平成10年度の研究活動内容



1.思春期における抑うつ症状と心理社会的要因との関連(高倉実)

学校嫌いや不登校の児童生徒が抑うつを訴えていること、思春期の喫煙、飲酒、薬物乱用の予測因子として抑うつ症状が有効であることなどから、抑うつ症状は思春期の精神保健を知る上で重要な指標になる。欧米では思春期の抑うつ症状に関する疫学的研究が多いが、本邦ではこの種の研究はきわめて少ない。これまでに沖縄全域の高校生を対象として、思春期後期の抑うつ症状の有症率はかなり高く、人口統計学的変数によって異なること、交絡因子を調整した後も抑うつ症状はいくつかの健康習慣と関連を示すこと、生活ストレッサー、social support、self-esteem等の心理社会的要因と強い関連を示すこと、生活ストレッサーには表出パターンがみられ、特に友人関係ストレスの強いクラスター群の抑うつ症状が高いことを明らかにした。平成10年度は抑うつ尺度にCES-Dを用い再び沖縄全域の中学生を対象に調査を行った。現在、抑うつ症状と心理社会的要因等との関連性を検討中である。今後は小学生について同様の調査を実施する予定である。また、抑うつ危険因子、防御因子について、特に最も説明率の高い自尊心や統制感などの個人的資源について介入を試みる学校健康教育も検討する。(本研究は文部省科研費「思春期集団における抑うつ症状と心理社会的要因との関連」の補助を受けている。)
 

2.青少年の健康に関わる危険行動と関連要因について(高倉実)

米国ではCDCのYouth Risk Behavior Surveillanceにより青少年の健康に関わる危険行動を全国規模でモニターし防止のために努力しているが、本邦ではこのようなモニタリングシステムはまだ構築されていない。本研究ではこれらの危険行動の実態や関連要因を明らかにして、学校における防止教育の基礎資料とする。これまでに高校生の喫煙行動には将来の喫煙意思、タバコ入手容易性、友達の喫煙行動、友達の期待が極めて強く関連すること、危険因子の数と喫煙行動の間にdose-response関係がみられることを明らかにした。今後は他の危険行動やライフスキルの関連について検討する。
 

3.青少年の体組成と生活習慣、自覚症状との関連(高倉実)

体脂肪率や骨密度には運動や食生活が大きく影響することがよく知られている。また、成人では体脂肪率とよく相関するBMIと死亡率の関係がJ字型を示すことが指摘されている。本研究では児童生徒の体脂肪率や骨密度と生活習慣の関連を検討するとともに、体脂肪率と自覚症状との間にJ字型の関連がみられるかどうかを検討した。平成10年度は沖縄県島尻校区の3小学校の児童を対象に調査を行ったが、児童の体脂肪率と自覚症状の間には有意なパターンはみられなかった。今後は、身体活動量について定量的に測定する方法を検討し、体脂肪率との関連性を検討する。



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