読書と日々の記録2009.07下

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■読書記録: 31日短評6冊 24日『サブリミナル・インパクト』 18日『ディズニーランド物語』
■日々記録: 31日新型インフル 24日日常雑記 18日バレエの発表会

■今月の読書生活

2009/07/31(金)

 もうすぐ前期の授業が終わる。最近暑くもなってきているし,けっこう大変で,ようやくゴールが見えたという感じである。

 今月よかったのは,ひとつは『ディズニーランド物語』(成功の影にある苦労や苦悩がよく分かった),もうひとつは『サブリミナル・インパクト』(読んでいる最中はそんなに印象は強くなかったけど,読み終わって振り返ってみるとはやり大事なことが書かれている)であった。

『「超」文章法─伝えたいことをどう書くか─』(野口 悠紀雄 2002 中公新書 ISBN: 4121016629 \780)

 再読。文章を書こうと思っている段階で読むと,きわめて実際的で有益な本であった。実際,本書を読んでいると,文章が書けそうな気になってくる。そういう意味で,実にいい本だ。

『ハートで感じる英語塾─英語の5原則編』(大西泰斗・ポール・マクベイ 2008 日本放送出版協会 ISBN: 9784141894421 \998)

 図書館で借りた。ネイティブの感覚みたいな観点から英文法が説明されており,なかなかいい。たとえば「助動詞のまなざしは1つ」ということで,mayやmustなどの基本イメージが説明されていたり(mayは「開かれたドア」,mustは「強大な圧力」)。あるいは,中学校英語的には,-ingを使ってもto不定詞を使っても同じことが表現できるが,その語感の違いが説明されていたり(たとえば I hate working on a Sunday. と I hate to work on a Sunday.の違い。前者は「イキイキ」,後者は「漠然」なのだそうだ)。こういう考え方(感じ方)を自分のものにするには,違いを意識しながら何度も音読する必要があるのだろうけど。

『英語できますか?―究極の学習法』(井上一馬 1998 新潮選書 ISBN: 9784106005435 \1,000)

 英語学習法の本なのだが,半分エッセイ風なので,学習法だけを抜き出したら,数ページに収まるのではないかと思う(実際,『英語ベストセラー本の研究』は本書のエッセンスを数ページにまとめている)。『英語ベストセラー本の研究』に載せられていなかった本書のエッセンスを挙げると:本書は「どうしたら英語が話せるようになるのか」(p.10)を重視した本であること。そのためのステップとしては,「基本文型をまず覚えて,そのあとリーディングとリスニングによって,生きた英語をどんどん頭に取り込んでいく」(p.162)こと。その後のスピーキング練習としては「自分の好きなときに,自分の話したいことを話す練習をすればいい」(p.166)こと。あたりだろうか(後者2つは『英語ベストセラー本の研究』にも載っているが,本書の目指すスピーキング力アップのためにこのようなステップを筆者が考えている,という形では書かれていなかったように思う)。本書は,昨今の丁寧な英語学習法指南書とは違い,大雑把に,こういうことをやればいい,と書かれただけの本なので,向く人には向くかもしれないが,私にはイマイチだった。

『裁判官の爆笑お言葉集』(長嶺超輝 2007 幻冬舎新書 ISBN: 9784344980303 \720)

 裁判官も,裁判の中で,付言や説諭といった形でちょっとした言葉を漏らすことがあるらしい(あるいは裁判が終わったあとで)。そういった言葉を集めた本。それはそれなりに興味深かったのだが,事件内容の紹介は1ページと短いため,その世界に浸るというところまではいかないのがちょっと残念であった。

『読まない力』(養老孟司 2009 PHP新書 ISBN: 9784569705743 \714 )

 養老氏のエッセイというか時事批評集。「読まない」とは「あんまり予想をしない」(p.3)ことだとあるが,筆者も筆者なりにいろいろな予想や解釈を披露している。ただそれが,筆者お得意の「自然−意識(意識中心主義)」という観点からのものであるために,筆者独特の視点になっており,それが現代人に対するある種の警鐘になっている部分はあるかもしれない。まあ,かるーく読む本。

『するどい「質問力」! ─問題を1秒で解決する』(谷原誠 2008 三笠書房 ISBN: 9784837922650 \1,100)

 うーむ,思ったのとはぜんぜん違う本だった。たとえば本書の1章−2は「"頭が切れる人"がみんな使っている「六つの法則」─こう聞かれると,誰もが「本音」をもらす」なんて節見出しが書かれていて多いに期待するが,六つの法則とは何のことはない,5W1Hのことで,漠然と聞くよりも明確な質問をすることが大事だ,という話が書かれている。うーむ,誇大広告というか何というか。

新型インフル

2009/07/31(金)

 本学でも新型インフルエンザの患者が出つつある。

 どこでどう決まったのかは知らないが,本学の場合,発症時に発症者と同じ授業をとっていた学生と先生(濃厚接触者)は5日間の自宅待機だそうである。

 ということで300名余の名前の書かれたリストが送られてきた(といっても重複はあるし,他学部生も載っているのだが)。

 なんだかすごい。と思うのと同時に,月曜日の授業がちょっと心配になってきた(ほとんどの人は自宅待機期間は日曜日までらしいのだが,それでもなんだか心配である)。

■『サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代』(下條信輔 2008 ちくま新書 ISBN: 9784480064608 \900)

2009/07/24(金)
〜潜在レベルでの反応を顕在レベルでコントロール〜

 「情動と潜在認知をキーワードに,身辺の日常と現代社会を見直す」(p. 10)ことを目指して書かれた本。これまでに読んだ筆者の本はどれも,すごいなあと素直に思えるようなものだったのだが,本書はちょっとはっきりしない読後感の本だった。本書の中に紹介されている筆者らの研究はどれも興味深いものなのだが, それを通して「現代社会」を論じているところが,今までの本と違う違和感の源になっているのだろうか。まあそれでも,心理学の世界(あるいは特定の専門分野)に閉じた心理学研究ではなく,心理学の諸研究を通して人間を論じ,社会を論じることは大事なことで,心理学がいかに人間を理解する上で役立っているかなどが見えて悪くはないのだが...

 ただ一箇所,私の専門との関係で非常に興味深いところがあった。それは「情動の政治」という章で,人間にせよ動物にせよ,「特定の刺激が引き金となって,型にはまった行動を引き起こす反応図式を持っている」(p. 207)ことを通して,人がいかに情報操作に乗せられやすいかを論じている部分である。筆者は次のように述べている。

最近の米国では,セキュリティ=国防=愛国という反応図式が,政治的に使われています。〔中略〕繰り返しタイミングよくこのチャンネルに働きかけられると,この「愛国」反応図式はますます人々の情動/認知過程に刷り込まれ,思考や批判が停止してしまう恐れもあります。(p. 210)

 これが危険なのは,情動回路の反応は頑健で排除しにくいものだからであり,人は無意識レベルへの働きかけに対しては無抵抗だからである。ではどうすればいいのか。筆者はこの章の最後で,次のように述べている。

ただ唯一対抗し,防衛できる策があるとすれば,まずは情動と潜在認知の仕組みを知ることです。そして知るだけではなくて,潜在レベルで対抗する策を自覚的に講じることです。

 こういう場合どうすればいいかについて,私は漠然と,「知る」ことが大きな武器になると考えていた(一般に心理学系クリシン教育はそういうところを狙っていると思う)。しかし知るだけでは「たぶん不十分」(p.233)と筆者はいう。それは,わかっていても潜在レベルで体が反応してしまうからである。そこで,潜在レベルでの反応がコントロールできるような手段を「顕在レベルであらかじめ講じる必要がある」(p. 235)というのである。といってもそれは別にすごく特別なことをいっているわけではない。たとえばマクドナルドのいすが硬いために早く席を立ちたくなる(知らず知らずのうちに),というのであれば,座布団とiPodと文庫本を持っていったらいいだろう,というわけである。つまり,潜在レベル(情動レベル)で快適に過ごせるような環境を,顕在レベルで(つまり意識的に)用意するわけである。このような対抗策を指して筆者は,「せめて,たくさんの中にごく少数いる「マクドの賢い客」となりたいものです」(p. 235)と述べている。

 これは簡単なことながら,私にとっては目ウロコの話だった。批判的思考に限らず思考について考えていけば考えていくほど,いかに自分を(広大な無意識の領域を持っているにもかかわらず)意識的にコントロールすることがよいことなのだ,という結論を出さざるを得なくなるような気がしていた。しかしそれって本当にいいことなのだろうか,と私はずっと疑問だったのだ。かといって単に無意識に身を任せるというのもうまくいかないだろうし,と私にとっては難問だったのだが,筆者の解決法というか考え方は,実に適切なもののように思える。ここから何か,無理のない思考教育が構想できそうな気がしている。そしてそれをきちんと考えるためにも,筆者がいうように,人間の「情動」や「潜在認知」についてきちんと考え,理解する必要があるなあと思う。そう考えて本書を読み直すと,また何か大きなヒントが得られるかもしれない。今,読書記録を書きながら,そう思った。

日常雑記

2009/07/24(金)
2009/07/18(土) オープンキャンパス
 今年のオープンキャンパスは,学科の1年生にも少し活躍してもらった。2つの枠をほとんど学生に丸投げしていたのだが,こちらが思いもよらない内容を持ってきたりしておもしろかった。人に向かって何かを説明するというのはまだまだ難しいようだったが,ちょっとアドバイスをすると,午後は格段に良くなったのが印象的だった。
2009/07/19(日) 日曜日
 久々のゆったり日曜日。ちょっと体重が増え気味なので,午前,昼,夕方と歩いたのだが,あんまり体重は減っていないような...(朝と昼は子どももつきあってくれた)
2009/07/22(水) 日蝕
 ゼミの時間だったのだが,ゼミ生が「日蝕がみたいですね」といっていたので,時間配分を考えさせ,10時半から11時まで見に行った。日が欠けるのはまあ予想通りの光景ではあったが,気温が下がって涼しくなったのには驚いた。
2009/07/23(木) テスト
 1科目でテストを行った。これで一段落ではあるが,採点をしないと行けないことを考えると,ちょっと憂鬱かも。
2009/07/24(金) ラジオ体操
 大学はまだ終わっていないのだが,子どもたちは夏休みなので,今朝からラジオ体操に行き始めた(週前半は,先週が休校だった分,学校があった)。私は「明日から行くからゆるして〜」といって,おつきあいは免除させてもらった。

■『ディズニーランド物語―LA‐フロリダ‐東京‐パリ』(有馬哲夫 2001 日経ビジネス人文庫 ISBN: 9784532190736 \468)

2009/07/18(土)

 本書は,要するにディズニーランドに関する通史である。なんとなーく買った本だったのだが,これは予想外にいい本だった。というのは,ディズニーランドの「意外な」側面をいろいろと知ることができたからだ。

 ディズニーランドというと,私は『ディズニー7つの法則』という本を読んでいる。そこには,いかにディズニーが細部にこだわる企業文化を持っているか,ということが語られていた。それを読めば,ディズニーランドがいかに楽しさを適切に演出しているかがわかるというような本である。

 しかし本書を読むと,ディズニーがいかに「順風満帆」とか「磐石」ということとはことなるところから生まれているのかというのが良くわかった。

 たとえば,最初のディズニーランドが「当時の常識では事業として成立する見込みのないもの」(p.29)で皆が反対していたとか,ディズニープロダクション自体が,ウォルト・ディズニー亡き後は「空中分解するだろうし,そうなるのも仕方ない」(p.50)と思われていたとか,1980年代前半,ディズニーも含めて「アニメーション長編映画は本当に絶滅寸前」(p.98)で,ディズニープロダクション事態も,「すっかり企画力と制作力をなくしていた」(p.110)とか,東京ディズニーランドの企画も「最初のうちはまったく相手にもされて」(p.139)おらず,成功するとは思われていなかった,という感じである。

 本書に書かれていることをまとめると,およそ次のようになるだろうか。

ディズニー・プロダクションズが東京ディズニーランド建設でとった態度は,ディズニー・ワールドのエプコット・センターをめぐる状況を見ればよく理解できる。ユーロ・ディズニーでディズニー社がとった戦略も,ディズニー首脳陣がいう「東京ディズニーランドの失敗」の教訓から生まれている。ユーロ・ディズニーでの失態がなかったならば,ディズニー経営陣はディズニー・アメリカのプロジェクトを無理に進める必要はなかっただろう。そして,ユーロ・ディズニーとディズニー・アメリカの大失敗のトラウマがなければ,香港ディズニーランドの計画はもう少し早く具体化していたかも知れない。(p.19)

 これは要するに,今日ののディズニー(ランド)の隆盛も,さまざまな冒険や失敗や試行錯誤から生まれているということなわけで,ディズニーを単なるすごい会社,すごいテーマパークととらえるのではなく,そこに至るまでのプロセスを知るという意味で,本書はとても興味深い本であった。

バレエの発表会

2009/07/18(土)

 先週の日曜日,うちの娘たちが習っているバレエ教室の発表会があった。うちの娘たちが出るのもこれで4度目である。

 発表会といっても,たとえば音楽教室などで行われているように,単に生徒がこの1年の成果を披露する,というスタイルではない。生徒全員でひとつの舞台を作るのである。

 特に今年は,約2時間,全編が創作バレエだったので,見ごたえがあった。その準備のため,3月ごろから,いつもよりレッスン時間が長く,また5月の連休もレッスンがあったりしたので,親子ともにちょっと大変だったのだが,それもようやく終わった。

 舞台が見ごたえあるだけでなく,ステージでみると,うちの娘たちも1年前からの成長が見えておもしろい。おもしろいというか,へえこんなにできるようになったんだ,と感心してしまう。


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