声明 沖縄県知事による普天間基地の県内移設容認を強く批判する

一、 石川副知事が今日午前、名護市長に面会し、また、稲嶺県知事が午後記者会見を行い、普天間基地の県内移設を容認し、その移設先をキャンプシュワブ水域内の名護市辺野古沿岸域に設定することを発表した。私たちは、普天間基地の県内移設に反対し、米軍基地の全面撤去、米軍の米本国撤退を求める立場から、稲嶺知事の県内移設受け入れの表明に強く抗議する。

一、 移設先とされた名護市辺野古地先は先の海上基地候補地と同じ区域であり、すでに名護市民投票の結果、経済振興策が期待されようとも普天間基地の移設を認めないことが、住民多数の意思として確認されている。また、新たな基地の建設は、1995年の県民大会や、1996年の県民投票においても確認された、基地の縮小・撤去の方向を求める県民意志に真っ向から反するものである。たびたび示されている沖縄県民・名護市民の総意に反する稲嶺県政の決定は、民主主義の原理を根本から踏みにじる暴挙として、厳しく批判されるものである。

一、 名護市辺野古地先への海兵隊基地の建設にかかわって、稲嶺知事は、これが基地の整理縮小になること、軍民共用空港とすることができること、訓練空域を海上に設定できることなどの利点をあげた。しかし、新設基地は、現行のCH-46ヘリを飛躍的に上回る垂直離着陸機MV-22オスプレーの基地となる。また、滑走路の大きさと強度によっては、大型輸送機C-17AグローブマスターIIIの運用も可能となる。さらに、新設基地は、強化が予定されている北部訓練場(ジャングル戦闘訓練センター)、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセン、ブルー・ビーチ上陸訓練場、ホワイト・ビーチ、伊江島などの海兵隊の基地・訓練施設の中核に位置することから、それぞれの基地とも連動して海兵隊の機能が飛躍的に強化されることは必至である。
 普天間基地の航空部隊は、年間3〜5万回以上の離着陸を行い、しかも、その訓練内容は、敵地への侵略を前提とした実戦訓練が展開されている。このように、発着頻度も高く、運用内容も危険な軍用空港を民間機が共用することは、危険に過ぎ、定時運航も保障されない。したがって、軍民共用は実現性も乏しく、また、行うべきでもないものである。
 新設基地の訓練空域が海上に設定され、普天間基地よりも安全であることがいわれている。しかし、現に普天間基地所属の航空機は、北部訓練場(ジャングル戦闘訓練センター)、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセン、ブルー・ビーチ上陸訓練場、ホワイト・ビーチ、伊江島、鳥島訓練場など、既存の基地で広く訓練を行っており、それぞれの基地周辺でたびたび重篤な事件・事故を起こしている。したがって、普天間基地が過疎地の海岸に移転したとしても、事件・事故の危険性や爆音被害は、軽減されるものではない。むしろ、海上に新たな訓練空域が設定されることこそ、基地機能強化の現れであり、県の見解は矛盾に満ちている。

一、 稲嶺知事は、辺野古地先への基地移設受け入れの条件として、予定地周辺の生活環境や自然環境に十分配慮することを政府に申し入れるとしている。しかし、新設基地予定地・海域は、沖縄県の調査や、海上基地建設が問題となった際の防衛施設庁の調査においても、貴重な生物種が多数見いだされている。また、生活環境・自然環境への重大な影響については、海上基地の影響を調査した沖縄米軍海上基地学術調査団(1997年5,11月、木原正雄団長・本会の研究者などで構成)の報告でも明らかにされている。工法をかえても、既に提起されている生態系や周辺住民への影響は本質的に変化するものではない。このような報告が既に出され、生活環境・自然環境に悪影響を及ぼすことなく基地建設を行うことが不可能であることが明確でありながら、その対策を政府に要望するので心配はないとの見解を取る稲嶺知事の姿勢は、県民を欺くものといわざるを得ない。

一、 新設基地の使用期間を15年とするよう求めることを、稲嶺知事は表明した。しかし、新設基地は運用年数40年、耐用年数200年とすることが米軍の方針であり、日本政府も、たびたび安全保障上の理由から、使用期限を区切ることは困難である旨表明している。このような意向を無視して、基地の運用を15年に区切ることは期待できず、県民に幻想を与えるのみであろう。また、永久使用を認められないが、15年なら認められるとの根拠も不明である。危険で環境をも破壊する基地であれば、15年といわず即時に撤去されるべきものである。基地の建設・維持が、国民の税金でまかなわれることを考えても、建設そのものを拒否することこそ、道理ある姿勢といわねばならない。

一、 以上のように、普天間基地の名護市辺野古地先への移設は、民主主義、平和擁護、自然環境の保全、住民の生命・健康の保障など、何れの観点からも到底容認されるものではない。
 新ガイドライン体制下で、沖縄がふたたび、海外出撃の拠点となることを拒否する。「命どぅ宝」を原点とする沖縄県民の平和の悲願は、軍事によらない国際平和の実現であり、戦後初めて、「自らの意思」で基地を建設させることを、県民は許さないであろう。
 日本科学者会議沖縄支部は、普天間基地の県内移設・強化の決定を厳しく批判し、今後とも、科学者の社会的責任を自覚し、沖縄県民や、全国・世界の平和を求める人々と連携して、基地建設を許さず、米軍基地の全面撤去を求める取り組みを進める。

 1999年11月22日
日本科学者会議沖縄支部


  移設に関する公開質問状('00.2.14)  公開質問と知事からの回答('006.19) 

回答についての見解('00.7.10)  サミット開催にあたっての声明('00.7.19)

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