4 農学部教授会の決議と「二重処分の禁止」

前回の処分理由

(1)違法違反実験

(2)留学生から性的嫌がらせを受けたと訴えられたこと。このような事態を引き起し、社会の疑惑を招いたこと。 以上の二点は、公務員の服務義務に反し、官職の信用を著しく傷付けた。

新たな事実

(3)性的暴力(レイプ未遂を含む)

(4)データ捏造

争点

 上記の(3)の性的暴力の事実が、前回の処分理由の(2)の「(性的嫌がらせの訴えが出される)ような事態を引き起し」に含まれているか否かが争点となる。

 調査報告書では「不明」としているのであり、それを受けての評議会決定であるので、上記の(3)が含まれたとは考えにくい。

 今回の判決は、留学生に対する「人格権の侵害」を認定している。前回の処分では「官職の信用を著しく傷付けた」ことを理由にしているが、「大学で生じた人格権の侵害」という最も重要な点は、処分理由にしていない。

 また、(1)の違法違反実験については、3年前の処分では、管理者としての責任を問われただけである。最も重要な点は、違法違反実験が留学生の博士論文指導およびおよび修士学生の修論指導の過程で行われたということである。この点についての処分についても、今回は考えるべきである。

 何よりも明白なのは、(4)のデータ捏造についての処分については、琉大では、これまで一度も審議さえしていないということである。3年前、砂川学長も「大学院連合の調査結果が出れば別途検討する」旨のことを言っている。どの様な理由を持って来ようとも、データ捏造についての処分を行わないということはできない。

データ捏造処分と前例

 データ捏造は、モラルの問題であり、日本の大学でデータ捏造の事件が生じた場合、表に出る前に本人が辞職するか、表に出てしまったらすぐに辞職した例が多い。

 今回の場合の特徴は以下の通りである。

・ データの捏造が裁判という公の場で認定された。

・ 指導している学生を巻き込んでの捏造事件であり、教育の場で行われた。

・ Y助教授のデータ捏造とそれを学位論文に入れるよう指導されたことにより、留学生はその学位が全て駄目になり、新たに3年かけて全く別のテーマで学位を取らなければならなかった。

 以上の様にY助教授の行為の内容はあまりにもひどい。研究者、教育者にとってデータ捏造は最も基本的モラルの欠如を示すものであり、前例が無くても、データ捏造だけでも「懲戒免職処分」を課すことができると考える。琉大が、データ捏造だけでも懲戒免職処分に相当するを表明すれば、データ捏造等に対する琉大の厳しい態度を示す良い前例を作ることになる。

 性的暴力と処分の程度

 社会の常識では、レイプ未遂の行為があれば、即、懲戒免職処分である。これは、大学においても当然であり、多くの法律家も認めるところである。また、前例も多い。

必要な基本資料

 上記の争点からすると必要な資料は以下の三点である。

・ 3年前の処分説明書

・ 性的嫌がらせに関する全学調査報告書

・ 去る3月27日に言い渡された判決文

 国家公務員法には、処分説明書説の交付の項があり、それについての人事院判定(昭39.10.31 人指 3−22)には、「およそ懲戒処分において問責の対象となる事実は、処分を行おうとする際にはすでに特定されていなければならないものであり、処分時に考慮されていなかった事実を処分後に新たに処分理由に追加するごときは、懲戒処分の本旨にもとるものといわなければならない。」と規定し、処分時に明らかになった事実のみが処分理由であると明確に規定している。

 3年前の処分の際に明らかになった事実は上記の報告書を見れば分かるし、さらに、処分の理由は上記の処分説明書に記述されている。よって、この両者に、特に大部分を処分説明書に基づいて議論することが不可欠である。

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