実験レポートの書き方
1.レポート(報告書)についての一般論
レポート(報告書)とは,自分が行った実験,研究,調査,会議などの内容を文書にまとめたものである。書き方は会社や学会によってスタイルが決まっているものもあるが,読む人が容易にかつ正確に理解できるようにしなければいけない。そのためには,論理的で文法的にも正しい,簡潔明瞭な文章で書くことが要求される。
よい文章を書くために以下の文献を紹介する。
仕事文の書き方 高橋昭男 岩波新書
1997年発行の新しい本で,わかりやすい文章を書くにはどうすれば良いかを教えてくれる。大学を卒業して就職してからも役立つ。
日本語の作文技術 本田勝一 朝日文庫
本田氏は元朝日新聞の記者で,この本は文系はもちろん理系の人の文章のテキストとして有効だと私は思う。非常に簡単な例文をもとにわかりやすい,正しい文法で文章を書くこつが書かれている。
他に
理科系の作文技術 木下是雄 中公新書
があるが,理系の学術論文にふれたことがない人には書いてあることが何のことかわからないと思う。卒論研究の際,または修士に進学したとき,会社で技術報告書を書かされるときに読めば十分と思う。
2.レポートを書く目的
学習実験レポートは,実験を通して,実験の目的(講義内容の一層の理解,測定原理の理解や測定機器の使用方法の習得,データ整理方法の習得など)がどのように達成されたかを教官に報告するためにある。実験の結果は,学問的には既知のことが多いが,初めて実験を行う皆さんには新しい実験的事実であって,研究実験報告と本質的な差はない。一般の研究実験報告は,あるテーマについて,どのような学問的,技術的背景のもとに,どのように考え,どのような実験あるいは計算をしたか,その結果としてなにが得られ,それについてどのような考察をしたか,結論は何か,などをまとめて記すものである。報告書が完成して初めて研究が完了したことになり,報告書のない研究は無いに等しいとも言える。学習実験レポートの場合は,研究実験報告(研究論文)のように網羅的な記述は必ずしも必要ではなく,各自が考察した事項などに関する部分について詳しく記すのがよい。
レポートを書くことは将来,卒業論文,修士論文を執筆したり,技術者として研究開発計画書,成果報告書,技術仕様書,マニュアル,特許出願書を執筆するための練習でもある。
3.実験レポートの書き方
3-1.書くときの一般的注意
(1)オリジナリティを出す。
他人の意見と自己の意見を区別し,自分の見解,主張をはっきりとさせ,オリジナリティのあるレポートを目指す。
実験の目的,実験方法などはテキストに記載されていても,丸うつしするのではなく,よく理解し,自分の言葉で書く。
文体はできる限り「である」調に統一する。式,図の番号の書き方を統一する(図5とするのか第5図とするのかなど)。項目毎に記述する際の記号の付け方を統一する(1.2. か (1)(2) かなど)。
論理が整然として一貫していなければならない。
主語と述語がきちんと対応して,誤字,脱字のない正確な文章を書く。
例)本実験装置は自動計測できるのが改良点である。 ?
誤差や精度に留意し,有効数字の桁数を正確に表示する。
図,表には必ず番号と表題をつける。(図の場合は下側に,表の場合は上側に表題を記す。)
縦軸,横軸の表示量,記号,目盛り,単位を忘れないこと。
(5)事実に基づいた意見(考察)を述べる。
事実と意見を区別すること。
例 ・アメリカのプロ野球は衰退しつつある。(意見)
・アメリカのプロ球団では、選手の年棒の総額が入場料収入を上回る速さ
で増加しつつある。(事実)
事実の上に立って論理的に導きだした意見を述べる。
例 ・アメリカのプロ球団では、選手の年棒の総額が入場料収入を上回る速さ
で増加しつつある。そのため球団の経営状態が悪化し、アメリカのプロ
野球は衰退しつつある。
(6)引用の仕方
例)アメリカのプロ球団では、選手の年棒の総額が入場料収入を上回る速さで増加しつつある(阪神勝蔵,1997)。そのため球団の経営状態が悪化し、アメリカのプロ野球は衰退しつつある。
参考文献
(雑誌の場合) 著者:論文タイトル、雑誌名、巻数(号数)、ページ、発行年
(単行本の場合) 著者:署名、出版社、ページ、発行年
(本文中に阪神氏から引用したことを示し,レポートの最後に引用した文献名等を記す。)
3-2.レポートの構成と内容
(1)題目(表紙)
実験題目名,氏名,学籍番号,実験年月日を書く。
(2)目的
何を理解し,どのような測定方法,技術を身につけようとするのかを書く。
(3)原理,理論
実験装置,実験方法はどんな原理に基づいているのか。どんなデータを取ろうとしているのかを説明する。テキストをよく読み,文章にまとめる。
(4)実験装置
実験に使用した装置,測定器具,試料などについて説明する。必要に応じ図,表を用いる。
(5)実験方法
実験手順に従い項目毎に文章にまとめる。
(6)結果
測定結果は表,図,計算式などで表す。表,図は定規を使いきっちりと書く。配布されたデータシートは測定結果整理のためのものでありレポートに添付してもよいが,本文中に結果を記述する。
計算に際しては有効数字の桁数に注意すること。無駄な桁数を羅列しない。
結果が計算により求められるものは,計算過程を記述する。
(7)考察
実験結果で述べたことを繰り返すだけでは考察にならない。
実験についての感想は考察ではない。
特異な現象や傾向を見いだしたときは,その原因を推理し,追求する。
実験結果と理論値とを比較し,なぜ実験結果が理論値と一致しなかったかを検討する。
実験結果と目的を対応させながら箇条書きにする。
(9)参考文献
引用した文献の著者名,書誌名,出版元(単行本の場合),巻・号,ページ,出版年などを書く。参考文献については別紙を見ること。
3-3.レポートの提出,質問
実験レポートは実験終了後,1週間以内に提出のこと。267号室ポストに入れるか直接教官に手渡すこと。
レポートはA4用紙を使うこと。
レポートはワープロ,ペン書き,鉛筆書きいずれも可。言語は日本語または英語を使用のこと。