略されることが多い。 数学的には「速さ
」はスカラー量(ベクトルの大きさ)であり、「速度
」はベクトル量ということになる。 したがって、速度の大きさは速さである。 同様に、任意の位置ベクトル
が
だけ変化したときの速度ベクトル
は
で定義される。 図は
のとき
の点にあったものが
になると
の位置に移動したことを示す。
1.2 簡単な加速度運動
平均の加速度 は下記の式のように
表され、速度 の時間変化(減速を含める)の割合と定義する。 ただし、これは平均の加速度であり、時間を十分小さくとった瞬時の加速度
は
で定義される。 また、加速度 も速度
と同様に大きさと向きを持つベクトル量である。 任意の位置ベクトル
を使って加速度
[m/s2]と速度
[m/s]を表すと
となる。
1.3 等加速度直線運動
等加速度直線運動は物体の速度の方向や向きが変化せず、加速度の大きさが一定である運動であり、運動の様子を
で表すことができる。 この第1式と第2式との関係は微分と積分の関係になっている。 であるので、
の微分から
が求まり、逆に、
の積分で
が求まる。(例題8参照) 今、
軸上を移動している物体の速度の大きさが
の間に
(初速度)から
(
秒後の速度)になったとする。
このときの加速度 の大きさは
と表される。 この間の速度の平均の大きさは (最初と最後の速度の平均)となる。 次に、
の間に走った距離
(「移動距離」=「速さ」×「時間」)は
となる。 ここで、 の式を変形した
を
の式へ代入すると、
となる。 任意の時間 についても「
」「
」 は成り立つ。 これに再度、
の式(
を
と記す)を変形して
を
の式へ代入して、
を消去すると
となり 、
、
、
との間の関係を与える。
重力加速度 : 物体が地表に落下するときの、物体に働く加速度を重力加速度という。物体の大きさ、種類によらず一定( [m/s2]、読み方:9.8
[メートル毎秒毎秒]、[メートル・パー・セコンド二乗])である。
まとめ(物体が等加速度直線運動を行う場合)
<例題1> 運動の記述 — 速さと速度
自動車が一直線上を、時刻 (s) のときを出発点として、
(s) のとき距離
(m) 進んだ。この間の速さを求めよ。
速さも向きも一定なので、自動車の速度は一定である。(速度:ベクトル量)
<例題2> 加速度の計算
自動車の加速度だけを競うドラッグレースで、停止状態からスタートして一直線上を走り、 (s) 後に
(m/s) の速さに達した。このときの平均の加速度の大きさ
はどれだけか。
停止状態からスタートするので、初めの速度は である。加速度は速度の変化量であるので
となる。ここで加速度を正の向きにとったので、加速度(ベクトル量)も正の向きである。
<例題3> 物体の運動
高さ の場所から初速度
で物体をおとす場合、何秒後に床に達するか。また、床から上方へ初速度
で投げ上げた場合、最高の高さを求めよ。
物体は一定の重力加速度 (m/s2) で落下する。
の式を使い、条件
、距離
は
となり、落下する方向と
の向きは同じであるので
となる。よって、
と表される。上方に投げ上げた場合は、物体の運動方向と の向きが逆向きであるので
(m/s2) の加速度をもつ。
秒後の速さは
となる。ここで、物体が上昇しきって、一瞬静止するときには となるから
と得られる。この時間が最高の高さに上がるまでの時間であるので、その高さは
となる。
<例題4> 最大到達距離
ボールを仰角 で投げたとき、到達距離が最大になるときの条件を求めよ。
ボールは左右対称の放物線の経路を描く。この曲線経路は、鉛直方向と水平方向の運動を組み合わせた結果生じる。従って、物体は鉛直方向に上昇して下降する時間だけ、水平方向に距離
進むことができる。鉛直方向に上昇して下降する時間は<例題3>と同様に考えることができる。
ただし、鉛直方向の速度成分は であり、最高の高さになる時間は例題3の
から、
となる。 係数の2は上昇時間と下降時間のために付いている。
下降する時間は、例題3から最高の高さ
が得られ、例題3の下降する時間
中の
にその
を代入することによって、
から下降する時間
が求まる。 よって、上昇する時間と下降する時間が同じであることが分かり、上昇して下降する時間
は
と求まる。また、水平方向の距離 は水平方向の速度成分
と時間
から
と計算される。 三角関数の変形は2倍角の公式sin2θ = 2sinθ cosθ(9ページの加法定理から算出可能)を使用した。 得られたSの式から、
のとき、到達距離が最大となることが分かる。ただし、これは空気抵抗がない場合であり、空気抵抗がある場合は軌跡は左右対称でなく、仰角が
より小さい角度で到達距離が最大となる。
<例題5> 不幸な猿
高さ の木の上に猿がいることに気がついたハンターは、その木から
だけ離れたところから、猿をねらって鉄砲を撃った。猿はパッと鉄砲の煙が見えたので、とたんに身を避けようと、枝から手を離し地上に落下して逃れようとした。
たまは の速さで発射され、水平方向には
で飛んできた。木のところまで達するのに
だけかかる。その間、鉛直方向()には
なる高さに達する。ところが、利口な猿はどうか。煙をみた瞬間(光の速さで伝わるので、たまの発射と自由落下の始まりとの時間差はない)から自由落下を始め、落下した距離は となる。高さ
から
落下した地点は地上から
なる地点にある。まさに ではないか。猿は逃げないほうがよかったのである。わざわざ、たまにあたりにいったようなものである。