高校生の飲酒行動に関する研究
小島 章子、渡辺 雄二 他
学校保健研究 39:1997;221-232
報告者:全 欣(精神衛生学教室)
選定理由:
日本では戦後、経済的豊かになるにつれ、飲酒は日常的なことになってきました。しかし、未成年者の飲酒もこれに相まって増加している。現在、若年者の飲酒は日本のみならず、世界各国の社会問題になりつつである。こんな状況の中で、親の態度が未成年者の飲酒に対し、どういうふうに影響しているのか、について興味があって、この文献を選びました。
先行研究レビュー:
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青少年の飲酒教育をすすめるにあたっては、アルコールの興奮剤としての効用面に対するイメージや考え方を打破し、アルコールの麻痺作用についての考え方や態度を養う必要がある。
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日本の高校生を対象とした飲酒経験調査結果によると、男子生徒の約 90%が飲酒経験を、また女性では80%以上が飲酒経験を持っているとされている。また初飲理由として「好奇心から」、行事や儀式等をあげられている。
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高校生の飲酒に関して、親が無関心な家族が約半数、また年齢にあった飲酒と許容している家族が約90%であった。
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大津らは中・高校生を対象とした飲酒に関する調査の結果は、飲酒の最初のきっかけで最も多いのが「家族にすすめられたから」であったと報告している。
要約:
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目的
戦後のわが国の高度経済成長は食生活を変化させると共に飲酒習慣も大きく変化させ、飲酒量も急速に増加した。飲酒習慣の変化は未成年者の飲酒を増加させた。今や高校生の飲酒は周知の事実であり、未成年者の飲酒が社会問題となって久しい作今、相変わらずマスメディアはアルコール飲料のコマーシャルを多く流し、容易に酒類が入手できる販売形態等々社会には未成年者の飲酒を誘発する要素がひしめいている。本研究は未成年者、特に高校生の飲酒を防ぐ最後の砦とも言うべき家庭の中で、親子関係が彼らの飲酒に対してどのように作用しているのかを、飲酒の実態と共に検討したものである。
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対象
東京都内公立高校4校の1〜3年生男子400名、女子400名を対象として、アンケート調査を行った。回収人数は604名(男子250名、女子354名)、回収率は75.5%であった。
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調査内容
飲酒に対する親の態度、飲酒状況及び生活状況の3項目です。
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結果
<飲酒にに対する親の態度と飲酒頻度>
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「絶対に飲酒してはいけない」という親の態度を感じている者は約1割に過ぎず、残りのほとんどの者は何らかの形で飲酒を親から許容されていると感じていた。
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全体的な傾向として、高校生自身が飲酒について親に関心を持たれていると感じることは、彼らの飲酒頻度を抑える方向に作用し、逆に、親から関心を持たれていないと感じることは飲酒へのブレーキをゆるめ、飲酒頻度を増加させることが示唆された。
<飲酒状況と飲酒頻度>
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飲酒頻度の低い者の飲酒機会が家庭行事、付き合い、及びコンパ、打ち上げ等に集中しているのに対し、飲酒頻度の高い者の飲酒機会が多様化し、成人の飲酒行動に近いことが観察された。
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全般的に飲酒頻度に関わらず、「居酒屋チェーン店」は「自宅」より高い割合を示した。「カラオケボックス」「バー」については飲酒頻度が高いほど有意に増加していた。
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全体として飲酒程度は高くなることが観察された。週に数回飲酒する者は「酔うまで」と「泥酔まで」を合計すると50%を越えていた。
<生活状況と飲酒頻度>
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飲酒の有無については「親に一日の出来事をよく話す」という項目で、飲酒している群が27.6%、飲酒しない群が40.2%と前者の方が有意に低かった。
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「親に不信感を持つことがある」という項目では飲酒している群が47.1%、飲酒しない群が25.0%と前者の方が有意に高かった。
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「家庭での過ごし方に満足している」という項目で、飲酒を週に数回群が18.4%、年に数回群が37.4%と前者が有意に低かった。
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考察
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飲酒の有無及び飲酒頻度に影響を及ぼす最も大きな要因は共に親の態度であった。「絶対に飲酒をしてはいけない」という親の強い禁止の態度が飲酒を抑制する方向に作用し、「家族と一緒の時なら飲酒してもよい」ことが飲酒を促進する方向に作用していた。
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飲酒頻度に影響を及ぼす要因では「家族と一緒の時なら飲酒してもよい」が逆に飲酒頻度を抑制する方向に作用し、「無関心」が頻度を促進する方向に作用していた。すなわち飲酒の有無と飲酒頻度の判別結果から「家族と一緒の時なら飲酒してもよい」は、相反する効果を及ぼす形になっていた。
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大部分の高校生は、何らかの形で親から飲酒を許されていると感じている。彼らの自覚の中で直接的に親が飲酒の歯止めになっているという感覚は希薄であり、飲酒に寛容な親の姿勢を高校生自身も敏感に感じていることが読み取れる。
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親とよく話すこと、親に不信感を持たないことが飲酒を抑制させ、逆であると、飲酒を促進させていた。すなわち親子同士のコミュニケーションや信頼度が密であることが飲酒を抑え、薄い状況が飲酒を促していた。
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結論
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飲酒を厳禁されていると感じている者は約1割であり、残りのほとんどの者は何らかの形で親から飲酒許容されていると感じていた。飲酒頻度が高い者ほど、親から飲酒を厳禁されていると感じている者が少なく、親の無関心さを感じている者が多かった。
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飲酒頻度が高い者ほど、親子関係を含めた人間関係や生活に対する満足度が低く、生活態度及び規則性が乱れ、社会的逸脱感を持つことが認められた。
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飲酒の有無に影響を及ぼす第一の要因は飲酒に対する親の態度であり、以下、人間関係満足度、学年、社会的逸脱感等の順位で要因が選ばれた。また飲酒頻度の大小に最も影響を及ぼす第一の要因としても飲酒に対する親の態度が選ばれた。以下、飲酒程度、社会的逸脱感、人間関係満足度等の順位に要因が選ばれた。
本研究の長所、短所:
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親の態度は高校生の飲酒に大きな影響を与えることが明らかになったので、これからの高校生の飲酒防止教育に役立つと思われます。
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親子の人間関係及び、その因果関係を中心に絞って、もっと詳しく調査、分析すれば、より明晰な説得力のある結果が得られると思います。
学校保健への寄与及び私見:
諸種のアンケート調査を見ると、飲酒する理由として、「趣味と呼べるものがない」、「親しい友人がない」など、生き甲斐意識の喪失、目的意識の喪失、疎外観・孤独感などを訴えるものが多い。さらに、今回の調査結果も踏まえて、高校生の飲酒防止教育には、社会、学校、家庭の三者の緊密な連携が必要であると思われます。しかし一方で、若年者の飲酒に対する、成人側の許容的な態度が変わらない限り、この問題が解決できないと思います。高校生の禁酒教育を強化するよりは、まず大人の考え方を変えるのが、問題解決の近道ではないかと思います。
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