学校保健管理学特論紙面発表レポートへのコメント

瀧澤 透 (臨床心理学教室)

 

中学生の食生活と栄養摂取に関する男女の比較

報告者 渡嘉敷めぐみ

 成長期にあたる中学3年生の栄養摂取についての調査である。健康の一側面が栄養摂取により維持されている科学的概念が形成される年代に食習慣についての健康指導が行なわれる必要性があるのは明らかであろう。特に生活習慣病が始まっていると考えられるBMI過体重群には教育と正しい食習慣形成が急務であろう。また、摂食障害は若い女性に時折見られるが、体型や体重と自己評価についての正しい認知がなされる指導も合わせて行なわれると良いのではと考える。思春期の孤食は心の健康に与える影響が大きい。

 

 

自己管理スキル尺度の開発と信頼性・妥当性の検討

報告者 太田光紀

尺度の信頼性・妥当性についてこれほど書く必要性があるのか疑問に思った。逆に問題があるので記述が多いのでは?肝心の『自己管理スキル』についての分析も著名な学者の名前が目立つものの今ひとつはっきりとしない。禁煙キャンペーンと女子大生が登場し随分、欲張りな論文となっている。

 

 

学齢期小児の朝食摂取状況と健康に関する知識・態度と行動についての疫学的研究

報告者 宮城今日子

『朝食をきちんと食べている?』という質問は 20代、職場でよくされる仲間同士の会話であった。『自宅で毎日食べている』が最も偉く 評価が高かった。成人後の健康習慣は維持、増進しようとする意志と日々の生活の中の小さな努力の成果であろう。 本調査で得られた朝食摂取状況と健康に関する知見は興味深く、中学生に栄養指導や健康教育の必要性を物語っている。そして、青年期の健康教育によって学習された健康概念は成人後の生活の健康維持に大きく影響を及ぼしていることは疑いがないところであろう。

 

 

中学生における対人的な攻撃行動パターンに関する研究

報告者 長谷川珠代

著者は いじめの構造にゲーム性をみて、小学生段階に遡及して解明を試みている。確かに多くの人が『缶けり』遊びが次第にルールを悪用した鬼役のいじめに発展していくことを経験しているはずだ。しかし、加担や傍観はゲーム分析からは直接導き難く、また、仲裁者は登場しない。考察にある『仲裁者のエンパワーメントがいじめの解決のとっかかり』とあるが踏み込みの足りない議論に終っている.いじめの構造把握の次になされる予防、対策についても 先のゲーム性同様、たとえば高学年以降加齢と共に形成されるモラルと仲裁者形成といった構造分析が求められるところであろう。

 

 

学校事故に対する救急体制の現状に関する研究

報告者 竹田幸江

県や国の通達なしに学校が自主的に安全管理を整備するのは難しいであろう。本稿で明らかになったように養護教師不在時の責任の所在が不明瞭なのも学校社会の一断面であろう。スクールカウンセラーが今後5年で全中学校に配置される時代となるが 学校を基盤とした健康管理も新しい展開を迎える。当面は教員のスキルの向上と組織的な安全管理を業務に大きく組み込んで 統計上自明で予期できる事故の予防が必要であろう。今後は部活やプールといった場面に応じて外部の専門家(ライフガードなど)の委託が増えていくかもしれない。本調査の回収率の低さが気になる。

 

 

中学生における有機溶剤乱用の実態とその生活背景

報告者  喜瀬実名子

沖縄県のシンナー乱用による補導は平成12年で31名、近年は25-44/年 の間で推移している。中学生が13名、ついで無職少年が9名で平均15,4歳、また、乱用期間が6ヶ月以上の者が全体の61,2%となっており54、8%が習癖化していた。予防については未だ10%が一般店から入手されており、取り扱い業者の指導が必要となっている。中学生に対する学習指導は、近年薬物依存者のリハビリを行なっている『沖縄ダルク リハビリテーションセンター』の活動が注目されている。実際の通所者自身による、シンナー中毒⇒覚醒剤に陥ったストーリーの劇を中学校などで演じている。