浦添新軍港問題にかんする緊急アピール


日本科学者会議沖縄支部 常任幹事会
沖縄県平和委員会
原水爆禁止沖縄県協議会

 森首相は一月三一日、国会施政方針演説で、SACO最終報告の着実な実施と、有事法制の検討開始を表明しました。これは、政府が、那覇軍港や普天間基地などの移設・強化をひきつづき最優先に進めるとともに、日本が戦争を行なうための法整備を始めることを意味します。在沖米軍基地の飛躍的な機能強化と、日本国憲法の平和・民主主義の諸原則を踏みにじる戦争態勢づくりが同時に進められていることは、21世紀の沖縄と日本、世界の進路にかかわる重大な事態です。

◎ 浦添軍港は深く大きなふ頭をもつ

 米軍は、最新の荷揚げ設備をもうけた、水深13〜15メートル、長さ五五〇メートルと三五〇メートルの二つのふ頭をつくるよう要求しています(琉球新報1999.2.19.報道)。このような軍港がつくられるならば、現在米軍が保有しているほとんどすべての艦船が浦添新軍港に入港できることになります。横須賀、佐世保、ハワイなどの海軍基地に直結します。

◎ 原子力空母も入港できるようになる

 第一に、最大の軍艦である航空母艦の入港が可能となります。現在、神奈川県の横須賀軍港には空母キティーホークが常駐しています。キティホークは、二〇〇八年には最新型(CVNX)の原子力推進空母に交代し、米軍が太平洋に配備している空母はすべて原子力化されます。米軍の主力の原子力空母は、全長三三〇メートル、排水量九万七千トンの巨大艦船で、85機の軍用機と六千人の兵員をのせています。この兵力は、嘉手納基地の航空部隊にも匹敵するものです。浦添軍港が空母が接岸可能な沖縄初の軍港となるという事実だけでも、沖縄の基地機能がいかに強化されるかは、明らかです。(資料出典 米海軍ホームページ)

◎ 人口密集地を巻きこむ核事故の危険

 また、空母のエンジンには二基の原子炉が積載され、20年分のウラン燃料が搭載されています。ホワイトビーチに寄港する原子力潜水艦よりもはるかに大規模なものです。もし、浦添軍港で重大な核事故が発生すると、人口の密集する沖縄本島中南部全域を巻き込んだ致命的な放射能汚染が発生する危険があります。しかも、在日米軍が臨界核事故に対応する設備や能力をもっていないことは、茨城県東海村でのJCOの臨界事故の際の、在日米軍への協力要請の回答から明らかです。

◎ 浦添が有事の出撃、兵器・物資補給の拠点に

 第二に、米軍の強襲揚陸艦隊と事前集積艦隊の寄港が可能になります。
 強襲揚陸艦隊は、敵国の海岸への上陸作戦を行う艦隊であり、日本の国土防衛とは何の関係もありません。それは、長崎県佐世保を母港とするエセックスを中心とする艦隊で、垂直離着陸機ハリアーや普天間基地の軍用ヘリ、約二千人の海兵隊員をのせて、世界に出撃しています。ホワイト・ビーチと比べて、浦添軍港は大規模で荷揚げ設備も完備します。しかも、西太平洋で最大最強の補給基地であるキャンプキンザーに隣接します。機能・位置とも米軍に最高の条件であり、浦添軍港が海兵隊の海の玄関になることは必至です。
 また、「海上の兵たん基地」といわれる事前集積艦隊は、湾岸戦争のときには那覇軍港をフルに使用しました。現在、艦船の大型化に伴い那覇軍港を使えなくなっていますが、浦添軍港は数万トンクラスの大型補給艦がもっとも効率的に使用できる設計です。キャンプキンザーと一体化して、米国の戦争時には浦添軍港が兵たん(後方支援)の拠点となります。周辺事態法で、自治体や民間も「動員」できます。

◎ 核兵器持ち込みもフリーパス

 浦添軍港には、核兵器の持ち込みの恐れもあります。これまでに明らかにされた日米核密約によれば、「第七艦隊は海洋を拠点としているので…(事前)協議の法的必要性はない。」「「事前協議」は…合衆国艦船の日本領海や港湾への立ち入りにかんする現行の手続きに影響を与えるものとは解されない。」との合意があります。したがって、核兵器を積んだ米艦船が浦添軍港に入港する場合でも、日米政府の「事前協議」でチェックされることはありません。

◎ 日本を世界から孤立させる基地建設

 このように、浦添軍港はキャンプキンザーと結合して、
(1)海軍の一大拠点、
(2)海兵隊の海の出撃基地、
(3)戦時の補給・支援の最前線基地、を米軍は手に入れます。しかも、沖縄の歴史上初めて、県民が基地を呼び込むことになります。「県民合意」で軍港が建設されたら、米軍に横暴な使用をされても苦情も言えなくなります。
 また、このような浦添軍港の建設を認めれば、キャンプキンザーをはじめ在沖米軍基地全体を固定化し、海兵隊はじめ米軍部隊の撤退の実現も遠のきます。これは、沖縄県議会や浦添市議会の決議にも反する方向です。
 いま、国際問題を話し合いで解決することが、世界の国々の主流になっています。ところが、米国は圧倒的な軍事力によって自国の利益を押し通す政策を続けています。このような姿勢は、国連やさまざなま国際会議でも各国の批判を受けていますが、日本政府はこうした米国に同調して、軍事同盟を強化し、国際問題を武力解決する道を進んでいます。
 海兵隊をはじめ在日米軍は、いまも世界に次々と派遣されています。それに加え、自衛隊の出動や、有事には民間や自治体も「動員」される法律整備が進んでいます。浦添軍港の受け入れは、国際関係においても、話し合いによる解決の道を閉ざし、日本を国際的に孤立させる道をひらくものです。

◎軍事・公共事業だのみから、福祉・教育と地場産業中心の社会へ

 そもそも、西海岸の開発計画は、浦添市、那覇市、沖縄県に重い財政負担を強いる大規模公共事業であり、その負担は私たちの次の世代がになうことになります。本土でも黒字の大規模港湾はなく、西海岸開発のあり方そのものに疑問があります。その上、自然環境破壊や基地強化・固定化を招くことになります。
 私たちのかけがえのない財産である沖縄の生態系をまもり、自然を活かした産業をつくり育てることこそ、21世紀の沖縄が進む方向ではないでしょうか。国や自治体はそのための政策を、県民と一緒に進めるべきです。
 このように、浦添市が進めてきた福祉・教育、地場産業重視の政策を発展させることこそ、未来をひらき、市民の暮らしをよくし、生命財産をまもる道ではないでしょうか。基地強化・大規模公共事業と、平和と生活密着の自治の発展と、いま、どちらの道を選ぶのかが、沖縄の未来を決める分かれ道になっています。


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