片持ちはりのひずみ測定(ひずみゲージの使い方)

ひずみゲージを片持ちバリに取り付け,片持ちはりに荷重をかけていきそのときのひずみを計測する。片持ちはりの応力とひずみの関係をグラフに描き弾性係数を求める。

そのためには,ひずみゲージの構造や測定原理を充分に理解し,ゲージの張り付け方も学習する。

ひずみゲージについて

ひずみゲージ:ひずみゲージは,ひずみによってその電気抵抗が変化するものであり,代表的なものには箔ゲージがあり,その構造はベースと称する電気絶縁物(フェノール,ポリイミドなど)に厚さ数ミクロンのゲージ用抵抗材料箔を接着して固定し,この箔をゲージのパターンに合わせてフォトエッチングにより成形し製作する。ゲージの大きさや形状(短軸形,多軸形)は,測定しようとする素材の大きさなどに対応して各種あり,測定目的に合ったものを選ぶことができる。

測定原理:一般に,金属抵抗体がひずむとその電気抵抗は変化する。この特性を利用したのがひずみ計(STRAIN GAUGE,ひずみゲージ)であり,これを用いて応力(あるいはひずみ)を測定することができる。

一様な断面を有する金属抵抗線の抵抗値Rは,次式で表せる。

 

      @

ただし,l,ρ,Aはそれぞれ抵抗線の長さ,比抵抗,断面積である。式@の両辺の対数をとった後,微分演算を行って抵抗の変化率を求めると

 

      A

ただし,ΔR,Δρ,Δl,ΔAはそれぞれの変化量を表す。ところで,断面積と長さの変化率は,ポアソン比をνとして,次の関係で結ばれている。

 

     B

したがって式A,式Bから次式が得られる。

 

     C

 

ここでρの変化は,その材料の体積に比例して変化するとすると,

              D

すなわち

     E  

を求めると

      F

整理すると

      G

よってC式は以下のようになる。

      H

 

式Hの左辺はひずみに対する抵抗の変化率の割合であり,ゲージ率あるいはひずみ感度と呼ばれ,ふつう記号Ksで示される。式Hから分かるように,ゲージ率は抵抗体に固有のものであり,ゲージ材料として通常用いられるアドバンス線(Cu54%,Ni45%,Mn1%)の場合, mがおよそ1となり,Ksは約2.0である。

実験装置

ひずみゲージ,瞬間接着剤,ハンダ,ハンダごて,ストレインアンプ,ブリッジボックス,万力,切り換えスイッチ,デジタルテスター,サンドペーパー,リード線,工業用ティッシュ

実験方法

§ゲージ取り付け(ひずみゲージの使い方)§

  1. 被測定箇所の錆,塗料,メッキ層などをグラインダ,サンダなどで除去する。除去面積はゲージ端子の取り付けや防湿処理を考慮しやや広めに行う。
  2. 次に,サンドペーパーで被覆定箇所を平滑に仕上げる。サンドペーパーは通常#100〜320位のものを用い,最終仕上げは#240〜320位で行う。
  3. 表面に付着している粉塵等を溶剤(エタノール)を含ませた工業用ティッシュ(たとえばキムワイプ)で拭き取る。この作業は,拭き終わったティッシュの面に汚れがつかなくなるまで繰り返す。この際,ティッシュは常に清浄な面で一方向に拭くことが必要。
  4. ゲージ接着を正確に行うためには,あらかじめゲージ接着箇所にケガキ線を入れる。ケガキ線は4〜6H位の硬い鉛筆を用いて描く。ケガキ線は通常,縦,横のセンタラインを入れる。
  5. 接着剤CC-33Aの容器の先端に付属の針で穴を開け,ゲージの裏面に塗布する。ゲージのセンタマークをケガキ線に合わせて表面をポリエチレンフィルムで覆い,指先で圧力をかけて密着させる。接着剤の量は多めに隙間を開けないようにする。ゲージ長の短いものや,ベース寸法の小さいゲージでは接着時に位置や角度のズレを生じやすいため,予めゲージリードの一部をセロファンテープで固定しておき,ゲージベースを持ち上げた状態で接着剤を塗布して,そのまま指圧すれば正しく接着できる。
  6. 接着ゲージの抵抗値と絶縁抵抗のチェックを行う。通常,電子式抵抗計を使用する。
  7. リード線の接続にはゲージ端子を使用すると便利で,ここでは箔型のゲージ端子T-F2を使用する。
  8. T-F2のタブにゲージリードをハンダ付けする。リード線は予め先端の被覆を除去し,芯線をよじってハンダ上げしておく。そして,T-F2の他の側のタブにリード線をハンダ付けする。
  9. コーティングは接着ゲージの絶縁抵抗が良好であることを確認してから行った。ここではビニールテープでコーティングを行う。コーティングはゲージだけでなく,ゲージ端子やリード線を含めて行う。

§片持ちはりのひずみ測定§

 片持ちはりのひずみを測定する位置にゲージを貼付する。今回は2ゲージ法を用いる。片持ちはりとして使用する鋼材に曲げ荷重をかける。荷重は5段階くらいに分け,荷重増加時および荷重減少時についてひずみを測定する。それぞれの荷重に対して片持ちはりに発生する応力は計算から求める。そのため鋼材の必要な各部寸法は計測しておくこと。

 実験の参加に際し,応力とひずみについて予習しておくこと。

キーワード:曲げモーメント,応力,ひずみ,フックの法則,弾性係数(ヤング率),断面2次モーメント,断面係数

  写真は片持ちはりで固有振動数を測定しているところ。はりの固定,ブリッジボックス,ストレインアンプなどの使い方はひずみ測定とほぼ同じ。

結果(例)

ひずみゲージ

支点からゲージ位置までの距離(m)

0.292

キャリブレーション

2

V

板幅 (m)

0.0498

1.00E-03

板圧 (m)

0.0044

ゲージファクター

2.11

断面係数Z

1.61E-07

荷重 (gf)

0

200

399

798

1197

798

399

200

0

荷重 (N)

0

1.96

3.9102

7.8204

11.7306

7.8204

3.9102

1.96

0

モーメント (N・m)

0

0.57232

1.141778

2.283557

3.425335

2.283557

1.141778

0.57232

0

曲げ応力(Pa)

0.000E+00

3.562E+06

7.106E+06

1.421E+07

2.132E+07

1.421E+07

7.106E+06

3.562E+06

0.000E+00

出力電圧(V)

0

0.07

0.13

0.24

0.35

0.23

0.12

0.07

0

実測ひずみ

0.00E+00

3.50E-05

6.50E-05

1.20E-04

1.75E-04

1.15E-04

6.00E-05

3.50E-05

0.00E+00

真ひずみ

0.00E+00

1.66E-05

3.08E-05

5.69E-05

8.29E-05

5.45E-05

2.84E-05

1.66E-05

0.00E+00

結果より求められたヤング率(Pa)

2.53E+11

結果より求められたヤング率(GPa)

2.53E+02

結果より求められたヤング率(kgf/mm2)

2.58E+04

鉄鋼のヤング率(kgf/mm2)

21000

鉄鋼のヤング率(GPa)

2.059E+02

誤差(%)

22.7