研究テーマ


現在の主な研究内容 ・Cs3H(SO4)2結晶の相転移
 これまで合成されていなかったM3H(XO4)2型に属するCs3H(SO)2結晶を合成することができた。この結晶について、相転移メカニズムについて研究を行っている。


・新しいCs2S2(SO4)3結晶の結晶構造の研究
 これまで発見されていなかったCs2S2(SO4)3結晶について、室温の結晶構造及び相転移の存在の確認を行った。また、融点及び相転移の存在を確認できなかった。


・Na2SeO4結晶の相転移
 室温相の正確な結晶構造を報告した。また、高温相転移における転移エントロピーを決定した。さらに、結晶の白濁化に関する情報を得た。


・新しいRb3H9(PO4)4結晶の結晶構造の研究
 これまで発見されていなかったRb3H9(PO4)4結晶について、室温の結晶構造及び相転移の存在の確認を行った。相転移は存在しなかったが、融点が399Kにあることを確認した。


・M3H(XO4)2結晶(M=Tl、Cs、Rb、K、Na、NH4; X=S、Se)の相転移の研究
 これらの結晶は室温で強弾性、低温で強誘電性、高温でプロトン超イオン伝導性を示す。また、これらは0次元水素結合結晶と呼ばれ、結晶内にO-H-Oボンドの水素結合のネットワークを持たない。しかし、重水素化によって、相転移点の著しい上昇や相転移点の消滅など特異な特徴を示す。
現在、これらの結晶について、X線解析、電気伝導度、誘電率、熱測定、電子スピン共鳴装置などを使って、相転移のメカニズムの解明を行っている。



・誘電体
 絶縁体を電場の中に置くと、絶縁体内の正電荷は電場の向きと同じ方向へ、負電荷は反対方向に微小変位する。このとき物質内の構成要素(イオンなど)は双極子モーメントp(p=ql、正負の電荷とその間の距離を掛けたもの)を持つようになる。この現象を誘電分極といい、誘電分極が起こる物質を誘電体という。分極は単位体積あたりの双極子モーメントと定義される。

・強弾性体
 外力がないとき、結晶に自発ひずみをもつ状態が2つ以上存在し、外部から応力を印可することにより、それらの状態間を遷移できるような特徴を強弾性という。

・強誘電体
 誘電体の中には、強誘電体と呼ばれる多数の結晶がある。強誘電体とは、電場を加えなくとも自発分極を持ち、外部電場によってその分極を反転させることができるものと定義されている。

・超イオン導電体
 融点よりはるかに低い温度で、高いイオン伝導性を示す物質を指す。つまり、結晶内でイオンが自由に動くことができる。例えば、AgI結晶では、Agが自由に動く。物質によっては、溶液中のイオン伝導体に匹敵する高い伝導度を示すものもある。プロトン伝導体はプロトンが結晶内で自由に動けるものを指す。

・重水素化
 結晶内の水素Hを重水素D(水素核に中性子を1個加えたもの)に変えた結晶を重水素化結晶という。結晶は水溶液から蒸発法など、ビーカー内の水を蒸発させることによって結晶を析出させる。重水(重水素でできた水)の価格は1リットル10万円程度である。

・相転移
 適当な条件により、ひとつの相からほかの相へ変化する現象を相転移という。身近な現象としては、氷(固体)−水(液体)の変化も相転移である。ここでいう相転移は、常誘電相(自発分極がない相)−強誘電相、強弾性相−強誘電相、強弾性相−プロトン伝導相などの相転移の研究をさす。