7 本件の最大の問題点

3年前の軽すぎた処分

 この事件が3年に渡りマスコミに取り上げられ、大学の信用を失墜させた最大の理由は、データ捏造について琉大が自ら調査しなかったこと、および性的嫌がらせ疑惑調査委員会が判断を避けたことである。性的嫌がらせがあったかどうかの判定は、その行為が相手に歓迎されたか否かによる。Y助教授もキスなどの事実は認めている(ただしレイプ未遂に相当する行為は否定)のであるが、留学生の気持ちがどうであったかをより詳しく調べるべきであった。留学生は、レイプ未遂などの性的暴力の後の早い時期に同じ研究室の助手や教授、大屋学部長(当時)に訴えており、今回の判決では、それらを理由に歓迎されていない行為であり、「人格権の侵害」と認定したのである。

 また、Y助教授は、農学部や全学の調査委員会に膨大な量の偽の内容の証言を行いまた偽の文書を提出した。これは、大学の調査を大いに混乱させた。この罪も、今回処分の対象にすべきではないか。

 何よりも、性的嫌がらせ疑惑調査委員会がセクシュアル・ハラスメントについての正しい認識を持たず、判断を行わなかったことが最大の問題点であるといえる。

被害者の人権への配慮が全く欠けた琉大

 本事件の被害者の救済に対して、琉大がほとんど配慮して来なかったことは以下の事例からも明らかである。

・ 3年前、性的嫌がらせ調査委員会は、セクシュアル・ハラスメントの正しい認識を持たず、「不明」の結論を出した。違法違反実験についての調査報告もY助教授の弁解にその記述の多くを割いていた。

・ データ捏造については分離し、三件を一括して処分を行わなかった。

・ 以上の結果として、今回の判決内容から見れば、あまりにも軽すぎた内容の処分を行った。

・ 法文学部の法律を専門とする教授を中心とした、留学生についての悪質なデマ活動を琉大は放置し、何の対策も取らなかった。

・ データ捏造か否か不明の時点において、データ捏造の疑いのあるデータが入っているとして、学位論文の全てが取り消された。留学生は、全く新しいテーマで学位論文研究に取り組み、さらに3年間を費やした。

・ その3年間、授業料免除、奨学金等何ら援助無しに、留学生は、学業を続けた。

また、1995年3月、寮からも出された。それに対し、琉大は何の配慮もして来なかった。

・ 今回の判決が下された後も、琉大当局は「新たな処分無し」を表明し、学内で生じた留学生の人格権侵害という最も重要な問題に対し、非常識な対応を行った。

・ 判決後の今日まで、琉大は留学生に対し何ら謝罪を行っていない。

以上の琉大の対応を見ると、琉大は、留学生の救済の配慮に欠けていたというより、むしろ留学生の人格権の侵害に手を貸していたと言うべきであろう。

琉大は社会常識を優先させよ

 社会常識から言えば、今回の判決に対して琉大が取るべき対応は、以下の点につきる。

 農学部教授会の6月11日の決議を即実行すべし。これが、現在評議会が考えるべき原点である。

 今回の判決は、3年前の琉大の処分内容が大変な誤りであったことを明確に示した。評議会は3年前の処分誤りについても審議をすべきであるが、何よりも優先すべきは上述の社会常識である。

 「3年前の処分において琉大に誤りがあったので、今回新たな処分はできない、あるいは軽い処分しかできない。」という結論は、許されるものではない。

 去る6月15日の評議会で設置された調査委員会は、「社会常識である農学部教授会の決議をどう実行に移すか」という視点を持って法律面からの検討を行うべきである。

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