ハニ族は中国南部雲南省の少数民族のひとつで、天まで伸びるような棚田を作る稲作民である。アカ族は北タイでおなじみの山岳少数民族で、タイでは最近焼畑が禁じられ定住化しているけれども、焼畑で陸稲をつくっていた人たちである。この二つは同じなのか違うのか?
ハニ族は中国の55の少数民族のひとつで、中国語では「哈尼族」、英語では
Hani、ハニ語ではHaqniqと表記している。アカ族は東南アジアとくにミャンマーとタイの少数民族であり、英語ではAkhaAkaはアフリカのバンツー系の民族のひとつ間違えないで!)と表記する。ベトナム、ラオスにもハニ・アカ族は分布している。たまに西双版納などでアイニ族(愛尼族)に会ったというWebページを見かけることも多いが、これは間違い。彼らの自称はアカであって、アイニは中国語の自称なのである。他の言語でいう自分に対する語を自称というだろうか?ニホンジンは自称だろうがJapaneseとかリーベンレンが自称だとは我々は誰も思わないだろう.同様に彼らは普段は自分のことをアカと呼んでいるのである。詳しくは稲村1996a を参照してほしい。
 けれども、ここでひとつ難しいことがある。中国では「民族」(英語ではnationalityと訳す)を国家が認めた政治単位と規定していることである。中国の尺度ではアカは「民族」ではなく、「支系」なのである。たしかにハニ族にはアカを自称する人々のほかに、ロビ、ロメ、カド、ビヨ、ベホン、ゴジョ、ハニなどたくさんの自称があってそれらはハニ族に帰属するのであって、「支系」なのである。この論法ではアカを「民族」として認めると、中国には400以上の「民族」が出来てしまい、結果民族尊重とか民族平等とかいうことはできないのである。12億92%を占める漢族がひとつの「民族」で、15万人のアカが「民族」というわけにはいかないのであろう。
 すると、アカ族はハニ族に含まれてよいといえるのだろうか?「民族」が国家の中で国民を形成する民族的集団であるとするかぎり、タイやミャンマーのアカをハニ族と呼んではならないのである。アカもタイでは二流の国民としてしかの地位しかなく、難民扱いされるなかで国民としての権利を主張している。そのなかで、アカという名称も長年の努力のすえ勝ち取ったものなのである。タイ語では彼らはイコー(Ekaw)とよばれ、それは蔑称として理解されており、彼らがアカであるというのはイコーでないということなのである。
 したがって、このページではハニ族アカ族とかハニ・アカ族とかいうしかない。たしかにハニとアカは全く違う伝統をもっている人たちではなく、政治がそうだからといって別の民族(日本語の意味で)というわけにはいかないくらい同じ言語(それでも東北弁と九州弁以上の違いはあるけれど)を共有し、同じような儀礼を行っている人たちなのである。
 彼らは言語学的にみるとチベット・ビルマ語系の人々で、イ族、ラフ族、リス族などと近い。日本語と似ているなどと言う人は、是非とも一度、このページを通じて、意思の疎通が出来るようになるくらいになるまで勉強してほしい。それでも日本語と似ていると思えるならたいしたものである。チベット語やビルマ語には文字があって、なんとなく遠いイメージがあると思うけれど、それと同じくらいの程度で「似ている」とはいえるでしょうが。