琉球大学法科大学院設置計画書(案)
2002年3月2日


はじめに

 21世紀に入り、IT社会の本格的到来と共に、国際社会における国家間の距離はますます縮まっている。グローバリゼーションの波は国際取引、知的財産権などに係る法の分野にも大きな影響を与え、法曹のあり方に変革をもたらしつつある。一方で、国内でも地域社会における法的紛争の解決や人間関係に対するリーガル・サービスの提供のあり方が重要な問題として以前にも増して問われている。琉球大学においても沖縄地域の持つ国際的特性と地域的特性を十分に意識し、国際的視野を持ちながら、地域に応える法曹養成を目指し、1999年以来法科大学院構想に取り組んできた。
 沖縄は日本本土と地理的に離れた島嶼県であり、全県が亜熱帯地域という他府県では見られない気候帯に属している。地理的には日本の中で東南アジアに最も近く、したがって古くから交易も盛んで、琉球王国時代をはじめ独自の歴史を歩んできた。明治時代には沖縄県が設置されたが、太平洋戦争後は米軍統治下に置かれ、1972年再び日本復帰をして沖縄県となった。復帰後から現在まで、沖縄には社会保障の整備に関わる問題、戦後補償問題、安保条約・地位協定にかかる問題など地理的・歴史的差異から生ずる独自の法的問題が多数横たわっており、今後多くのこれらの法的問題の処理に対応できる人材を育成していくことは沖縄における社会的要請でもあり急務である。
 沖縄に在住する者が、法律家を目指して教育を受ける機会を得るには遠く離れた本土の法科大学院で学ぶしか道がないとすると、賃金や所得などの面で本土との経済格差の大きい本県においては多額の経済的負担を負うことになり、教育の機会均等の視点から教育を受ける権利に大きな制限を課すことになる。また、沖縄の現況は弁護士過疎県に近づいており、特に、ほとんどの離島には弁護士がいない状態で適正な法的サービス(以下リーガルサービス)を受けられなくなっている(最近、石垣島に派遣弁護士制度が敷かれたばかりである)。加えて沖縄における弁護士の高齢化した年齢構成もあり、今後はさらにリーガルサービスの提供という面では過疎化に拍車がかかると思われる。沖縄において法曹教育の場を提供することはこのように重要な意味があり、沖縄弁護士会をはじめ県内各界から設立要望が非常に強いことは言うまでもない。
 琉球大学は直接的には1950年に琉球列島米国軍政府により設立されたが、設立の運動の原点は、昭和10年代の沖縄県議会を中心とした高等教育機関設立運動である。この運動に込められた県民の切望も迫りくる戦争の波で実現せず、戦後を迎えたが、沖縄戦後の灰塵の中でも、高等教育機関設立への思いは消えることなく、ついに県民の運動は軍政府を動かしたのである。このような県民の開学へと運んだ道と現在の法科大学院設立への県民の切望は、相似形態といってよい。
 沖縄は琉球王国としての歴史を歩んできた経緯があり、自治的な独自性を有しているだけでなく、諸外国と交易を続け、独自の文化を発展させて、異文化理解を深めてきた。地理的にもアジアに近く、アジアに影響を受けた慣習、民俗も多く残っている。また戦後27年間米軍統治下にあっては、政治的、社会的、経済的に米国の影響を受けてきたが、そういった状況下でありながら、まがりなりにも一応の政府形態(立法・司法・行政)を採ってきた経験があり、前述の地理的歴史的経緯による独自性に加えて、この米軍統治下の法制にかかる歴史は、現在でも地位協定や沖縄における軍用地問題にかかる法的紛争など日本の法制の多様性を浮き彫りにし、日本の法制の発展的展開に大きな貢献をする可能性がある。
 日米両国のみならず、中国をはじめとしたアジア諸国との異文化交流が歴史的に行われてきた経緯から、沖縄では法制史的にも開放性と多様性が見られる。これを活用することによっては今後立法政策の側面からも大いなる貢献が見込まれる。特に国際結婚に絡む国際私法の領域や米国、アジア諸国との国際取引法に関連する領域では顕著であり、法科大学院卒業者にとっても、その法務担当能力を発揮する分野が沖縄現地に広がっている。
 復帰後も、沖縄には米軍基地が依然として存在しており、日米安保の意義、実態、問題点を理解するのに適している。復帰後日米安保条約下に入った沖縄では地位協定等の絡む事件が多発しており、そのような分野の専門的法曹の養成は、安保の意義や問題点を理解する上で非常に重要である。
 琉球大学はこれまで司法試験合格者を、地方大学にしては多く輩出している。特に、昭和52年以降一時期を除き毎年輩出しており、法曹教育の足跡には一目置かれるものがある。このような教育実績に加え、琉球大学は広大なキャンパスを有し、法科大学院専用図書館や研究棟、模擬法廷など法科大学院の施設設立スペースを確保しやすい環境にあり、思い切った法科大学院構想を実施しうる。


1 琉球大学における法曹養成の基本理念

 21世紀を担う法曹人の養成という点で、司法制度改革審議会の意見書は「豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門知識、柔軟な思考力、説得・交渉の能力などの基本的資質に加えて、社会や人間関係に対する洞察力、人権感覚、先端的法分野や外国法の知見、国際的視野と語学力等が一層求められる」としている。琉球大学では、沖縄の地理的・歴史的特性を法曹教育の面でも活かし、アジア・パシフィックを意識した国際性豊かな法曹人の養成を行う。また、沖縄文化の独自性や特殊性のみならず、いわゆる沖縄問題の本質を理解する力を育み、豊かな人間性や感受性を涵養する。特に、沖縄の抱える多様な法律問題に柔軟に対応できるように、幅広い法学基礎知識だけでなく、鋭い人権感覚と国際的感覚を持った法曹人の養成を目指す。
 基本理念としては、「個性と多様性――地域にこだわりつつ、世界を見る法曹人の養成」を掲げて、前述した沖縄の地理的・歴史的及び文化的独自性を十分に発揮し、それを生かした法曹教育を行うことが、それ自体日本に法曹教育の多様性をもたらすことに資するものと考える。沖縄地域にこだわったリーガルサービスの提供が出来るということは、それ自体国際的視野を持つことと矛盾するものではなく、むしろ、既に日本国内だけの法律問題の解決という枠を超えた普遍的な法律問題の解決が要求されているといえる。すなわち、特殊性から普遍性を導き出す柔軟な思考力とともに、諸外国の法体系の底流にあるものを探る洞察力も要請されているといえる。
 「グローカル(グローバル(地球的)とローカル(地域的)の合成用語)」の語に示されるように、世界と共通した土壌と地域とが結びついていることを沖縄から証明するような自覚と気概を持って、問題解決に臨む法曹人を養成する。「個性」とは琉球大学の法科大学院はもちろんのこと、所属する大学院生の「個性」をも意味しており、各自の個人の尊厳に基づく多様性を活かし、多方面に活躍できる可能性をもった法曹人の養成こそが、日本社会の多様化に対応できるのである。


2 法曹養成のための法学教育とその担い手としての法科大学院

 琉球大学における法曹教育の特性としては、次の点を挙げることができる。
 第1に、伝統的法学教育にとらわれない、文系理系の幅広い基礎知識に基づいて、環境問題、高齢社会問題など沖縄の地域に特有の法律問題にも対応できる教育を行うという点である。
 第2に、目標としてアジア交流の歴史など沖縄の歴史的、地理的特性を活かし、アジア・パシフィックを意識した実践面を充実させるという点である。
 第3に、米軍基地との関連で安保条約や地位協定等安全保障にかかる法的問題にも対処できるような教育を行うという点である。
 第4に、米国の中におけるハワイの位置付け等、地理的、歴史的、文化的共通性から、近い将来の実現に向けてハワイ大学ロースクールとの単位互換や教官の交換授業など、相乗効果を意識した教育カリキュラムを整備するという点である。
 第5に、沖縄の経済的発展構想との絡みでアジア・パシフィックを意識した国際取引法や、金融特区にかかる法的問題およびアジア市場との関連や(現在政府が沖縄に構想中の)理系独立大学院との関連で特許法や著作権法にかかる法的問題などに対処することも教育の射程とするという点である。


3 学部教育との関係

(1)総合社会システム学科における法学教育
 琉球大学の法学教育は、大学設置間もないころから法律と政治を統合した法政学科として行われてきた。1997年の法文学部の改組で、さらに隣接社会科学分野と統合し、総合社会システム学科としての教育となった。
 1997年の学部改組の背景の一つが、大学の大衆化であった。今日の大学は、多様な能力、適性、関心を持った学生が入学し、学生の学習目標も多様化している。これら多様化した学生を受け入れている大学に対しては、特に学部段階での教育について、多様な学生のニーズに十分に応えるカリキュラム編成や柔軟な教育組織の設計、あるいは、学生の学習の充実のための具体的方策が求められている。総合社会システム学科も、このような時代の要請に応える学科として構想され、教育制度が設計されたのである。
 すなわち、学生は従来の学科の枠を越えた7つの履修コース(夜間主は2つの履修コース)から、自らの関心と将来の職業選択に応じてコースを選択し学習をすることができるのである。法律系の科目も、市民社会システムコース、産業社会システムコース、公共社会システムコースのコースコア科目となっている。個々の法律系科目の提供や講義も、総合社会システム学科の教育方針に沿って行われている。例えば、すべての科目を2単位としてセメスター制度をとること、他の法律科目を履修したことを条件とせず、その科目の中で理解し完結する講義を行うことである。
 他方、7つの履修コースの中には、特定の分野を集中的に学習し、将来専門家を目指しうるコースも設定されている。法律コースがそれである。琉球大学は、ほぼ毎年司法試験の合格者を出し、法律専門家も育成するという所期の教育目標を果たしてきた。総合社会システム学科発足後も、法律家を目指し真摯に努力を続けている学生は少なからずいる。これらの学生に対しては、主要な法領域についてもれなく開講し、さらに特に司法試験受験生を対象とした「司法講座・憲法」「司法講座・民法」等、「司法講座」を冠にした講義を8種提供し学習意欲に十分に応える工夫をしてきた。

(2)法科大学院後の学部教育
 以上述べたように総合社会システム学科に統合されて以後の法律教育は、一方において多様な学生のニーズに応える主要な方向と、他方において法律家を目ざす学生のためのより高度な方向を両立させてきた。しかし、法科大学院の発足とともに、後者の教育すなわち学部段階での法律専門家養成の教育は、その使命を終えることになる。司法講座のような司法試験受験者を主たる対象とした講義の必要性はもとよりなく、さらに法律家を暗黙の前提とした、法律の幅広い内容を体系的に深く学ぶカリキュラムの提供も不要となる。
 法科大学院時代における学部段階の法学教育はいかにあるべきか。総合社会システム学科の教育目標である「法律、政治、経済、経営のそれぞれの分野に関する専門基礎知識を基に、学生が将来の進路や関心に応じて、幅広い知識と複眼的、多角的視点を持って卒業していくというカリキュラム」に即した、市民、企業人、公務員にとって必要な法的知識と法的なものの考え方の教育(仮に基礎専門教育と呼ぶ)ということになる。カリキュラムの工夫で現在の半分の提供で目標は達せられよう。
 公共社会コース、市民社会コース、産業社会コースの総合コースを履修する学生をより強く意識したカリキュラムの提供により特定分野に偏らない広い視野を持った学際的な人材が育成でき、さまざまな分野の大学院への進学機会も増加することになろう。
 このような学部の教育は、琉球大学の法科大学院が、法学教育を受けたことを前提としない教育(すなわち全員が3年課程)を行う構想とも整合する。
 さらに、学部における法学教育には、それ以上の需要があることも事実である。司法書士、国家T種試験、国税専門官等の国家試験・資格試験を目指す学生である。また、専門的には法科大学院で学ぶにしても、4年間基礎専門教育ではあきたらない法曹志望学生もいるであろう。そういう積極的に学ぶ意欲を持つ学生も大切にしたい。従来通り、法学の主要な分野を幅広く網羅して深く講義する体系的カリキュラムは不要でありかつ不可能にしても、基礎専門科目を履修し終えた学生に対し少数ではあっても精選された専門科目を毎学期提供することによって、多様なかつ専門的人材を輩出することができる学部教育を行う。

(3)教官組織
 以上のような教育をどうような組織で担うか。現在基本法学講座、法社会システム講座の教官定員は併せて21人である。この全員を法科大学院に移籍し、法科大学院の教官が学部教育も行うという方式もありうる。しかし、他の専攻課程の存在を考慮すると学部の法学教育に責任を持つ教官組織は必要である。21人の現在定員の内12人を法科大学院に移籍し、9人が総合社会システムコースの教育を担うことが妥当であろう。
 現在の総合社会システム学科における最小の専攻課程の教官数が、政策科学・国際関係の10人であること、共通教育における憲法概論の需要の多さを考慮し、1名の純増要求が望まれる。
 現在の基本法学講座、法社会システム講座は法学講座(教授5人、助教授4人)に一本化する。
 共通教育は、新設の法学講座で担う。

(4)学生の教育組織
 学生の所属としての法学専攻課程は従来通り存置する。昼間主法学専攻課程に属する学生は、従来通り、法律コース、公共社会コース、市民社会コース、産業社会コースから自己の希望に沿って履修することになる。
 夜間主の総合法務コースは、夜間主における総合社会システム学科の教育理念と社会的需要さらに経済専攻課程の意向を総合的に考慮し今後検討する。
 総合社会システム学科の学生定員については減の方向で調整する。


4 既存大学院との関係

 人文社会科学研究科は、グローバル時代の要請に応え得る総合的な判断力と将来への洞察力と自らの目標・課題を達成する能力を備えた人間性豊かな高度専門職業人の養成を理念としている。法科大学院の設置後においても、法曹以外の高度専門職業人として法学教育の需要がなくなるわけではない。その観点から人文社会科学研究科の実務法学領域を従来通り存置する。法曹志望者の教育を目指したいわゆる「司法コース」は、法科大学院の設置によりその存在意義を失うので廃止する。
 法科大学院設置後においても予想される需要は次のようなものである。
 @現職の公務員等の有職者の再教育であり、従来から需要が多い。
 A税理士等資格教育の一環としての需要であり、従来から需要が多い
 B研究者を目指すものの教育。本大学院で修士を終了し、他の大学の博士(後期)へ進学した学生は10人近くおり、その中には、すでに公立大学の専任教員となったものもいる。本大学院を終了して大学非常勤講師を務めるものも数人いる。
 C他大学を見た場合今後需要が予測されるものとして、公務員を目指す学生の専門的学習の場としての大学院である。
 法科大学院と人文社会科学研究科は、その目的や教育内容を異にし住み分けることになる。
 法科大学院と学部・既存大学院のそれぞれにおいて講義の相互担当等の協力関係が必要になると思われる。協力が組織的にスムースに行われるよう、連絡会議を設置する。


5 琉球大学法科大学院の基本的枠組

(1)標準修業年限・修了要件
 琉球大学法科大学院では、標準修業年限を3年とする。また、課程の修了要件は、3年以上在学し、93単位以上を修得することとする。法学既修者については、1年以下(30単位以下)を短縮するという例外は、設けない。このことは、法科大学院への入学者選抜にあたり、琉球大学法科大学院では、法学系学部・法学系学科等の出身者と非法学系学部・法学系学科の出身者や社会人等との間における区別を一切設けず、幅広いバックグラウンドを持つ入学者に、その門戸を徹底して解放することを企図するものである。なお、各年度に学生が履修できる総単位数の上限を定め、概ねそれを36単位から44単位の範囲に設定するものとする。

(2)教育内容
 法科大学院では、法理論教育を中心としつつ、実務教育の導入部分をも併せて実施することとされ、実務との架橋を強く意識した教育を行うべきこととされていることを踏まえ、体系的に教育課程を編成すべきことが必要と考えられている。そこで、こうした教育課程の編成については、例えば、中央教育審議会大学分科会法科大学院部会等において、現在、その有力なあり方が検討されているところである。そこで、琉球大学法科大学院においても、こうした有力なあり方の検討を基に、教育課程の編成を図ることが必要かつ有益であると思われる。そこで、以下では、こうした検討を踏まえ、現時点における琉球大学法科大学院の教育課程の内容を明らかにしたい。なお、以下の各科目群の内、A.群以外の科目群の年次配当については、さらに検討中である。

A.法律基本科目群(合計54単位必修);1年次・2年次に配当(なお、法律基本科目群の必修単位数の加重については、15% 以内を目処に、さらに検討中である)
  a.公法系(憲法、行政法等の分野に関する科目);合計10単位
   (内訳)
     1年次
      ・前期 統治の基本構造‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2単位
      ・後期 人権と国家作用‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4単位
     2 年次
      ・憲法総合‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2単位
      ・行政法総合‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2単位
  b.民事系(民法、商法、民事訴訟法等の分野に関する科目);合計32単位
   @民法;合計12単位
   (内訳)
     1年次
      ・前期 契約法を中心とした取引法に関する民法‥‥‥8単位
       (なお、従来、物権法は独立した科目とされることが通例であったが、その主要部分である物権変動の問題は、契約による権利変動の問題として、また、担保物権の問題は、人的担保とあわせて、債権の履行確保の問題として、この中に位置付けられている)
      ・後期 不法行為法及び他の法定債権関係法‥‥‥‥‥2単位
          家族法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2単位
   A商法;合計4単位
   (内訳)
     1年次
      ・後期 会社法を中心とした科目内容‥‥‥‥‥‥‥‥4単位
   B民事訴訟法;合計4単位
   (内訳)
     1年次
      ・後期 判決手続を中心とした科目内容‥‥‥‥‥‥‥4単位
   C民事法総合;合計12単位
   (内訳)
     2年次
      ・前期 民法総合‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥合計4単位(2単位×2)
          商法総合‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥合計2単位
          民事訴訟法総合‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥合計2単位
      ・後期 商法総合‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥合計2単位
          民事訴訟法総合‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥合計2単位
  c.刑事系(刑法、刑事訴訟法等の分野に関する科目);合計12単位
   (内訳)
     1年次
      ・   刑法(刑法総論及び刑法各論)‥‥‥‥‥‥‥6単位
     2年次
      ・   刑事訴訟法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4単位
      ・   刑事法総合‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2単位

B.実務基礎科目群(合計9単位[5単位相当必修+4単位相当選択必修])
   (内訳)
  a.必修科目;5単位
      ・法曹としての責任感・倫理観を涵養するための教育内容‥‥2単位
      ・法情報調査‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥1単位
      ・要件事実と事実認定の基礎に関する教育内容‥‥‥‥‥‥‥2単位
  b.選択必修科目;4単位
      ・a.の必修科目以外の教育内容(例えば、法文書作成、模擬裁判、ロイヤリング、クリニック、エクスタ−ンシップ等)が考えられるが、琉球大学法科大学院では、前述した設置計画書の2で指摘されている琉球大学における法曹教育の特性の内容を反映して、例えば、クリニックとして基地での渉外事件を担当したり、基地内へのインターンシップを行うこと等が、考えられる。

C.基礎法学・隣接科目群(合計4単位[4単位選択必修])
   (内訳)
      ・一般的には、例えば、法哲学、法史学、法社会学、比較法学、外国法、政治学、法と経済学、公共政策、政治学・経済学科目等が考えらるが、琉球大学法科大学院では、例えば、法哲学、法と経済学、法医学、日米関係史、島嶼経済学、アメリカ法等が考えられる。この内、特に、アメリカ法については、将来、ハワイ大学ロースクール等の海外の法科大学院との提携関係の強化・確立を視野に入れるとすれば、例えば、ハワイ大学ロースクール等と教官の相互交流等を行うことにより、ハワイ大学ロースクール等の教官により、英語による科目提供がなされることが考えられる。

D.展開・先端科目群(合計26単位以上[26単位以上選択必修。ただし、修了要  件として必要な総単位数の概ね4分の1から3分の1程度がこれらの科目群に配当さ  れることが望ましいと考えられる])。
   (内訳)
      ・一般的には、例えば、労働法、経済法、税法、倒産処理法、国際私法、知的財産法、国際取引法、環境法等が考えらるが、展開・先端科目群については、各法科大学院の創意工夫による独自性・多様性が発揮されるべき分野と考えられていることから、琉球大学法科大学院では、前述した設置計画書の2で指摘されている琉球大学における法曹教育の特性の内容を反映する科目内容が望ましいものと考えられる。そこで、具体的には、労働法、税法、倒産処理法、国際私法、知的財産法(沖縄県への先端科学技術分野を中心とする大学院大学の設置も反映)、国際取引法(沖縄県にしか存在しない FTZ制度や金融特区制度等も反映)、環境法、沖縄戦後法制史、米軍基地に関する法、人間の安全保障に関する法、国際人権法(いわゆるアメラジアン問題等の沖縄県に特有の問題も反映)、高齢者福祉に関する法、マイノリティに関する法(女性の人権に関する法的問題を含む)、サイバースペースに関する法等が、考えられる。

(3)教育方法
 法科大学院では、教育方法について、一般的に、事例研究、討論、調査、現場実習、その他の適切な方法により授業を行うものとし、双方向的・多方向的で密度の濃いものとすべきことが必要と考えられている。そこで、琉球大学法科大学院においても、例えば、できる限り、レクチャーメソッドに加え、ソクラテスメソッドも取り入れながら、ケースメソッド、プロブレムメソッド等を適宜使用し、授業の提供を行うよう、工夫を図るものとする。

(4)入学者選抜
A.基本方針
 これからの法曹には、経済学や理数系、医学系など他の分野を学んだものや、社会人としての経験を積んだものを広く受け入れることとなる。琉球大学法科大学院は、すべての学生に対して3年間の履修を義務づける。他大学の例のように、法学部出身者に対し2年間の履修を、他学部出身者には3年間の履修を義務づける2コース制をとらない。したがって、選抜試験も2種類(法学部出身者に対する法律科目の試験とそれ以外の学部出身者に対する法律科目を課さない試験)とせず、全出願者にすべて同一の試験を課す。

B.試験の内容
 すべての出願者に、法科大学院の科目の履修を前提として要求される判断力、思考力、分析力、表現力等の資質を試すため、適性試験を行なう。この適性試験は全国共通のものとなる予定である。
 次に、面接試験を行ない、特に、人権の担い手である法曹としての人格的適性を見る。
 小論文試験も課す。とくに法曹として要求される適格な表現力の能力を見る。
 その他の判断資料として、学部の成績、大学でのクラブ活動歴、社会人であれば職歴、ボランテイア活動、職場・大学の推薦書、志願書(大学院志望の理由、特筆すべきこと)、TOEFLの得点、その他を考慮する。

C.定員
 学生定員は各学年50名とする。

D.地元出身者への配慮
 本法科大学院は、国立で授業料が比較的安く、また法学部出身者の2年コースをおかず、すべての学部、社会人に公平に開放されるため、日本全国から多数のものが出願してくることが予想される。沖縄に法科大学院を設立する趣旨は、地元において活躍する地元出身の法曹を育成することであることにかんがみ、地元出身者の合格について十分な配慮が為された選抜試験が考慮されるべきである。

(5)教員組織
 設置基準の最低数に加えて、本大学院の特質に応じて設ける科目を教えるのに必要な要員を確保する。小人数で密度の濃い教育を行なうにふさわしい数と質の教員が必要である。
 教員数は、学生数と科目数から、当面、専任教員を12名とするが、琉大独自の特色科目を提供する場合は、更に数をふやすこともありうる。専任教員のうち3割を実務家教員とすると、4名が実務家、8名が研究者ということになる。
 現在の法学専攻教官定員のうち12名が法科大学院に移る(うち1名は実務家教員)。3名の実務家教員は外部から採用する。兼職、兼業を可能とする法改正が行われる予定であることを考慮し、実務家は狭義の法曹に限定せず、銀行法務部やシンクタンクでの長い経験をもつ人などの採用が検討されるべきである。
 法科大学院は法曹養成に特化した大学院であるから、将来的には少なくとも実定法科目の担当者については法曹資格を持つことが期待される。従来の研究者が当面実定法科目を担当するにあたっては、すでに沖縄弁護士会の協力により弁護士事務所における実務研修によって実務経験を積むことが検討されている。
 実務家を取り巻く弁護依頼への収入確保等の現状から、実務家教員は流動的になることが予想される。任期を3年として、交代する案などが検討されている。

(6)財政的基盤
 法科大学院は独立採算が基本であるが、沖縄地域の経済的格差を考慮すれば、授業料のみで賄うのは難しく、不足分は同窓会や法曹界、実業界、地方公共団体などから寄付を集めること等も考慮する。

(7)その他
 留学生については、日本語を十分に理解できる学生であれば受け入れ、出身国への法整備支援に視する視点から、丁寧な留学生教育を行う。