大学生の疲労感の実態と関連要因について
―生活習慣および食生活からの検討―
松田芳子 他
学校保健研究 39;1997;243・259
発表者: 全 欣(精神衛生学教室)
選定理由
大学生を対象としたこれまでの疲労感に関する多数の研究から、大学生の疲労感が増加している傾向が報告されている。大学生活は、学生自らの自己管理に委ねられるため、生活が不規則になりがちであり、疲労を感じやすく結果となります。そこで、具体的に、どのような要因が学生の疲労感に影響を及ぼすのかを知りたくて、この論文を選びました。
先行研究レビュー
-
門田新一郎の大学生を対象とした調査報告では、健康生活上問題のある生活行動は疲労自覚症状の訴えを増加させる傾向にあることを指摘している。
-
中永の研究報告は、女子学生を対象とし、疲労自覚症状の訴え数の日内変動に対する種々
の生活要因を調査し、睡眠時間、エネルギー充足率、労作の関連が大きいことを報告している。また、1日の疲労感の経時変化には、消費熱量・摂取熱量・時刻・季節の要因が相互に関与してる。
-
高田らの研究報告では、遅寝遅起の「夜型」の生活習慣が定着すると、睡眠時間を7時間を取っていても疲れやすい、肩がこる、気持ちが悪いなどの不定愁訴が現れることを報告している。
要約
【目的】
学生の健康管理のあり方や指導についての基礎資料を得るために、女子学生を対象に、疲労自覚症状調査と生活習慣・食習慣に関する調査および食物摂取状況調査等を実施し、学生の疲労感の実態やその背景にある要因を、主として生活習慣や食生活との関連から検討したい。
【対象】
K大学教育学部養護教諭養成課程の2〜4年次の女子学生を対象とする。
【方法】
-
疲労自覚症状調査
産業疲労研究会の「自覚症状調べ(1970年)」を用いて行った。この調査は、1群「ねむけとだるさ」、2群「注意集中の困難」、3群「局在する身体違和感」の3症状群からな
り、各症状群10項目ずつ30項目により構成される。調査は特別な行事のない平日の連続した4日間について、起床後、午前、午後、就寝前の1日4回実施した。
-
生活行動および食習慣に関する調査
-
調査内容は、起床・就寝時刻・睡眠時間などの生活習慣、野菜・外食回数などの食習慣についてである。
-
食物摂取状況調査
-
血液検査
【結果】
-
疲労自覚症状調査について
-
3群の疲労自覚症状の総訴え数を期別に比較すると、就寝前>起床後>午後>午前の順序である。
-
1群については、就寝前>起床後>午後>午前、2群については、就寝前>午後>起床後>午前の順序であった。3群については、各期で有意な差は見られなかった。
-
症状群別に見ると、1群「ねむけとだるさ」に関する項目の訴え数がもっとも多く、次いで、2群「注意集中の困難」、3群「局在する身体違和感」の順になっていた。
-
学年間で総訴え数を比較すると、全調査時点で2年生の訴え数が多かった。
-
生活行動および食習慣について
-
睡眠時間は7時間以内が60.7%、目覚めのよくないものは67.2%であった。
-
エネルギー充足率80%未満が46.7%で、摂取不足の者が多かった。
-
野菜の摂取は、「ほとんど食べない」が2年生で3・4年生より多かった。
【考察】
-
本対象の疲労自覚症状の総訴え数は、起床後4.7、午前3.6、午後4.4、就寝前5.9であり、中永らが女子学生を対象に実施した同様の調査結果と比較して見ると、就寝前についてはほぼ同数であったが、その他の期においては本調査が訴え数が多く、本対象の疲労感が強いことを示している。
-
本対象の睡眠時間は平均7時間18分であり、平成2年度の「国民生活時間調査」の大学生の平均睡眠時間7時間22分と時間的には大差ないが、就寝時刻は24時以降の者が81.1%を占め、夜型の生活構造にあり、寝つきが悪く、目覚めも悪く、午前中の気分も優れないという悪循環を繰り返している者が多く見られた。
-
本対象において、エネルギー充足率80%未満の者が46.7%であり、生活活動のためのエ
ネルギー不足が予測され、結果として疲労が生じるのは当然である。
-
居住形態別に特徴を見ると、疲労自覚症状の訴え数は、一人暮らしの者が自宅生より、起床後の訴え数が有意に多かった。一人暮らしの者は、自宅生より就寝時刻、起床時刻とも遅く、夜型の生活を反映した訴えだと思われます。
【結論】
-
疲労自覚症状は、精神作業型を示し、総訴え数は、就寝前>起床後>午後>午前の順になり、日内変動が見られた。また、2年生および一人暮らしの者が訴え数が多い傾向にあった。
-
生活の夜型化と目覚めの悪さ、身体活動の減少などの生活上の健康問題と、エネルギー摂取不足、朝食欠食等の食生活上の問題が把握された。また、生活習慣・食習慣に問題がある者では、疲労自覚症状の訴え数が多くなっており、両者の間に関連が認められた。
-
栄養素等摂取量、食品群別摂取量とも、所要量、目標値を下回る項目が多く、特に栄養についての学習歴の少ない2年生および疲労自覚症状の訴え数が多い群で、その傾向が顕著で会った。このことは、栄養学についての学習効果の存在や食生活のあり方が疲労感に影響を及ぼすことを示唆している。
-
関連するすべての要因を用いた共分散構造分析によれば、疲労感の直接的原因として食生活と生活習慣が認められ、学習歴と居住形態は、この2要因の原因として間接的に疲労感に影響していた。
-
個人の生活習慣や食生活のあり方が、疲労自覚症状の訴えに及ぼす影響が大きいことが示唆された。
学校保健への寄与
大学生活は自主的な生活管理、健康管理が要求される。そのためには、生涯を通じて健康の維持ができるような健康意識や健康生活の実践能力を持つ学生の育成が、今後も学校保健教育の重要な課題であると思われます。
本研究の長所、短所、問題点および私見
-
疲労感を取り除くためには、ライフスタイルの根本的な見直しの必要性が示唆された。
-
学生の疲労感に及ぼす要因として、生活習慣や食習慣以外にも、いくつかの原因が考えられます。
-
調査対象は男性の場合、どんな結果が出るのでしょうか?
topへ戻る
前へ戻る