2003年12月12日

琉球大学人事制度ワーキンググループ

座長 上原 剛  殿

 

 

 

                     琉球大学教授職員会長

                     屋富祖建樹

 

 

国立大学法人琉球大学職員就業規則(案)に対する

琉球大学教授職員会の第一次意見

 

 

 2003年10月30日付けで依頼のありました国立大学法人琉球大学職員就業規則(案)に対する意見提出依頼に対し、教授職員会において検討した結果を送付します。

 なお、就業規則の内容が多枝かつ詳細に渡るため、限られた期間での全体的検討ができませんでしたので、今回、就業規則本則を中心とした第一次意見を取りまとめて提出することと致します。

 

なお、子規定(案)および非常勤職員就業規則(案)に対する意見も順次提出すことと致しますが、今後の検討に当たって以下の点を要望を致します。

 

@    第一次意見についての貴委員会への口頭での説明を行なう機会を作って頂きたい。

真摯な意見交換を行い、互いに協力してより良い就業規則を作り上げたい。

A    全学説明会を開催して頂きたい。その際、国公労、病院労組および教授職員会の

意見も述べる機会を作って頂きたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・以下,本学における就業規則案についてのコメントを,関連箇所に記載していくことにする。

 

 

                                                                     平成000

国立大学法人琉球大学職員就業規則(案)

 

・「国立大学法人琉球大学就業規則」あるいは「国立大学法人琉球大学教職員就業規則」としたほうがよいのではないか。2条のコメント参照。

                                                             

                             平成16年4月1日 

                             制       定 

 

 

 T.まず,国立大学法人における就業規則の作成にあたって,一般的に留意されるべきと考えられる点を記しておきたい。

 

 1.公務員法の世界から労基法・労組法の世界へ  国立大学法人への移行にともない,周知のように,教職員は公務員としての身分を失う。公務員法の世界から,労基法・労組法の世界に移行することになる。就業規則を作成するのもそのためである。このような移行を踏まえて,公務員法上の概念の使用は避けるべきである。これはたんに用語の問題にとどまらない。公務員法は行政法の一環として,権力関係・上下関係を前提にした位階層的な内容と色彩をもっている(たとえば,服従義務や退職などの法的構成に顕著である)。これに対して,労基法・労組法は労使の対等関係を前提にする。このため,就業規則においては,労使の対等関係を前提にした用語法・概念構成を用いるべきである。

 

 2.労働条件に関する現行水準の維持  非公務員型の国立大学法人が選択されたのは,人事制度の設計における各大学の裁量性を高めるためであるといわれる。各大学は教育研究に関するそれぞれのヴィジョンとの関係で,人事設計を行うだけの力量をもつことが求められている。しかしながら,教職員は,公務員としての労働条件水準が継続するであろうという期待をこれまでもっていた。公務員試験にパスして大学を職場に選択した職員については,よりいっそう強くこのことがあてはまるだろう。このような期待に大きく反することは,さまざまな法的トラブルのもとになるとともに,教職員の職務等に対するインセンティブを損ないかねない。このような観点から,国立大学法人への移行にはソフトランディングを選択して,労働条件には現行水準が維持されるように努めるべきであろう。

 

 3.非公務員型への移行を好機としての改善  その一方で,国立大学という国の機関としての位置づけや,制度改変に関する過去の経緯などから,これまで余儀ないものとされてきた任用上の制度・取扱いが存在する。しかし,労基法・労組法の世界では,公務員法の世界におけるような制約がないために,これまでの制度・取扱いを維持することが不適法,あるいは少なくとも法の趣旨からして望ましくない場合がでてくる。非常勤職員についての取扱いがその典型例であろう。常勤職員と非常勤職員との処遇格差は,正規のポストを占めているか否かでこれまで正当化される傾向にあった。しかし,非公務員型が採用される以上は,両者の関係は民間企業における正社員と非正社員との関係と同じになる。正社員と非正社員との間の平等取扱い・均等処遇という課題は,立法・裁判例の近年における展開にみられるように,さまざまな形で取り組まれるようになっている。このことを踏まえて,非常勤職員に対する処遇を改善していく必要があるであろう。このように,非公務員型の国立大学法人への移行をむしろ好機として,これまでの人事制度に改善を加えるべき点があると考える。

 

 4.就業規則の法的拘束力  以上の諸点とも関連するが,最高裁判例によれば,就業規則の規定は「合理的」でなければ労働者を拘束しない。各規定にいかなる合理性があるかを吟味する必要があるが,一般的にいえば,これまでの労働条件水準を引き継ぐものは合理性が認められやすいであろう。ただし,公務員法に特有の規定を就業規則に定めた場合には合理性がないとされるものと解される。これに対して,新設の規定を設ける場合には,特段の注意が必要である。

 

 5.労働組合・労働協約の役割  公務員法の世界では,労働組合との交渉関係が前提とされていなかった。しかし,非公務員型の国立大学法人においては,労働組合との交渉関係,さらには労働協約の締結,場合によってはストライキが前提とされることになる。就業規則によって労働条件と労使関係にかかわる制度を設計するにあっては,この点を十分にインプットしておく必要がある。

 

 6.世間相場の形成に対する自覚  国立大学法人は多種多様な職種によって運営されている。このような国立大学法人における労働条件決定は,大学の存在する地域や私立大学における労働条件形成に大きな影響を与える。「良い就業規則」をつくることが,社会に対する貢献の1つであることを自覚したうえで,今回の就業規則作成に取り組む必要がある。

 

 

 U.つぎに,「国立大学法人琉球大学職員就業規則(案)」(以下,「職員就業規則(案)」という。)に関連して,総論的に指摘できる点を記しておきたい。

 

 1.別規則への委任が多いこと  労働者が働くうえでのルールを一つあるいはひとまとまりの文書にしたものが,就業規則である。このような文書の作成は,公務員法上は当局側に義務づけられていなかった。しかし,労基法は,就業規則の作成を労働者保護の観点から使用者に義務づけている。このため,就業規則は,その適用をうける労働者にとってわかりやすいものでなければならない。わかりやすさのためには,別規則を細則として位置づけてそれへの委任も必要におうじて行うべきであろう。しかし,これを多用すると,本則となる規則(すなわち,「職員就業規則(案)」)の中身が少なくなり,それを読んだだけでは労働条件の全体像がつかみづらいものとなる。要は両者の方法の間でバランスを図りながら,労働者にとってわかりすくすることにつきるが,少なくとも賃金等の重要な労働条件については,制度設計の原則あるいは中心に位置づけられるような条項を本則に規定しておくのが望ましいと考える。

 

 2.避けられるべき準用  これに関連して,委任を受けた規則(委任を行ったほうの規則とあわせて,全体として就業規則としての法規制を受けることを確認のために付言しておく)において,「人事院規則・・・を準用する」との規定がみられることがある(たとえば,「職員懲戒等規程(案)」)。しかし,国家公務員に適用される人事院規則を準用するというだけでは,就業規則の体をなしていないのではないか。煩雑ではあっても,就業規則のなかに該当規定を記入すべきであろう。さらには,旧文部省の通達を準用しているケースもある(「外国人教師及び外国人研究員等に関する規程(案)」2条・3条)。もはや国の機関ではないのに通達を準用することは,その文書へのアクセスという点でも大きな問題がある(とくに外国人教師・研究員にとっては,この弊害は大きいだろう)。要するに,準用を安易には行わずに,就業規則それ自体のなかに規定をおかなければ,労基法により使用者に課せられた就業規則作成義務を果たしたとはいえないだろう。

 

 3.抜け落ちている規定・制度  その一方で,「職員就業規則(案)」からは抜け落ちている論点がある。気がつくかぎりであげれば(いずれも詳細は別規則で定めることになろうが),たとえば,職務発明を含めた知的財産関係の規定がない。産業界との連携を考える場合に,これは欠かすことのできない規定となるであろう。また,最近議論されはじめている内部告発者の法的保護に関する規定がない。さらに,人事処遇・懲戒処分等に対する苦情処理制度が規定されていない。従業員過半数代表の選出に関する制度も規定しておくのが望ましいと考える。

 

 4.全体の構成の提示  条文数の多い就業規則については,その冒頭に全体の章・節立てと該当条文番号を示しておいたほうが,教職員にとっては関心のある条文を探しやすくなるだろう。現在の「職員就業規則(案)」については,つぎのような体裁のものとなる。

 

 第1章 総則         (第1条−第6条)

 第2章 任免

    第1節 採用        (第7条−第10条)

    第2節 職種及び職務    (第11条)

    第3節 評価        (第12条)

    第4節 昇任及び降任    (第13条−第14条)

    第5節 異動        (第15条−第16条)

    第6節 休職        (第17条)

    第7節 退職及び解雇    (第18条−第28条)

  第3章 給与         (第29条)

  第4章 服務         (第30条−第36条)

  第5章 所定勤務時間,休日及び休暇

    第1節 所定勤務時間及び休日(第37条−第42条)

    第2節 休暇        (第43条−第48条)

  第6章 職員研修       (第49条)

  第7章 賞罰         (第50条−第55条)

  第8章 安全衛生       (第56条−第63条)

  第9章 出張         (第64条−第65条)

  第10章 福利・厚生     (第66条−第67条)

  第11章 災害補償      (第68条−第70条)

  第12章 退職手当      (第71条)

  第13章 雑則        (第72条)

  附則

 

 

   第1章 総 則                                                

 

・総則には,労働憲章に関する規定を盛り込むべきであろう。平等取扱い,差別禁止,個人の尊厳,学問の自由,労働権の尊重,プライバシー保護,安全配慮義務,良好な職場環境の保持に関する配慮義務などが例としてあげられる。公務員ではなくなり憲法の直接適用がなくなるだけに,人権保障規定を充実させる必要があると考える。規定を置く位置としては,第2条のつぎが適当であろう。規定例としては,つぎのようなものが考えられる。

 

(労働憲章)

第2条の2 すべて教職員は,個人として尊重される。

2.本学は,教員の学問の自由を保障する。

3.本学は,教職員の思想及び良心の自由を保障する。

4.本学は,教職員の表現の自由を保障する。検閲及び通信の秘密を犯す行為は,これをしてはならない。

5.本学は,教職員のプライバシーを尊重する。

6.本学は,教職員がその職務を行う権利を保障する。

7.本学は,教職員が職務を行うにあたって,その生命及び身体を危険から保護するとともに,良好な職場環境が確保されるよう必要な配慮を行わなければならない。

8.教職員は,この規則の適用について,平等に取り扱われ,人種,信条,性別,

社会的身分又は門地によって差別されない。

9.教職員は,適正な手続によらなければ,不利益な取扱いを受けることはない。

 

 (目的)

第1条 この就業規則(以下「規則」という。)は,「労働基準法」(昭和22年 法律第49 号。以下「労基法」という。)第89条 第1項の規定に基づき,国立大学法人琉球大学(以 下「本学」という。)に勤務する職員の就業に関して必要な事項を定めることを目的とする。

 

・「第89条 第1項」→「第89条」:条文を参照してください。

 

・「職員」→「教職員」:次条のコメントを参照してください。

 

・大学における就業規則であるから,労基法の観点からの目的規定だけではなく,憲法・教育基本法等の観点からの目的規定も置いたほうが適切だろう。1条2項としてつぎのような規定が考えられる(規定形式は労基法1条2項を参考にした)。なお,5条のコメント参照。

 

第1条 (略)

2 この規則で定める事項は,大学の自治とその公的責任との適正な均衡を確保しながら,自由で公正な真理の探究に基づく研究及び教育を本学において発展させるためのものであるから,本学及び教職員はそれを遵守することによって,高等教育機関に課せられた社会的使命を果たすように努めなければならない。

 

 (適用範囲)

第2条 この規則は,本学の教育職員,事務職員,技術職員,教務職員及び技能職員( 以下 「職員」という。)に適用する。 ただし,本学が雇用の期間又は日・時間を定めて雇用する 常時勤務を要しない職員及び第22条の規定により再雇用された職員の就業については  別に定める。

 

・「教育職員,事務職員,技術職員,教務職員及び技能職員」については,それぞれのカテゴリーを定義する必要性がある。このままでは用語として不明確である(「教育職員」の定義については,「教育職員規程(案)」2条が参考になる)。「事務職員」以下に列挙された職員を処遇上区別しないのであれば,事務職員というカテゴリーに一本化することも考えられる(「任免規程(案)」では「事務系職員」という総称が用いられている)。しかし,技術職員や図書館職員等の専門性を重視して,配転等を含めた処遇における一般職員との区別を行うのであれば,事務職員のカテゴリー分けも意味をもってくるであろう。なお,11条のコメントを参照のこと。

 

・また,教員,職員,教職員というカテゴリー分けのほうが通常用いられているので,それを採用したほうがよい。用語法をこのようにすれば,教員に関する特別規定を,「職員」(本案の定義における)に関する本文の但書という形式にしなくてもすむのではないか。

 

・「別に定める」ではなく,その別規定を明示する必要性がある。

 

・「雇用の期間又は日・時間を定めて雇用する常時勤務を要しない職員」では,いわゆる非常勤職員が対象とされているものと解される。この問題については,ここでまとめて記しておきたい。

 

 1.非常勤職員に関する就業規則案の構成・内容  非常勤職員には,「日々雇用職員」といわれていたものと,「時間雇用職員」といわれていたものとがあった。日々雇用職員には「国立大学法人琉球大学非常勤職員(日々雇用職員)就業規則(案)」が,時間雇用職員には「国立大学法人琉球大学非常勤職員(パートタイマー)就業規則(案)」が適用されることが予定されているものと解される。前者の就業規則(案)では,日々雇用職員という用語をそのまま踏襲し,「1日の勤務時間が8時間を超えない範囲内において日々雇入れられる職員」としてこれを定義している(2条)。後者の就業規則(案)では,「パートタイマー」という用語が採用され,「1週間の勤務時間が常勤職員の1週間あたりの勤務時間の4分の3を超えない範囲で定められている職員」としてこれを定義している(2条)。両者ともに,「会計年度の範囲内」で定められた「任用予定期間」があり(各規則(案)の6条),「常時勤務を要しない職員」とされている。

 

 2.これまでの実態・運用  われわれの理解が正しければ,これまでいわゆる定員外職員には,定員内常勤職員と勤務時間が同一のフルタイム定員外職員と,そうではないパートタイム定員外職員とがいた。前者が日々雇用職員であり,後者が時間雇用職員である。日々雇用職員は,「常勤化の防止」のために任用の更新はされないのが建前である(「国立大学法人琉球大学非常勤職員任免規程(案)」5条1項2号参照)。しかし,とくに1980年3月31日以前に雇用された日々雇用職員については,任用は事実上更新されているのであり(「国立大学法人琉球大学非常勤職員の雇用等の取扱いに関する申し合わせ(案)」5条・8条等参照),任用予定期間満了後に1日の期間がおかれて,あらたな任用予定期間が設定されているようである(「空白の1日」としばしばいわれる)。これに対して,時間雇用職員は,日々雇用職員のように一律1日という任期が定められているのではなく,任用満了後に任用更新することはさしつかえないとされてきた(「非常勤職員任免規程(案)」5条2項2号参照)。

 

 3.国立大学法人における非常勤職員の位置づけ  問題は,非常勤職員に関する就業規則案をみるかぎり,このような取扱いが国立大学法人化後も維持されようとしている点にある。けっして単純明快とはいえない現行の取扱いは,冒頭で言及したように,これまでの約50年にわたる過去の経緯のなかからつくられてきたものである。公務員法の枠がはずれる現在が,制度を合理的なものに改編する好機ではないかと考える。また,国立大学法人における非常勤職員の処遇について,各大学の経営の観点からそのあり方を検討していくという方向性が,国大協では示されていた(2002年10月25日・第8回国立大学法人化特別委員会の資料より)。つまりは,琉球大学がどのように取り組むかによって,非常勤職員に関する人事制度は大きく異なってくる。非公務員型の国立大学法人は,そのような人事制度設計における裁量性を,各大学に以前に比して大幅に認めるものとなっている。

 

 4.労働法の観点からみた場合  さらに,労働法の観点からすれば,「任用予定期間」を定めた「日々雇用」という法形式は,かぎりなく無理がある。この場合の「任用予定期間」とは更新予定期間となると解されるが,更新を何百回と繰り返す有期労働契約といったものは,労働法の想定外のものである。おそらく,通常の法解釈論であれば,「任用予定期間」そのものが雇用期間とされるのではないか。そして,「常勤化の防止」のために「空白の1日」を設けるというのは,脱法行為に近いと評価されてしまう可能性が高いだろう。判例では,有期労働契約が反復更新されているなどの事情から,雇用継続に労働者に合理的な期待がある場合には,雇い止めには合理的な理由が必要であるとされているからである。他方で,「任用予定期間」を定めた「時間雇用」という法形式の場合には,これまで任用更新がそのまま行われてきただけに,よりストレートに「任用予定期間」を雇用期間とすることが可能であり,さきほどの判例法理が適用されやすくなるであろう。

 

 5.今後の方向性?  以上,要するに,公務員法の世界から労働法の世界に入ることにより,非常勤職員については従来の取扱いを継続することに種々の困難が予想されるということである。労働法の観点から,非常勤職員の処遇を適正化する必要があると考える。具体的な規定を提示するのはさしひかえるが,非常勤職員についてはすべてフルタイムかパートタイムの有期労働契約(これには1年を期間とするものから1日を期間とするものまで多様であろう)として位置づけたうえで,更新の有無・回数については契約締結時(あるいは更新時)に明示する一方で,すくなくとも1980年3月31日以前に雇用された日々雇用職員については,長年の課題であった常勤化を図るという方向性が考えられる。

 

 6.その他の論点  なお,非常勤職員に関する前掲の2つの就業規則案については,公務員法ではなく労働法の概念を用いて規定を見直すこと,常勤職員との均等待遇原則を明記すること,従業員過半数代表の選出に関する制度を整備することなどといった課題をさらに指摘することができる。

 

・以上の点から,たとえば,つぎのような文言が考えられる。

 

 第2条 この規則は,本学の教職員に適用する。 ただし,本学が期間を定めて臨時に雇用する職員及び第22条の規定により再雇用された職員の就業についてはそれぞれ別に定める「国立大学法人琉球大学非常勤職員就業規則」(仮称)又は「国立大学法人琉球大学再雇用規程」による。

 2 この規則において,つぎの各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。

 (1)大学教員 教授,助教授,講師(常時勤務する者に限る。)及び助手

  (2)附属学校教員  教頭,教諭,司書教諭及び養護教諭

  (3)教員 前各号に該当する者並びに本学が期間を定めて臨時に雇用する外国人教師及び外国人研究員

  (4)職員 前号以外の職にある者

  (5)教職員 教員及び職員

 

 (権限の委任)

第3条 学長は,この規則に規定する権限の一部を学長が指定する者に委任することができ る。

 

・委任を行う理由と委任を行う範囲をあらじめ特定しておくのが望ましい。あるいは,事務の委任は事務組織上の問題であるから,就業規則からは同条は削除することも考えられる。

 

 (法令との関係)

第4条 この規則に定めのない事項については,労基法,その他の関係法令及び諸規程の定 めるところによる。

 

・この規定形式では,就業規則がまず適用されて,それに規定のない事項については労基法等の法令が適用されると読むことができる。しかし,当然のことながら,就業規則は法令に反することはできない。また,「諸規程」がなにをさすのか不明である。さらに,労働組合が労働協約を締結しているときは,組合員には就業規則よりも労働協約が適用される。つぎのようにしたらどうか。

 

 第4条 職員の就業に関する事項は,労基法,労働組合法(昭和24年法律第174号。 以下「労組法」という。),その他法令の定めるほか,この規則の定めるところによる。

  2 この規則と異なる労働条件を定める労働協約の適用を受ける教職員については,就業規則の当該規定は適用せず,労働協約の定めるところによる。

 

 

 (遵守遂行)

第5条 本学及び職員は,それぞれの立場でこの規則を誠実に遵守し,その実行に努めなけ ればならない。

 

・労基法2条2項に該当するものと思われるが,この規定は使用者が作成する就業規則について使用者自身はともかく,労働者に遵守義務を定める点で不自然とされているものである。しかし,訓示規定と解されているので,学説上もとりたてて問題とされていなかった。当事者の権利義務に具体的にかかわらないとされるこのような規定を,わざわざ就業規則に書き込むのは,現場で無用なトラブルを招かないか。5条は削除するか,あるいは労基法2条を踏まえるなら,同1項(労働条件労使対等決定原則)を含めてつぎのように規定するのが望ましいであろう。

 

 第5条 本学は,教職員及び労働組合との対等な立場において労働条件を決定し,これを誠実に履行するものとする。

 

・かりに就業規則を労働関係の当事者が遵守するという規定を設けるのであれば,大学という特殊性を踏まえたものとしなければならない。この点については,1条のコメント参照。

 

 (適用除外)

第6条 管理監督の職務にある者については,本規則の定める勤務時間,休日,時間外勤務 及び休日勤務に関する規定は適用しない。

 

・労基法41条2号を踏まえての規定であると思われるが,表現が不正確である。「管理監督の職務にある者」ではなく,「管理監督の地位にある者」とすべきである。労基法のこの規定は民間企業では濫用される傾向にあるだけに,「・・長」といった職務ではなく,労基法の労働時間に関する規制を適用除外しても不都合がない地位にあるか(手当上の措置・出退勤の自由の有無など)がポイントとなることには,十分に注意が必要である。

 

・休憩の適用除外が明示されていないが(労基法41条柱書参照),これは休憩時間を保障する趣旨なのか。

 

 

   第2章 任 免

 

・「任免」というのは公務員法の用語である。「人事」に代えたほうがよい。

 

・「職員任免規程(案)」2条にある「採用」,「配置換」,「併任」,「出向」等の概念定義は,「職員就業規則(案)」で行うべきである。また,「職員任免規程(案)」は公務員法の用語を借用しており,労働法上の用語とは乖離している点が多々見られるので,後者にあわせるべきである。とくに後者の点が改善されない場合には,本学における就業規則の解釈に種々の混乱を招くものと考える。

 

    第1節 採用

 

 (採用)

第7条 職員の採用方法は,別に定める国立大学法人琉球大学職員任免規程( 以下「任免規 程 」という。)による。                   

  前項の規定にかかわらず,教育職員の採用については,別に定める国立大学法人琉球大 学教育職員規程(以下「教育職員規程」という。)による。

 

・採用の原則を本則で明示すべきであろう。つぎのような案が考えられる。

 

 第7条 教職員の採用は,試験又は選考による。

 2 教員の採用に関して必要な事項は,別に定める国立大学法人琉球大学教員規程(仮称)(以下「教員規程」という。)による。

 3 職員の採用に関して必要な事項は,別に定める国立大学法人琉球大学職員任免規程( 以下「職員任免規程 」(仮称)という。)による。

 

・「教育職員」は,「大学教員」,「附属学校教員」,「外国人教師及び外国人研究員」からなる(「教育職員規程(案)」2条,および「職員就業規則(案)」2条のコメントであげた同条修正案参照)。しかし,現在の本条2項で委任を受けた「教育職員規程(案)」には,「大学教員」と「附属学校教員」の採用に関する規定はあるが(3条),「外国人教師及び外国人研究員」の採用に関する規定はない。「外国人教師及び外国人研究員等に関する規程(案)」にさらに委任するつもりであるのなら,すくなくともその旨を「教育職員規程(案)」に規定しておく必要がある。

 

 (労働条件の明示)

第8条 学長は職員の採用に際しては,採用をしようとする職員に対し,あらかじめ,次の 事項を記載した文書を交付するものとする。

 (1) 労働契約の期間に関する事項

 (2) 就業の場所及び従事する業務に関する事項

  (3) 始業及び終業の時刻,休憩時間,所定労働時間を超える労働の有無,休日並びに休暇    に関する事項

  (4) 給与に関する事項            

  (5) 退職に関する事項

 

・労基法15条と労基法施行規則5条を踏まえての規定であるが,「(4) 給与に関する事項」は同施行規則5条3号の文言と一致させる必要がある。

 

・労基法15条と労基法施行規則5条は,書面によらないでもよいが明示しなければならない労働条件も列挙している。この点を,8条に2項を新設して規定すべきであろう。あるいは,明示すべきすべての労働条件を1項で列挙して,2項では文書で明示すべき事項を規定するという方式も考えられる(労基法施行規則5条がこのような規定形式である)。

 

 (提出書類)

第9条 職員に採用された者は,次の各号に掲げる書類を学長に提出しなければならない。 ただし,国又はその他の関係機関の職員から引き続き本学の職員となった者については, 第2号から第4号に定める書類の提出は要しないものとする。

  (1) 入職誓約書

  (2) 履歴書

  (3) 資格に関する証明書

  (4) 住民票記載事項の証明書

  (5) 扶養親族等に関する書類

  (6) その他学長が必要と認める書類

2 前項の提出書類の記載事項に異動があったときは,その都度速やかに,学長に届け出な ければならない。

 

・1項1号の「入職誓約書」は必要か。これだけ2号以下のいわば実利的な書類とは異なる。「引き続き本学の職員となった者」にまで提出を求めるこの書面には,いかなる内容が記載されるのか。また,そもそもどのような目的・趣旨によるものなのか。公務員法上の「服務の宣誓」に相当するものか。参考にできたかぎりでの他大学の就業規則案には,類例はない。

 

 (試用期間)

第10条 職員として採用された者には,採用の日から6か月の試用期間を設ける。ただし, 学長が必要と認めたときは,試用期間を短縮し,又は設けないことがある。

  試用期間中に職員として,あるいは試用期間終了後正規の職員とするに学長が不適当と 認めたときは,第26条ただし書きの規定により解雇することがある。

  試用期間は勤続年数に通算する。

 

・「6か月」という試用期間は,公務員法の条件付任用にならったものであろうが,他の民間企業に比しても長い。どのような合理性があるのか。民間企業の通例にしたがい,3か月でもよいのではないか。

 

    第2節  職種及び職務

 

 (職種及び職務)

第11条  教育職員の職種及び職務については,別に定める教育職員規程による。

 

・これについても,教員の職種等に関する原則的規定をおくべきだろうと考える。つぎのような案が考えられる。しかし,2条のコメントに付した修正案のような規定を設ける場合には,1項は不要であろう。また,「第1章 総則」のコメントで指摘したような内容の労働憲章を設ける場合には,2項は不要であろう。

 

 第11条 教員は,大学教員,附属学校教員並びに本学が期間を定めて臨時に雇用する外国人教師及び外国人研究員からなる。

 2 本学は,職種又は職務にかかわらず,学問の自由をあらゆる教員に保障する。

 3 教員の職種及び職務に関して必要な事項は,別に定める教育職員規程による。

 

・本節のタイトルは「職種及び職務」となっているが,規定は教員に関するもののみとなっている。職員のカテゴリー分けを行うのであれば,本節で規定する必要がある。2条のコメント参照。

 

・この規定は,現在の第1章と第2章の間に,あらたに「勤務の原則」などと題する章を設けて,そのなかに規定したほうが適切ではないかと考える。「第4章 服務」の冒頭にあるコメントを参照のこと。

 

        第3節 評  価

 

 (勤務評定)

第12条  職員の勤務成績について,評定を実施する。

 

・9条1項1号と同様に,これも他大学の就業規則案にみられないものか。職員についての勤務評定については,別規則にも規定がないようである。教員については,「教育職員規程(案)」11条に規定がある。2つの問題があると考える。1つは,勤務評定の目的・基準・手続(不服申立・苦情処理を含めて)・効果に関する原則を,本則に規定しておく必要があると考える。また,勤務評定の実施により収集された個人情報の保護(修正・訂正申請権も含めた)に関する規定も設けておく必要があるだろう。

 

・もう1つは,就業規則の作成手続という次元を超える問題があるということである。すなわち,このような勤務評定をとくに教員に行うという制度を新設するにあたっては,教員の権利と自由にかかわる重要事項として教授会および評議会での決定を要すると考える。このような大学自治にもとづく手続を経ずに,就業規則の制定というルートで教員への勤務評定を制度化することは許容されないのではないか。教授会および評議会での審議のうえ了承されないかぎり,本条は削除すべきであろう。

 

    第4節 昇任及び降任

 

 (昇任)

第13条 職員の昇任は選考による。

2 前項の選考は,その職員の勤務成績及びその他の能力の評定に基づいて行う。

3 前2項の選考方法,手続き,その他必要な事項については,別に定める任免規程による。

4 前3項の規定にかかわらず,教育職員の選考方法,手続き,その他必要な事項について  は,別に定める教育職員規程による。

 

・本条および次条の規定形式は,2条のコメントでも触れたように,職員と教員というカテゴリーを使ったほうが誤解がより少ないと考える。

 

・7条にもかかわるが,「教育職員規程(案)」3条2項は,「当該学部の長は,本学の大学教員人事の方針を踏まえ,その選考に関し,教授会に対して意見を述べることができる。」と規定している。これは1999年の教育公務員特例法改正により,同法4条6項として新設された規定にならったものである。しかし,同法改正にもとづく教員選考基準等の改正は本学では行われていなかった。したがって,12条のコメントでも触れたように,このような教員の権利保障・学部の運営にとって重要な事項を,就業規則の制定という形式のみで行うのは問題が多いと考える。教授会および評議会で議題にしたうえで了解が得られた場合には,合理的な規定として就業規則に記載するのが容認されよう。このような大学自治にもとづく了解が得られなかった場合には,「教育職員規程(案)」3条2項は削除すべきである。

 

 (降任)

第14条 職員が次の各号の一に該当する場合には,降任することができる。

  (1) 勤務実績がよくない場合

  (2) 心身の故障のため職務の遂行に支障があり,又はこれに堪えない場合

  (3) その他,職務に必要な適性を欠く場合

  前項各号に掲げる事項により降任する場合は,別に定める任免規程による。

  前2項の規定にかかわらず,教育職員の降任については,別に定める教育職員規程によ  る。

 

    第5節 異 動

 

 (配置換・出向等)

第15条 職員は業務上の必要により配置換,併任又は出向を命じ又は担当業務以外の業務 を行わせることがある。

2 前項に規定する異動を命ぜられた職員は,正当な理由がない限り拒むことができない。

  職員の配置換・出向等については,別に定める任免規程による。

  前3項の規定にかかわらず,教育職員の異動等については,別に定める教育職員規程に よる。

 

・配転と出向は区別されなければならない。出向については,指揮命令を行う使用者が変更する点,および勤務場所等を含めた労働条件が大きく変更する点で,原則として労働者の個別同意が必要とされている。出向に関する規程が整備されていない現状では,いっそうこのことが妥当する。

 

・また,配転についても,教員の場合には,学部などの所属機関と担当する科目等を特定したうえで採用されている。このような場合には,労働者の個別の同意がなければ,配転はできないというのが裁判例の立場である。したがって,「教育研究評議会の審査の結果」(「教育職員規程(案)」5条1項)によるとしても,本人の意に反して,出向はもとより配転も一方的に行うことはできない。

 

・さらに,出向とは一般には在籍出向を指す。しかし,会社の就業規則によっては,転籍出向,すなわち転籍そのものを含む場合がある。「職員就業規則(案)」および「教育職員規程(案)」でいう出向は在籍出向のことのみであると明確にすべきである。このことは,「職員休職規程(案)」2条1項5号が「在籍出向」という概念を用いているだけに,いっそう強くいえる。転籍については,労働者の明確な同意が必要であることはいうまでもない。

 

・これらの問題点との関係でも,本章冒頭にコメントしたように,「職員任免規程(案)」2条におかれている「配置換」,「出向」等の概念定義を,「職員就業規則(案)」において明示すべきである。また,公務員法上の任免に関する概念定義ではなく,労働法上の人事異動に関する概念定義を採用すべきである。

 

 (赴任)

第16条 赴任の命令を受けた職員は,その辞令を受けた日から,次に掲げる期間内に赴任 しなければならない。ただし,やむを得ない理由により定められた期間内に新任地に赴任 できないときは,新任地の上司の承認を得なければならない。

  (1) 住居移転を伴わない赴任の場合  即日

 (2) 住居移転を伴う赴任の場合  7日以内

 

    第6節 休 職

 

 (休職)

第17条 職員が次の各号の一に該当するときは,休職とすることができる。

  (1)  心身の故障のため,長期( 病気休暇が引き続き3ヶ月(結核1年)を超える場合)  の休養をする場合

  (2)  刑事事件に関し起訴された場合

  (3)  その他学長が定める事由による場合

2 試用期間中の職員については,前項の規定を適用しない。

  職員の休職手続き等については,別に定める国立大学法人琉球大学職員休職規程による。

 

・「職員休職規程(案)」2条2項では,「欠員」という用語が使われている。定員法が適用されていた国立大学とは異なり,国立大学法人には同法は適用されない。いかなる意味で,「欠員」,さらには「定員」という概念を用いているのか明らかにしなければ,紛争の火種を残すことになるものと思われる。民間企業であれば,休職事由がなくれなれば,使用者は休職を継続する正当な理由がないのであるから,労働者を復職させなければならない。復職させない場合には,使用者に帰責事由のある就労不能として,労働者は賃金を全額請求できるものと解される(労基法26条ではなく,民法536条2項による)。

 

    第7節 退職及び解雇

 

 (退職)

第18条 職員は,次の各号の一に該当するときは,退職とし,職員としての身分を失う。

  (1) 退職を願い出て学長から承認された場合

  (2) 定年に達した場合

  (3) 期間を定めて雇用され,その期間を満了した場合

  (4) 第17条第1項第1号に定める休職期間が満了し,休職事由がなお消滅しない場合

  (5) 死亡したとき,又は行方不明となり家族が同意した場合

  (6) その他の退職事由が発生した場合 

 

・18条4号は,非公務員型の国立大学法人では維持しがたいのではないか。傷病休職に関する現在の裁判例は,労働契約において職種が特定されていない場合には,原職復帰が困難であっても現実に配転可能な業務があればその業務に復帰させるべきだと解し,原職復帰の可能性を広く認める傾向にある。

 

 (自己都合による退職手続)

第19条 職員は,自己の都合により退職しようとするときは,退職を予定する日の30日 前までに,学長に文書をもって願い出なければならない。

2 職員は,辞職願を提出しても,退職するまでは,従来の職務に従事しなければならない。

 

・この「第7節 退職及び解雇」では,労働契約の終了に関する事項が規定されているものと解される。しかし,公務員法の考え方を引きずっている点がいくつかみられる。たとえば,公務員法には相当するものがない労働契約の終了方法が,本節からはぬけおちている。労働者による労働契約の一方的解約である「辞職」(使用者による労働契約の一方的解約である解雇のいわば逆バージョン)がそれである。この辞職に関する事項を本節で規定しておく必要がある。

 

・これとの対比で,19条は「退職」に関する規定であると解される。退職は,労働契約の合意解約(つまり一方的解約ではない)であり,通常は労働者からの退職の申込み(民間企業では「退職願」といわれるようである)と,それに対する使用者による承諾によって成立する。しかし,さきほどの「辞職」が2週間前の予告でできることとの対比でいえば,退職の申込みを「30日前」とするのは長いのではないか。同じように2週間前とすれば足りるものと思われる。

 

・19条2項は当たり前のような規定である。しかし,労働者が年次有給休暇を残している場合に,退職の申込み後において,当該休暇を取得することが民間企業ではみられる。これは当然のことながら権利の行使として適法である。本項は,このような行為に対する抑制力を及ぼすのではないか。退職までは労働契約が存続するのであり,労使ともに労働契約上の権利および義務を保持しているという当然のことを,その一部分(労働者の労働義務)についてのみ確認的に規定したまでのことであるならば,削除するのが望ましい。

 

 (定年)

第20条 職員の定年は,年齢60年とする。

  前項の規定にかかわらず教育職員の定年については,別に定める教育職員規程による。

3 定年による退職の日( 以下「定年退職日」という。)は,定年に達した日以後における 最初の3月31日とする。

 

・職員の定年年齢を65歳にできないかどうか,あるいは65歳までの職員の雇用継続をどのように図るのかについて,さらに検討を進める必要があると考える。

 

・この問題について,再雇用という形式で対応しようとしているようである。22条ともかかわってくるが,「職員再雇用規程(案)」は,「職員就業規則(案)」でいう「職員」全体ではなく,教員と区別される意味での職員にしか適用を予定していないようである(「職員再雇用規程(案)」6条が,再雇用の上限年齢を65歳としていることから)。やはり,教員と職員というカテゴリー分けを用いたほうが,就業規則全体の誤読・誤解が少ないのではないか。

 

 (定年による退職の特例)

第21条 学長は,前条の規定にかかわらず,その職員の特殊性又はその職員の職務の遂行 上の特別の事情からみてその退職により業務の運営に著しい支障が生ずると認められる十 分な理由があるときは1年を超えない範囲で定年退職日を延長することができる。

2 前項の規定による定年退職日の延長は,3年を超えない範囲で更新することができるも のとする。

 

 (再雇用)

第22条 第20条の規定により退職した者について,その者の知識及び経験等を考慮し, 業務の能率的運営を確保するため特に必要があると認めるときは,1年を超えない範囲内 で期間を定め,採用することができる。

2 前項の期間又はこの項の規定により更新された期間は,1年を超えない範囲で更新する ことができる。

3 再雇用に関する手続き,その他必要な事項は,別に定める国立大学法人琉球大学再雇用 規程による。

 

・22条1項では「採用」という用語を使っている。これは,「職員任免規程(案)」2条1号で定義されている「採用」と同じ意味なのか。異なるのであれば,「再雇用」としたほうが誤解が少ないのではないか。そうすれば,1項が再雇用に関する定義規定ともなり,3項で「再雇用」という用語が使われることに不自然さが少なくなる。

 

 (当然解雇)

第23条 職員が次の各号の一に該当するに至ったときは,解雇する。

  (1) 成年被後見人又は被保佐人となった場合

  (2) 禁錮以上の刑に処せられた場合

  (3) 日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の   団体を結成し,又はこれに加入した場合

 

・「職員任免規程(案)」2条10号に定義されている「当然解雇」であるが,労働法上はこのような概念は存在しない。公務員法上の欠格による失職にあたるものを「当然解雇」,免職にあたるものを24条の「その他の解雇」としたのではないか。労働法の観点からは,23条と24条は区別する必要なく,かつ区別するのは不適切である。両条は1つにまとめるとともに,柱書きは「解雇することができる」に統一すべきであろう。

 

・使用者が解雇を適法に行うにあたっては,客観的合理性と社会的相当性の2つの要件が一般的に必要である。これは判例法理であり,今年の法改正で新設された条文である労基法18条の2にその旨の規定が置かれている。したがって,解雇事由は客観的にみて合理的なものでなければならない。さらに,解雇事由に該当する場合であっても,解雇を行うことが社会的にみて相当であるとされなければならない。この社会的相当性という観点からも,「当然解雇」という概念は維持しがたい。

 

・23条3号は公務員法のもとで課せられていた欠格事由の1つである。しかし,労基法においてはこのような規定はない。このような団体とされるものに「結成」あるいは「加入」したことのみを理由として解雇した場合には,むしろ労基法3条の信条による差別が問題とされる可能性が強い。そのような団体に加入したことの結果,たとえばつぎの24条1号,4号に該当するようになった場合に,はじめて解雇の当否が議論の俎上にのぼるものと解される。

 

・このこととの関連で,23条1号と2号も公務員法の規定を引き継ぐものであり,労働契約関係における解雇事由としてわざわざ列挙すべきものかについて疑問が残る。24条1号あるいは4号に包括的に規定されていると理解できるのではないか。

 

 (その他の解雇)

第24条 職員が次の各号の一に該当する場合には,解雇することができる。

  (1) 勤務実績が著しくよくない場合

  (2) 心身の故障のため職務の遂行に著しく支障があり,又はこれに堪えない場合

  (3) 組織の改廃等により,職員の減員が必要となった場合 

  (4) その他,職務に必要な適性を欠く場合

  前項の規定にかかわらず,教育職員の解雇については,別に定める教育職員規程による。

 

・24条3号だけが,労働者にいわば落ち度のない場合の解雇である。規定形式の点からいって,3号と4号の場所を入れ替えたほうがよい。おそらく同条のモデルになったと思われる国家公務員法78条にも,そのほうが合致している。なお,4号の「その他」のあとに,「,」は不要であろう。

 

・24条の3号については,労働契約関係においては整理解雇に関する判例法理が確立している。それを踏まえて規定を新設する必要がある。

 

・24条2項の規定をそのまま読むと,教員には同条1項の解雇事由の限定がなく,「教育職員規程(案)」4条1項により,「教育研究評議会の審査の結果」にすべてが委ねられているかのようである。しかし,これまで公務員であった教員についても,公務員法で免職事由は限定されていたのであり,また,23条のコメントで指摘したように,労働契約関係におかれることになる教員についても,労基法18条の2により解雇には客観的合理性がまず必要とされる。したがって,「教育職員規程(案)」への委任は,解雇手続に関してであることを明確にすべきであろう。

 

・また,解雇を行うのは学長であることを明記しておくのが,責任の所在という点から適切であろう。

 

・以上の点から,23条と24条はつぎのような規定にするのが望ましい。

 

 (解雇)

 第23条 学長は,教職員が次の各号のいずれかに該当する場合には,当該教職員を解雇することができる。

 (1)勤務実績が著しくよくない場合

 (2)心身の故障のため職務の遂行に著しく支障があり,又はこれに堪えない場合

 (3)その他職務に必要な適性を欠く場合

 2  学長は,前項各号のいずれかに基づいて教員を解雇しようとする場合には,別に定める教育職員規程に規定された手続を遵守しなければならない。

 

 (整理解雇)

 第24条 学長は,大学の都合によりやむを得ない場合で,次の各号に掲げる基準を満たした場合には,教職員を解雇することができる。

 (1)人員整理を行う経営上の必要性が存在すること

 (2)人員整理の手段としての解雇を回避する措置を講じること

 (3)被解雇者の選定が,客観的で合理的な基準によりなされること

 (4)被解雇者及び労働組合に対して事前に説明し,納得を得るように誠実に協議を行うこと

 2 学長は,前項に基づいて教員を解雇しようとする場合には,別に定める教育職員規程に規定された手続を遵守しなければならない。

 

 (解雇制限)

第25条 前条の規定にかかわらず,次の各号の一に該当する期間は解雇しない。ただし, 第1号の場合において療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病が治癒せず労基法第81 条の規定によって打切補償を支払う場合は,この限りでない。

  (1) 業務上負傷し,又は疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間

  (2) 産前産後の女性職員が労基法第65条の規定により休業する期間及びその後30日間

 

 (解雇予告)

第26条 第23条又は第24条の規定により職員を解雇する場合は,少なくとも30日前 に本人に予告をするか,又は平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う。ただし, 試用期間中の職員(14日を超えて引き続き雇用された者を除く。)を解雇する場合又は行 政庁の承認を受けた場合はこの限りでない。

 

・「行政(官?)庁」→38条で規定されているように,「所轄労働基準監督署長」としたほうが明確である。

 

 (退職又は解雇後の責務)

第27条 退職又は解雇された者は,在職中に知り得た秘密を他に漏らしてはならない。

 

・「在職中に知り得た秘密」という規定はあまりにも漠然としている。在職中に得た知識・情報を退職後に利用して仕事をすることは,営業の自由・職業選択の自由の観点からはオーソライズされることになるので,学生あるいは教職員のプライバシー等にかかわり真に法的に保護すべき秘密との関係で調整が必要である。このような観点からは,「重大な職務上の秘密」という文言が適切であると考える。

 

・27条は退職後のことを規定している。つぎの28条は退職・解雇の手続のことを規定している。条文のならび方としては,現在の27条と28条を入れ替えたほうがよいと考える。

 

 (退職証明書)

第28条 学長は,退職又は解雇された者が,退職証明書(以下「証明書」という。)の交付 を請求した場合は,遅滞なくこれを交付する。

2 証明書に記載する事項は次のとおりとする。

  (1) 雇用期間

  (2) 業務の種類

  (3) その事業における地位

  (4) 給与

  (5) 退職の事由(解雇の場合は,その理由)

3 証明書には前項の事項のうち,退職又は解雇された者が請求した事項のみを証明するも のとする。

 

・今年の労基法改正により,解雇理由については,予告時から退職時までの間に通知しなければならないことになった(労基法22条2項)。そのことを踏まえて,本条は修正を行うべきであろう。

 

 

    第3章 給 与

 

 (給与)

第29条 職員の給与について,その決定,計算,支払方法,その他必要な事項については, 別に定める国立大学法人琉球大学職員給与規程による。

 

・これではあまりにも簡単すぎるのではないか。労働契約上の使用者の基本的な義務として賃金支払義務が存在することを踏まえて,すくなくともつぎのような規定にできないか。

 

 第29条 教職員は,基本給及び諸手当(以下「給与」という。)を支給される。

 2 教職員の給与について,その決定,計算,支払の方法,その他必要な事項については,別に定める国立大学法人琉球大学職員給与規程による。

 

・「職員給与規程(案)」2条と3条は,「職員就業規則(案)」に書き込んだほうが,教職員にとっては給与に関する重要な事項がわかりやすいのではないか。

 

 

    第4章 服 務

 

・本章のタイトルは,公務員法の影響を受けた「服務」ではなく,労働法で一般に使用される「勤務」にしたほうがよい。さらに,以下で規定されていることは,教職員の勤務に関する一般的な権利義務に関するものなので,「第1章 総則」と「第2章 任免」の間に新しい章を設けて,そこに位置づけたほうがよいのではないか。新しい章のタイトルとしては,「勤務の原則」などが考えられる(章番号は順次繰り下げ)。

 

 (誠実義務)

第30条 職員は,学長の指示命令を守り,職務上の責任を自覚し,誠実にかつ公正に職務 を遂行するとともに,本学の秩序の維持に努めなければならない。

 

・見出しにある「誠実義務」という概念・用語は,学説上批判が多い(ドイツにおいてナチス時代の労働法理論において多様されたため)。また,とくに教員と学長との関係は単純な「指示命令」関係にはないだろう。「本学の秩序の維持」という表現も漠然としているため,憲法を前提にした人権秩序をイメージするのか,指揮命令関係を前提にした経営秩序をイメージするのかで,理解に大きな相違を生みやすい。大学という知の共同体の構成員としての使命のもとに,教職員が誠実に職務を行うという規定にしたほうがよいのではないか。

 

・さらに,教員,職員について,それぞれの服務の基本内容を記しておいたほうがよい。

 

・以上の点から,つぎのような規定にはできないか。

 

 (勤務の基本原則)

 第30条 教職員は,大学における教育研究又は業務等に携わる者としての使命を自覚し,その職務を誠実に履行しなければならない。

 2 教員は,教育,研究,校務及び社会貢献活動に従事する。

 3 職員は,本学が行う業務にともなう事務又は技術的な職務に従事する。

 

 (職務専念義務)

第31条 職員は,この規則又は関係法令の定める場合を除いては,その勤務時間及び職務 上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い,本学がなすべき責を有する職務にのみ 従事しなければならない。

 

・このような「職務専念義務」の規定は,公務員法の規定を引き継いだものであろうが,学説上は労働者に全人格的な投入を仕事に求めるものとして批判が強いものである。公務員法上の「職務専念義務」を労働契約関係にそのままあてはめることができないことは,最高裁も認めるところであろう。見出しを「職務従事義務」として,つぎのような規定にできないか。

 

 (職務従事義務)

 第31条 職員は,労働協約,就業規則,労働契約,慣行又は関係法令により別段の取扱いが認められている場合を除いては,その勤務時間は職務に従事しなければならない。 

 

 (職務専念義務免除期間)

第32条 職員は,次の各号の一の事由に該当する場合には,職務専念義務を免除される。

  (1) 勤務時間内レクリエーションへの参加を承認された期間

  (2) 勤務時間内に組合交渉に参加することを承認された期間

  (3) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「均等法」  という。)第22条の規定に基づき,勤務時間内に健康診査を受けることを承認され    た期間

  (4) 均等法第23条の規定に基づき,通勤緩和により勤務しないことを承認された期間

  (5) 勤務時間内に総合的な健康診査を受けることを承認された期間

  (6) 勤務時間内に研究集会に参加することを承認された期間

  職務専念義務免除の承認手続き,その他必要な事項については,別に定める国立大学法 人琉球大学に勤務する職員の勤務時間等に関する規程(以下「勤務時間等に関する規程」 という。)による。

 

・「職務専念義務」→「職務従事義務」

 

・「職務専念義務」の免除が有給で保障されているのか否かが,この規定からは不明である。たとえば,32条2項を3項に繰り下げ,同条2項につぎのような規定を新設したらどうか。

 

 第32条 (略)

 2 前項各号にかかげる期間は,労働時間として取り扱う。

 3 (略)

 

・現在の32条2項で委任を受けている「勤務時間等に関する規程(案)」には,「職務専念義務」免除にかかわる該当規定として,12条と13条が規定されている。しかし,これらの規定は,職務専念義務免除時間(休んでも労働したものと扱われる時間)を有給休暇(有給性を保障された休暇)と一緒にとりあつかうものとなっている。とくに12条については,煩雑ではあっても,「特別有給休暇」とは別個の規定としたほうがわかりやすいのではないか。

 

 (遵守事項)

第33条 職員は,次の事項を守らなければならない。

  (1) 上司の指示に従い,互いに協力してその職務を遂行しなければならない。

  (2) 職場の内外を問わず,本学の信用を傷つけ,その利益を害し,又は職員全体の不名誉  となるような行為をしてはならない。

  (3) 職務上,知り得た機密を漏らしてはならない。

  (4) 常に公私の別を明らかにし,その職務や地位を私的利用のために用いてはならない。

  (5) 本学の敷地及び施設内(以下「学内」という。)で,喧騒,その他の秩序・風紀を乱す  行為をしてはならない。

  (6) 学長の許可なく,学内で放送・宣伝・集会又は文書画の配布・回覧・掲示その他これ  に準ずる行為をしてはならない。

  (7) 学長の許可なく,学内で営利を目的とする金品の貸借をし,物品の売買を行ってはな  らない。

 

・本条でとくに問題であると考えるのは,5号と6号である。とりわけ,6号は,これまで本学で行われてきた組合あるいは研究団体等によるビラ配付等に,厳しい制約を課すものとなっている。最高裁判決ですら,ビラの配布等を施設管理権者の一律許可制のもとにおくことに,合理性をみとめていないと解される。全体的にいって,管理統制的な色彩の強い規定ではなく,大学の構成員としての自覚的な行動を促すような規定にしたほうが,最高学府の就業規則にふさわしいのではないか。また,教職員としてふさわしくない実際に行動をしようとする者に対しては,懲戒のところでも規制が行いうることが留意されるべきであろう。この「第4章 服務」の各規定は,服務の基本原則に関する規定に純化したらどうか。本条についてはつぎのような案が考えられる。

 

 第33条 職員は,次の事項を守らなければならない。

  (1)職務の遂行に当たり,法令及び就業規則等を遵守すること

  (2)職務上の権限を濫用しないこと

  (3)職務上の地位を私のために利用しないこと

  (4)大学の信用を傷つけ,又は不名誉となるような行為をしないこと

  (5)職務上知ることのできた秘密を漏らさないこと

 

 (職員の倫理)

第34条 職員の倫理について,遵守すべき職務に係る倫理原則及び倫理の保持を図るため に必要な事項については,別に定める国立大学法人琉球大学職員倫理規程による。

 

    すべてを別規定に委ねるのではなく,また、研究・教育において尊守すべき倫理についても追加して、つぎのような規定にできないか。

 

 第34条 教職員は,研究、教育および事務を遂行するにあたって、社会的規範および研究者規範を逸脱しないように常に倫理の向上に努めなければならない。

 2 教職員の倫理について,遵守すべき職務に係る倫理原則及び倫理の保持を図るために必要な事項については,別に定める国立大学法人琉球大学職員倫理規程による。

 

 (セクシュアル・ハラスメントに関する措置)

第35条 セクシュアル・ハラスメントの防止等に関する措置は,別に定める国立大学法人 琉球大学セクシュアル・ハラスメント防止等に関する規程による。

 

    「琉球大学将来構想シンポジウム資料−−将来構想委員会各部会の検討状況報告」(琉球大学将来構想委員会・2002年12月24日)では,「今後,アカデミック・ハラスメントその他の人権問題への真摯な対応が大学の社会的使命とされるところであり,このため現行の「琉球大学セクシャル・ハラスメント防止委員会」を「国立大学法人琉球大学セクシャル・ハラスメント等防止委員会(仮称)」とし,人の尊厳に関わる諸問題についてその防止を含め取り扱う委員会に改組する。」(116−7頁)とされていた。この趣旨を踏まえて,本条および「国立大学法人琉球大学セクシュアル・ハラスメント防止等に関する規程(案)」等の関連規程は書き直すべきであろう。たとえば、第35条は以下のようにしてはどうか。

 

    (セクシャル・ハラスメントおよびアカデミック・ハラスメント等人権侵害の防止)

   第35条 教職員は、セクシャル・ハラスメントおよびアカデミック・ハラスメント等の人権侵害をいかなる形においても行なってはならず、常にこれらの防止に努めなければならない。

       Aセクシャル・ハラスメントおよびアカデミック・ハラスメント等人権侵害の防止に関する措置は、別に定める国立大学法人琉球大学セクシャル・ハラスメントおよびアカデミック・ハラスメント等人権侵害防止等に関する規定による。

 (兼業の制限)

第36条 職員は,学長の許可を受けた場合でなければ,他の業務に従事し,又は自ら営利 企業を営んではならない。

  職員の兼業に関する事項は,別に定める国立大学法人琉球大学職員の兼業等に関する規 程による。

 

・本条はこのままでは「兼業」を定義していないことになる。36条1項をつぎのようにしたらどうか。「職員は,学長の許可を受けた場合には,他の業務に従事すること又は自ら営利企業を営むこと(以下「兼業」という。)ができる。」

 

・36条2項で委任を受けている「国立大学法人琉球大学職員の兼業等に関する規程(案)」は,国家公務員法・人事院規則・教育公務員特例法の規定をそのまま準拠法としている(「職員就業規則(案)」に関する冒頭のコメントU.2.で指摘した「準用」ですらない)点で,不適切である。また,非公務員型が選択された理由として,公務員型よりも兼業が自由になり,地域貢献・産業界との連携等が行いやすくなる点があげられていたはずである。これらの点から,同規程(案)は大幅に書き直す必要があると考える。

 

 

   第5章 所定勤務時間,休日及び休暇 

 

・所定という言葉が頭につく場合には,「勤務時間」という用語よりも,「労働時間」という用語が一般的であろう。労基法上も「労働時間」となっている。法令とは別の用語を使うことにより,法令とは異なった意味があるとの誤解を与える可能性がある。本章で「勤務時間」とされているところは,修辞学上無理のないかぎりで「労働時間」に置き換えたほうがよい。ただし,勤務時間体制・勤務時間割といった意味で用いる場合には,「勤務時間」という用語もしばしば使われているようである。

 

    第1節 所定勤務時間及び休日

 

 (所定勤務時間及び休日)

第37条 職員の所定勤務時間は,学長が別に定める日を起算日として,4週間毎に平均し て,1週間40時間以内とする。

2 職員の1日の所定勤務時間は,8時間とし,始業及び終業の時刻並びに休憩時間は次の とおりとする。

  始  業  午前8時30分

  終  業  午後5時15分

    休憩時間  午後0時15分から午後1時00分

3 前項の始業及び終業の時刻並びに休憩時間は業務運営の都合上,必要があると認める場  合は変更することがある。

  休日は,次の各号に掲げるとおりとする。

  (1) 日曜日及び土曜日

  (2) 国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日

  (3) 12月29日から翌年の1月3日までの日(前号に掲げる日を除く)

  (4) その他,特に指定する日

  職員の勤務時間及び休日にかかる事項については,別に定める勤務時間等に関する規程 による。

 

・週所定労働時間は特定されなければならない。37条1項の現在の案は変形労働時間制を想定したものであろうが(42条参照),その場合でも原則となる週所定労働時間の特定は必要である。

 

・休憩時間一斉付与の原則を規定しておく必要がある。労使協定によりこの原則を変更することができる(以上,労基法34条2項)。

 

・休日振替も重要な制度なので,「勤務時間等に関する規程(案)」に委ねるのではなく,「職員就業規則(案)」に規定しておくのが望ましい。また,いかなるときに休日振替が行われうるのかを特定しておくのが望ましい。

 

・これらの点から,37条までは,つぎのように修正するのが適切ではないか。

 

 第37条 教職員の所定労働時間は,休憩時間を除き,1週間について40時間,1日について8時間とする。

 2 始業及び終業の時刻並びに休憩時間は,次の各号のとおりとする。ただし,学長は,業務運営の都合上必要がある場合には,これを変更することができる。

 (1)始業時刻  午前8時30分

 (2)終業時刻  午後5時15分

  (3)休憩時間  午後0時15分から午後1時00分

 3 学長は,前項の休憩時間を一斉に与えなければならない。ただし,学長は,労基法34条2項に基づく労使協定の定めるところにより,一部の教職員について前項第3号に定める休憩時間を変更することがある。

 4  休日は,次の各号に掲げるとおりとする。

  (1)日曜日及び土曜日

  (2)国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日

  (3)12月29日から翌年の1月3日までの日(前号に掲げる日を除く)

  (4)その他学長が指した日

 5 学長は,次の各号に掲げる業務に従事させるため,前項に規定する休日をあらかじめ振り替えることができる。

 (1)大学入試センター試験及び各種入学試験

 (2)大学説明会

 (3)大学祭

 (4)公開講座

 (5)その他学長が指定するもの

 6  職員の勤務時間及び休日にかかる事項については,別に定める勤務時間等に関する規程による。

 

・なお,上記の修正案を採用した場合,3項但書は,つぎの38条との関係で,「ただし,学長は,労基法34条2項に基づき,教職員の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合,労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者(以下「教職員代表」という。)と締結した労使協定の定めるところにより,一部の教職員について前項第3号に定める休憩時間を変更することがある。」という表現にしたほうがよい。これをふまえて,38条では「教職員代表」という用語をそのまま使えばいことになる。

 

・就業規則の規定そのものの問題ではないが,勤務態勢に関連して1点だけ付言しておく。公務員法から労基法に移行することで,「休息時間」という概念がなくなり,終業時刻が15分延長されることになる。労働時間の短縮(1日:7時間45分,1週:38時間45分)がかりにできないとしても,午後5時には実作業を終えて後片付けに入り,午後5時15分には退社できるようにしなければならないだろう。判例によれば,後片付け(清掃,整頓,引継など)のための時間も,労働時間とされていることに留意が必要である。

 

 (時間外・休日勤務)

第38条 業務の都合上必要があると認める場合は,前条の定めにかかわらず時間外勤務, 又は休日勤務をさせることがある。この場合において,法定の勤務時間を超え,又は法定 の休日における勤務については,本学は職員の過半数を代表する者(以下「職員代表」と いう。)と 時間外・休日労働に関する協定を締結し,これを,あらかじめ所轄労働基準監 督署長に届け出るものとする。

 

・責任の帰属主体を明確にするために,「学長」を主語にしたほうがよい。

 

・労基法36条の規定をふまえるのであれば,「職員の過半数を代表する者」ではなく,「教職員の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合,労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」としたほうが正確であり,誤解がない。

 

・「法定の勤務時間を超え」という表現は,所定労働時間が法定労働時間を下回る場合に意味を持つ。「職員就業規則(案)」では両者は一致することがおそらく想定されているので(37条参照),不要な表現ではないか。また,多くの民間企業では法定内超勤も法定外超勤も区別せずに,労基法36条の協定(いわゆる36協定)のなかで残業として取り決めをおこなっており,労基署もそれを受けつけている。この点で,「法定の休日における勤務」に36協定の対象を限定する必要はないと考える(かりに法内超勤を36協定の対象から除外しても,法内超勤自体を命じるにあたっては労働者の個別的あるいは包括的な同意が必要となる点は,法外超勤の場合と異ならない)。

 

・育児介護休業法による時間外・休日労働規制を明記しておくのが望ましい。

 

・これらの点から,38条はつぎのようにしたらどうか。

 

 第38条 学長は,業務上の都合により,前条の規定にかかわらず,労基法36条に基づき,教職員の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合,労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者(以下「教職員代表」という。)と締結した時間外労働又は休日労働に関する労使協定の定めるところにより,教職員に時間外労働又は休日労働をさせることがある。

 2 学長は,小学校就学前の子の養育又は家族の介護をする教職員が申し出た場合は,1か月について24時間,1年について150時間を超えて時間外労働をさせてはならない。

 

 (時間外勤務の休憩)

第39条 前条の規定により時間外勤務を命ぜられた時間が,1日につき第37条に規定す る所定の勤務時間を通じて8時間を超えるときは,1時間の休憩時間(所定の勤務時間中 に置かれる休憩時間を含む。)を勤務時間の途中に置くものとする。

 

・規定の内容をより明確にする,追加される休憩時間の位置の特定方法を明示するという趣旨から,つぎのような文言はどうであろうか。

 

 第39条 学長は,前条第1項の規定に基づき時間外労働を命じるときに,第37条第1項に規定する1日の所定労働時間から通算して,労働時間が8時間を超えることになる場合は,15分の休憩時間をさらに与えるものとする。学長は,その位置をあらかじめ特定するものとする。

 

 (事業場外の勤務)

第40条 職員が,出張その他本学の職務をおびて本学外で勤務する場合であって,勤務時 間を算定しがたいときは,第37条第2項の時間を勤務したものとみなす。ただし,当該 業務を遂行するためには通常勤務時間を超えて勤務することが必要となる場合においては ,当該業務に関しては,当該業務の遂行に通常必要とされる時間勤務したものとみなす。

 

・37条についてコメントで指摘したような修正をするならば,「第37条第2項の時間」→「第37条第1項所定の労働時間」

 

 (災害時の勤務)

第41条 学長は,災害その他避けることのできない事由によって,一定の勤務時間を超え て,又は特定された休日に,職員に勤務を命ずることがある。ただし,労基法第33条第 1項,又は同法第36条第1項の手続きを必要とするものについては,その手続きを行な わずに,勤務を命ずることはできない。

 

・但書の趣旨が理解できない。本条が労基法33条に基づく時間外・休日労働を規定する趣旨であるならば,つぎのように表現を変更したらどうか。

 

 第41条 学長は,災害その他避けることのできない事由によって,臨時の必要がある場合においては,労基法第33条の定めるところにより,その必要の限度において,第37条1項に定める所定労働時間を延長し,又は同条4項に定める休日に教職員を労働させることができる。

 

 (変則勤務時間等)

第42条 第37条第2項の規定にかかわらず,1か月単位の変形労働時間制,1年単位の 変形労働時間制及びフレックスタイム制等について,職員代表と書面による協定を締結し た場合においては,職員全部又は特定の業務に従事する職員に対して,変則的な勤務時間 の制度を講ずることがある。

2 業務の性質上,必要と認められる職員については,裁量労働制を設けることがある。こ の場合においては,職員代表と書面による協定又は労基法第38条の4に定める労使委員 会の決議によることとする。

 

・42条1項の規定内容はあいまいなものになっている(とくに,「フレックスタイム制等」の「等」はなにを意味するのか)。煩雑さをいとわずに,根拠条文を明示して規定する必要がある。

 

・37条2項のみに言及するが,変形労働時間制は1日についてだけでなく週の所定労働時間をも弾力化するものである。

 

・本条の案では「書面による協定」となっているが,これまでは同様の箇所で「労使協定」とされていた。表現を統一する必要がある。かりにここでは「労使協定」としておく。

 

・以上のことから,つぎのような規定例が考えられる。

 

 第42条 学長は,第37条第1項の規定にかかわらず,教職員の全部又は特定の業務に従事する教職員について,労基法32条の2に基づき,教職員代表と締結した労使協定の定めるところにより,1か月単位の変形労働時間制を採用することがある。

 2 学長は,第37条第1項の規定にかかわらず,教職員の全部又は特定の業務に従事する教職員について,労基法32条の4に基づき,教職員代表と締結した労使協定の定めるところにより,1年単位の変形労働時間制を採用することがある。

 3 学長は,第37条第1項の規定にかかわらず,教職員の全部又は特定の業務に従事する教職員について,労基法32条の3に基づき,教職員代表と締結した労使協定の定めるところにより,フレックスタイム制を採用することがある。

 4 学長は,第37条第1項の規定にかかわらず,特定の業務に従事する教職員について,労基法38条の4に基づき,賃金,労働時間その他の本事業場における労働条件に関する事項を調査審議し,学長に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会を設置した場合には,当該委員会が行った決議にしたがって,企画業務型の裁量労働制を採用することがある。

 5 学長は,第37条第1項の規定にかかわらず,教員について,労基法38条の3に基づき,教職員代表と締結した労使協定の定めるところにより,専門業務型の裁量労働制を採用することがある。

 

・妊産婦である女性教職員に関して,労基法66条が規定する特別な労働時間規制を本節の最後に規定しておくべきであろう。この点については,62条のコメント参照。

 

 (妊産婦である女性教職員の保護)

 第42条の2 学長は,38条1項又は41条の規定にかかわらず,妊娠中の女性教職員又は産後1年を経過しない女性教職員(以下「妊産婦である女性教職員」という。)が申し出た場合は,時間外労働又は休日労働をさせてはならない。

 2 学長は,前条1号又は2号の規定により,変形労働時間制を採用した場合であっても,妊産婦である女性教職員が申し出た場合は,法定労働時間を超える労働をさせてはならない。

 3 学長は,妊産婦である女性教職員が申し出た場合は,深夜業をさせてはならない。 

 

    第2節 休 暇 

 

 (有給休暇の種類)

第43条 職員の有給休暇は,年次有給休暇,病気有給休暇,特別有給休暇とする。

 

・45条ともかかわるが,労基法68条に根拠をもついわゆる生理休暇を,病気有給休暇のなかに含めることは,有給性の保障という点では意義のあることであろうが,「勤務時間等に関する規程(案)」10条で,通常の病気の場合と同様に「請求」と「承認」により取得が可能とされてしまうのは,形成権と解されるいわゆる生理休暇の法的性格に反する。また,規定形式の問題ではあろうが,「生理」を「病気」に含めることについて,教職員のコンセンサスは得られるのであろうか。

 

・「勤務時間等に関する規程(案)」10条では,「病気有給休暇」ではなく,「病気休暇」となっている。表現を統一する必要がある。

 

・これらのことと,労働者の権利保障という観点から,つぎのように規定したらどうか。

 

 第43条 教職員は,有給休暇を取得することができる。有給休暇は,年次有給休暇,病気休暇,生理休暇,特別有給休暇からなる。

 

 (年次有給休暇)

第44条 年次有給休暇は,1年(1月1日から12月31日までの一暦年)につき20日 の年次有給休暇を受けることができる。ただし,新たに採用された職員は,20日を限度 として当該年の在職期間に応じた日数とする。

  年次有給休暇の手続き,その他必要な事項については,別に定める勤務時間等に関する 規程による。

 

・1項本文冒頭の「年次有給休暇」→「教職員」の誤記であろう。

 

・1項本文最後の「受けることができる」→「取得することができる」

 

・年次有給休暇の取得手続は,重要な事項であるので(年休取得をめぐる法的紛争もこれにかかわるものがほとんどである),「勤務時間等に関する規程(案)」8条ではなく,「職員就業規則(案)」で規定しておいたほうがよい。その際には,年次有給休暇の取得が労働者の形成権行使によるものである(使用者の「承認」といった観念をいれる余地がない)ことを十分に踏まえた表現形式を採用すべきである。

 

・採用年における有給休暇日数は,「勤務時間等に関する規程(案)」7条1項2号・別表第2によることになる。しかし,「職員就業規則(案)」で,別表第2に相当するものを示しておいたほうがよいのではないか。また,別表第2もそれほどわかりやすいとはいえないだろう。たとえば,採用月:*月→付与日数:*日といった方式の表にしたらどうであろうか。

 

・年休の繰り越しも,「勤務時間等に関する規程(案)」7条2項ではなく,「職員就業規則(案)」に示しておいたほうが,労働者にとって知りたい情報へのアクセスが容易になるのではないか。

 

・年休の付与単位についても,同様の理由から,「職員就業規則(案)」に示しておいたほうがよいと考える。「勤務時間等に関する規程(案)」9条の但書は,このままでは理解が困難である(同条但書にいう「労働基準法・・・第39条の定める日数」は教職員によりまちまちである)。年休の全日数に1時間単位の取得を認めるように,規定を単純化したほうが望ましいのではないか。

 

・これらの点と労基法の関連規定をふまえて,44条をつぎのような規定にすることが考えられる。5条に分けて規定するのが適切であろう。なお,以上の提案によれば,「勤務時間等に関する規程(案)」における年次有給休暇に関する規定は,「職員就業規則(案)」にすべてとりいれられることになるので,前者への委任規定を後者で置く必要はなくなる。

 

 (年次有給休暇の日数等)

 第44条 教職員は,年次有給休暇を取得することができる。

 2 年次有給休暇は,1暦年(1月1日から12月31日まで)における休暇とする。

 3 年次有給休暇の付与日数は,1暦年につき20日とする。ただし,年の途中において新たに採用された教職員に対する年次有給休暇は,次の表(略)のとおりとする。

 4 年次有給休暇は,20日を限度として,当該年の翌年に繰り越すことができる。

 

 (年次有給休暇の付与単位)

 第44条の2 年次有給休暇の付与は,1日を単位とする。ただし,教職員が請求したときは,1時間を単位とすることができる。

 2 1時間を単位として与えられた年次有給休暇を日数に換算する場合は,8時間をもって1日とする。

 

 (年次有給休暇の取得手続)

 第44条の3 学長は,年次有給休暇を教職員の指定した時季に与えなければならない。ただし,教職員の指定した時季に与えることが業務の正常な運営に支障を生じると認めた場合は,他の時季に与えることができる。

 2 教職員は,年次有給休暇を取得する場合は,学長に対し,時季をあらかじめ指定するものとする。ただし,やむを得ない事由によって,時季をあらかじめ指定することができなかった場合は,事後速やかにその事由を付して年次有給休暇の取得を申し出なければならない。

 

 (計画年休制度)

 第44条の4 学長は,第44条に規定する年次有給休暇のうち5日を超える日数については,従業員代表との労使協定により年次有給休暇を取得する時季に関する定めをしたときは,その定めにより年次有給休暇を与えることができる。

 

 (年次有給休暇に対する賃金の支払い)

 第44条の5 本学は,教職員が年次有給休暇を取得した場合は,所定労働時間労働した場合に支払う通常の賃金を支払わなければならない。

 

・44条の5の規定は,「年次有給休暇」を,「年次有給休暇,病気有給休暇又は特別有給休暇」に代えて,43条2項とすることも考えられるだろう。

 

 (病気有給休暇)

第45条 職員が,負傷又は疾病のため療養する必要があり,その勤務しないことがやむを 得ないと認められる場合は,病気有給休暇を受けることができる。

2 生理日における勤務が著しく困難であるとして女性職員から請求があった場合には,必 要な時間病気有給休暇を与える。

  病気有給休暇の手続き,その他必要な事項については,別に定める勤務時間等に関する 規程による。

 

・43条のコメントとも関連するが,2項でいわゆる生理休暇を規定するのは,トラブルの種となるであろうから,条を別にして書きあらためたほうがよい。また,「勤務時間等に関する規程(案)」のなかに,いわゆる生理休暇の取得手続等についての規定を設ける必要がある。

 

・他の有給休暇とは異なり,病気休暇だけは,学長の承認によって取得が可能になることが予定されているようである。この点を明確にする表現にしたほうがよい。

 

・以上の点から,つぎのような規定にしたらどうか。

 

 第45条 学長は,教職員が負傷又は疾病のため療養する必要があり,勤務しないことがやむを得ないと認められる場合は,その勤務しない期間について病気休暇を付与する。

 2 病気休暇の手続き,その他必要な事項については,別に定める勤務時間等に関する規程による。

 

 第45条の2 女性教職員は,生理日における勤務が著しく困難である場合は,必要な期間について生理休暇を取得することができる。

 2  生理休暇の手続き,その他必要な事項については,別に定める勤務時間等に関する規程による。

                  

 (特別有給休暇)

第46条 職員は,冠婚葬祭等につき,特別有給休暇を受けることができる。

  特別有給休暇の種類,手続き,その他必要な事項については,別に定める勤務時間等に 関する規程による。

 

・「勤務時間等に関する規程(案)」11条によれば,労基法上の産前産後の休業など,重要な事項が特別有給休暇制度のなかに含まれている。これは判断が分かれるところであろうが,同規程(案)11条の内容を休暇の性質に応じてグルーピングしたうえで,「職員就業規則(案)」46条そのものに記載することは一考に値するのではないだろうか。また,できれば表などを使って,保障されている特別有給休暇が一覧できるような規定形式にしたほうが,教職員にとってはわかりやすいだろう。

 

 (育児休業等)

第47条 職員のうち,3歳に満たない子の養育を必要とする者は,学長に申し出て育児休 業等の適用を受けることができる。

  育児休業等の対象者,手続き,その他必要な事項については,別に定める国立大学法人 琉球大学職員の育児・介護休業等に関する規程(以下「育児・介護休業等に関する規程」 という。)による。

 

・育児休業・介護休業の申し出があった場合に,使用者はそれを拒むことはできない。そうであるならば,「学長に申し出て」という部分は削除して,労働者の権利であるという観点を前面にだしたほうが適切ではないか。また,他の有給休暇の規定との関係で,ここにだけ「学長に申し出て」という文言が入るのは,バランスが悪いのではないか。

 

・「育児休業等」の「等」は不明確である。おそらく,「育児部分休業」(「育児・介護休業等に関する規程(案)」12条以下参照)を指しているのであろう。

 

・これらのことから,つぎのような規定の仕方が考えられる。

 

 第47条 育児のために休業することを希望する教職員であって,3歳に満たない子と同居し養育する者は,育児休業又は育児部分休業をすることができる。

 2  育児休業又は育児部分休業の対象者,手続き,その他必要な事項については,別に定める国立大学法人琉球大学職員の育児・介護休業等に関する規程(以下「育児・介護休業等に関する規程」という。)による。

 

 (介護休業等)

第48条 職員の家族で傷病のため介護を要する者がいる場合は,学長に申し出て介護休業 等の適用を受けることができる。

  介護休業等の対象者,期間,手続き,その他必要な事項については,別に定める育児・ 介護休業等に関する規程による。

 

・47条と同様の理由から,つぎのような規定にしたらどうであろか。

 

 第48条 要介護状態にある家族を介護する教職員は,介護休業又は介護部分休業をすることができる。

 2 介護休業又は介護部分休業の対象者,期間,手続き,その他必要な事項については,別に定める育児・介護休業等に関する規程による。

 

 

   第6章  職員研修

 

 (職員研修)

第49条 職員は,業務に関する必要な知識及び技能を向上させるため,研修に参加するこ とを命ぜられた場合には,研修を受けなければならない。

  前項の規定にかかわらず,教育職員の研修については,別に定める教育職員規程による。

3 学長は,職員の研修機会の提供に努めるものとする。

 

 

   第7章 賞 罰

 

 (表彰)

第50条 学長は,次の各号の一に該当すると認める職員を表彰する。

  (1) 業務成績の向上に多大の功労があった者

  (2) 業務上有益な発明又は顕著な改良をした者

  (3) 災害又は事故の際,特別の功労があった者

  (4) その他特に他の職員の模範として推奨すべき実績があった者

2 前項の規定にかかわらず,永年勤続者表彰については,別に定める国立大学法人琉球大 学永年勤続者表彰規程による。

 

・大学における表彰制度という印象をあまりうけない内容となっている。たとえば,つぎのような規定はどうであろうか。

 

 第50条 次の各号のいずれかに該当する教職員は,表彰を受ける。

 (1)大学運営に多大の貢献があった者

 (2)公共及び社会にとって有益な発明をした者

 (3)学術上,優れた研究業績があった者

 (4)教育実践上,特に功績があった者

 (5)災害又は事故の際,特別の功労があった者

 (6)永年勤続し,勤務成績の良好な者

 (7)その他特に他の教職員の模範として推奨すべき実績があった者

 2 前項第6号に定められた永年勤続者表彰に関し必要な事項は,別に定める国立大学法人琉球大学永年勤続者表彰規程による。

 

 (表彰の方法)

第51条 表彰は,表彰状又は感謝状を授与して行い,副賞を添えることがある。

 

 (懲戒)

第52条 学長は,職員が次条各号の一に該当する場合は,これに対し次の区分に応じ懲戒 することができる。

 (1) 戒告   始末書を提出させて戒め,注意の喚起を促す。

 (2) 減給   始末書を提出させるほか,12月を限度としてその間の賃金を,1回の額が  平均賃金の1日分の半額,若しくは総額が一賃金支払期における賃金の10分の1を上  限として減額する。

  (3) 停職   始末書を提出させるほか,12月間を限度として出勤を停止し,職務に従事  させず,その間の給与は支給しない。

  (4) 降格    始末書を提出させるほか,現在就いている職種より下位の職種へ就ける。

  (5) 懲戒解雇   即時に解雇する。

  懲戒の手続き,その他必要な事項については,別に定める国立大学法人琉球大学職員懲 戒等規程(以下「懲戒等規程」という。)による。

  前2項の規定にかかわらず,教育職員の懲戒については,別に定める教育職員規程によ る。

 

・つぎの53条と条文の位置を置き換えたほうがよいのではないか。そのうえで,条文の見出しを「懲戒の種類」として,2項以下は別の条文にして見出しを「懲戒の手続」としたほうがよいのではないか(規定案については,つぎの53条のコメントを参照のこと)。

 

・本条3項で委任を受けた「教育職員規程(案)」には,附属学校教員の懲戒に関する規定が置かれていない。また,外国人教師及び外国人研究員については,「外国人教員及び外国人研究員等に関する規程(案)」において懲戒規定を設けるつもりか。これらの点について,関連規定を整備する必要があると考える。

 

 (懲戒の事由)

第53条 学長は,次の各号の一に該当するときは,所定の手続きの上,懲戒処分を行う。

  (1) 正当な理由なく無断欠勤が2週間以上に及ぶ場合

  (2) 正当な理由なくしばしば欠勤,遅刻,早退するなど勤務を怠った場合

  (3) 故意又は重大な過失により本学に損害を与えた場合

  (4) 窃盗,横領,傷害等の刑法犯に該当する行為があった場合

  (5) 本学の名誉若しくは信用を著しく傷つけた場合

  (6) 素行不良で琉球大学の秩序又は風紀を乱した場合

  (7) 重大な経歴詐称をした場合

  (8) この規則又は法人が定める諸規程に違反した場合

  (9) その他,前各号に準ずる不都合な行為があった場合

 

・あまりにも詳細である。ここでは,公務員法にならって,簡略化したらどうであろうか。

 

・前条のコメントとあわせて,52条と53条はつぎのような規定にすることが考えられる。

 

 (懲戒の事由)

 第52条(現在の53条(案)の修正) 学長は,職員が次の各号の一に該当する行為をなした場合は,懲戒処分を行うことができる。

 (1)大学の規則に違反した場合

 (2)大学の教職員たるにふさわしくない非行をなした場合

 (3)職務上の義務に違反し,又は義務を怠った場合

 

 (懲戒の種類)

 第53条(現在の52条(案)の修正) 前条に基づく懲戒処分の種類は,次の各号のとおりとする。(各号は略)

 

 (懲戒の手続)

 第53条の2 職員に対する懲戒処分は,別に定める国立大学法人琉球大学職員懲戒等規程(以下「懲戒等規程」という。)に基づいて,学長が行う。

 2  教員に対する懲戒処分は,別に定める懲戒等規程及び教育職員規程に基づいて,学長が行う。

 

 (訓告等)

第54条 前条にかかわる懲戒処分の必要がない者についても,服務を厳正にし,規律を保 持する必要がある場合は,訓告,厳重注意を文書又は口答により行う。

  前項に規定する訓告等の手続き,その他必要な事項については,別に定める懲戒等規程 による。

  前2項の規定にかかわらず,教育職員の訓告等については,別に定める教育職員規程に よる。

 

・本条3項で委任をうけている「教育職員規程(案)」には,訓告等に関する規定がない。

 

 (損害賠償)

第55条 職員が故意又は重大な過失によって本学に損害を与えた場合は,第52条又は第 54条の規定による懲戒処分等を行うほか,その損害の全部又は一部を賠償させることが ある。

 

 

  第8章 安全衛生

 

・労働安全衛生を確保するのは使用者の責任であることを,最初に明確に規定しておいたほうがよい。このことを前提に,56条所定の教職員の協力義務も意味をもってくる。この観点からは,57条の規定を本章の冒頭にもってくるべきである。また,安全衛生は,危険防止と健康増進につきるのではない。たとえば,つぎのような規定が考えられる。

 

 (安全衛生管理責任)

 第56条 学長は,教職員の危険防止,健康増進及び快適な職場環境の形成のため必要な措置を講ずる。

 2 前項のために必要な事項については,別に定める国立大学法人琉球大学健康安全管理規程(以下「健康安全管理規程」という。)による。

 

 (協力義務)

第56条 職員は,安全,衛生及び健康確保について,労働安全衛生法(昭和47年法律第 57号)及びその他の関係法令のほか,学長の指示を守るとともに,本学が行う安全,衛 生に関する措置に協力しなければならない。

 

・「第56条」→「第57条」:本章冒頭のコメントを参照のこと。

 

 (安全・衛生管理)

第57条 学長は,職員の健康増進と危険防止のために必要な措置を講じなければならない。

  職員の安全・衛生管理については,別に定める国立大学法人琉球大学健康安全管理規程  (以下「健康安全管理規程」という。)による。

 

・本章冒頭のコメントを参照のこと。

 

 (安全・衛生教育)

第58条 職員は,本学が行う安全・衛生に関する教育,訓練を受けなければならない。

 

・実施にあたっての責任の所在を明確にするために,「本学」→「学長」。

 

 (非常災害時の措置)

第59条 職員は,火災その他非常災害の発生を発見し,又はその発生のおそれがあること を知ったときは,緊急の措置をとるとともに直ちに学長に連絡して,その指示に従い,被 害を最小限にくいとめるように努力しなければならない。

 

・「被害を最小限にくいとめる」という文言は,経営財産の保全を主眼としているかのような印象を与える。労働者に対する安全配慮義務の観点から適切ではないのではないか。逆に,日常業務における災害発生の防止という観点を強調したほうがよいのではないか。たとえば,つぎのような表現にできないか。

 

 59条 教職員は,勤務中に地震,火災,水害その他非常の災害により業務を遂行することができない場合,又はその勤務する建物若しくはその付近にこれらの災害が発生したことを知った場合は,自ら適切な措置を講ずるように努めるとともに,速やかに学長の指示を受けなければならない。

 2 教職員は,前項に規定する場合以外であっても,業務の運営に重大な障害のあることを知った場合,又はそのおそれがあると認める場合は,速やかに学長へ報告する等適切な措置を講じなければならない。

 

 (安全及び衛生に関する遵守事項)

第60条 職員は,次の事項を守らなければならない。

  (1) 安全及び衛生について学長の命令,指示等を守り,実行すること

  (2) 常に職場の整理,整頓,清潔に努め,災害防止と衛生の向上に努めること

  (3) 安全衛生装置,消火設備,衛生設備,その他危険防止等のための諸設備を適正に使用  すること

 

 (健康診断)

第61条 本学は,毎年定期に健康診断を行う。

2 前項のほか,必要に応じて全部又は一部の職員に対し,臨時にこれを行うことがある。

3 職員は,正当な事由なしに健康診断を拒んではならない。

  本学は,健康診断の結果に基づいて必要と認める場合は,職員に就業の禁止,勤務時間 の制限等,当該職員の健康保持に必要な措置を講ずる。

  職員の健康診断についての手続き,その他必要な事項については,別に定める健康安全 管理規程による。

 

・1項及び4項の「本学」→「学長」:58条のコメント参照。

 

・人間ドックについての規定は?

 

・32条1項5項の「勤務時間内に総合的な健康診査を受けることを承認された期間」に,61条の健康診断および人間ドックは入るであろうが,そのことを前提に,診断の期間を労働時間として扱う旨の規定が必要ではないか(32条のコメント参照)。

 

 (妊産婦職員の保護)

第62条  妊娠中又は出産後1年を経過しない職員(以下「妊産婦職員」という。)が請求し た場合は,時間外勤務,休日勤務及び深夜勤務には就かせない。

 

・この規定の趣旨は,第5章第1節末尾のコメントで提案した42条の2の内容に組み込んでおいた。妊産婦に対する特別な労働時間規制は,安全衛生の章ではなく,労働時間の章でとりあげておいたほうが理解がしやすいだろう。

 

・妊産婦に関して本章でとりあげるべきは,労基法64条の3第1項と65条3項であろう。つぎのような規定が考えられる。

 

 第62条 学長は,妊産婦である女性教職員を,妊娠,出産,哺育等に有害な業務に就かせてはならない。

 2 学長は,妊産婦である女性教職員が請求した場合は,その業務を軽減し,又は他の軽易な業務に転換させなければならない。

 

 (就業の禁止)

第63条 学長は,職員が次の各号の一に該当する場合は,就業を禁止することがある。

  (1) 伝染のおそれのある病人,保菌者及び保菌のおそれのある者

  (2) 労働のため病勢が悪化するおそれのある者

  (3) 前二号に準ずる者

 

 

   第9章 出 張 

 

 (出張)

第64条 職員は,業務上必要がある場合は,出張を命ぜられることがある。

  職員は,正当な理由なく出張命令を拒むことはできない。

  出張が終了したときは,その結果を遅滞なく所属長に報告しなければならない。

 

 (旅費)

第65条 職員が業務上,出張を命ぜられた場合の旅費については,別に定める国立大学法 人琉球大学職員旅費規程による。

 

 

   第10章 福利・厚生 

 

・32条1項1号との関係でも,本章に教職員のレクリエーションに関する規定を新設する必要はないか。

 

 (宿舎利用基準)

第66条 職員の宿舎の利用については,国家公務員宿舎法(昭和24年法律第117号) 及び国家公務員宿舎法施行令(昭和33年政令第341号)の定めるところによる。

 

・宿舎,それから次条の共済については,国家公務員と同じ制度のもとにおかれることになっているので,就業規則が国家公務員宿舎法等に詳細を委ねるのは許容されると解される。福利厚生に対する教職員の権利という観点からは,つぎのような表現にしたらどうか。

 

 第66条 教職員は,大学の宿舎を利用することができる。

 2 宿舎の利用に関し必要な事項は,国家公務員宿舎法(昭和24年法律第117号)及び国家公務員宿舎法施行令(昭和33年政令第341号)の定めるところによる。

 

 (共済)

第67条 職員の共済は,国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)の定めると ころによる。

 

・前条と同様な理由から,つぎのような規定が考えられる。

 

 第67条 教職員は,国家公務員共済組合に加入する。

 2 教職員の福利厚生に関し必要な事項は,国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)及び国家公務員共済組合法(昭和33年法律第129号)の長期給付に関する施行法の定めるところによる。

 

 

   第11章 災害補償

 

・本章の規定は合理的で適切な内容であると評価する。

 

 (業務上の災害補償)

第68条 職員の業務上の災害については,労基法第8章の規定及び労働者災害補償保険法 (昭和22年法律第50号。以下「労災法」という。)の定めるところにより,各災害補償 を行う。

 

・子細な点であるが,労働者災害補償保険法の略称としては「労災保険法」が使われることが多い。

 

 (通勤途上の災害補償)

第69条 職員の通勤途上における災害については,労災法の定めるところにより,各災害 補償を行う。

 

 (休業補償及び法定外補償給付等)

第70条 職員が業務上又は通勤途上の負傷若しくは疾病による療養のため休業し,労災法 による給付を受けるまでの最初の休業3日間(待期期間)について,本学が休業補償を行 う。

  労災法による給付を受けるとき,必要と認められる事由がある場合は,労災法による給 付以外に本学による法定外補償給付等を行う。

  本学による休業補償及び法定外補償給付等の手続き,その他必要な事項については,別 に定める国立大学法人琉球大学休業補償等支給規程による。

 

 

   第12章 退職手当

 

・退職手当に関して,わざわざ章を設ける必要があったのか。第3章の29条のつぎに規定したほうが,わかりやすいのではないか。

 

 (退職手当)

第71条 職員の退職手当について,その適用範囲,決定,計算,支払方法その他必要な事 項については,別に定める国立大学法人琉球大学職員退職手当規程による。

 

・退職手当に対する教職員の権利という観点からは,つぎのような表現にしたほうがよいのではないか。

 

 第71条 教職員が退職した場合は,勤続年数及び退職事由に応じて退職金を支給する。

 2 教職員の退職手当について,その適用範囲,決定,計算,支払の方法その他必要な事項については,別に定める国立大学法人琉球大学職員退職手当規程による。

 

 

   第13章 雑則

 

第72条 この規則に定めるもののほか,この規則の実施に関し必要な事項は,学長が別に 定める。

 

 

     附 則        

 この規則は,平成16年4月1日から施行する。