Evaluation of a Three-Year Urban Elementary
School
Tobacco Prevention Program
James H.Price他
Jounal of School Health/January 1998 , Vol.68 , No.1
報告者:上原康代(学校保健学教室)
選定理由
わが国の学校教育では、以前から保健の授業において喫煙に関する教育が行われている。にもかかわらず、喫煙にはしる児童生徒が増加傾向にあるということは、現行の保健科教育では効果がないという解釈になる。最近では諸外国の研究者らによって、深刻な喫煙問題に対処すべく様々な喫煙予防プログラムが開発されている。これらのプログラムの根底となる理論、方法、効果等を検討することにより、わが国の今後の喫煙防止教育のあり方について考える上で参考となると考え、この論文を選定することにした。
先行研究レビュー
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アメリカでは、18歳以上の成人の喫煙者が減少傾向にあるが、高校生における喫煙率は上昇しており、無煙タバコ使用も増加してきている。
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思春期における喫煙と関連のある要因として、白人においては友人の喫煙、アフリカ系アメリカ人では危険行動傾向と学業との関連があげられた。他に相関のみられるものとして、成人同居者の喫煙、喫煙意思、学校中退があげられている。
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喫煙を試みるのは若い世代に多い。9年生では63%が喫煙の経験があり、彼等が高校生になると74%が経験していた。成人の常習喫煙者は4分の1が16歳から毎日喫煙していると答えている。
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思春期の予防に着手したプログラムにおいて、喫煙のための社会的圧力を理解する能力の獲得、喫煙の圧力に対し抵抗するスキルを発達させること、そして、喫煙により社会的にも身体的にも直接重大問題となることを認識することに焦点をあてた、社会的適応強化指導を組み込んでいるものが最も効果の大きいプログラムであるということが明らかにされた。
要約
<目的>
小学生における喫煙の圧力を減少させるために、3年間の喫煙防止プログラムを実施し、介入群とコントロール群との比較から、このカリキュラムの効果・方法について評価・検討する。
<対象と方法>
対象
アメリカ中西部の都市にある小学校6校の4,5,6年生263人(うち、211人は介入群、52人がコントロール群)。介入群は、3年間受けたもの(3年間グループ)、6年生の時と4年生もしくは5年生の時受けたもの(2年間グループ)、6年生の時しか受けていないもの(1年間グループ)に分けられた。
方法
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プログラムはTobacco free; An Elementary School Challengeと呼ばれるものであり、CDCの喫煙予防プログラムを基盤とし、特に知識・態度・目標とするスキルを含めた。カリキュラムは各年5回実施し(計15回)、各時間は45分である。
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実施者はトレーニングを経た大学卒業年次生で、介入群はカリキュラム初日に事前テストを行い、最終日には事後テストが行われた。コントロール群はいずれも5日程度ずらして行った。質問項目は基本属性、知識、態度、行動傾向、一般的な危険行動項目の計49項目である。
結果
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コントロール群でアフリカ系アメリカ人が92%と多いのをのぞいては、基本属性において双方に大きな違いはみられなかった。
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事後テストの知識・態度・行動傾向得点は、分散分析の後ウィルコクソンの2標本検定を行った。知識得点では群間で有意な差がみられた。介入群のグループ間では差はみられなく、各グループとコントロール群との比較ではいずれともコントロール群の得点が低かった。コントロール群の態度得点は、介入群の3年間グループより有意に低かった。行動傾向得点では両群に有意な差はみられなかった。
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事後テストと事前テストの得点をWilcoxon Matched-Paris Signed-Ranks
testを行い比較した。知識得点では、介入群の各グループにおいて有意な上昇がみられた。態度得点は、3年間グループのみ有意な上昇がみられた。行動傾向得点はいずれのグループにおいても有意な差はみられなかった。
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介入群において、知識得点は、友人に喫煙者がいると回答した生徒より、友人に喫煙者はいないと回答した生徒の方が有意に高得点で、喫煙が同居者に知られると同居者は失望すると答えた者の方が、そうでない者より有意に高かった。態度得点では、親友に喫煙者がいない者の方が有意に高い得点を示し、高い危険行動傾向者に比べ、低い者の方が有意に高かった。行動傾向得点では、親友に喫煙者がいない者、同居者に喫煙が知られると同居者は失望すると回答した者、低い行動傾向者で有意に高い得点を示していた。
<考察>
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このカリキュラムにより、タバコに関する知識が向上し、タバコ生産においてさらに批判的態度を示した。しかし、喫煙に関する行動傾向には実質的な変化はみられなかった。
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CDCの7つの勧告すべてを完全に実行したわけではないので、それを完璧に行えば行動傾向に顕著な変化が現れたであろう。
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抽出数が少なかったため、介入群とコントロール群に有意な差はみられなかった。
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簡便性のある校区の学校の生徒を抽出したため、一般的な結果として適用されるかは疑問である。
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介入群とコントロール群で人種構成が異なるので、それがグループ比較に影響したものと考えられる。
本研究の長所・短所
<長所>
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介入群の事前・事後比較だけではなく、コントロール群とも比較している。また、受講年数ごとのグループを分け、それらとの比較もおこなっている。
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プログラム実行者が、選出された人材できちんとトレーニングを経ていること。
<短所>
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態度項目の信頼係数が低い。
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考察にもふれられているように、抽出数が少ないのと、コントロール群の人種構成が一方に偏りすぎている。
私見
この論文により「喫煙防止」の取り組みがいかに多くの時間を必要とし、社会に大きく依存されるものであるかを知らされた。喫煙防止については、社会全体が深刻な問題として受け止め、国をあげて取り組んでいくことが一番の近道であると思われる。
学校保健への寄与
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保健の授業だけではなく、他教科の関連する内容において喫煙を問題として取り入れるべきである。
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学校においての喫煙防止教育の方法・内容等を研究し、確立していくことが課題となる。
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