II. 調査の方法及び結果


2-1. 藻場について
2-1-1 現地調査

 辺野古部落の南西岸から東南東向けに300mの測線を張り、50mごとの6区画について調査した。この水域は今回の基地拡張に対応した藻場であり、第1回調査では観察しなかった。(図-1:前ページ)

2-1-2 観察結果

海岸からの距離 状況
0〜50m 海底:岩盤。群落:ホンダワラ、ウスバウミウチワなどが出現した。
50m〜 海底:砂。群落:ボウバアマモの大群落、ベッドがパッチ状に出現した。沿岸での海草藻類の被度(適地面積割合)は50〜75%。
群落:200m以遠ではボウバアマモに加えてマツバウミグサ、リュウキュウベニアマモ(適地面積割合:20〜30%)も出現した。
 全体として、海草藻類の繁茂状態は良好であった。なお、ボウバアマモは母体上の種子が発芽中であった。




写真-1 (上) ボウバアマモの大群落



写真-2 (上)発芽中のボウバアマモ(採集資料)



写真-3 (左)発芽した種子の拡大図

2-1-3 政府資料へのコメント

1) 海草藻類の分布は連続的ではなく、ベッド(藻が群生する褥状の場所)が断続的に連なっている。したがって、政府資料にある、連続分布をイメージさせる表現の「被度」ではなく「適地面積割合」とするのがよい。

2) 政府報告書にあるような、1997年調査と2000年調査との海草藻類分布量の単純比較は、季節変化を考慮しておらず、無理がある(97年は5,6月、2000年は同年12月〜01年1月の調査)

3) 政府は、藻に影響あれば他へ移植するとしているが、これは極めて困難な作業と思われる。
 (1)世界的にも未経験であり、米国では失敗(2000)。
 (2)現在ある藻場への移植は不合理であり、それは、あたかも、やんばるの森に苗木を植林するようなものといえる。強い種・個体は生残しても、量として増えない。

4) 基地ができて沖から来る波の動きが小さくなることを肯定的に評価しているが、これは必ずしもよいことではない。現勢の自然の状態が好適であるからそこに繁茂しているのであって、改変された条件がより良いとの保障は何もない。

5) 藻はジュゴンのためだけにあるのではない。藻は海を安定させたり、きれいにする。また、小型の動植物が着生するなど生息場所をうみだす。死んでも海の栄養となる。酸素の供給は本質的に海の動物に必要であり、稚魚の生育などを保証する。

6) 沖縄本島の最大級の藻場*(234.8ha)としての、他に代え難い環境条件を持つ。
  *表. 沖縄島周辺の海草藻場の位置と面積(ha) (当間ら(1991)による)

沖縄島周辺の海草藻場の位置

面積(ha)
与那城町(海中道路南側、宮城島太平洋側)

339.8

金武町(金武、屋嘉など)

122.8

宜野座村(松田など)

30.4

国頭村東側(奥、安田など)

14.0

名護市東側(嘉陽・辺野古〜久志)

234.8

具志川市(具志川から海中道路寄り)

78.1

石川市(金武寄り)

21.7

東村(川田など)

9.5


調査団の構成 

(前ページ)調査目的 調査日程 調査報告 I.調査全体の構想

(次ページ)2-2. サンゴについて

 /2-3. プランクトンについて  /2-4. ジュゴンについて 2-5. 流れのシミュレーションについて  /2-6. 各工法の安全性について 2-7. 各工法の環境への影響について 2-8. 基地機能拡大と住民の被害について 2-9. その他の重要事項 III. 結論

JSA沖縄ホームへ