大浦湾の奥には2カ所に規模の大きなマングローブ林があり(うち1カ所は名護市指定の天然記念物)、独自の生物相があるとともに、魚類の稚仔やカニの生息場、鳥類の餌場となっているのが確認された。これらのマングローブ林はいずれも極めて質の高いものであり、沖縄本島の中ではまれな存在であるといえよう。亜熱帯地域にあってマングローブはサンゴ礁とともに動物と植物が共生し、その地域の生態系のかなめ的存在である。したがって、その破壊は、その地域の生態系全体に大きなダメージを与える。
基地建設とマングローブ林の関係は、辺野古の場合間接的であるが、先述の無酸素水塊の移動あるいは油汚染、富栄養化などの環境悪化があれば、その危険は大きい。
大浦湾の嘉陽などの海岸はウミガメの産卵場となっており、辺野古でも過去に産卵が観察された。潮流や油濁等水質の変化あるいは砂浜の地形的変化、夜間の照明などの影響が予想され、ウミガメの活動に支障を来すことになる。
この海域には、ハタ、ブダイ、カワハギ、イカ等の魚介類もいるが、直接成魚への被害よりも、むしろ産卵場あるいは稚仔の成育条件の悪化が懸念される。ポンツーン式基地の予定水域でも、魚卵、仔魚(魚種は未同定)がサンプリングで観察されている。また、定着性の貝類やエビ・カニ類にも油濁などの水質変化があれば悪影響を及ぼすものと思われる。
上にみたように、海面が油で汚染されることがあると、自然環境に対して大きな影響があるので、その危険性について吟味しておくことが大切である。
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