道田泰司　(2009.09)　講義形態の違いによる評価の変化　日本教育心理学会第51回総会論文集, 561.（静岡大学）

講義形態の違いによる評価の変化

道田泰司
（琉球大学教育学部）

　共通教育科目の講義形態を大きく変えたことで，学生の受け取り方がどのように変わったのかを，授業評価アンケートと思考態度の自己評価を元に検討するのが本研究の目的である。

方　法

対象講義　筆者が継続的に担当している「人間関係論」（登録定員100名）。この講義を，2005年までは通常の講義形態として行っていた（通常授業期）。

　2006年には当日ブリーフレポート方式（宇田, 2005）を行った（BRD期）。その結果，自分で資料を読んで考え，隣近所と話し合う必然性は生まれやすくなったが，まとめる力は弱く，レポート執筆開始から10分以上白紙の学生が毎回おり，所定の時間で書き終わらない学生が1/4～1/2ほどいた。

　そこで2007年は「書く」前のステップとして，「研究を理解し，そこから何が言えるか自分なりの結論を出す」ことを目的に，近隣の学生と話し合う時間のある講義形態とした（話し合い期）。具体的な流れは：①問いの提示（５分）－②関連ビデオやデモ実験など（20分）－③教科書などを元に個人で思考（５分）－④近所の３～５人で話し合い，ワークシートを埋めながら結論生成（15分）－⑤指名された約10名が結論を板書（10分）－⑥それにコメントしながら講義(30分)。ほとんどの授業をこの形態で行い，４回だけは，上記②，または③④⑤の代わりに，当日ブリーフレポートを書かせた。2008年は，いくつかの点をマイナーバージョンアップさせた。

評価　①授業評価：共通フォーマットの授業評価アンケート（27項目，５段階評価。2004年までは26項目だった）の変化を検討した。通常授業期は平均値がほとんど変動していないため，これをベースラインとする単一事例実験（ABデザイン）と考え，2006年，2007～2008年の変動を検討した(Table 1)。

　②思考態度：質問に対する態度３項目と批判的思考態度尺度（平山・楠見, 2004）から７項目をこの授業の目的にあわせて選び，６段階評価とし，2008年度授業の初回と第14回に実施した(Table 2)。

結果と考察

授業評価：変動幅(Table 1)　2007年は変動（絶対値）の平均が通常講義期の倍以上であり，その多くが正方向への変動である。最大変動も大きく，話し合いを導入することの効果が示唆される。

　±0.3以上変動した項目は，2005年以前は「学生自身についての項目」であった（2004: 私の出席率はよかった…-0.33，2005:この科目はもともと興味があった…-0.31）。それに対して授業形態を変えると，シラバス（2007: 授業はシラバス通りに進められた…+0.37, シラバスは受講決定や事前学習に役立った…+0.49），授業内容（2006: 説明はわかりやすかった…-0.31），授業方法（2007: 積極的に授業に参加させようとしていた…+0.33，授業の開始・終了時間は適切…+0.31），総合評価（2006: 総合的に判断して満足している…-0.30，2007: この授業を他の学生にも薦めたい…+0.45，総合的に判断して満足している…+0.37）が大きく変動していた。

　思考態度の事前－事後変容(Table 2)　質問態度（1,2,3）はすべて事後に有意に上昇している。批判的思考態度は，５の上昇はBRDを行ったことの効果と考えられる。８（探究心）は，天井効果で有意差がなかったのではないだろうか。客観性（6, 7）はどちらも事後に４点以上になっていることから，話し合いの授業は受講生の客観的な思考態度と質問態度を高めていることが示唆される。

講義形態の違いによる評価の変化

道田泰司（琉球大学教育学部）

方 法

結果と考察

道田泰司
（琉球大学教育学部）

方　法