単位系など

?.国際単位系 

1992年(平成4年)に計量法の改正が行われ,物理量の計測について順次SI単位へ移行することが決められた。(テレビの天気予報で気圧の単位がmb(ミリバール)からhPa(ヘクトパスカル)へ変わったのを覚えている人もいると思う。1999年までにすべての規格がSIに切り替わる。生協のカロリー表示もJ(ジュール)に変わるはずである。)SI単位とは国際単位系(Le Systeme International dunites)のことである。メートル系のうちのMKS(メートル,キログラム,秒)単位に電流(アンペア),温度(ケルビン),物理量(モル)および光度(カンデラ)の単位を加えたもので,現在の学術および産業界の諸分野で必要とされる単位を広く包括している。

 

?.工学単位とSI単位

工学単位系とはメートル,キログラム,秒を基本単位とする単位系で,単位質量に働く力(重力)を基本量とするため重力単位系とも呼ばれる。力の単位としてキログラムを用いるためSI単位系の質量を表すキログラムとまぎわらしいので,区別のため工学単位において力はkgf(キログラム重)と明記することになっている。工学単位では基本量の一つが力であり,質量を基本量としこれから力を誘導するSI単位とは概念的に異なる。SI単位と工学単位の違いを表1に示す。

   表1  単位対照表

SI単位

工学単位  SI単位への換算

質量

密度

圧力,応力

エネルギ,仕事

熱量

仕事率,動力

モーメント

粘度

周波数

絶対温度

kg

N(=kg・m/s)

Kg/m

Pa(=N/m2)

J(=N・m=kg・m2/s2)

J

W(=J/s)

N・m

Pa・s

Hz(=1/s)

K(=t℃+273.15)

kgf・s2/m   =9.8kg

kgf =9.8N

kgf・s2/m4   =9.8kg/m3

kgf/m2 =9.8Pa

kgf・m =9.8J

kcal =4.186kJ

kgf・m/s =9.8W

kgf・m =9.8N・m

kgf・s/m2 =9.8Pa・s

Hz

K

注 N:ニュートン,Pa:パスカル,J:ジュール,W:ワット,Hz:ヘルツ,K:ケルビン

 

SI単位で注意しなければいけないのはアルファベットの大文字と小文字は明確に区別されると言うことである。例えば質量を表すキログラムはkgであって,Kgではない。    

SI単位の10の整数乗倍を表す接頭語がある(表2)。

     表2 SI接頭語

倍数

接頭語

記号

倍数

接頭語

記号

1018

1015

1012

10

10

10

10

10

エクサ

ペタ

テラ

ギガ

メガ

キロ

ヘクト

デカ

E

P

T

G

M

k

h

da

10-1

10-2

10-3

10-6

10-9

10-12

10-15

10-18

デシ

センチ

ミリ

マイクロ

ナノ

ピコ

フェムト

アト

d

c

m

μ

n

p

f

a

例えば,標準大気圧(1気圧)は760mmHg=1013.25mb=1.01325bar=101325Paである。すなわち,改正法のもと気圧を表現する毎に,お天気アナウンサーは「十万とんで千三百パスカル」と言わなければいけない。ところが表2の接頭語を用いることにより,「千十三ヘクトパスカル」となり,いままで用いていたmbと同じ数値で表現できる。実験結果が非常に大きなあるいは小さな値となったときは接頭語を用いて表現する。

またまた余談ではあるが,日本独特の単位系の中で知っておいてもらいたいものがいくつかある。それは畑やたんぼの広さを表す単位である。

1町(ちょう)=約99.17a(ほぼ1ha=100m×100m)

1反(たん)=約991.7m2(ほぼ10a)

1町=10反, 1反=300坪

1坪=6尺四方=約3.3m2

 1ha=100a, 1a=100m2

卒業論文研究で農家の聞き取り調査に行くこともあるかもしれないが,農家の人は大半,町や反で話しを進めるので上の数字を頭に入れておくとよい。また,政府の農林水産統計などに記載されている単位面積当たりの収量は普通10a(つまり1反)を基準に求められている。10aの大きさがどのくらいになるか頭の中で描けるようにしておくと便利である。

 

?.生産システム工学実験?における取り扱い

この実験を履修するにあたり,基本的にSI単位を使用することとする。しかし,使用する機器の中には工学単位系などSI以外の単位で表示されているものもある。このような機器を用いる際は,まずその機器の単位により読み取り,あとからその数値をSI単位に換算する。このようにして,実験レポートは最終的にSI単位により作成して欲しい。もちろん,計算の途中など必要に応じSI以外の単位が残っていてもかまわない。

 

?.測定データの取り扱い

測定には必ず誤差を伴うから,測定値はある桁までの数値(有効数字)にしか意味がない。測定値を用い,電卓やパソコンで計算した場合も,有効桁数を超える桁数の表示を羅列しても全く無意味である。以下のような取り扱いを原則とする。

 

1.表現の仕方

19300が上から3桁しか精度がないとわかっている場合は,1.93×10または 193×10とかく。19.3と19.30では意味が違う。前者は有効数字3桁の数値であり,後者は小数第2位の数値も意味がある有効数字4桁の数値であって,4桁目が0であったとしてもかならず0をつける。

 

2.数値の丸め方

通常は,必要とする桁数の次の数を四捨五入して数値を丸める。なお,1.9346を3桁にしたときは1.93であり,1.9346→1.935→1.94のように順次丸めてはならない。

数値の丸め方についてはJIS Z 8401に記されている。別紙を見ること。

 

3.加減算の仕方

小数点以下の有効数字の桁数が最小のものにそろえるか,またはそれより1桁だけ多い桁数で計算した後に最後の桁を丸める。計算を続ける場合は,1桁多く取っておく。

例えば,1.93+1.348+0.1993の場合,

    1. 93+1.35+0.20=3.48

または

    1. 93+1.348+0.199=3.477→3.48

とする。

計算をさらに続ける場合は,3.477を使う。

 

4.乗除算の仕方

有効数字の桁数が最小のものに揃えるか,またはそれより1桁だけ多い桁数に揃えて計算し,計算結果は有効数字の桁数が最小のものに合わせる。

例えば,19.3×0.047×1.993の場合。

   19×0.047×2.0=1.786→1.8

   または,

    1. 3×0.047×1.99=1.805129→1.8

    とする。

 

 


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