読書と日々の記録2008.5上

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■読書記録: 12日『ディズニー7つの法則』 6日『若い教師の成功術』
■日々記録: 1日【授業】創造的思考

■『ディズニー7つの法則─奇跡の成功を生み出した「感動」の企業理念』(T.K.コネラン 1997/1997 日経BP社 ISBN :9784822240967 \1,400)

2008/05/12(月)

 先日,東京ディズニーランドに行って楽しかったので,アマゾンで適当に選んで読んでみた。

 本書は,小説風自己啓発系本という感じか。要は,いかに顧客満足の高い企業を作るかということが,7つのポイントで論じられている。「細部にこだわることが,企業文化になっている」(p.39)という感じで。あるいは,ゲストの声を多面的に収集するとか。あるいは,キャスト(≒従業員)をもとても大切にするとか。

 しかし,その細部へのこだわりは,青天井で行われているように見える。でも実際は使える資源は限られているわけで,その兼ね合いをどうするのか(それとも成功しており資金が潤沢な企業でないとまねできないことなのか)というのは,本書ではよく分からなかった。

 あと,ディズニーランドに直接かかわることではないが,「生徒の準備ができたとき,教師が現れる」(p.127)など,なるほどこれはいいなあ,と思える言葉や多少あった。ということで,ディズニー本の第一歩としては,まあ悪くなかったか。

■『若い教師の成功術―「ちょっと先輩」からアドバイス』(大前暁政 2007 学陽書房 ISBN: 9784313651739 \1,700)

2008/05/06(火)

 小学校の先生が,新卒から5年間の(苦労した)経験を元に書いた本。今気づいたのだが,筆者は1977年生まれで,修士課程を出ているので,執筆時点で新卒5年ということか。

 確固たる信念をもって教育を行っている様子は,中堅どころのような雰囲気さえかもし出されている。それは筆者が反省的に実践を行う能力が高く,経験の中から多くを学んでそうとうに力をつけているからだろうと思う。本書の多くの箇所では,かなり説得的な論じ方がされており,読んでいてとても興味深かった。本書の一部は,さっそく教育心理学の授業で紹介したぐらいだ。

 しかし中には,断言的で気になる部分もあった。たとえば,「不登校の子どもへの対応は,「縦のつながりを強化し,徐々に横のつながりを築いていく」ことに尽きます」(p.93)なんていう記述がある。言っていることは,ひょっとしたら適切なことなのかもしれない。しかしここで気になったのは,内容ではなく「根拠」がない点である。

 どういう知識あるいは経験があれば「尽きる」と言えるのだろうか。このような断言調は,読む側からすると安心感が感じられるだろうと思うが,それが何に裏打ちされた断言なのかが不明という点では,ちょっと気になるところではあった。そこに例えば,不登校関係の書籍何冊を読んだところ,とか,私が経験・見聞した不登校児×例からすると,というような記述があればいいのに,と思った。全体的には,先も述べたように興味深い内容だっただけに,ごく一部にみられたそういう記述に,違和感を感じたのであった。

【授業】創造的思考

2008/05/01(木)

 昨年度から,「まず受講生に考えさせる」形に変え,今学期,少し変更をしたので記録しておく。授業は共通教育科目「心の科学」。登録人数は120名強である。

 最初にOPHで,今日のテーマを提示する。今回は「休息時にアイディアが生まれるのはなぜか?」とした。ワークシートの所定欄にこれを書き写させ,前回の補足を少々行った(5分)。

 続いて,プロジェクトXの「通勤ラッシュを退治せよ〜世界初 自動改札機誕生〜」から11分ぶんを抜粋し,見せた。この中には,「息抜きにグレン・ミラーを聞いていて,磁気切符を思いついた」という話と,「釣りをしていたときに,竹の葉っぱが岩にぶつかって向きを変えるのを見て,曲がった切符をまっすぐにする仕組みを思いついた」という創造的思考の例が出てくるのだ。どちらも息抜き中のひらめきである。

 次に,教科書のこのあたりにヒントがあるよ,とヒントを出し,まず一人で5分考えさせ,次に前後2列の4〜5人で話し合いをさせた。中には3人以下のグループもできてしまうので,そういうところは,一人学びの時間に,何人かに場所を移動してもらって,4〜5人グループになるようにしている。話し合いが10分経ったところで,「あと5分で指名するから,それまでに結論を作っておいてね」と伝え,黒板を12の区画に区切っておいた。

 5分経ったところで,11人を指名し,黒板に結論を書いてもらった。結論は40字以内で,と伝えてあるので,黒板には10文字×4行ぐらいに,大きく書いてもらう。11人の板書が終わるのが10分弱である(残りの1区画は私の板書用)。

 残りの時間は,板書された結論を使いながら私が講義をする(約30分)。まず,半分の板書(5〜6個)を,コメントをしながら見ていく。半分コメントしたところで,今日の講義に入る(残りの結論は,授業を進めながら適宜確認するのである)。まずは教科書で「創造性」の定義を確認し,創造が「既存の要素の新しい組み合わせ」であることを確認する。新しい組み合わせを作るうえで,で知識(常識)が妨害的に働くことを,前回の講義(問題解決)にも触れながら説明し,創造性に関する心理学的実験を紹介し,そこで使われている問題を受講生にも考えさせ,何人かにマイクを向けて考えを聞き,最後に創造的思考のための技法(ブレインストーミング,カタログ法)の話をした。まとめとして,知識が二面性あること(思考の促進,妨害)を話し,最後に「一言カード」を書かせて終了である。

 昨年度から変えた部分は,板書へのコメントを,最初は半分にしたところである。昨年は,一気に11人分コメントしていたのだが,コメントばかり11個も続くのもどうなんだろう,と思っていた(ちょっとダレる感じがする)。そこで先に半分にコメントし,残りの半分は,講義を行いながら,あるいはある程度講義が終わったところで触れることにした。こうすると,後半の半分については,先の講義と照らし合わせて,書けている部分や書き足りていない部分が見えやすくなるだろうと思ったのだ。まだ2回しかやっていないが,こうすると,ペース配分的にも,コメントする意義という点でも,なかなか悪くない感じがしている。


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