本研究のテーマ:

(1) 1945年以降の沖縄の歴史は異文化接触の歴史であり、それは戦後日本でも極めて特異な歴史であった。本研究の目的は、このような戦後沖縄におけるアメリカ文化との異文化接触により生起した現象を、国際政治、憲法、沖縄文学、アメリカ文学・文化、言語政策、コミュニケーション、農業経済、建築学、公衆衛生の各領域において分析し、最終的には学際的な総合化をとおして異文化接触の全体像を理解することにある。さらに、このような研究をとおして、異文化接触のメカニズムを解明し、普遍的なモデルの構築を試みつつ21世紀の国際社会における相互理解に寄与するところにある。
(2) 戦後沖縄におけるアメリカ文化との接触は、沖縄社会のあらゆる分野において展開されたが、これまでの研究は研究領域が限定され、いまだに異文化接触の全体像を解明するには至っていない。本研究の独創性は、分析する対象領域が広範囲に及び、さらに資料収集と戦後沖縄に直接に関わった沖縄及び日米の関係者に対する聞き取り調査等を含めて、実証的かつ総合的な研究を遂行し、その成果を公にすることにある。
(3) 戦後沖縄における異文化接触の研究は、「従来の研究経過・研究成果または準備状況」でも説明しているように、1990年代に成果が出版され始めているが、その総合的学術分析はまだ端緒についたばかりである。近年において、アメリカの沖縄統治に関わる沖縄を含めた日米双方の重要な公文書が公開され、アメリカ統治の実相の全体的な輪郭が見え始めてきた。しかし、50余年という歳月の蓄積は、学術研究には十分なものであるが、それは同時に多くの事象を忘却の淵に沈めてしまうものでもある。すみやかな聞き取り調査及び資料収集を伴う本格的且つ学際的・総合的な学術調査が要請される根拠がここにある。
戦後沖縄のアメリカ統治下における異文化接触の研究については、各分野における個別的研究は推進されてきているものの、総合的な研究としては山里勝己・照屋善彦編『戦後沖縄とアメリカ――異文化接触の50年』(沖縄タイムス、1995)がある。本書は沖縄における異文化接触の総合的な研究としては初の試みである。また、アメリカ側の資料・研究として、ジョン・F・ケネディー・センター賞を受賞した沖縄系作家ジョン・シロタ(Jon Shirota)のハワイ沖縄移民の異文化接触論(『戦後沖縄とアメリカ』所収)、歴史学者ジョージ・H・カー(George H. Kerr)のOkinawa: A History of an Island People(Tuttle、1958; rev. ed. 2000)、モラスキー・ラブソン共編(Michael Molasky & Steve Rabson)Southern Exposure: Modern Japanese Literature from Okinawa (University of Hawaii Press, 2000)などがある。内外のこれらの先行研究は、本研究の基礎となるものである。

(4) 本研究では、国際政治、憲法、沖縄文学、アメリカ文学・文化、言語政策、コミュニケーション、農業経済、建築学、公衆衛生などをコア研究分野として戦後沖縄におけるアメリカ文化との異文化接触の様相とそのメカニズムを分析する。本研究は、これまでの先行研究を批判的に継続・深化し、総合的且つ広範囲に及ぶ学術研究は行おうとするものである。このような研究はほとんど皆無というべきものであり、本研究による成果は多大なものになる。

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