サンゴ礁を取り巻く諸問題

サンゴ礁の海は多様な生物の生活場所になっている.サンゴはその複雑な枝の構造などから,魚の隠れ場,餌場,などの生活場所になる.また,サンゴ自体もサンゴポリプ食性の魚のえさとなる.サンゴを中心とした生態系が調和を保ちながら生育しているのである.その生物の多様性,1次生産力の高さから,”海の熱帯林”とも形容される.ひとたびこのバランスが崩れるとなかなか元に戻らない.そのサンゴ礁生態系を撹乱する要因として土砂流出,サンゴを食するオニヒトデの大量発生,異常高温での白化現象が報告されている.今回は,赤土流出問題と,白化現象に焦点を当ててみた.

赤土流出

降雨により侵食された土砂が海に流出することで,沖縄で深刻な問題になっている.有機物が少ない侵食されやすい土壌,急傾斜などの地形条件,スコール的な激しい降雨が多いことなどの要因が流出をおきやすくしていると考えられる.

粘土は淡水に拡散すると?m単位の微小な粒子となって浮遊し,粒子表面は+,表面内部は-の荷電となる.このため,各粒子は反発しあい,大きな粒子にまとまることはない.淡水では沈砂地では容易には沈殿しないのである.しかし,海水に触れると,粘土粒子の表面の一部が解離されて,急速に塊が大きくなる.そのため,沈殿するのである.河口付近に粘土粒子は堆積することとなる.

土壌流出がおき,サンゴ礁の海域に土砂が流入すると,透明度が著しく悪化する.このため,サンゴの生育に必要不可欠な光が届かなくなり,サンゴの栄養状態が悪くなったり,サンゴの上に直接粘土やシルトが堆積し,サンゴ死亡することとなる.サンゴ礁海域では地形上,礁嶺の内側の礁池に赤土が溜まりやすく,外洋に拡散しにくい.

沖縄県は1995年に赤土等流出防止条例を制定したが,いまだ対策は十分とはいえないものがある.その,条例の概要は次のようである.

1000u以上の土地改変工事を伴う事業行為は知事への届け出が必要.

そのうち,3000u未満のものについては保健所で審査をおこない,それ以上のものについては県庁で審査を行う.

防止対策が十分でないものについては,計画の変更等を求める.

虚偽の届出や無届出は罰せられる.

具体的に,次のような対策が課せられる.

1.    発生源対策

工事によってできた裸地面を速やかに緑化,砂利の敷き詰め,暖流化剤の散布などによって,裸地をなくすか,ブルーシート被覆,ローラー転圧などの裸地面の物理的な安定度を高めること.これで,濁水の発生をできるだけ少なくする.

2.     流出濁水対策

等高線に平行に小堤や横断水路を設置し,流出濁水の勢いを抑制し,分断し,水路などによって最終沈殿池まで導く.また,工事区域外からの雨水が濁水に混入してその量が増えないように現場周辺に切り回し水路を設ける.

3.     濁水最終処理対策

濁水を貯留し,沈殿やろ過などにより,基準値以下の浮遊物質量で公共水域へ放流する.裸地1000uにつき150?以上の沈殿地容積を確保する必要がある.放流基準は浮遊物質量200mg/l以下である.

また,農家にも表土剥ぎ取りによるパイン畑の更新,農地開墾等には届出が必要である.農地の管理に関しても畑の周りにあぜや緑地帯を設けたり,ススキなどの四季草で畑面を覆うなど,赤土が流出しないように工夫することが呼びかけられている.

白化現象

海水温の上昇によりサンゴに共生している褐虫藻がサンゴの体から抜け出してしまい,サンゴの骨格が透けて見えるようになり,白っぽく見える.このため,白化現象と呼ばれている.高温の他に,強光,低塩分濃度,などによっても白化が起こることが報告されている.

異常高水温が一時的なものであれば,褐虫藻はまたサンゴに戻り白化は回復するが,水温が極端に高かったり,高温が長く続くと,白化したサンゴはやがて死滅に至る.

気象条件により晴天が続き雨が降らなかったり,台風が少なかったりし,海水温が上昇しすぎたため発生している.台風は海水を撹乱し海水温を下げる大きな役割を果たすと考えられている.また,このような気象的な現象は温暖化やエルニーニョと関係があるのではないかと議論されている.

白化によって死亡したサンゴの骨格はは数週間の後に褐色の藻類に覆われ,やがては瓦礫となる.