土壌硬度の測定と車両の走行性
目的
土壌硬度および平板貫入試験の方法を修得し、圃場の物理的な状態をつかむともに、車両の走行性の評価方法について学ぶ。
車両の走行性について
水田などの軟弱な地盤でトラクタやコンバインが導入されるとその走行性が問題となる。走行性は、地盤条件(土の粒度、仮比重、強度、構造、含水比、地表の凹凸など)、機械条件(車体重量、走行部構造など)、作業条件(作業機の種類、走行速度、オペレータなど)により左右される。
車両が水田や畑を走行するとき、車両重量や駆動力は走行部(車輪や履帯(クローラ:キャタピラではない。キャタピラはキャタピラ社の商品名)を通じ地盤に伝えることになるが地盤の強さが十分であれば加えられた力に対し反力を生じ、車両は進行することができる。しかし、地盤強さが不十分の時は走行部はスリップし沈下を起こし走行不能になる。
地盤強度を大きく左右するのは土の含水量である。土の含水量は圃場の排水により変化する。含水量が高いと地盤の強度は低下する。大雨のあと畑を歩くと足がめり込み歩きにくくなることがある。これは土の含水量が高く地盤強度が低下し地盤が人間の体重を支えることができなくなったためである。また、大雨後地滑りが起こりやすくなるのも地盤強度が低下するからである。
機械が大型化し車体重量が大きくなると地盤に加わる力が大きくなり場合によっては走行不能になる。このような場合走行部を幅の広い車輪に変えたり、履帯型の車両を用いると接地圧が低下し走行可能となる場合もある。トラクタなどは大きなけん引力を必要とするためけん引力を発生しやすいように駆動輪にラグのあるタイヤ(タイヤに突起物がついている物)を用いている。有効なけん引力を得るためにはラグの形状等の研究を進める必要がある。(自動車用のタイヤではかなり研究が進んでおり、最適な溝の形状が各メーカで採用されている。)
原理
アメリカ陸軍の研究所U.S. Army Corps of Engineers, Waterways Experimental Station (WES)が戦車の軟弱地通過の可能性を測定する方法として開発した。頂角30゜底面積0.5in2(=3.2cm2)のコーンを用い、これを地中に圧入するときの力を底面積で割った値(lb/ in2)を求めコーン指数(corn index)と名付けた。日本では頂角30゜底面積6.45 cm2のものが普通用いられる。
コーン指数は地盤の強さを表す指標でこれとトラクタの接地圧に関する指数(車両コーン指数)を比較することにより走行性能を判定する。
コーン指数は測定が簡単であるが、コーン指数がどのような物理的性質を表しているのかは」明確でなく、この方法による判定は経験的測定法としての評価しかない。
コーン指数は車両の走行性の判定だけでなく、地盤の硬度を表す指標として用いられる。沖縄のサトウキビ作では収穫機が大型のため圃場が機械の走行により締め固められ、作物の根の成長を阻害し収量が低下するという問題を抱えている。コーンペネトロメータによる測定により地盤の締め固め程度が測定できる。
コーンペネトロメータ
貫入試験器の先端に円錐を用いて貫入抵抗を測定するほかに、平板、せん断リング、摩擦試験リングを装着して沈下量およびせん断力、摩擦力を測定する。
大・小型平板、せん断リング、摩擦試験リング
操作法
1.コーンペネトロメータ
装置を地面に垂直に立て、手の力を抜き自重で沈下しないことを確かめて、自重で沈下する場合は沈下が止まる深さまでは測定不能とし、そこより始める。この状態で力計の針が0になっていることを確かめる。次に約1cm/secの速さで円錐を押し込む。力計の読みは円錐の表面が地表面を通過した時に最初の読みとりを行い、以後、ロッドに刻まれた5cm毎の線が地表を通過する毎に読み取る。
・貫入試験 上記とほぼ同様なので省略。
先端部に幅の異なる2種の矩形載荷板(幅25×長さ100×厚さ10mmおよび幅50×長さ100×厚さ10mm)を装着し、人力により0,10,20,30,40,50kgfの荷重を与えて、そのときの沈下量を求める。
先端部にせん断摩擦用リングを取り付け、左手で0,5,10,15,20,25kgfの荷重を与え、右手でトルクレンチによりトルクを与え、その最大値を求める。
せん断用リングは内径60mm、外形100mmのリングに高さ10mm、厚さ1mmの突起を6個取り付けたものであり、摩擦用リングはこの突起が無いものである。
データ整理の方法
1.コーンペネトロメータ
@ゲージの読みと荷重の関係を求める。荷重とゲージの読みの関係式(y=ax)が求まると、実験値を荷重に換算することができる。
検定結果 |
(検定機関:丸東製作所) |
||
器物番号 LK 100-12484 |
ダイヤルゲージ番号 0986 |
||
検定時室温 16℃ |
|||
荷重 |
ダイヤルゲージの読み:単位 1目 |
||
(kgf) |
荷重増加の場合 |
荷重減少の場合 |
|
0 |
0 |
0 |
|
10 |
19.1 |
19.2 |
|
20 |
38.5 |
38.7 |
|
30 |
58.1 |
58.2 |
|
40 |
77.8 |
78 |
|
50 |
97.5 |
97.8 |
|
60 |
117 |
117.1 |
|
80 |
156.9 |
156.9 |
|
100 |
197.1 |
/ |
|
温度補正法 |
|||
温度補正を必要とするときは次の式によるものとします。 |
|||
dt=dt0(1+K(t-t0)) |
|||
ここに dt=使用する時の温度t℃における力計の常数 |
|||
dt0=検定時の温度t0℃で定めた力計の常数 |
|||
K=力計の温度係数≒2.7*E-4 |
Aコーン指数の計等。荷重を円錐の断面積で割る。
B深さでコーン指数の関係図の作成
コーンペネトロメータ (kgf/cm2) | |||||
Xm地点での測定結果 |
|||||
深さ(cm) |
0m地点 |
1m地点 |
2m地点 |
3m地点 |
4m地点 |
0 |
4.1 |
3.8 |
4.1 |
2.5 |
2.5 |
5 |
6.8 |
5.9 |
5.6 |
6.4 |
5.9 |
10 |
6.1 |
4.3 |
3.6 |
4.7 |
5 |
15 |
6.9 |
4.1 |
4.2 |
4.7 |
4.7 |
20 |
7.5 |
5.2 |
5.2 |
5.8 |
5 |
25 |
5.5 |
4.3 |
4.6 |
4.8 |
4.1 |
30 |
4.8 |
4.1 |
4.2 |
4.6 |
4.3 |
35 |
4.5 |
4.5 |
3.8 |
4 |
3.3 |
40 |
4.9 |
4.7 |
3.4 |
4.1 |
5.3 |
C2次元ソイルプロフィールの作成
圃場のある切断面での土壌硬度の分布
Dソイルマップの作成
圃場のある深さでの土壌硬度の分布
コーン指数(深さ10cm) |
X方向 0m |
X方向 1m |
X方向 2m |
X方向 3m |
X方向 4m |
X方向 5m |
|
Y方向 0m |
3.17 |
1.50 |
1.19 |
2.06 |
1.98 |
1.50 |
|
Y方向 1m |
2.22 |
1.82 |
2.22 |
1.11 |
1.20 |
0.80 |
|
Y方向 2m |
2.53 |
2.22 |
1.61 |
1.74 |
2.10 |
1.82 |
|
Y方向 3m |
4.50 |
3.01 |
1.82 |
1.82 |
1.82 |
1.43 |
|
Y方向 4m |
3.10 |
2.53 |
1.58 |
1.19 |
2.30 |
2.53 |
|
Y方向 5m |
1.58 |
2.14 |
2.53 |
1.82 |
1.43 |
1.03 |
2.SR−2型土壌抵抗測定器