読書と日々の記録2007.11上

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■読書記録: 15日『蒼氓の大地』 10日『ザ・ゴール』 5日『ワークショップ型授業が子どものやる気を引き出す』
■日々記録:  9日ボールペン 1日教育発達心理学特論

■『蒼氓の大地』(高橋幸春 1990 講談社 ISBN: 9784062049665 \1,631)

2007/11/15(木)

 1913年に広島からブラジルに移民していった野村峯夫一家について書かれたノンフィクション。講談社ノンフィクション章受賞作である。これはなかなか面白かった。面白かった理由の一つは,私がこういう移民についてほとんど知らなかったからである。前に住んでいた広島県は,ハワイをはじめ海外移民をたくさん出している土地である。今住んでいる沖縄もそうだ(世界ウチナーンチュ大会,なんてのがあるくらいである)。しかし,移民がなぜ移り住んでいったのか,移民先で何をしていたのか,移民するということはどういうことなのか,まったく分かっていなかった。本書によれば,当時,アメリカやブラジルに移民して行った人は多いが,多くの人は,数年で一旗あげて故郷に錦を飾る,というつもりで移民して行ったらしい。しかし本書の主人公もそうなのだが,多くの人は,帰国する余裕もなく,結果的に移民先に永住している(本書の主人公はそれでも,一度日本に帰国できているので,移民としては成功したほうだという)。ふーんそうだったのかあ,という感じである。

 本書が面白かった第二は,このような祖国を離れた人々についてのノンフィクションをこれまでに読んできたからである。『コリアン世界の旅』『海峡を越えたホームラン』『小蓮の恋人』,あたりだろうか。そこにあるのは,逆境で生きるということであり,異文化適応の問題であり,異文化理解の問題であり,アイデンティティの問題である。それらに共通するような面白さが本書にもあった。

 本書が面白かった第三は,方法論である。筆者は主人公の孫と結婚した男性である。その彼が,折に触れて身の回りの人に話を聞き,ゆかりの場所をたずね,彼らがブラジルから出した手紙や彼らの元に日本から届いた手紙を読み,出来上がったのが本書である。ノンフィクションというとある意味,ライフヒストリー研究のような質的研究ととても近いものがあるわけだが,一事例でどれほどのことを語ることができ,読者に伝えることができるのか,正直なところ,私には分からないでいた。しかし本書では,一事例を知ることで,私はブラジル移民の姿を多少なりとも理解できた気がした。少なくとも,単なる一事例を知っただけ,という気分ではない。それはどこから来るのだろうか。主人公の事例が,ある意味平均的なものであること,ブラジル移民というまったく想像のつかない世界であること,ほかの人も同じような考えを持っていたらしいことがなんとなく見えてくること,などがその理由か。そんなことを考えることができたという点でも,私にとってはとても興味深い本であった。

■『ザ・ゴール─企業の究極の目的とは何か』(E. ゴールドラット 1985/2001 ダイヤモンド社 ISBN:9784478420409 \1,680)

2007/11/10(土)

 製造の現場で問題にぶちあたった工場が、新しい考えを取り入れることで問題を解決する、という小説仕立ての話。老子風の人物のアドバイスをときどき受けながら、しかし自分たちでも考え、少しずつ問題を解決していく様子は、製造業や経済学、会計などのことをほとんど知らない私でもおもしろく読めた。なにせ550ページもある本を3〜4日で読んだのだから。

 あくまでも私が読み取った範囲での話だが、結局問題は、工場(あるいは企業)の究極の目的をきちんと意識することなく、局所的な最適化のみを求める形で、慣習的なやり方で業績を評価するなどすべてが組織されていることが根本的な問題のようだ。このような問題は、製造業に限らず、あらゆるところに通用することだと思った。

 本書で提唱されている考え方は、制約理論(TOC)という新しい考え方のようだが、いわれていることは、私のような素人からみるとごく当たり前のことのように思える。しかし筆者がこの考え方をいくつかの企業に導入したところ業績が向上したとか、読者から「うちの工場の問題と同じだ」というような手紙がたくさん来た、というあと書きを読むと、こういう考え方は必ずしも当たり前ではないんだなあということがわかる(システムが巨大で複雑になると全体が見えにくくなるということなのだろうか)。

 ちなみに本書の続編は「思考プロセス」についての本らしい。読みたい気もするが、そちらも400ページあるらしい。うーんどうしよう。

ボールペン

2007/11/09(金)

 ボールペンで字を書くのは憂鬱である。

 インクは見えるのに,インクが出なくなることはしょっちゅうだし。

 ペン先にインクがたまってボタっとなることもよくあるし。(ついでにいうと,ペン先を出したまま胸ポケットにさしてしまい,ポケットにインク染みをつけることはよくあるし)。

 ところが,先日たまたま買った,ゼブラの「サラサ」は違った(私が買ったのは,サラサ2+Sという,黒,赤に加えてシャープペンシルもついているヤツ)。

 水性インク(ジェルインク)なので,インクが途中で出なくなることもない。ボタっとなることもない(ついでにいうと,ポケッセーフ機構があり,うっかりペン先を出したままポケットに差してもペン先が戻るらしい)。

 ということでサラサラ書けるので,毎日愛用した結果,8月に買ったのに,11月には,黒,赤ともにインクがなくなってしまった。

 インクがなくなるまでボールペンを使ったのは,覚えている限りはこれが初めてかもしれない。そういう意味で,ちょっと感動である。

 3ヶ月弱でインクがなくなるのは,早いといえば早いのだが,それ以外には,書く上で全くストレスがないので,引き続きこれを使っていこうと思っている(ネット上で注文した替芯と,サラサ3が今日届いたので,うれしくてこの日記を書いている次第)。

■『ワークショップ型授業が子どものやる気を引き出す』(上條晴夫 2007 学事出版 ISBN: 9784761913236 \2,310)

2007/11/05(月)
〜どんな目的を実現するために?〜

 ワークショップ型授業についての本。筆者がある大学の集中講義で行ったワークショップ型授業が丸ごと載せられているので、大学でのワークショップ型授業の雰囲気を味わうにはとてもよい本である。

 ただし私から見ると残念なところもあった。それは、ワークショップ型授業を「どのように」やるかという話はたくさんあるのだが、「どんな目的を実現するために」、という観点からの記述が見られなかった点である。いや、タイトルにあるように、「子どものやる気を引き出す」ため、というような記述は見られる。そこで私が知りたいのは、何のために、どんなやる気を引き出そうとしているのか、というもう一歩踏み込んだ話なのである。確かに本書を見る限り、筆者が行っているワークショップ型授業は、丁寧なアイスブレイクを何度も繰り返すことで、楽しく、やる気を引き出しているのだろうなとは思う。しかしそれが何のために行われているのかが見えないのである。

 見た感じでは、目指しているのは、子どもたちが積極的に授業に参加すること、自分とは異なる他者の考え(考えの多様性)から学ぶこと、活動の振り返りを通して学ぶこと、などのようである。ではそこでは、知識の習得なり活用なり思考力の育成なりは目指されていないのであろうか(明示的に目指されているようには見えなかった)。そういう学びは、私はあまり魅力を感じない。そうではないのであれば、それらがどのように学ばれるのか(を教師がどのように仕組んでいるのか)、そういう一般原則を示してもらえると、私が授業構想する上でとても役立つだろうと思う。そういう本はどこかにないものだろうか。

教育発達心理学特論

2007/11/01(木)

 11月に入ったので(?)、久々に授業記録などを。

 今日の2限は、研究科の必修科目「教育発達心理学特論」だった。この授業では、後半は現職院生に話題提供してもらい、その話を受けて私が次週前半に心理学的な話をしている。

 先週は、小学校の先生が社会の授業実践を紹介された。「沖縄は日本本土に比べて、稲作が始まったのが1300年遅い。なぜか?」という問いを追究するという、問題探究型の実践であった。

 そこで今週前半は、「思考」をテーマとすることにした。具体的には、野矢茂樹氏が「考えること」について書いた文章を1段落提示した。今、手元に原文がないので、ぜんぶは覚えていないのだが、「考えるっていうことは,そうした見えない枠と戦うことでもある。」(野矢茂樹『はじめて考えるときのように』PHP,p.160)という文を含む文章である。ただしこの段落の最後の部分を隠しておく(「見えないものを見えるようにする力が...にはある」というようなくだりだったと思う)。その隠された部分を、隣近所の人たちと話し合ってもらい、グループごとに、配布したA3用紙に書かせ、黒板に貼りださせた。私なり野矢氏なりの考えを知ることも大事だが、「考えることを手助けしてくれるもの」が何かについて、自分たちなりに考えてほしかったのだ。案の定、興味深い考えがいくつも出された。

 まず、書いた人に補足説明をしてもらったり、私のほうで先週の授業実践と関連づけたりした。続いて私のほうからは、拡散的思考、収束的思考、思考と枠組みの関係などの話をし、最後に、野矢氏が書いているのは「ひととの出会い」だということを告げ、私の持ち時間は終わった。このやり方だと、解説に10分強しか時間がかけられないが、私だけが話すよりも話し合ってもらったほうが意義深いような気がして、今回はこのスタイルでやっている。基本的な流れは、「文章の一部を読んで結論部分を考えさせ、出された考えを見ながら、私がワンポイントで補足説明」という形に落ち着いている。

 今日の後半は、数年間教育相談係をされた高校の先生が話題提供をしてくれた。高校の先生がされる教育相談は、カウンセラーのカウンセリングの話とは違う面がいくつもあり、とても興味深かった。色々な話があったので、来週、どのポイントを取り上げて補足しようか、少し悩んではいるのだが。


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