大学生の抑うつ症状に関連する要因についての短期的縦断研究

○高倉 実*1 崎原盛造*2 與古田孝夫*3

*1 琉球大学医学部保健学科学校保健学教室、*2 同保健社会学教室、*3 同精神衛生学教室

【目的】本研究では、大学生の抑うつ症状を3ヶ月追跡調査することによって、抑うつ症状に関連する因子および抑うつ症状の出現に関与する危険因子を明らかにすることを目的とした。

【方法】大学生532名を対象に、第一次調査(4月)および第二次調査(7月)に質問紙調査を行った。抑うつ尺度にはCES-Dを用いた。関連要因として、生活ストレッサー、タイプA行動パターン、セルフエスティーム、統制感、コーピング、ソーシャルサポート、健康習慣を測定した。

【結果】第一次および第二次調査の抑うつ症状平均得点は各々13.113.4、有症率は各々32.8%35.2%でいずれも有意な変化はみられなかった。第一次調査時点における抑うつ症状の有無に関連している因子を単変量解析により確認したところ、23変数中10変数に有意な関連がみられた。これら10変数の影響を調整した結果、生活ストレッサー、セルフエスティーム、統制感、責任受容型コーピング、問題解決型コーピング、父親サポート、母親サポートが抑うつ症状の有無に関連していた。次いで、第二次調査時点の新たな抑うつ症状の出現を予測する危険因子を単変量解析により確認したところ、23変数中、生活ストレッサーとセルフエスティームのみに有意な関連がみられた。これら2変数を同時投入した多変量解析を行ったところ、生活ストレッサーのみが最終モデルに残った。以上のことから、生活ストレッサーが高い学生は、将来、抑うつを引き起こす危険性が高いハイリスクグループに属すると考えられ、大学生について抑うつ出現の予防を図る場合、このグループに対して重点的に対応することが有効な方策となることが示唆された。