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琉球大学教育学部政治学助教授

島 袋 純
Jun Shimabukuro,PhD.
学位:博士号(政治学)1997年4月早稲田大学
専攻:行政学・地方自治論
最近の研究:比較自治制度
履歴
研究実績
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島袋の政治学用語辞典
島袋純政治学ゼミ
ちょっと古い事件だけど10月の参議院選挙制度改革をめぐる国会空転は、、、        
「与党が悪い。」選挙制度改革をめぐる国会空転に関しては、私はこう判断する。

 参議院の空転で、国民の政治不信と政治嫌悪は、さらにひどくなった気がする。何でこんなことになってしまったのか。与党と野党どちらが悪いのか。マスコミの説明も喧嘩両成敗的に「無理矢理法案をごり押しする与党も与党だが、審議拒否という大人気ない対応をする野党もしょうがない」といった物分かり風中立的な評価がほとんどだ。それでいいのだろうか。英国に2年近く滞在して議会制民主主義の母国といわれる国での政治観察の経験をもとに考えてみた私の結論は、、、、

「与党が悪い。」

 まず、選挙制度というは、代議制民主主義においてもっとも重要な政治制度であり、広い意味での憲法制度の一部、あるいは国政の基本構造の一つといって過言ではない。選挙区を時の政権が自らに有利に改正し、さらなる政治腐敗を招いた苦い教訓から、欧米の民主主義先進諸国では、政権の都合によって安易に改正できないようになっている。

 イギリスでも長年慣れ親しんだ小選挙区制を比例代表制を加味した新制度へ変更することが、現在の与党によって試みられている。その手続きを四段階にまとめてみると、第一に「総選挙における選挙公約として選挙制度改革を明確に位置づける」、第二に「権威ある調査委員会を設立して報告書を用意する」、第三に「報告書に基づいて改革案を作成」、第四番目に「改革案を国民投票に附する」という周到なものである。
 
 97年5月の総選挙が第一段階であり、長年の取り組みと国民への周知を経て現在、第三番目の段階である。この段階から国会審議を経て採決が通常の法案だが、憲法改革の一つと見なされるほどの改革である故に、さらに改革案の国民への浸透と国民の承認を求めており選挙制度改革の国民投票も近い将来行われる予定である。

 数で言えば英国庶民院の三分の二を制する圧倒的与党でさえも、重要な政治制度の変更について、国民と約束(総選挙において公約とする)もせずに、国民の意見を聞くこと(国民投票)もなしに与党の判断だけでごり押しすることはできない。もしこのような手続きを無視して与党が超短期間で法案通過をごり押しするのならば、国民は、民主主義を守るため抵抗権、革命権を発動し国会に押し寄せ実力で阻止するだろう。

 英国の場合も日本の場合と同じように法手続上は、政府・与党に法案提出権があり単純過半数で議会を通過すれば、法的問題はなく法律は成立する。上の四つの手続きは法律上定められた手続きではない。

 しかしながら議会手続きに関しては、法律には書かれていないが、民主主義を維持するのに守らなければならない不文律の掟がある。書かれていないから重要ではないのではなく、書いて表すまでもなく常識として慣習として守らなければならない最も重要な部分である。英国では"Constitutional Convention"といい、日本でも「憲政の常道」と呼んでいた。これを侵すことは、民主主義、議会制民主主義を破壊することにほかならない。

 自民・公明の連立与党は、審議手続きとして法的問題はないとして選挙制度改革法案の提出と強行採決に踏み切ったが、前例のないできごとだと言われている。民主政治上の不文律の掟が破られたわけである。つまり、日本でも守られてきた民主主義の原則は、また一つ破壊された。

 マスコミはこの意味を正確に理解して国民に伝えるべきである。喧嘩両成敗的な「どっちも悪い」評論は、百害あって一理もない。民主政を守る上でのマスコミの健全な権力批判という役割を放棄しており、国民の政治不信を煽るだけだ。与党による今回の選挙制度改革法案の提出と参院通過は、民主政治における慣習上の適正な手続きを無視し、破壊するものである。これほどの重要法案を選挙公約で事前に掲げることもなく、国民への周知もなく、選挙直前対策的に国会に持ち込んでは決してならない。これを侵した「与党が断然悪い。」
 


 
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