本文の序にもあげてありますが、以下の3冊は付録を書くのにも参考にしました。
- L.Babai, P.Frankl, Linear algebra method in combinatorics.
- N.Biggs, Algebraic graph theory.
- C.Godsil, G.Royle, Algebraic graph theory.
92年の夏にシカゴに行き、BabaiのところでBabai-Franklの本の仕上げを少し手伝い
ました。できたばかりのコピーを持ってアトランタに行き、Rodlに見せたら「君の分を
製本してあげるからコピーさせて」ということで、コピーの束は上等な本になりました。
それを持ってベル研に行きGrahamに見せたら、見せるだけのつもり
だったのに「これはいい本だ。どうもありがとう。」といって取られてしまい、私が持って
いるのは孫コピーからつくったショボいものです。この本は公式に出版されたことがなく、
これからも出版されないと思いますが、世界中の研究者に読まれているという変な本です。
欲しい人はBabaiと交渉して下さい。
線形代数の教科書はたくさんあります。自分の気に入るものを見つけてじっくり
読むのがよいと思います。私の手元には
- 線形代数学 岩堀長慶 (編) 裳華房
- 位相解析入門 入江 昭二 (著) 岩波書店
- 線形代数入門 内田伏一、高木斉、劔持勝衛、浦川肇 (共著)、裳華房
があったので、これらを付録を書くのに参照しました。
1は私が大学で線形代数を習ったときの教科書でした。
授業(赤尾先生)も教科書からいくつかの部分を選んで
だいたい教科書にそって行われたと思います。正直なところ、私には難しすぎてなかなか
ついていけませんでした。この教科書には、当時書き込んだ「?」がたくさん残っていて、
今読んでみると「なるほど、こういうことがわからなかったんだな」というのもありますが、
この「?」は一体何だ?というのもあります。この本は線形代数を(というか、抽象的
な数学を)初めて習う人が読むには少し難しいところもあると思いますが、
線形代数を一通り習ってから読んでも得られることの多いよい本です。
2はいわゆる線形代数の教科書ではないかもしれませんが、線形代数の内容も多く扱われていて、
しかもほとんど(当時の)高校までの予備知識だけで読めるように丁寧に書かれています。
対角行列は直交行列で対角化できることの証明も、初等的に、かつきちんと書いてあります。
3は琉大で線形代数の授業をはじめて担当したときに、教科書として指定されていたものです。
これは1,2と比べると軽めの本に見えますが、実は基本的なことはきちんと書いてあります。
1と2は手に入れるのは難しいようですが、3は普通に買えますし、最初に選ぶ線形代数
の教科書として十分だと思います。もっともこれらの3冊はたまたま私の手元にあったもので、
線形代数の教科書なんて書いてあることはだいたい同じですから、
どれがよいかというより、とりあえず一つ選んでちゃんと読むことの方が大事かもしれません。
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