【沖縄農業研究会ホームページ】Okinawa Agriculture Research Society
 沖縄農業研究会賞 第2回受賞記録

第2回 2008/平成20年度

受賞者      砂川喜信氏(沖縄県宮古農政・農業改良普及センター)
受賞対象研究 「熱帯果樹(パパイア・マンゴー)栽培に関する研究」



◆受賞記念講演要旨より◆

背景及び目的

  沖縄県では亜熱帯性気候を活かし,マンゴー・パパイア・パッションフルーツ等の熱帯果樹栽培が盛んになってきた.このなかで,安定生産を目指して熱帯果樹の施設内栽培が主流になってきた.露地栽培が一般的であったパパイアも例外でなく,施設化が進んだが,施設内栽培における研究事例が少なかった.一方,マンゴー栽培においては,連年安定生産を目指す上で島尻マージ特有の生育障害の発生が問題となり,それに対する対策技術の確立が急務であった.そのため,パパイアについては施設内栽培における生理生態と長期栽培の研究,マンゴーではアルカリ障害発生要因と対策の研究を中心に取り組んだ.

「パパイアの生理生態と長期栽培方法の研究」

 パパイアの研究では,生果用品種サンライズソロ種を用いて,周年栽培における生理生態の特性調査を行った.その結果,果実糖度と果実重が収穫時期により変動するが,中でも,春期と秋期の開花果実は果実が大きく種子も充実しているのに対し,夏期〜初秋期の開花果実は,種子がほとんどなく小果実になることがわかった.種子数と果実重は正の相関が高いことから,小果実の発生対策として夏期〜初秋期の開花時には雄樹の花粉で受粉すると種子の充実した大果実ができることを実証した.また,この時期の受粉作業の省力化をねらいとしてスプレー受粉技術を開発した.

写真1:パパイア改良株倒し法 写真2:レキオス 写真3:品種比較試験

一方,栽培が施設に移行しても樹高が高くなると露地栽培と同様に切り戻し更新が主であったため,収穫が約3〜5ヶ月以上中断する時期が発生することが課題であった.そのため長期連続収穫を目的に,植え付け時に遮根プレートを使用し,株倒し時に幹固定のためのらせん杭を使用する改良型株倒し法を開発した.この方法は,すばやく確実に株倒し処理ができる方法で,施設内での長期栽培を行う上で欠かせない技術となった.また,この改良株倒し法を用い露地栽培で台風対策試験を行った結果,慣行の直立栽培に比べ改良株倒し法では着果位置が低下するため,幹の折損被害が非常に少なかった事から,露地栽培における台風対策として有効である.

「島尻マージにおけるマンゴーの黄化症(アルカリ障害)発生要因と対策」

 マンゴーの研究では,島尻マージにおけるマンゴーアルカリ障害の改善技術の開発を中心に取り組んだ.従来,黄化症の要因として鉄不足が上げられていたが,全鉄分析では黄化葉でも正常葉より鉄含量が高い場合があり,要因がはっきり特定できていなかった.そこで二価鉄測定方法を取り入れた結果,明らかに黄化葉では正常葉より二価鉄含量が低いことや,葉色(葉緑素計値)と二価鉄含量の相関が高いことがわかった.そこで,二価鉄の供給資材であるキレート鉄を使用し,黄化症の対策試験に取り組んだ.キレート鉄の葉面塗布試験において,葉表面より葉裏面塗布で効果が非常に大きいことがわかったため,現場におけるキレート鉄の散布方法として,葉裏面を中心に散布するように指導した.また土壌灌中など効果的な使用方法の研究に取り組んだ.一方,高品質(果皮色)果実にする目的で袋掛けを遅らせることが一般的であったが,急激な温度の上昇等による日焼け果実の発生が問題になっていた事から,袋掛け時期について試験を行い,農家慣行時期より約2週間早期の袋かけでも十分な果皮色を確保できる事や,施設内温度の降下を目的とした遮光処理が収穫ピークの緩和対策で利用できる事などを明らかにした.

写真4:マンゴー

謝  辞

  研究を行うにあたり,多大なご指導を賜りました農業研究センターの喜名景秀所長,高江洲賢文総括,仲盛広明総括,小禄博昭宮古島支所長,河野研究主幹をはじめ,沖縄県農業研究センターの皆様と,この賞に応募するに当たり,推薦及び御指導いただきました宮古農政・農業改良普及センターの下地秀一所長に感謝いたします.本研究は諸先生方のご指導,ご支援の下,パパイア協同研究チーム(農業研究センター本所:恩田聡主任研究員・玉城盛俊主任研究員)を初めとする多数の共同研究者,農業技術補佐員の皆様の献身的なご協力によって得られた成果であり,皆様に深謝いたします.

写真:砂川喜信氏



フレームトップページへ移動
Copyright(C) 2007,沖縄農業研究会,All Rights Reserved
事務局所在地 〒903-0213 沖縄県中頭郡西原町字千原1番地 
【Okinawa Agriculture Research Society】Nisihara, Okinawa, Japan
TEL / 098-895-8754  FAX / 098-895-8734 E-mail / okinoken@agr.u-ryukyu.ac.jp