琉球大学教授職員会ニュース 第99号

20043月15日 琉球大学教授職員会

内線 2023 E-mail kyoshoku@eve.u-ryukyu.ac.jp

 

??? 予算配分方針は学長−役員会が専決???

??? 教授会に人事権なし 選考の実務のみ???

これでよいのでしょうか

 

法人化後の組織運営等について(将来構想委員会案)

国立大学法人琉球大学 財務・会計制度(案)の概要 についての意見

 

 法人化後の組織運営等について(案)の追加文書(5-9章)が将来構想委員会で2月27日付で作成されています。また、国立大学法人琉球大学 財務・会計制度(案)の概要などが作成されています。これらは、法人化後の琉球大学のあり方を決定する重要な指針ですが、この年度末に矢継ぎ早に出てきているばかりか、前者はこの文書は一部の部局を除いて教員に配布されてさえおらず、議論する時間も機会も保障されていません。しかし、法人化という制度の大変革に対応していくために、今後も大学運営は全学的な合意の上で進めていかなければ様々な混乱が予想されます。教授職員会執行部・専門委員会はこれらの案を検討し、いくつかの重要な問題点について指摘いたします。

 

“学部への予算配分は学長・理事の裁量まかせ?”

 

 国立大学法人法では、予算の作成・執行や決算に関する事項について学長は役員会の議を経て決定すること、また、経営協議会はこれらの事項を審議することを定めています。したがって、予算配分委員会はなくなります。

 予算編成の流れについて、「国立大学法人琉球大学財務・会計制度(案)の概要」(2004.2)では、おおむね次の1-5のようになっています。

(1)    所与の財源をどのように学内配分していくか、役員会で配分方針を決定

(2)    各部局は配分方針に基づいて部局予算(執行計画)原案を作成

(3)    役員会において各部局から同原案のヒアリングを行い、所要の調整をはかる。(これは部局長等懇談会で行う:経理部長の説明)

(4)    役員会が調整して修正予算案を策定して、経営協議会で審議

(5)    経営協議会の意見を基に、役員会で配分予算を決定

 

 つまり、全学の配分方針は、教育研究を司る教育研究評議会や各部局が関与する仕組みもなしに一方的に学長と5名の理事とで策定されます。それに基づいて各部局に配分が決まった額をどのように使うかのみが部局で検討されることになります。また、ヒアリングや調整は懇談会の場で行われるものと説明されており、「懇談会」という性格上、議事の記録・保存・公開、懇談事項の拘束力等については、目下、全く保障の限りではありません。

 さらに、概算要求案の策定に当たっても、教育研究評議会はいっさい関与しないことになっています。

 このように、法律に基づいて役員会と経営協議会が予決算に関与するにしても、それを研究教育の推進という視点からチェックし、よりよいものにしていく体勢が全く欠落しています。まるで、現在の文部科学省・財務省と各大学の関係が、今後は学長(役員会)・経営協議会と各部局の関係となるようなものだといえるでしょう。官僚的・専断的な財政運営に導く制度設計です。

 部局長を含む教員が、全学の予算のあり方について意見を述べたり、決定に関与することが全くできないと、大学はどうなるでしょうか。たとえば、予算措置を必要とする複数部局または全学的な教育研究の取り組みについては、役員会しか構想できないことになりかねません。また、学内で重点配分主義が進められた場合、各部局に配分される基幹的な教育研究経費が減少して研究教育活動が危機に陥っても、部局の側から予算についての全学的方針の変更を提案・協議する場はないのです。予算配分に不満なら学長解任請求をする以外に手段がないという、極端な制度案なのです。

 教育研究こそが目的である大学としては、教育研究の現場の意見を予算に反映させる全学的な協議の場が必須です。大学の円滑な運営のためには、(学内措置で設置される公式な機関としての)部局長会議、教育研究評議会の予算案策定への実質的関与が欠かせないでしょう。

 予算の策定面で、学長の専断的な大学運営制度となっていることは改められるべきです。配分方針案、修正予算案、概算要求案の策定の過程で、教育研究評議会および各部局に方針案を知らせ、意見を聞くなどの手続きが盛り込まれるべきではないでしょうか。

 

<解説>  国立大学琉球大学「財務・会計制度(案)の概要」の問題点

(一) 国立大学法人法は、その1条で「この法律は、大学の教育研究に対する国民の要請にこたえるとともに、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図るため、国立大学を設置して教育研究を行う国立大学法人の組織及び運営・・・について定めることを目的とする。」と定めている。

 同法は、学問研究の水準の均衡・発展を図ることを目的としていて、それを実現するための、いわば手段である「組織や運営」に関する法律である。同法は、当然のことながら、憲法で保障された「学問の自由」を実現するものでなければならない。

 ところで、同法で定める「運営」について、法的には、「管理」、「管理運営」、などの用語で使われたり、また、狭義の意味から広義の意味にまで使われたりする。

 広義の管理運営は、その対象からみて、㈰対人管理、㈪対物管理、㈫狭義の運営管理、㈬財務管理、などから構成されることになる。

 以上の点を前提にして、国立大学法人法の管理作用の仕組みをみてみると、管理について網羅的に定めたものではなく、他の法律の規律を受けたり、あるいは、少なくとも、運営に関しては、大学の自主的判断に委ねることを、必ずしも禁止する性質のものでもない。

 

 以下では、㈬の財務管理に関連して、国立大学法人法の制度設計の特徴と問題点について考えてみたい。

(二)  国立大学法人法は、国立大学法人法11条2項で、「学長は、「予算の作成及び執行並びに決算に関する事項」について決定をしようとするときは、学長及び理事で構成する会議(第五号において「役員会」という。)の議を経なければならない。」とされ、同法20条で、経営協議会は、「予算の作成及び執行並びに決算に関する事項」を審議する旨を定めている。

 

 この規定などだけをみていると、予算については、学長・役員会、経営協議会の独占的審議事項のようにも読める。しかし、さきにも述べたように、同法は、あくまでも、組織や運営について、最小限度の定めをおいたのであって、同法の解釈や運用については、憲法の保障する学問の自由の観点からの検証が求められる必要がある。

 この点に関連して、ある憲法の教科書(芦部信善編『憲法㈼人権(1)』)によれば、「財源配分に関し、それが研究教育と不可分である限り、一種の財政自治権として、大学自治の一環をなすことが承認される必要がある。この点、学説中には、大学における研究財政上の自治が大学の自治の一環として解されるとした場合、研究者の大学経費、研究費に対する研究者の請求権を、学問の自由の『前提原理的観念』として把握せんとする見解が主張される」という指摘がなされている。

  ここでのポイントは、教育研究に関わる財政分配には、何らかの形で、研究者集団の関与が、学問の自由・大学の自治の観点から、求められてくる必要があるという点である。

 

(三) 以上の観点から、国立大学琉球大学「財務・会計制度(案)の概要」を概観すると、

予算編成について、役員会によってその配分方針が決まり、その方針に従って、各部局は執行計画原案を作成することになっている。

 この予算手続は、教育研究協議会あるいは各学部からの、予算配分方針作成段階における統制・関与手段を剥奪されているのである。つまり、最大の問題は、教官を含めた大学の構成員自身が、教育研究に関わる予算・財政であっても、それを有効に統制する手段がないということである。

 なるほど、「役員会において各部局から部局予算原案に対するヒアリングを行い、所要の調整を図る」ことになっているが、それとて、役員会が策定した予算配分方針に従い、その枠内での調整に限られるのである。

 繰り返すことになるが、役員会の策定する予算配分方針の合理性そのものを担保する制度設計がなされていない、そのことを問題にする必要があるのである。換言すれば、現行の国立大学法人法を前提にしたとしても、憲法で保障された学問の自由を実現するにふさわしい予算編成に関わる組織の再編が、今後の琉球大学における課題といえよう。

 

“人事は教育研究評議会、教授会は選考のみ?”

 

「教授会の位置づけ」

2月27日付けの“5.学部運営について、(4)教授会について” に関して

「法人化後の運営組織等について」2/27案では、15-22ページが追加され、教授会の役割についてふれています。

そこでは、「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」最終報告(平成14年3月)を典拠として、教授会の審議事項について、『人事事項は基本的に除かれ、「教育研究」の事項に限定することを示唆している』『教員人事については、全学の将来構想の方針に則り、教育研究評議会で審議の上、教員 選考については各学部教授会にゆだねること等を検討することが望ましい』とされています。すなわち教授会は人事の選考のみしかできないようになっています。

 しかし、ここで、根拠とされている「調査検討会議最終報告」は国立大学法人法制定の1年以上も前に出されたもので、最終的に法に定められた国立大学法人の制度 設計も、国会審議の過程での政府委員の具体的説明も、上記とは異なっています。また琉球大学将来構想シンポジウム(2002.12)資料では 教員の人事事項の中で「教員の採用昇進等にあたって各学部等は、当該学部等における選考に基づき、学長に申請を行う」、そして全学教員人事委員会において審議しその報告に基づき学長が発令することになっています。つまり、本学の構想では、この時点でも学部には人事に関する第一次発議権がありましたが、今回の報告では学部の人事への関与は、選考のみに制限されています。

 しかも、この追加分については多く学部学科で議論されていません。人事は大学自治の要をなす問題とされており、大学の運営上の重要事項であることにかんがみ、4月1日の期限にこだわらず法人化後も各学部で十分審議して策定する必要があります。

 

 参議院文教科学委員会は、国立大学法人法案の採決の際に、附帯決議に

「教授会の役割の重要性に十分配慮すること」

と特に明記し、その審議でも下記のようなやりとりがあります。

「教授会の役割はこれまでと変わりがない、役割や権限は変わりがないと。そして、きちっと(学校教育法)五十九条の規定により置かれて、余りこの法案の中に教授会というのは触れられていないんですよね。ほぼこれまでと変わりがないというふうに今答弁されたと理解していいですか。

○政府参考人(遠藤純一郎君) そのとおりでございます。」

 与党委員の質問にも、教授会の自治の精神が弱くなることはないと政府は明言しており、教授会の人事に関して、選考のみに限定する根拠はありません。

 以上の議論を踏まえれば、 教員人事を当該学部教授会が主体的に審議する現状のあり方を改めて、全学の方針や教育研究評議会の下での実務的な選考のみに限定する必要は全くありません。むしろ、そのような限定は、根拠とすべきでない古い文書に基づいて、教育研究の重要事項の核であり、教授会自治の根拠とされる教員人事のあり方を歪める結果をもたらすのではないでしょうか。

 2/27案のままでは、国会での政府委員の答弁や附帯決議で強調されている「教授会の役割の重視」の水準から著しく後退することになります

 教員人事については、「当該学部の教員人事については、学部教授会の議に基づき研究評議会が行う」などの表現に改めるべきでしょう。即ち、第一次提案権を教授会が持つように運用すべきです。そして、大学全体の将来構想に基づく人事上必要な事項は、別途特別規定として制約的に設けければ事足りるでしょう。

 同様に、学部・学科、センター等の改編等についても教授会の意見を重視する仕組みを作るべきでしょう。

 人事や改組が教育研究の現場を無視した形で実行されると、教育研究に重大な混乱をまねくことになります。法人化されても、学科・コース・講座単位で、講義やゼミ・研究指導、就職指導を行う教育のあり方は変わりません。免許・資格の取得に必要な講義や教員配置なども教授会のレベルでなくては点検できません。このように、適切な教育課程を維持する上で、教員人事を学部が主体的に進めることは欠かせないことです。研究の推進にしても、各部局において推進すべき具体的な学問分野や、専門分野のバランスのとれた望ましい研究者配置について、判断できるのは、各部局の教授会のほかにはあり得ません。

 琉大は、琉球列島唯一の総合大学としての社会的使命にかんがみ、各部局の教育研究のバランスのとれた発展を保障するためにも、こうした教授会の重要性に配慮した教員人事制度を採るべきです。

 

教育研究評議会の構成について

教育研究評議会から各種センター長が数多くはいっています、各種センター長は理事の部下としての性質ももっています。したがって、これでは教育研究評議会の独立性が確保されません、したがって各種センター長はオブザーバーにとどめ教育研究評議会からはずすのが望ましい。