読書と日々の記録2007.08下

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■読書記録: 31日短評2冊 25日『電波利権』 20日『藤田嗣治「異邦人」の生涯』
■日々記録: 28日教育実習 23日夏休みだというのに 17日矢谷渓谷

■今月の読書生活

2007/08/31(金)

 なんとまあ今月は総冊数7冊、約8年前に読書記録をつけ始めてから最低である(次点は去年の6月と今年の4月の8冊)。おかげで今月は、いつもなら短評に回っているような本も長評として挙げていたりする。かつては月15冊も20冊も読んでいたのが今となっては信じられない。読めない一因には、読書記録を書くのに時間がかかっていることもありそうだ。かつては読み終わったらすぐにスラスラ書き終わっていたのに。スランプなのか、トシなのか...

 今月よかった本は、『あなたへの社会構成主義』(なるほど異なる伝統間での対話ね)である。それと考え方が似ているせいもあり、『部下を伸ばすコーチング』も面白くはあったのだが。

『バレエの宇宙』(佐々木涼子 2001 文春新書 ISBN: 4166601946 \710)

 娘たちのバレエの発表会を見ながら、バレエって何だか不思議なものだなあと思っていた。こんなものが、どういうふうに誕生し、どういう歴史をたどって、どうしてこんな形になったんだろう。そう思って買ってみた。筆者はバレエに関しては博覧強記らしく、知りたいことがかなり書かれていた。バレエが生まれたのは16世紀フランス。宮廷で発展し、ルイ14世の頃には、今と同じく1番から5番という基本ポジションが生まれていた。チュチュとトゥシューズが生まれたのはフランス革命の頃。しかし19世紀終わりごろには、フランスではバレエは衰退していたが、18世紀にロシアに渡ったバレエがロシアで独自の発展を遂げた。回転や跳躍はロシアで発展した技(?)である。そのロシアのバレエ団が20世紀はじめにヨーロッパで公演を行い、それがきっかけでバレエが全世界に広まるとともに本家のバレエも息を吹き返した、というような流れのようである。バレエは今も進化し続けており、特に20世紀末の10年間でバレエは大きく様変わりしたという。本書はこうい話だけでなく、現代のスターダンサー、バレエの構造、世界のバレエ、なんて話もある。バレエについて根本からいろいろ知りたかった私にとっては、うってつけの一冊だった。

『からくり民主主義』(高橋秀実 2002 草思社 ISBN: 4794211368 \1,800)

 再読。前に読んだときはとーっても面白かったのだが,今回はそうでもなかった。筆者はある問題やテーマについて知るために現地を訪れると「わからなくなる」という。それは,「テーマが生み出すプレーンな「みんな」と一人ひとりが語る「みんな」がズレているから」(p.270)だという。要するに本書は,そのテーマの下で一般的に語られる「みんな」(の反応,考え)ではない反応や考えが描かれた本なのだが,今回読んで気になったのは,筆者が,一般に言われている「みんな」とは「違うみんな」を描いているように見えたことだ。要するに,結局はある種の「みんな」という語りをしているんじゃないの,と思ったのである。「世間で語られているのとは別の人たち」というステレオタイプ像というか。文章で何かのテーマについて描こうとする以上,多少はやむをえないかもしれないのだが。しかし,もう少し,いろんな人がいることが見えるほうがいいのではないかなあと今回読みながら思った(例えば村上春樹の『アンダーグラウンド』のような。ってこの本,私は読んだことがないのだけれど)。

教育実習

2007/08/28(火)

 今日はうちのゼミ生が教育実習で初授業なので見に行った(久々の授業見学は疲れた...)

 授業は,なかなかの出来だった。彼は模擬授業もやったことがないと言っていたが,ホント?と思うぐらいによくやっていた。

 一つ言うとすれば,作業のやり方を説明するとき,説明が今ひとつ子どもたちにうまく伝わっていなかったように思う(私にも分かりにくかった)。

 もっともこれは彼だけの問題ではない。同様のシーンは過去何回も教育実習で見てきている。実習生共通の弱点なのだろうと思う(というか,これまでに「上手に伝える工夫をする」経験をあまりしてこなかったのだろう。大学の授業でも)

 口で言っただけでは伝わらないのは,小学生のみならず,大学生も同じで,私もいつも苦労している。彼らもそういう苦労を,実習前に何度か経験できるといいのだろうが。

 まあそれにしても,初回がまずまずだったので,今後が楽しみである。

■『電波利権』(池田信夫 2006 新潮新書 ISBN: 9784106101502 \714)

2007/08/25(土)

 『日本の論点2007』で、筆者の論考が興味深かったので買ってみた。概要は次の通り。

電波がもっともぜいたくに割り当てられているのがテレビ局である。〔中略〕電波は免許制だったため、いわば「早い者勝ち」で、よい帯域が割り当てられたのである。この割り当てには市場メカニズムが機能していないため、電波は政治的な利権となり、放送はきわめて政治的なメディアとなったのである。(p.27)

 ということで、電波がいかに貴重なものか(テレビに浪費されているか)、いかに政治的な道具となっていたか、ハイビジョンがいかに見殺しにされたか、地上デジタル放送化がいかに無駄な、利権を守るためだけのものになっているのか、携帯電話が(電波利権の隙間を縫って)いかに発展してきたか、通信と放送を分けることが(利権を守る以外に)いかに意味のないことか、などが語られている。

 本書の内容は、『日本の論点2007』に書かれていた内容がより詳しくふくらませられている内容なのだが、やはり興味深かった。『日本の論点2007』では主に地デジについて書かれていたのだが、地デジについては、私のように,きわめて情報の乏しい日常を送っていると,あと5年でアナログ放送が終わることぐらいは知っていても,なんでそうなったのかや,今の世の中の状況(ほかの人はどう考えているのか,どうしているのか)はまったくわからない。地デジ推進派の意見しか入ってこないのである。だから,そろそろ新しいテレビを買わなくちゃいけないのかな,ぐらいにしか考えていなかった。

 しかしこの本のおかげで,多少は状況がわかった。小論の筆者は,現状のままではとても国民の納得は得られず,場合によってはスケジュール変更もありうるだろうというようなことを述べている。これからどうなっていくのかはわからないが、しかし少なくとも、表向きに宣伝されている状況がすべてではないことはわかった。やっぱりこういう、表の情報以外の情報って必要だよな。

夏休みだというのに

2007/08/23(木)

 夏休みだというのに、昨日は会議が2件あったし、今日は年休とって家族サービス。なかなか落ち着いて論文書く時間が取れない...

■『藤田嗣治「異邦人」の生涯』(近藤史人 2002/2006 講談社文庫 ISBN: 9784062752923 \729)

2007/08/20(月)
〜アイデンティティの模索〜

 画家藤田嗣治(つぐはる)氏の伝記的ノンフィクション。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作である。

 藤田氏はシャガール、モディリアーニなどと並ぶエコール・ド・パリの代表的な画家であり、「パリでは今ももっとも有名な日本人画家」(p.10)である。しかし、「日本では、フランスと比べると不思議なほど知名度が低い」(p.10)。それはなぜなのか、つまり、どのようにフランスで有名になり、どのように日本での知名度が得られなかったのかが本書で詳細に描かれており、とても興味深かった。

 彼が1920年代のフランスで、絵を描きまくり見まくりながら自分のオリジナリティを模索する部分は、研究者の研究活動にもあい通じるものがある(なんてことが書かれている書評ブログがあり、なるほどそうだなあと思った)。さらには時代が変わり、状況や住むところが変わり、彼なりに求めるものが変わり、その中で再びオリジナリティを模索する姿は、アイデンティティ模索の姿として読め、これまた興味深いものであった。派手な前半生とは打って変わって静かに暮らしながらも絵を描き続ける老年期もまた興味深い。

 なんだかうまい言葉で表現できずに「興味深い」ばかり書いているが、何だか人生について考えてしまうなあ、と思わせられるようなノンフィクションだった。

矢谷渓谷

2007/08/17(金)

 昨日は、家族(+姪)で矢谷渓谷に日帰りで行ってきた。妻の実家から1時間半のところにある。妻の実家の車にはカーナビがついているので楽勝かと思ったが、山の中に入ると精度が落ちるのか、道なき道を走っていることになっていたり、途中、行くべき道と反対方向をナビゲートされたりした。

 最初、マザーネーチャーきらりというところに行ったところ、そこは「渓谷」ではなく、「渓谷近くにあるキャンプ地+プール」だった。でもプールの水は渓谷の水を使っているのだろう、とても冷たく、また、ウォータースライダーがあるので娘たちは喜んで、1時間ぐらい遊んでいた(これならホンモノの渓谷の滝すべりなどとは違って危なくないし)。

 しかしまあこれだけでは渓谷に来たという感じじゃないよね、ということで、渓谷に降りられるところを探し、行ってみた。

 家族連れがうじゃうじゃいたが、子どもたちは川に足をつけてしばし遊んでいた。次はバーベキューセットもって泊まりで来るといいかも。


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