日本科学者会議(JSA)沖縄支部 1998.4

琉大セクハラ・違法実験等問題調査委員会 速報

 判決:違法な性的暴力・違法実験・データ捏造を認定

  琉球大学の大学院に在学していた外国人留学生Bが、博士論文の指導教官であった農学部助教授Aから性的嫌がらせ・暴力行為を受けたほか、違法・違反実験を強要された、また、共著の論文に捏造データを無断で入れられたとして、1995年6月に損害賠償を求めた民事訴訟の判決が、去る3月27日那覇地方裁判所で言い渡された、判決の概要は、すでに県内外の新聞等で報道されているが、本速報では、判決の内容をより詳しく報告する。以下の文中において、原告とはB留学生のことであり、被告とはA助教授のことである。

1 判決の要約

 判決では、1993年11月頃原告が被告の求婚を断った後、12月初め原告がワープロ作成中被告が突然後ろから原告を強く抱きしめキスをしたこと、その10日ほど後、原告が被告に論文をチェックしてもらうため被告の教官室を訪ねた際に、被告が原告のセーターを無理やり脱がせようとしたこと、12月中旬研究室の忘年会の後、実験のために戻った実験室の無菌室において被告が原告を床に押し倒して、原告の服を脱がせようとした事実を認定している。

 結論として、「(上記の強制的なキスや床に押し倒して原告の服を脱がせようとした性的暴力などの)事実を始めとする被告の原告に対する一連の言動は、社会通念上許される限度を超えるものであって、原告に対する人格権侵害として、違法性を有するぺきものである。」(判決58頁7〜10行引用)としている。

1−2 データ捏造だと判定

 問題の論文の表1について、原告は、実験ノートといくつかの論文を参照して、被告が捏造したと主張しているのに対し、被告は、表中の8種類のペプチドは論文中の図1(シーケンサー分析によって得られたアミノ酸配列の結果)から数えたもので、他の5種類のペプチドは被告が別途行った加水分解によるアミノ酸分析によって算出したものであるとし、さらに、表1は論文における重要性が低く、あえて捏造する意味が無いと主張している。

 これに対し、判決では、8種類のペプチドについての被告の主張は、論文中の表1は加水分解実験に基づいて作成した表であると注記されていることと反すること、また、それらのペプチドについて「本文中の図1から正しく数えたとは考えられないほど随所に誤りがあることが認められ、配列から正しく数えた結果を記載したとも考え難い」(69頁10行〜70頁1行)としている。結論として「本件論文の表1は注記の通りに作成されたものではなく、また被告説明のとおり算出されたものでないというぺきである」(70頁、2〜3行)とし、明確にデータ捏造を認めた判決となっている。

1−3 違法・違反実験の事実を認定

一連の放射性同位元素についての違法実験および遺伝子組換えについての違反実験の事実については、被告本人も認めており、判決でもこれを認定している。

2 琉球大学に問われるもの

 3年前、この事件が明るみに出た後、琉球大学は、性的嫌がらせについての調査委員会(島袋鉄男委員長)および違法・違反実験についての調査委員会(彌益輝文委員長)を設けた。調査結果は、性的嫌がらせについては、その事実があったかどうか不明というもの、また、違法・違反実験については、その事実をA助教授も認めたというものであった。その結果を受けて、琉球大学は助教授に対し、「戒告」という軽い処分を行い、この事件を終了させようとした。

 一方、データ捏造については、琉球大学は、琉大農学部が参加する鹿児島大学大学院連合にすべてを任せ、琉球大学が主体的に調査委員会を設けることすらしなかった。 そして、データ捏造についての処分は、現在まで何も行われていない。このような琉球大学の対応に追い詰められたB留学生は、A助教授に対する処分が公表された後の1995年6月、A助教授を相手取って民事訴訟を提訴した。その結果、違法・違反実験に加え、新たに、違法な性的暴力およびデータ担造の事実が明確に認定された。今回の判決に対し、被告のA助教授は控訴しておらず、この判決は、去る4月10日付をもって確定した。

 判決という社会的に公な形で、大学という教育の場で行われた違法な性的暴力およびデータ捏造が、新たに認定されたことになる。この判決を受けて、琉球大学が今後どのような対応を取るべきか。 大学に問われているものは重い。

琉大セクハラ・違法実験等問題調査委員会 速報2号

討論資料:琉球大学農学部Y助教授事件に対する最近の大学の対応と問題点

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