12日『そこが知りたい「子どもがつながる」学習指導』 6日『3時間で「専門家」になる私の方法』 | |
| 9日雪の京都 5日教科の特別活動化 |
著者様にいただいた本。以前,同じ著者による『やれば出来る!子どもによる授業』を読み,「筆者の授業スタイルのイメージもわきにくい」などと書いた。その記述を読んでいただいたことが,本書をまとめるきっかけになったようだ。
本書のよかった点は,子どもたちが発表したずね合う授業の中で,教師の指導がどのようになされているのかが少し見えた点である。たとえば子どもの発言で曖昧なところがあれば,「〔前略〕「その意味で」と言ったけれど,そこを『たとえば』で,はっきりと話してください。」(p.31)などと小声で指導するのである。はっきりとは書かれてはいないが,「小声で」ということは,その子のところへ行って指導するのであろう。そのほかにも,子どもの発言を教師がどのように聞き取るかや,それをどのように板書するかなどが,比較的具体的に書かれていた。
ただそれでも,この学級のことが十分にイメージできたかというと,残念ながらそうではない。それは,本書には比較的「完成形」の授業が紹介されているように見えたからだと思う。たとえば,この子たちが白紙の状態のとき(すなわち1年生のとき),どのように指導し,どのように約束事を作り,子どもたちを指導して行ったのだろうか。そのことについて,本書にも多少は書かれている。「最初に手がけることは,朝の会を通して「おたずね」の「力」と応答の話ができる「力」を育てることである」(p.82)というように。それは具体的にはどうするのだろうか。また,1年生のときの朝の会以外の授業ではどうしているのだろうか。なんていうことを知りたいと思った。そういうところが分かると,もう少し,小幡先生の学級や学級作りの様子がわかるのになあ。
研究会に参加するため,朝一番の飛行機で京都に来た。
関空についたころは,雪は降っているけど積もっていない状態だったのに,どんどん降り始め,地面がどんどん白くなって行った。
道を歩くとき,いつ転ぶかとひやひやしながら歩いた(滑りやすい靴だったし)。
夕方,雪がやみ,地面の雪が半分解けた状態は,まるで食べ終わりのぜんざい(沖縄風氷ぜんざい)のようだった。京都にいる間,転ばずに過ごせますように...
筆者は元新聞記者で,そのノウハウをネット時代にアレンジて紹介している本である。本書では,実際の事例として「少子高齢化」について筆者が3時間で「専門家」的な知識を得る方法が載せられており,非常に具体的で分かりやすい。
本書で目指されている専門家とは何か。ある箇所では,「インターネットの海をたくみな舵さばきで航海し,そこに蓄積されている膨大な情報をうまく拾い上げ,自分の知らなかった分野のことであっても専門家に匹敵するほどの知見を取り込み,立派な企画書や資料,論文を作成できるようにしよう」(p.53)と書かれているが,これは,3時間でここまでいく,という意味ではない。3時間で行うのは「事前の情報収集」であり,そのあと筆者は,「その情報をもとにして取材先を決め,取材を申し込み,当事者に会ってインタビュー取材を行う」(p.4)ということをした上で原稿を書くという。すなわち本書でターゲットにしているのは,本格的な情報収集を行う前の段階なのである。
しかしこのようなネットでの作業を,2段階の情報収集の前段階と位置づけた上で,時間も3時間と区切り,どのような方針でどのように情報を集めるのがよいのか,一つの形として示してくれた点は,とてもありがたい。ネット上の情報は,玉石混交とは言うものの,有益な情報は少なくない。なので私も情報収集のツールとしては当然使っているわけだが,探せば探すほど広がりが見えてきて,いつまでたっても終わらない,だからといって何が分かったかがはっきりしない,というのが私のネットの使い方だった。
それに対して筆者が行っていることは,系統的である。情報に当たる順番は,信頼のおける順番だとか(最初が新聞社のデータベース,最後が匿名掲示板,というように)。また,探すときのコツは,次のようにまとめられている。
まずは幅広く情報収集を行って,アンテナを張る。アンテナに何かが引っかかったら,そこを突破口にして深く突き進んでみる。その先に視界が広がってくる場所があれば,そこがハブになる。そのハブをとっかかりにしてまた深く突っ込んだり,あるいはさらに幅広く情報収集を行ってみる。(p.183)
この,拡散(幅広さ)と収束(深く突き進む)を上手に配置することと,とりあえず目指す地点が,その後の情報収集の中心地となる情報を含んでいるもの(ハブ)を得ることであることが,筆者のノウハウのようである。本書で取り上げられている事例である少子高齢化のケースで言うならば,筆者は拡散と収束を通して「ハブ」に行き当たる,という作業を3回繰り返している。最初のほうでは,新聞記事検索を年度を変えて行うことで,トレンドの変化を見出しているし,最後のほうでは,ソーシャルブックマークを使って,検索によって直接にはヒットしないような情報に行き当たっている。こういうところがなかなか面白い。きわめて実践的に書かれているので,自分でもできそうな気がするし,やってみたくなる,そういう本であった。
ただ,一つ注意すべきは,本書の方法が,「我々がネットで情報を得たくなるケースの一部」にしか対応していないこと。本書の事例で筆者がやっているのは,大まかなテーマは与えられているが(少子高齢化),それをどういう切り口で料理するかは自分次第,という状況である。新聞のコラムとか雑誌の記事を書くときのように(卒論その他の研究テーマ設定にも近いかもしれない)。
それに対して,私がネットで情報がほしいケースとして,「まったく知らない概念にであったとき」,というのがある。そういうときは,その概念を,関連概念とのつながりも含めて体系的に理解したいし,それにまつわる歴史的経緯なんかも知りたいかもしれない。そういうとき,本書の方法は直接的には役立たなそうである。またそれ以外としては,「具体的な問いに答えたいとき」というものもある。たとえば「学力低下をどう防ぐか」みたいな。そのときに知りたいのは,専門家ならどう考えるのか,ということ,専門家の考えには何種類ぐらいあり,その意見分布はどうなっているのか,それらの主張は何を根拠に述べられているのか(適切な根拠なのか),などといったことだろう。こういうことにも本書の方法は直接的には役立たちそうにない。もっとも,部分的な考え方はいくつか使えるかもしれない。本書をベースに今後それを考えていくといいかもしれない。
ときどき覗かせてもらっている日記(こちらやこちら)にあった言葉だ。
こういう言葉がこれまでにもあったのかどうかは知らないが,うまい表現である。最近私が気になっている実践(西川先生の学びあいとか,フリートークとか,ワークショップ型授業とか)は,要するにそういうところが目指されているというか,結果としてそういうことが実現されているようだ。
それ以上の考察は,今のところは特にないのだが,この言葉にナルホド!と思ったのでとりあえずリンク。