
矢野昌浩(労働法)
労働法・労働法学(以下、「労働法」という)においては、形式的合理性と実質的合理性との緊張関係が顕著です。形式的合理性とは、法的思考がつくりだす抽象的概念の体系に適合していることをいいます。実質的合理性は、このような論理的抽象の形式主義を壊して、実益・倫理・政策にしたがうことを意味します。労働法は社会的事実を重視することにより、法システムに実質的合理性を持ち込みました(たとえば、民法の「人」概念に対する労働法の「労働者」概念)。しかし、法システムに組み込まれているかぎりは、社会的事実から概念を抽象化し、法的推論に特有の形式性を備えます。こうして、労働法における合理性は実質的なものであっても、社会との関係では自律的なものとなります。このような特徴をもつ労働法の魅力を数点あげておきます。
(1)法の理解における歴史主義と法の実践における現場主義 法は不動のものではなくその担い手により発展させられています。労働法においてはこのことが顕著です。最近では、男性労働者との平等取り扱いを求める女性労働者たちの訴訟を例としてあげることができます。別の言い方をすれば、労働者のそのときどきの要求をもとに労働法は発展してきたといえます。多くの国において労働法という法分野が個別の法律の寄せ集めからなり、法規定を体系的に編纂した法典をもたないのはこうした事情からです。法がその担い手により歴史的・論理的に発展させられていくダイナミズムを、労働法は教えてくれます。
(2)国際主義 労働法には各国に共通の基準・規範を設定するための国際機関(ILO)が、すでに80年以上にわたって活動しています。このことに端的に窺えるように、日本の労働法における解釈論的・立法論的課題を検討する場合には、同種の問題に関する国際的な動向を一瞥するだけでも、法的立論の可能性と社会認識の方向性を察知するのに有益です。近年における経済のグローバライゼーションのなかでは、このような視野をもって労働法を学習することが不可欠といえるかもしれません。国際的な労働基準の存在(さらにはこれと相互関係にある各国労働法の発展)は、日本の労働法にとっての鏡とも砥石ともなっています。
(3)学際主義 労働法を発展させる原動力となる社会的事実の変動を的確に理解するためには、経済学・社会学・政治学等の隣接諸科学の分析に学ぶ必要があります。幅広い学問的興味・関心をもって学習できるのも、労働法の魅力の1つだといえます。
(4)新しい問題・現代的課題への対応 上述のような現場主義と国際主義は、労働法に新しい問題を提起しつづけることになります。これについては「在学生-提供科目案内」を参照してください。ジャーナリスティックな感覚が、労働法の学習には必要かもしれません(この点は私には忸怩たる思いがあります)。さらに、これらの問題が出現してくる背景には、今日における歴史の大きな転換のなかで、労働法そのものの変貌が求められているという事情が存在します。たとえば、工場労働者あるいは長期勤続男性正社員を前提にした従来型の労働法モデルは、現実との齟齬をもはや覆い隠すことはできません。どのような社会像・家族像・企業像・市場像・国家像、そしてなにより人間像・労働者像を展望するかによって、労働法の将来像も大きく変わろうとしています。その反面で、隣接諸科学とは異なり労働者を分析対象ではなく権利主体として位置づけている労働法は、労働者の権利主体としての資格を確保するための規範を設定することにより、このような転換を制御することに寄与します。いずれにしても、日本社会と法の今日的転換を観察し批評するための「眺めのいい部屋」を労働法は提供してくれると考えます。
清水一成(刑法)
法律学は覚える学問ではなくて考えて理解する学問です。しかし一度では理解できないことも多いので、そういうときはしばらく時間をおいてからまた考え直すのがよいでしょう。その間に蓄積された別の知識とリンクして、「そういうことだったのか」と気付くことがあるからです。
樋口一彦(国際法)
国際法関係の講義・ゼミを受講することによって、国際問題に対する視野を広げてほしい。
玉城勲(民事訴訟法)
大学は皆さんがそれぞれ夢(目標)をもち、それを実現していくところです。夢(目標)を実現するためには日々の努力が必要です。努力してぜひ夢(目標)を実現して下さい。
仲地博(行政法)
ベアテ・シロタ・ゴードンさんの名前を聞いたことがあるでしょうか。ロシア系のアメリカ人です。GHQ(占領軍の最高司令部)の職員として日本に来たベアテさんは、日本国憲法の草案を書くグループに入り、平等・家庭・福祉等を分担しました。彼女は、そのときアメリカ憲法にもない男女平等を日本国憲法に書きました。無権利で当然とされていたころの日本の女性の地位に大きな疑問があったからです。皆さんとほとんど同じ年頃のときです。
さて、皆さんが新しい日本国憲法あるいは沖縄憲法あるいは琉球大学憲法の草案を書く立場に置かれてたら、何を書き込みますか。
社会科学の生命線は、現状の問題点の摘出です。あなたは何を問題とし、どういう処方箋を準備し、憲法に書き込みますか。