土粒子の密度試験(土の物理的性質の測定)

生物生産機械(特に農業機械)にはプラウやロータリなど土を直接作業の対象とするものや、トラクタ、コンバインなど土と直接接触し作業をするものがある。プラウは土を切削、反転、破砕破壊しロータリは回転した刃により土を破砕する。この作業により雑草やその種子、またわらなどを土中に埋没させる。また、土を膨軟化させ空隙を大きくし種子の発芽をよくする。トラクタ、コンバインは土から支持力を得、また土の抵抗力によりけん引力が発生する。また、場合によってその重量のため土壌を踏み固めることもある。

これらの問題を解析するためには土の物理性を知ることが重要である。ここでは土の物理的な性質のうちで基本的な乾燥密度、湿潤密度、密度、間隙比、含水比、飽和度を求める。

土の物理性をあらわす指標について

体積に関する物理量:

●間隙比(void ratio):土粒子に対する間隙の体積の比率を示す値である。厚密により体積が減少する場合、土粒子の体積は変化せず間隙の体積だけ減少するため、その減少の割合を示すときなどに便利な物理量である。

●間隙率(porosity)n:土全体の体積に占める間隙の比率を示す値である。間隙比に比べて使用頻度は低いが、いくつかの式の展開を行っていく過程で用いられる。

●飽和度(degree of saturation)[%]:間隙に占める水の割合を示す値である。不飽和土の透水性や力学特性を表すときに必要な物理量である。

[%]

質量に関する物理量:

●含水比(moisture content)ω[%]:土粒子に対する水の質量の割合を示す値である。間隙比と同様に、土粒子の質量は圧密などによって変化しないため、圧密や強度定数などと関係づけられて非常によく用いられる物理量である。この値を求めるためには、質量mの容器に一定の試料を入れて全質量maを測定し、110℃で一定量になるまで24時間程度炉乾燥した後、再び質量mを測って次式から求める。

体積と質量の両方に関する物理量:

●湿潤密度(wet density)γt[g/cm3,t/cm3]:飽和度にかかわらず、土全体で見た場合の密度である。土を不撹乱状態でサンプリングできた場合には、供試体を成形して体積と質量を測ることにより簡単に求めることができる。

●乾燥密度(dry density)γ:土粒子の質量のみを土全体の体積で除した値である。間隙比や含水比と同様に土粒子の締まり具合を示すのに有効な値で、締固め土特性を表す場合などに用いられる。

 

 

実験装置 

ピクノメーター:土粒子と蒸留水を満たしたときの質量と、蒸留水を満たしたときの質量を測って比重を求める。

はかり(感度0.001g)

温度計(単位目盛1℃):比重測定の水の温度を図るときに使用する。

ガスコンロ:ピクノメーター内に入れた土粒子と蒸留水から気泡除去の為に使用する。

バット[VAT]:準備された乾燥した土を使用するときに使用する、浅い、底の平らな、四角形の容器。

蒸発皿:気泡除去した土粒子と蒸留水を入れ炉乾燥する時に使用する。

デシケーター:固体物質の乾燥や、吸湿性物質の保存に用いられるふたつきの肉厚ガラス製の器。今回は炉乾燥した試料を取り出し温度を下げるときに使用する。

恒温乾燥炉:気泡除去した土粒子と蒸留水を入れ炉乾燥し土粒子だけを取り出す為に使用する。

漏斗:口の狭い容器に液体を注ぎこむときに使う道具。ピクノメーターに土粒子や蒸留水を入れるときに使用する。

蒸留水

 

実験方法

1.試料採取

土の採取は円筒形のサンプラを用いて行う。サンプラを用いるときは土を乱さないように採取する(特に押し込みの際)。土の性質は同じ圃場でも場所、深さによって変化するので、数点採取し平均する。

2.土の含水量測定と比重測定

    1. 土の採取(試料採取):円筒形のサンプラを用いて行う。サンプラを用いるときは土を乱さないよう採取する。垂直に、回しながら圃場に差し込み、取り出すときも回しながら取り出すようにする。採取した土は、ケースに蓋をして蒸発を防ぐようにする。
    2. ピクノメーターの検定。よく乾いたピクノメーターの質量を測る。ピクノメーターに蒸留水を満たし、栓を正しい位置にはめ込み、こぼれた液は乾いた布で拭くようにする。ピクノメーターと蒸留水の全質量と水温をはかる。任意の温度(ここでは15℃)における蒸留水に満たしたピクノメーターの質量を計算する。
    3. 湿潤試料を用いる場合は、蒸発皿で充分に混ぜて解きほぐして、ピクノメーターに試料を入れる。
    4. 炉乾燥試料を用いる場合は、試料を110℃で一定量になるまで少なくとも12時間炉乾燥する。
    5. デシケーターの中で室温になるまで冷ます。
    6. よく乾いたピクノメーターに試料を入れ質量をはかる。このときの、重さは10g以上とすることを目安とする。
    7. 試料を浸す程度に蒸留水を入れ、放置する。
    8. 蒸留水を加えその全量がピクノメーターなら約1/2になるようにする。
    9. ピクノメーター内の気泡が出なくなるまで約10分静かに煮る。
    10. 加熱した試料は室温になるまで放置する。
    11. ピクノメーターに蒸留水を満たし、こぼれた液を乾いた布で拭く。このとき、栓の先端に気泡が入らないようにする。
    12. 全質量(ピクノメーターと試料と蒸留水の質量の和)と、内容物の温度をはかる。
    13. 内容物を蒸発皿などに移す。このとき、内容物が残らないように注意する。
    14. デシケーターの中で室温まで冷ます。
    15. 乾燥質量をはかる。

 

結果(例)

 

表1 土の採取(A班)

 

A35

K22

A45

容器の質量 ma g

 

 

 

高さ H mm

51.0

50.05

50.95

直径 D mm

49.90

49.80

49.80

断面積 A cm

 

 

 

体積 V cm

99.69

97.43

99.19

土+容器の質量 m  g

 

 

 

土の質量 m     g

 

 

 

湿潤密度 m/V g/cm3

2.379

2.457

2.178

表2 含水比(A班)

番号

75

66

容器の質量 ma

142.13

144.04

132.18

湿潤土+容器の質量 m

251.78

256.40

227.30

乾燥土+容器の質量 m

237.17

239.41

216.05

湿潤土中の水の質量 m

14.61

16.99

11.25

乾燥土の質量    m

95.04

95.37

83.87

含水比

15.37

17.81

13.41

 

 

表3 土粒子の比重試験(A班)

 

4 比重、含水比、湿潤密度、乾燥密度、間隙比、飽和度の測定値

 

A班(ジャーガル)

B班(国頭マージ)

C班(島尻・国頭の混合)

比重

2.734

2.614

2.905

含水比

15.53

19.38

17.68

湿潤密度(g/cm3)

2.338

2.428

2.221

乾燥密度(g/cm3)

2.024

2.034

1.887

間隙比

0.354

0.288

0.542

飽和度(%)

1.2

1.8

0.94

 

表5 比重、含水比、湿潤密度、乾燥密度、間隙比、飽和度の測定値

 

A班(ジャーガル)

B班(国頭マージ)

C班(島尻・国頭の混合)

比重

2.73

2.61

2.91

含水比

15.53

19.38

17.68

湿潤密度(g/cm3)

2.338

2.428

2.221

乾燥密度(g/cm3)

2.024

2.034

1.887

間隙比

0.354

0.288

0.542

飽和度(%)

1.2

1.8

0.94

(注意:上記の例では土の比重を求めている。別の資料「土質工学会基準」を参照のこと。)

 

土壌採取の実際サンプラーにコアを取り付ける。付着した土はブラシで落とす。

 

 

  

土壌採取

 

 

コアの取り出し。

 

コアの取り出し。ナイフでコアの両端を平面に切り出す。

 

取り出されたコア

 

土粒子の密度試験の実際

 

試料をピクノメータに入れる

 

水温の測定

 

土壌中の空気を取り除く。湯せんにより加熱し,ときどきピクノメータを振り気泡が抜け出すのを助ける。

 

内容物を全量取り出す。ピクノメータに残らないように注意。

 

(この資料の作成には,1999年度学部生 玉井祐介氏の協力を得た。ここに記し感謝の意を表す。)