中学生の食品摂取状況と食生活習慣との関連
佐藤有紀子、中野正孝、野尻雅美
学校保健研究 39;1997;299-307
発表者:原田さおり(保健社会学教室)
発表日:平成10年6月11日
選定理由:
戦後日本人の生活様式が大きく変化してきたといわれている。特に食事の欧米化にともなって生活習慣病が増加していることは大きな社会問題である。またこのような生活習慣病が低年齢化していることも現状である。小児期につちかわれたライフスタイルは今後の生活の基礎となり、小児期からの健康的な生活習慣の確立が重要であるといわれている。また一連の中学生らによるナイフを使った事件の際も、その一因として食生活習慣の乱れが指摘されていた。こういった現状から、生活習慣の中心である食習慣の改善の一つとして文部省は栄養士が小中学校の授業を担当できるようにする方針を決めたという。このように健康的な食生活がさらに重要視されてきている。
健康に対する姿勢や意識は健康に関連する生活習慣を規定しているといわれている。したがって食生活指導においてはその向上にむけての働きかけも重要であると思われる。よって今回この論文を選定した。
先行研究レビュー
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子どもの「肥満傾向」は小学校で87年度1.7%だったのが97年度には3.0%に、中学校でも1.3%が1.8%にそれぞれ増加。
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93年度食生活状況調査
調査期間3日間のうち「3日間とも家族揃って食事をした」ものは朝食、夕食とも約3世帯に1世帯となっている。また「1回も家族揃って食べなかったもの」は朝食46.2%、夕食28.2%となっている。また家族全員が「主食、副食とも同じものを食べている」ものは朝食63.7%、夕食84.5%であり、夕食に比べて朝食では家族揃って食べることも少なく、またその内容も各々に異なることが多いことが示された。
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新行内美穂ほか,保護者のライフスタイルとその子の健康行動との関連について,学校保健研究 39;1997.355-363.
子どもの食行動は保護者の接触時間満足度、運動・朝食・夕食の頻度との関連性がみられた。かれから保護者の行動が子どもの健康行動を規定する一因となっていることを指摘している。
要約:
目的(Introduction)
中学生に食品摂取状況を主に食品摂取頻度の面から把握し、その傾向と、健康に対する姿勢、および食事に関連する生活習慣との関係を明らかにする。
対象と方法(Method)
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静岡県N町とK村の中学生を対象に質問紙調査を行なった。質問紙は日本農村医学会ライフスタイル研究班の生活習慣調査表を基に町村保健婦、各学校の養護教諭らと検討して作成した。
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質問内容は、性別、学年、年齢、自覚健康度、自覚症状、骨折・ねんざの既往歴、健康に対する姿勢、生活習慣、生活時間、クラブ活動、学校以外でしている運動、塾・稽古事、および食品摂取状況である。食品摂取状況は表1に示す各カテゴリに対して1〜6点を与えた。
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食品22項目間の相関係数行列を計算し、これをもとに主因子法による因子分析を行ない、5つの因子を抽出した後、バリマックス回転を行った。また各因子の因子得点を計算し、健康に対する姿勢、および生活習慣に関する項目の中で特に食事と関連する9項目との関係をt検定、一元配置分散分析を用いて検討した。
結果(Results)
質問紙の回収数は男子195名、女子217名、回収率は99%であった。
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健康に対する姿勢は、「健康によいことをすすんでしている」または「少しはしている」者が39%であり、「健康に気をつけようと思っているが何もしていない」者が42%であった(表2)。
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「毎日朝食を食べる」者は82%、「好き嫌いをしないで食べる」者は44%であった。朝食を家族と食べる者は64%、夕食では88%であった(表3)。
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食品22項目間の相関係数行列を表4に示す。食品22項目について因子分析を行い、抽出した5つの因子のバリマックス回転後の因子負荷量を表5に示す。第1因子はかいそう、まめ類・まめ製品、いも類、くだものなど、第2因子はスナック菓子、間食、ジュース、インスタント食品、めん類、第3因子はその他の野菜、色の濃い野菜、汁もの、つけもの、第4因子は油料理、卵・卵料理、肉類、魚介類、ねり製品、第5因子は米飯、パンとの因子負荷量が高かった。第1因子〜第5因子のそれぞれの因子得点を性別、学年別に検討した結果を表6-1に示す。
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第1因子〜第5因子の因子得点について、健康に対する姿勢、食生活習慣との関係を検討した結果を表6-2に示す。第1因子では健康に対する姿勢は積極群、好き嫌いをしない、朝食を家族と食べる、食事時間が規則的の者で得点因子は正の方向に関係していた。第2因子では好き嫌いをしない、塩辛いもの、甘いもの、油をとりすぎない者で因子得点が負の方向に関係していた。第3因子では健康に対する姿勢は積極群、毎日朝食を食べる、好き嫌いをしない、朝食を家族と食べる、朝食の時間が規則的の者で得点因子は正の方向に関係していた。第4因子は好き嫌いをしないの者で得点因子は正の方向、油をとりすぎないの者で負の方向に関係していた。
考察(Discussion)
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健康に対する姿勢について、積極群は男子が女子より多かった。また健康に関する意識はあるが行動はしていないという者が多いことが明らかであった。これらの結果は同様の傾向が他の地区でもみられている。また今回対象とした地区の基本健診(老人保健法)の受診者に調査した結果では、中学生よりも積極群の割合が高かった。調査対象となった年代の子どもたちは多くが健康であり、また保護者のもとに生活しているために、それほど自分で健康を意識して行動していない場合が多いのではないかと考えられた。
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今回「ふだんつぎのような食品をどのくらい食べるか」という食品摂取頻度調査を行なった。食品相互の関連については、3日間の食品摂取頻度から小中学生の食事構造を解析している研究と比較すると、いも類とかいそう、いも類とまめ類・まめ製品などは異なった傾向であった。
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食品22項目の摂取状況の因子分析によって抽出した5因子について、第1因子は健康志向食品に関する因子、第2因子は間食に関する因子、第3因子は副菜に関する因子、第4因子は主菜に関する因子、第5因子は主食に関する因子と解釈した。
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食品摂取状況と健康に対する姿勢や食生活習慣との関係を検討した結果より、健康を意識して行動している者、食事を家族と食べる、規則的に食べる、好き嫌いをしない等の生活習慣の者は、健康志向食品や副菜をコンスタントに食べていると考えられた。また間食やインスタント食品の摂取は健康を意識した行動のひとつとしてとらえられることが示唆された。主菜は思春期において成長発達の面から重要な因子である。しかし成人病予防の点から適切な摂取ができるように促していく必要がある。
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食生活習慣の中では、「好き嫌いしないで食べる」は、第1因子〜第4因子の因子得点と有意な関連がみられ、中学生の食生活に関して重要な項目であると考えられた。また、朝食や夕食をひとりで食べる者では、健康志向食品、副菜、主菜の摂取頻度が低く、家族とともに食事をとる者ほど、食事内容は充実していると考えられた。成長期の子どもにとっては大人といっしょの食事は食べ方を学び、嗜好を広げ、深めるチャンスであり、その後の食生活習慣にも影響すると考えられる。
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中学生の多くは食品選択を直接食事担当者に依存しており、与えられた中から選択するという立場にあるが、将来的には主体的に食品を選択して食べることが必要となる。成人期に向けて「自分の健康は自分でつくる」という認識をもち、行動していくための基礎をつくる意味でも、思春期の食生活に関する健康教育は家庭や学校など様々な教育の場やメディアを通じて行なっていくべきである。
本研究の長所、短所、問題点および私見:
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日本農村医学会ライフスタイル研究班の調査票をもとに質問紙が作成されたという事であるが、その検討方法および妥当性について明らかにされていない。
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健康に対する姿勢について地域および年齢の違いにおいても考察されている点がよかったが、さらに統計による結論づけがあればよりよかったと思う。
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食品摂取頻度の調査結果が表示されていたらよかったと思う。
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主食は食事の中で重要な位置を占めるが、その主食が生活習慣と有意な関連がみられなっかたのが疑問である。
学校保健への寄与:
この研究により健康に対する姿勢が積極的で、生活習慣が規則的な者は食品摂取の面で充実していることが示唆された。よって学校および家庭という小児が最も長い間生活し、食事をとる場において、自分で自分の健康管理ができるような意識の普及と行動の変容、健康的な生活習慣の確立に向けて支援、教育を行っていくことが重要である。
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