女子大学生の入学時における骨密度測定がその後の食生活や骨への意識に及ぼす影響
---骨密度測定値別にみた違いについて---
西田弘之、杉浦春雄 他
学校保健研究 39;1997;316-324
発表者:佐々木八千代(地域看護学教室)
発表日:平成10年6月4日
<選定理由>
臨床現場で骨折により寝たきりになるケースをいくつか見てきた。骨折の原因として骨粗鬆症が臨床上大きな問題であり、その治療としてリハビリやカルシウム製剤・ビタミン製剤の内服、ホルモン製剤の注射などが行われているが、骨粗鬆症の改善は思わしくない。最近では、骨粗鬆症は予防が大切であるといわれており、私も学生時代の実習で骨粗鬆症の健康教育を行ったことがある。この研究は骨粗鬆症の予防についてふれているのでとても興味がもてた。
<先行研究レビュー>
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閉経期前後の年齢層や高齢期女性を対象に、骨塩量と生活習慣との関係などが詳細に検討され予防のための要因が明らかにされつつある。
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獲得最大骨量が低い状態で中高年期を迎えてからの予防には限界があることも否めないとの観点から、若年期において最大骨量を高めておき骨粗鬆症の危険を少なくしようとする積極的予防にもにも焦点があてられるようになってきている。
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日本人女性の最大骨量到達年齢に関する最近の知見では18歳頃と報告されている。
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女子大生6人に1人が50歳代並みの低骨密度である。
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女子大生のライフスタイルに関して極端なダイエットをはじめとする食生活の偏り、運動不足者の増加など骨密度の維持増加には好ましくない状況である。
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BMIと骨密度は、正の相関を示す。
<要約>
目的;
骨粗鬆症は主として閉経後から危険性が増大する疾患であり女子大生にとっては身近な問題ではないのが現状であると思われる。そこで大学学齢期から骨粗鬆症を予防するためには、まず骨に対して関心を持たせることが重要であると考え、自分自身の骨密度を認識させる目的から入学時に骨密度測定を行い、その後1年間の食習慣や骨に対する意識及び骨密度にどのような影響を及ぼすのか検討する。
対象;
1995年に岐阜県下のA短期大学看護学科に入学した女子学生77名うち参加を承諾した71名(平均年齢±標準偏差は18.3±0.5)
方法;
骨量の測定は、入学直後の1995年4月下旬と1年後の1996年4月下旬の2回実施した。前腕とう骨1/3部位(非利き腕)の骨塩量と骨幅を測定し、骨量の指標として骨密度は骨塩量/骨幅で表した。測定に関しては2回とも同一検者により測定誤差が生じないよう留意した。1年後の調査項目は骨粗鬆症に対する意識・運動を含めた生活習慣・食品群別摂取頻度・理想体重等に関する16項目で構成した。調査は1996年の4月下旬に一斉記入させた。
分析は入学時の骨密度測定値によって上位群、中位群、下位群の3群に区分し比較検討した。各群ごとに単純集計をした後調査表の各々の質問に対する4段階の自己評価尺度結果を得点化し平均値及び標準偏差を算出し、Duncanの多重比較を用い統計学的有意差の検討を行った。有意水準は5%および10%とした。
<結果・考察>
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骨密度が低かったものほど、骨粗鬆症に対する不安は大きく、骨の強化を計ろうと意識した生活が随所になされていた。
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骨密度が低いものほど、肉類などの蛋白質やカルシウム含有食品の摂取が多い傾向が認められた。
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骨密度の高かったものは入学時のBMIも高かった。なお、ダイエットを実施したものが約半数にみられた。
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1年後の骨密度の増減率(入学時−1年後/入学時×100)は、上位群−4.93、中位群−2.74、下位群+0.02で上位群と下位群で有意差を認めた。骨密度の増減はライフスタイルの在り方に左右されると考えられる。
骨密度健診は、骨密度が低い場合にはこれまでの生活を振り返り丈夫な骨格が形成できるような自覚を持たせるきっかけとなりうるものと推察された。このような学生に対しては、バランスのとれた食生活と適度な運動などの重要性を指導する必要があると思われる。しかし一方では、骨密度が高い場合には、測定値に慢心してしまうのか、骨密度よりもダイエットに関心が向けられる傾向が窺えた。骨密度が高かった場合でも肥満に対する誤った認識や間違ったダイエットをしないような教育と、併せて骨密度は不変ではないとの知識や高い骨密度を維持増進するため栄養や運動をはじめとする基本的なライフスタイルの在り方を十分に指導することが大切であると思われる。
<私見>
看護学生だけでなくその他の女子大学生にも調査を行えればよかったのではないかと思われた。
今後、骨密度の低いものや高いものに対する教育の評価を行えればよいと思う。
<学校保健への寄与>
若年時における積極的な骨粗鬆症予防策として女子大学生が入学時に自身の骨密度の実態を認識し、併せて骨に対する知識を得ることは、とくに骨密度の低い学生の骨に対する意識の高揚化など、広く健康の自己管理能力獲得に資する点が少なくない。
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